204 / 222
第203話 フィラの場合 ②
しおりを挟むフィラの肩に手を乗せた大司祭が、呼び止めようとした途端だった。
いきなり大司祭の手が白い炎に包まれ、焼け付いた。
手を庇う大司祭、一方フィラは何が起きたのか理解できず、呆然としていた。
大司祭の側近二人の神官戦士も、慌てていて状況を理解できずにいた。
「まさか、こやつ………「聖撃」のスキル持ちか!! ええーい、厄介な!」
大司祭は誰にも聞こえない様に一人零す。
憑りついて
そして目をクワッと見開き、フィラを指差し大声で怒鳴り散らす。
「こやつは悪魔だ!! 悪魔が憑りついておる!! 儂の身体に火傷を負わせたのが何よりの証拠だ!!! 即刻この者を取り押さえよ!!!」
事態を静観していた側近も、大司祭の言葉に我を取り戻し、直ぐにフィラを取り押さえる。
「大人しくしろ!!」
「抵抗は無駄だぞ!!」
二人の神官戦士に取り押さえられ、フィラは成すすべなく床に抑えられた。
「ま、待って下さい! 私はそのような者ではありません!」
「黙れ!! 悪魔は言葉巧みに我等を騙すのだ! 牢屋へ連れて行け! その後は聖なる炎で火刑に処してやる!!」
フィラは大司祭の放った言葉に耳を疑い、自分は悪魔などではないと懇願する。
「違います! 私は悪魔ではない!!! 何かの間違いです!」
フィラの力ならば、二人ぐらいの男を簡単に振り解く事は容易いのだが、相手は神官戦士、迂闊に手出し出来なかった。
また、抵抗すれば誤解を招くだけだと判断し、その身を預けるのだった。
大司祭が吠える。
「その女を牢屋へ連れて行け!」
「はい!」
「さあ、大人しく来るんだ!」
フィラはシャイニングナイツの予備隊、その宿舎のロビーで大司祭たちに捕まり、牢屋へと連れていかれるのだった。
予備隊の宿舎から出てきたフィラや大司祭たちを見ていた者がいた。
エストールの門番を務めていたリアは、怪訝に思いながらもフィラが大司祭に何やら嫌がらせでもされたのだと思い、予備隊宿舎のロビーに向かった。
そして、そこで聞いたのは信じられない様な事だった。
「一体何が起きたの?」
リアは受付に質問し、一部始終を見ていた受付嬢はリアに説明した。
それを聞いたリアは、いまだに信じられなかった。
自分と良い勝負をしたあのアマゾネスが、まさか悪魔に憑りつかれているだなんて。
「何かの間違いでは?」
「いえ、確かに大司祭が女性の肩に手を触れた瞬間、白い炎が大司祭様の手を包みました。この目で見ましたから間違いありません。」
「そんな………。それで、フィラは何処へ連れて行かれたの?」
「確か、牢屋へと。そのあと火刑をすると大司祭様は仰っていました。」
「火刑!!? 冗談じゃないわよ!! これ以上シャイニングナイツ候補の優秀な人材を失って堪るもんですか!!!」
実は今回の様な出来事は、これが初めてではなかった。
過去にも同じ様にシャイニングナイツを夢見た若者が、エストールの門を潜り、同じように大司祭によって処罰された事が何回もあったのだ。
その為、巫女派と大司祭派は極端に仲が悪いのである。
このままではフィラは火刑に処せられる、何としても阻止しなくてはと思うリア。
リアは考えを巡らせ、どうにかしてフィラの火刑を阻止出来ないかと画策するのだった。
一方、大司祭サイドは。
「まさか、本当に聖撃のスキル持ちが居たとはな。」
「しかし、これで奴等の戦力は削げます。」
「解っておる。ええーい、忌々しいシャイニングナイツめ! これ以上力を付けさせる訳にはいかんな。」
神殿の廊下を闊歩する大司祭とその側近、小声ではあるが、きな臭い会話をしている三人はそこで立ち止まる。
「直ぐにでも火刑をしたいところだが、シャルロットあたりから嗅ぎ回られるのも面倒だ。どうにかして戦乙女隊の奴等を一斉に排除せねばな。」
「はい、しかし事は慎重に運ぶべきかと。」
「わかっておる! 負の想念も溜まりつつある。もう間も無くだ。」
「おお! では?」
「うむ、三日後だ、三日後に火刑を執り行う。これ以上シャイニングナイツを付け上がらせる訳にはいかんからな。わっはっはっは。」
笑いがこだました廊下で、大司祭は二ヤリと薄汚い笑みを湛えるのだった。
「お前達は火刑の準備をせよ、急いでな。」
「はい。」
「但し、くれぐれもシャルロットに気取られるなよ。よいな?」
「はい、お任せを。」
そして、フィラは………………。
「きっと、何かの間違いです。」
鎖に繋がれ、フィラは項垂れていた。
「私が悪魔? そんな馬鹿な………………。」
両手を鎖に吊るされ、フィラは抵抗する気も起きなかった。
「私は私です、きっと何かの間違いです。直ぐに誤解だと解る筈です。」
瞳を閉じ、ゆっくりと深呼吸をして、フィラはある人物を瞼の裏に思い浮べるのだった。
「嗚呼、ジャズ様。ご主人様。私は何も間違ってはいませんよね?」
気を落とすフィラだったが、そもそも、フィラにスキルブックの「ホーリーインパクト」を渡したのはジャズであった。
そのスキルの書を使い、フィラは「聖撃」のスキルを習得したのだったが、それを解る者はジャズぐらいだろう。
逆に言えば、「聖撃」によってダメージを負った大司祭は邪悪な存在だと言えるのだが、大司祭は巧みに素性を隠し、自身の派閥を拡大させ、巫女に牽制をするのだった。
なので、これ以上巫女側に戦力が行く事を良しとしていない大司祭側は、フィラを亡き者にしようと動いたのだった。
「私は、悪魔では、無い。悪魔では無い!!!」
フィラは自分に言い聞かせ、正気を保とうと必死だった。
「誤解は解ける、きっと、私はジャズ様との約束を果たす。」
俯きながらも、フィラは気丈に振舞い、自身の無実を訴えるのだった。
「私は悪魔ではない! 出しなさい! 誤解です! 出しなさい!」
しかし、フィラの言葉は、空しく地下牢に響き渡るだけだった。
セコンド大陸中央部 エストール大神殿前の門――――
「うわあ~~~、凄い立派な建物だなあ~~~。」
「来て良かったわ~~~。」
「一生に一度は訪れたい所っすからね、エストール大神殿は。」
田舎者丸出しで声を上げる一団があった。
「一応さ、遊びに来た訳じゃないんだからさ。」
「解ってるわよジャズ、義勇軍会議に出席する為に来たんでしょ。私達はその護衛。弁えてますって。ああ、凄い壮観な眺めね~~。」
姉御が二人に言う、中央の広場を指差して。
「二人共、あそこをよく見て、三柱の女神様の像が見えるでしょう。」
「あ! ほんとだ。すげーー。」
「流石総本山、ご利益がありそうよね。」
見ると、三柱の女神像が聳え立っていた。
「中央にあるのがアルナ様、右にあるのがジュナ様、そして左にあるのがエキナ様の像よ、中々の大きさでしょ。」
確かに、全長20メートルぐらいはありそうな、立派な像だった。
「ガーネット、ラット君、そろそろ行くよ。隊長達や皆はもう先に門を潜っているから。」
「あ、待って。今行くから。」
「置いてかないで下さいっすよ~~~。」
ジャズ達一行が、エストール大神殿に到着したのだった。
20
あなたにおすすめの小説
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた
巫叶月良成
ファンタジー
「異世界転生して天下を統一したら元の世界に戻してあげる」
大学生の明彦(あきひこ)は火事で死亡した後、転生の女神にそう言われて異世界転生する。
だが転生したのはなんと14歳の女の子。しかも筋力1&武器装備不可!
降り立った場所は国は三国が争う中心地の激戦区で、頼みの綱のスキルは『相手の情報を調べる本』という攻撃力が皆無のサーチスキルというありさま。
とにかく生き延びるため、知識と口先で超弱小国オムカ王国に取り入り安全を確保。
そして知力と魅力を駆使――知力の天才軍師『諸葛孔明』&魅力の救国の乙女『ジャンヌ・ダルク』となり元の世界に戻るために、兵を率いたり謀略調略なんでもして大陸制覇を目指す!!
……のはずが、女の子同士でいちゃいちゃしたり、襲われたり、恥ずかしい目にあわされたり、脱がされたり、揉まれたり、コスプレしたり、男性相手にときめいたり、元カノ(?)とすれ違ったりと全然関係ないことを色々やってたり。
お風呂回か水着回はなぜか1章に1話以上存在したりします。もちろんシリアスな場面もそれなりに。
毎日更新予定。
※過去に別サイトで展開していたものの加筆修正版となります。
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜
仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。
森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。
その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。
これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語
今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ!
競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。
まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。
異世界に飛ばされた人見知りの僕は、影が薄かったから趣味に走る事にしました!
まったりー
ファンタジー
主人公は、人見知りな占いが大好きな男の子。
そんな主人公は、いるのか分からない程の影の薄さで、そんなクラスが異世界に召喚されてしまいます。
生徒たちは、ステータスの確認を進められますが、主人公はいるとは思われず取り残され、それならばと外に1人で出て行き、主人公の異世界生活が始まります。
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
ダンジョン菌にまみれた、様々なクエストが提示されるこの現実世界で、【クエスト簡略化】スキルを手にした俺は最強のスレイヤーを目指す
名無し
ファンタジー
ダンジョン菌が人間や物をダンジョン化させてしまう世界。ワクチンを打てば誰もがスレイヤーになる権利を与えられ、強化用のクエストを受けられるようになる。
しかし、ワクチン接種で稀に発生する、最初から能力の高いエリート種でなければクエストの攻略は難しく、一般人の佐嶋康介はスレイヤーになることを諦めていたが、仕事の帰りにコンビニエンスストアに立ち寄ったことで運命が変わることになる。
封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する
鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。
突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。
しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。
魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。
英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる