76 / 222
第75話 アリシア動乱 ⑭
しおりを挟むダイサーク様とアロダント第二王子の決闘は、もう決着が着いた様なものだ。
アロダントの片腕が切り飛ばされ、膝から崩れ落ち、戦意を失っている。もうここまでの様だ。
ダイサーク様はアロダント第二王子と自分は王様の本当の子ではないと言った。
この事態を、只々見届けるしか今の所無さそうだ。
ダイサーク様が語り、アロダントは黙って聞いているという状況だ。ダイサーク様は更に続ける。
「俺もお前も、王に相応しくないと言ったよな、それは、俺達には王族、王家の血が流れていないという事なのだ。」
「………。」
アロダントは黙って聞く姿勢を貫いている。更に言葉は続く。
「母上は、恋多き大人の女性であった、他にも関係を持った者もいるやもしれん。母上は伯爵家の人間である。そして、俺の父親は男爵家の者らしい、そしてアロダント、お前は騎子爵家の者が本当の父親なのだと、母上から聞いた。」
「………。」
「つまりな、アロダントよ、俺達には王家の血が流れていないのだ。だから王になってはならんのだ。」
「………。」
「国王である父上の本当の子は、カタリナ姉上と妹のサナリーだけなのだ。姉上は嫁がれていったので、残されたのは、もう妹のサナリーだけなのだ。サナリーを王に就け、我等はそれを支えねばならんというのに、お前ときたら妹を手に掛ける様な事をしよって、………このたわけが………。」
「………。」
「この事実を知っている者は、母上とそのお付きの侍女だけである。母上が亡くなる前に、俺はその事を聞いたのだ。母上本人からな。」
「………。」
「だからな、アロダントよ、俺達兄弟は王になってはならんのだ。ならんのだよ。この決闘には何の意味も無い。もう終わりにしよう。俺達が争う必要など無いのだ、アロダントよ。」
「………。」
「今にして思えば、カタリナ姉上には母上の血が流れているのやもしれんな、隣国へ嫁ぎに行く前に、市井の男との間に子を産んでおるからのう。」
「………。」
そして、しばしの沈黙が流れる。それを破ったのはアロダントの笑い声だった。
「フフッ、フフフフ、フハハハハ………。」
アロダントは気がふれた様に笑い続けた。そして。
「ふざけるなあああ! 今更そんな事信じられるとでも思ったのかああああ!」
「事実だ! 受け入れよ、アロダント!」
「黙れええええええええええええーーーーーーー!!!」
そこからは、まるでスローモーションを見ているかの様な錯覚を覚えた。
叫びと共に、アロダントは腰にある刺突剣のレイピアを引き抜き、構え、前方に突き出した。
ダイサーク様はロングソードを鞘に納めているので、対処がワンテンポ遅れた。
アロダントは立ち上がり、一歩前へと踏み込む。
レイピアがダイサーク様の胸に向かって突き出された。
俺は体が痺れて身動き出来ない。
ドニはダイサーク様の後方に居たので、対処が出来ない。
動いたのはニールだ、背中の大剣を引き抜き、バスタードソードを上へ振り上げ突進。
お二人の間に割って入る様に行動していた。
そして、ニールの大剣が振り下ろされ、アロダントのレイピアを中程から叩き折った。
レイピアの先が、ダイサーク様の胸に突き刺さる寸でのところで折られ、そのレイピアの先端がアロダントの顔目掛けて、縦回転しながら飛び、そしてアロダントに当たる。
「ぎゃああああああああーーーーーーーー!!」
アロダントの片目に、自分のレイピアの剣先が突き刺さり、その場で体制を崩した。
「アロダント!?」
ダイサーク様は一瞬、何が起こったのか、解らない様子だった。
「うううう、私は、私はこんなところで………。」
アロダントはフラフラとした足取りで歩き出し、何かを求めてテラスの方へゆっくりと歩き出した。
「私が王だ、私が王になるのだ。」
アロダントは更にフラフラと歩き、テラスのドアを開け放つ。
「こんなところで私は終わらん、こんなところで私は死なん、こんなところで私は倒れん。」
アロダントは、そのままテラスの方へゆっくりと進む。
「私が王になり、愚民共を排除し、スラムを焼き、貴族だけの社会をつくり、そして………。」
アロダントはテラスの柵にもたれ掛かり、ピタリと動きが止まる。
「私は王になる、王になって、私は、王に、なって………。」
アロダントは直立不動の態勢になり、ピタリと動かない。そして………。
「私は………王になって………何がしたかったのであろうか………。」
その言葉を最後に、アロダントはテラスから転落し、落下していった。
地表までかなりの高さがある、無事では済まない。
「アロダント、………何故もっと早く気付かん………………愚か者が………………。」
静寂に包まれた玉座の間にて、ダイサーク第一王子の呟きだけが、静かに響いた。
王城 庭付近の上空――――
サキ少尉とサナリー王女、それとペガサスナイトのマーテルの三人は、王城の上空へと辿り着いた。
マーテルが上から地上を観察し、状況を見ている。
「おかしいですね、城の警備の者が一人もおりません。どうなっているのでしょうか?」
これに答えたのが、サナリー王女だった。
「おそらくですが、アロダントの指図ではないかと思います。」
サキ少尉が聞く。
「どういう事なのでしょうか? サナリー様。」
「おそらく、アロダントは自分の息のかかった者だけを城に残し、それ以外の者はどこか一か所に集めて監禁しているのではないかと、自分のやる事を邪魔されたくないのかもしれませんね。」
「第二王子アロダントのやる事、で、ありますか? それは一体………。」
「………それはわたくしにも解りません、ですが、アロダントの罪は裁かねばなりません。参りましょう。」
「「 はい! 」」
三人は庭に降り立ち、辺りを見回す。
「やはり誰も居ない様です。王城の中もそうなのでしょうか?」
サキ少尉が聞くと、マーテルは直ぐ近くのドアへと向かい、扉を開けようとした、だが。
「これは、どうやら鍵を掛けられている様ですね。おそらく他の扉でも鍵が掛かっているかもしれません。」
ここで、サナリー王女は上を見上げ、テラスの方を見た。
「ここはやはり、テラスから王城へ入るしかないかもしれませんね。」
「テラスからですか。」
三人がテラスの方を見上げていると、丁度そこへ、「何か」が落ちてきた。辺りは暗く、よく見えなかったが、何かが落ちてくる事だけは見えた。
「危ない!」
「サナリー様、お下がりを!」
二人がサナリー王女を庇い、グイっと後ろへと引いた後、ドサリと何かがサキ少尉の目前に落ちた。
「ひゃあ!? な、何!?」
サキ少尉はびっくりして声を上げた。だが、落ちてきたものには当たらなかったので、大事には至っていない。
「大丈夫ですか、サキ少尉!」
「は、はい。何とか。」
三人は、落ちてきたものが何かを確かめる為、恐る恐る近づき、確かめる。そこには。
「こ、これは!? アロダント第二王子!?」
サキ少尉が声を出し、他の二人にも知らせる。
「た、大変です! テラスから落ちてきたのは、アロダント第二王子です!?」
これを聞き、二人も近づく。
「ほ、本当だわ!? アロダント第二王子です! サナリー様!」
「な、何故アロダントがテラスから落ちてくるのです!? テラスというと、この上は確か、玉座の間だった筈。一体何があったというのですか?」
三人は困惑し、事態がどう変化したのか理解できなかった。
だが、ここで思わぬ事が起こりだした。アロダント第二王子の体から、青黒い半透明な「何か」が剥がれ始めた。
「な、何ですか!? これは?」
「お下がりを! 何か様子が変です!」
マーテルが言うと、その「何か」はみるみるうちに形を成し、その姿を現した。
それは、とてもおぞましい姿をしており、人型だが異形の形をしていた。
見る者を恐怖させる感覚を覚えた三人は、それを、何か良くない事だと感じていた。
見るからに邪悪な存在に、三人は恐怖し、言葉を失った。
シャイニングナイツのマーテル一人だけが、それの正体に気付き始めていた。
「ま、まさか!? これは!?」
46
あなたにおすすめの小説
おじさんが異世界転移してしまった。
お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか?
モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。
異世界に飛ばされた人見知りの僕は、影が薄かったから趣味に走る事にしました!
まったりー
ファンタジー
主人公は、人見知りな占いが大好きな男の子。
そんな主人公は、いるのか分からない程の影の薄さで、そんなクラスが異世界に召喚されてしまいます。
生徒たちは、ステータスの確認を進められますが、主人公はいるとは思われず取り残され、それならばと外に1人で出て行き、主人公の異世界生活が始まります。
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
オレの異世界に対する常識は、異世界の非常識らしい
広原琉璃
ファンタジー
「あの……ここって、異世界ですか?」
「え?」
「は?」
「いせかい……?」
異世界に行ったら、帰るまでが異世界転移です。
ある日、突然異世界へ転移させられてしまった、嵯峨崎 博人(さがさき ひろと)。
そこで出会ったのは、神でも王様でも魔王でもなく、一般通過な冒険者ご一行!?
異世界ファンタジーの "あるある" が通じない冒険譚。
時に笑って、時に喧嘩して、時に強敵(魔族)と戦いながら、仲間たちとの友情と成長の物語。
目的地は、すべての情報が集う場所『聖王都 エルフェル・ブルグ』
半年後までに主人公・ヒロトは、元の世界に戻る事が出来るのか。
そして、『顔の無い魔族』に狙われた彼らの運命は。
伝えたいのは、まだ出会わぬ誰かで、未来の自分。
信頼とは何か、言葉を交わすとは何か、これはそんなお話。
少しづつ積み重ねながら成長していく彼らの物語を、どうぞ最後までお楽しみください。
====
※お気に入り、感想がありましたら励みになります
※近況ボードに「ヒロトとミニドラゴン」編を連載中です。
※ラスボスは最終的にざまぁ状態になります
※恋愛(馴れ初めレベル)は、外伝5となります
最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~
華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』
たったこの一言から、すべてが始まった。
ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。
そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。
それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。
ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。
スキルとは祝福か、呪いか……
ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!!
主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。
ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。
ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。
しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。
一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。
途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。
その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。
そして、世界存亡の危機。
全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した……
※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~
甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって?
そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる