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第76話 アリシア王国の夜明け
しおりを挟む王都アリシア 王城テラス下――――
サキ少尉、サナリー王女、そしてマーテルの三人の前に、第二王子アロダントがテラスより落ちてきた。
そして、アロダント第二王子が横たわる体から、青黒い半透明の「何か」が剥がれてその姿を現す。
それは、異形の存在であり、恐ろしく邪悪な気配が三人を恐怖させていた。
シャイニングナイツのマーテルは気付く、それの正体に。
「な、何故こんな恐ろしいものが、アロダント第二王子の体から!? まさか!?
憑依されていたと言うの!?」
マーテルは静かに、そして一気に腰のサンダーソードを鞘から引き抜く。
「二人は下がって下さい! 「こういうもの」の相手はシャイニングナイツの役目です! お早く!」
「マーテル殿! これは一体?」
サキ少尉が聞くと、マーテルは剣を構えながら答える。
「あれは、イビルスピリット! とても恐ろしい邪悪な存在です! 剣よりも「祈り」が有効なのです。サナリー様! 女神様へのお祈りをお願いします! そうしなければこれを対処出来なくなります!」
「わ、解りました、やってみます。」
マーテルに言われ、サナリー王女は胸のあたりで両手を組み、祈りのポーズで三柱の女神に祈った。
「三柱の女神様、我等をお守り下さい。」
すると、女神に祈りが通じたのか、イビルスピリットに変化が起きた。動きがまるで止まったかの様に静止した。
「なるほど、巫女様が言っていた「邪悪な気配」とは、この事だったのですね。」
マーテルはサンダーソードの刃に手を添えて、力を注ぐ。
「聖なる光よ! 剣に宿り賜え。」
サンダーソードの剣芯から眩い光が輝き、聖なる光の剣となり、剣の長さが延長された。
そして、マーテルはその「光の剣」を振り上げ、イビルスピリットに向け、接近した。
「カオスの眷属よ! 消え去りなさい! ディバインソォォォーーード!!!」
マーテルはイビルスピリットに向け、剣を一気に振り下ろす。
サナリー王女は女神教のシスターである為、女神への祈りはイビルスピリットにとって強烈であった。
一刀両断、マーテルのディバインソードはイビルスピリットを撃ち滅ぼし、邪悪な気配諸共霧散した。
その瞬間、辺りに衝撃の様なものが発して、光輝く正常で清浄な空気が、王都全体を包んでいた重く暗い空気を払拭させた。
王都全体を光の輝きが満たし、静かで穏やかささえ感じる、まるで高原に居るかの様な澄んだ空気へと変わっていくのを、三人は感じていた。
ここに、イビルスピリットは消滅した。マーテルは剣を鞘に納めた。
「どうやら、私のこの国での務めも終わりの様ですね。」
王都全体がまるで生まれ変わったかの様に、光に包まれ、清浄な空気が満たされて、アリシア王国全体を覆っていた重苦しい気配が掻き消えていった。
朝日が昇る。雨に濡れたマーテルの髪が、朝日の輝きに照らされ、美しい女性騎士そのものと思わせる出で立ちを、サキ少尉とサナリー王女は見て感じていた。
空は青く澄み渡り、清浄で澄み切った空気が王都全体に広がっていった。
「そこに居るのは、サナリーか?」
不意に声が聞こえた。アロダント第二王子の方からだった。
三人はアロダント第二王子の元へと駆け寄る。
「アロダント、一体何があったのです?」
サナリー王女が聞くと、アロダント第二王子はボロボロの状態で、息も絶え絶えといった様子で答えた。
「おお、………サナリー、暫く見ぬうちに大きくなったな、母上の面影があるぞ………
長く、そして悪い夢を見ていたかの様だ………。」
「アロダント?」
「兄上は何処だ? 姿が見えぬが………私は、もう、助からんのであろう、自分の体の事は自分で解る。私がこの様な状態だという事は、お主達に何か迷惑を掛けた様であるな、
………すまなかった、許せ………。」
「もう、良いのです兄上、終わったのです。」
「………嗚呼、心地よい風が……吹いて……おる………な………………。」
アロダント第二王子は、力無くうなだれた。
「兄上? アロダントお兄様ぁぁぁ………………。」
こうして、アリシア王国を揺るがした一連の「お家騒動」は、幕を下ろした。
王城 玉座の間――――
「おい! ジャズ、見てみろ、隊長だ! 隊長達が居るぞ!」
ニールはテラスから下を見ている様だ。その隣にはダイサーク様も居る。
「ああ、そいつは良かったな。俺は動けん。」
ニールはテラスから下を見ながら、ダイサーク様と一緒になって手を振っていた。
やれやれ、元気だな、二人共。
{キャンペーンシナリオをクリアしました}
{経験点6000点を獲得しました}
{ショップポイントを1000ポイント獲得しました}
{スキルポイントを10ポイント獲得しました}
{キャンペーンクリアボーナスとして勇気の腕輪を得ました}
おや? 頭の中でいつもの女性の声が聞こえたぞ。そうか、どうやらキャンペーンとかいうのをクリアしたみたいだな。
沢山経験点が貰えたよ。やったぞ。
「ああ~~~、しんどかった~~。もうこういうのはホント勘弁して欲しいよ。まったく。」
こうして、今回のサキ小隊の任務も、無事に達成できたのであった。
大変な任務だったな、お疲れ自分。
それと、義勇軍任務も何とかなったか。やれやれ。
朝日が玉座の間を明るく照らしていた。
アリシア王国 辺境の村――――
「お家騒動」から翌日、まるでバケツをひっくり返した様な、どしゃ降りの雨が降る夜の事である。
この村の小さな家に、母一人娘一人の家庭が住んでいました、今は夕食時である。
「レイチェル、美味しい?」
「うん、おいしいよ。」
「ごめんなさいねレイチェル、ドレッシングの掛かってないサラダと、塩の味しかしないスープで。」
「ううん、お母さんの作ってくれた料理だから最高よ。」
「ありがと、今日は作物があまり売れなかったのよ。」
「心配しないでお母さん、私が成人したら町で働いて仕送りをするから。」
「ふふ、ありがとうレイチェル、母さんレイチェルのそう言う前向きなところ好きよ。」
どこにでもある、静かな食卓の風景である。
だが、ドンドン、というドアを強く叩く音が部屋に響いた。
「こんな雨の夜に誰かしら? レイチェルはご飯食べちゃってて。母さん見てくるから。」
「護身用の武器を忘れないでね。」
「解ってるわよ。」
玄関の横に立てかけてある棍棒を掴み、母親はドアの向こうに居るであろう人物に声を掛けた。
「どちら様ですか?」
ドアの向こう側から返事が返って来る。
「夜分遅くに失礼いたします。城の使いの者です。カタリナ様に急ぎお伝えしなければならない事があります。」
城の使いと聞いた母親は、少し不機嫌になる。
「今更王宮が私に何の用ですか?」
「カタリナ様、まずはこのドアをお開けください、話が出来ませぬ。」
母親は仕方なく玄関のドアを開ける。そこに居たのは外套を纏った一人の男だった。
「カタリナ様、お伝えしたき事があります。」
「聞きましょう、何かしら?」
男は玄関から部屋の奥にいるであろう娘を見て、こう言った。
「あのお方が、レイチェル王女ですね。」
「………娘が何か?」
「女王になって頂かなくてはならなくなりました。」
「女王? 一体何です?」
「この国には王が必要なのです。」
「ちょ、ちょっと待ちなさい、弟のダイサークが居るではないですか。」
「ダイサーク様は、王位継承権を放棄なさいました。自分には相応しくないと仰られて。」
「ええ? な、なら、アロダントはどうなのです。」
「アロダント第二王子様は、…………お亡くなりになりました。」
「な、なんですって!?」
「馬車が用意してあります、支度をお急ぎ下さい。カタリナ様、それと、レイチェル様も。」
「一体、王城で何があったのです? 妹のサナリーだって居るではありませんか。」
「サナリー様は、女神教会に入る際、既に王位継承権を放棄されております。もう王族で残っておいでになられているのは、カタリナ様のご息女のレイチェル様ただお一人だけなのです。」
「だ、だからと言って、急にそんな事………………。」
「兎に角、お仕度をお急ぎ下さい、詳しい話は馬車で致します、私は馬車で待機しております。お早く。」
この突然の知らせに、第一王女カタリナは、ただ、困惑するしかなかった。
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