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第197話 廃洋館探索任務 ⑥
しおりを挟む男爵とのお目通りが終わり、俺達は今、最初に通された部屋へと集まっている。
何故か門番のスケルトンも一緒だ、メイドゴーストがお茶を淹れてくれている。
「では、報告を聞こうか。」
サキ隊長が指示し、ソファーに腰を掛ける。まだ使える家具のようだ。
頑丈だな、まあそんな事よりジョッシュ男爵から聞いた話を皆にも聞かせた。
ニールが唸りつつ相槌を入れる。
「う~~ん、二百年前ねえ。俺達とは関係が無さそうだな。」
「そりゃそうさ、だがヤーカーラムという奴には要警戒だ。」
俺が返事をし、リップが更に聞いて来る。
「でもさ、二百年も前の人だよ。生きている訳が無いよ。」
解っている、だが用心に越した事はない。相手は「ラングサーガ」の裏ボスだ。
今は関係無さそうだが、いつ現れるか解らない以上、油断はできん。
まあ、この件は今は保留だな。他の事を話し合おう。
「サキ隊長の方は如何でしたか?」
俺が訊ねると、隊長は淀みなく答えた。
「ああ、女性の生存者は居たぞ。何でも山菜を採りに森に入ったところ、モンスターに襲われたらしいのだが、そこのスケルトンに助けて貰ったらしい。で、しばらくの間この屋敷の厨房で料理を作っているそうな。」
ここで門番のスケルトンが話に割って入って来た。
「ああ、俺が助けて保護した。中々可愛い女の子だったからな。門番冥利に尽きるってなもんだ。わっはっは。」
なるほど、こいつも役に立った訳か。中々やるじゃないか。
「村娘でしたか、生きていてホッとしましたね。」
「ああ、村人たちが心配していると伝えたが、恩を返すまで暫くここで働くそうだ。」
ふむ、村娘の保護は出来そうだな、あとはこの屋敷の問題をどう解決していこうか。
確かナナ少尉が策があると言っていたが、さて、どういう事かな?
舞踏会を開くそうだが、そこでジョッシュ男爵とその思い人、カリーナ嬢を何とか結ばせる事らしいいが、上手くいくかな?
「ナナ少尉、俺達が男爵から聞いた話の対策として、舞踏会を開くそうですが………。」
「ええ、わたくしの読みが正しければ、今もカリーナさんはジョッシュさんに想いを寄せていると見ましたわ。ですから、まずお二人をくっつけてしまいましょう。」
「了解です、ですがもし上手く行かなかった場合、自分が「ターンアンデッド」の魔法のスクロールを所持していますので、いざという時はこれを使います。」
「解りましたわ、そちらはジャズ少尉にお任せ致しますわ。」
よし、そんじゃあ舞踏会の件はこれでよしとして、あとは………………。
「ナナ、吸血鬼の件はどうする?」
「そちらは情報が少ない状況ですので、後回しですわ。」
「そうだな、村娘を保護していれば、自ずと姿を見せるかもな。」
ふーむ、バンパイアの問題か、確かに若い女性の血を求めてやって来る可能性はありそうだ。
「隊長、外に居る冒険者たちにもこの作戦に参加させましょうか?」
俺が提案すると、サキ隊長が腕を組み唸っている。
「うーん、そうだな。舞踏会は参加人数が多い方がいいかもな。」
「では、俺が行って伝えてきます。」
「頼む、ジャズ。」
俺は一旦その場を離れ、外へと出てビバークしている冒険者たちの下へ行き、状況と今後の行動方針を伝えた。
「舞踏会ですか? なにもこんなボロボロの屋敷で開かなくてもよさそうなもんですが。」
「そう言わずに、参加だけでもして下さいよ。あと、村娘の事はこちらで保護出来そうなので、あなた方は基本ここで待機していただき、時間になったら屋敷へ来てください。頼みますよ。」
冒険者たちは渋々という様子ではあったが、了承してくれた。よし、あとは夕方になるのを待つばかりだな。
客間まで戻り、みんなと合流して時間が来るのを待つ事にする。
その間もメイドゴーストや屋敷の遣いらしきスケルトンが次々と動き出し、舞踏会の準備を進めているようだ。
傍から見たらアンデッドモンスターが動き回っているので、正にお化け屋敷然とした様子ではある。
が、この人たちは元々生きていたヒューマンだった訳だし、何かの拍子で成仏するかもしれないので、まあ、様子見だな。
アンデッドモンスターがせっせと働いている様子は、ちょっとシュールだ。
そうこうしている内に辺りは暗くなり、屋敷内に明かりが灯り準備完了のようだ。
俺達はこのままの恰好だが、アンデッドモンスターたちはボロボロの服ながらもおしゃれして、舞踏会会場へ集まり始めた。
冒険者たちはまだ来ていないようだ、まあ、気後れしているのかもな。
ジョッシュ男爵が部屋の中央へ、カリーナ嬢は壁の花になっているようだ。
だが、カリーナ嬢もここぞとばかりの衣裳を身に着けていた。やはりゴーストになっていても女性なんだな。
ここでジョッシュ男爵が舞踏会の開催を宣言し、拍手が鳴り、みんな思い思いの相手とペアを組み踊りだした。
中々本格的で、音楽の楽器演奏まで奏でている。
俺達アリシア軍からの参加者は、料理に舌鼓を打ち、パクパクと食べる。
「うん、中々美味い飯だ。」
「ホント、あの村娘さんが作った料理はどれも美味しいです。」
俺とメリー伍長で食事を堪能している横で、ニールとリップが何やら一緒に踊ろうと言い合っている。
俺はニールとリップに言う。
「二人共踊ってきたらいいじゃねえか、なに遠慮してんだ?」
「い、いや、俺さ、踊れねえんだよ。」
リップがニールの手を引き、半ば強引に踊ろうとしている。
「ステップなんか適当でいいのよ、ほら! 私達もいくわよ!」
ニールは強引に連れられ、大広間へと向かって行った。
「青春っていいねえ~。」
「ジャズさんは踊らないですか?」
「俺はそういうのいいんで。」
「そうですか、でもなんか壁の花になっているナナ少尉がこちらを見て物欲しそうな顔をしてるです。」
勘弁してくれ、俺は踊れないし、そういうのは柄じゃない。
サキ隊長は門番スケルトンに誘われダンスをしている、サキ隊長は意外に踊れるみたいだ。
さて、この舞踏会の真の目的、ジョッシュ男爵とカリーナ嬢はどうなったかな?
辺りを見回すと、ジョッシュ男爵はカリーナ嬢を見つめているだけ、一方のカリーナ嬢は壁の花になっている。
仕方ない、男爵に喝を入れて来るか。
俺はジョッシュ男爵の下まで行き、会話をする。
「男爵殿、ここでカリーナ嬢を誘わないでどうするんですか? 何の為に舞踏会を開いたのですか?」
「い、いやあ、分かってはいるのですが、中々勇気が出なくて。」
「いいから、カリーナ嬢をダンスに誘ってきてくださいよ。頼みますよホント。」
「う、う~~ん。しかしねえ。中々………………。」
「断られる筈が無いんですから、誘って来て下さい。」
「で、でも、いざカリーナを前にすると緊張してしまって。」
ああもう! 煮え切らないなあ! さっさと誘えばいいのに。
「ほら、男爵様、カリーナ嬢は壁の花になっていますよ。貴方から誘われるのを待っているのです。早く行って来て下さい。」
「う、うーん、しかし………………。」
「さっさと行けって!!」
痺れを切らし、つい男爵のケツを蹴っ飛ばした。
それが効いたのか、「おっとっと」と前に進みだし、ジョッシュはカリーナの前まで進み出た。
「や、やあカリーナ。会えて嬉しいよ。」
「はい、私も嬉しいです。」
「ええ~と、舞踏会なんだ、だから、だからさ、僕と一緒に………………。」
よし、いいぞその調子。
そう思った時だった、突然扉が乱暴に開け放たれ、三人の冒険者たちが入って来た。
「ここか、舞踏会をやっている場所ってのは?」
何だ? 無作法な奴等だな、今いいところだったのに。
冒険者たちはキョロキョロと辺りを見回し、ある一人の女性を指差した。
「居たぞ! あの女だ!!」
それは、保護した村娘の事だった。今はサキ隊長とナナ少尉が護衛している。
「その女の血を吸わせろおおおおおおお!!!」
な、なに!? こいつら、まさか!!
「へっへっへ、そうさ!! 俺達が吸血鬼だったのさ!! さあ! その女の血を吸わせろ!!! もう辛抱堪らんぜ!!」
おいおい、まったく。どうなってんだか。
折角のチャンスを、こいつ等は。
吸血鬼は三人、いずれも冒険者を装った奴等だったって訳か。
やれやれ、上手く利用されたか、俺達を騙すとはやってくれる。
「手加減はできんぞ、覚悟ぐらいはしろよ!」
さて、おっぱじめますか!!
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