おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。

お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)

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第202話 フィラの場合 ①

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 エストール大神殿の門前に、一人の女性が立っていた。

彼女の名はフィラ、ジャズとの運命的な出会いを果たしてここまでやって来た。

「やっとここまで辿り着きましたか、随分と時間が掛かってしまいましたね。」

 アワー大陸から船に乗り、セコンド大陸中央部に位置するエストール大神殿まで到着した。

 実際かなりの時間を要したのには訳があるのだ。

それは船旅の途中で、フィラはクラーケンと相対した。

セコンドの港町に到着早々、殺人犯の濡れ衣を着せられた。

また、ある犯罪集団を壊滅させたりなど、中々の大冒険だったのだ。

しかし、ようやくここまで辿り着くことに至ったので、フィラは満足していた。

「実に充実した日々でしたね、旅も悪くはありませんね。」

荷物を背負い直し、フィラはエストール大神殿の門を入ろうと進み出た。

しかし、ここで待ったが掛かった。門番を務める女性がフィラを引き留めたのだ。

「ちょっと待ちなさい、貴女、今日は観光ですか? それとも参拝ですか?」

門番の女性に呼び止められ、フィラは答える。

「いえ、そのどちらでもありません。私はシャイニングナイツに入隊する為にここまで来ました。」

フィラの答えに門番の女性は溜息をつき、辟易とした表情で答える。

「居るのよねえ~、こういう手合いの人が。ちょっと戦えるからって調子に乗ってここへ来る女性がさ。」

フィラは相手の門番を確認した、中々強そうではある人だと認識できる。

 ただ立っているだけなのに、まず相手との距離、多方向からの不意打ちからの警戒、そして手に装備されている槍、その攻撃範囲と間合いの絶妙な位置。

フィラは、この人は出来る人だと確信した。

「私はシャルロット隊長からの推薦状を頂いています、決して怪しい者ではありません。」

「それはそうでしょう、ここへ来る人は大抵参拝か観光ぐらいだし、そして、貴女の様に聖騎士隊への志願者もやって来るわ。」

そして、話しながら門番の女性はフィラにゆっくりと近づく。

「ねえ、何で私みたいな門番が居ると思う?」

「それは、モンスターや賊からの進入を防ぐ為では?」

「それもあるけど、正解は、貴女のような勘違いしちゃってる人の鼻をへし折る為よ。」

「え?」

フィラは一瞬、何を言われているのか理解出来なかった。しかし、次の瞬間。

「シッ!!」

門番の女性は突然、槍をフィラに向け突き出してきた。

距離がまだ離れているにも関わらず、槍の攻撃範囲は意外なほど伸びてきた。

「 !!? 」

しかし、フィラもここまで経験を積んできた戦士である。

 寸でのところで槍を躱して接近し、手に持ったバトルアックスを振り、門番の首元へ寸止めして、二人は動きを止めた。

門番の女性は不敵に笑う。

「へえ~~、私の初撃を躱すとはやるじゃない。」

フィラも笑みを湛える。

「ですが、次の二撃目には対処出来たかどうか。」

門番の女性の槍は、石突きの二手目を放つ寸でのところで止まっていた。

「いやいや、私の首が飛ぶところだったわよ。」

対してフィラも、斧を振り相手の首元へ沿わせていた。

 状況からいって、相打ちである。だが、実はフィラはまだ全力では無かったのだが、それは言わぬが花であろう。

「合格よ、それに貴女、私と互角とは気に入ったわ。私はレア。あなたの名前は?」

「フィラと申します、よろしく。」

「おっけーフィラ、シャイニングナイツになりたいのよね。だけど戦乙女隊はそれこそ一騎当千の強者ばかりよ、まずは予備隊から始まるの。いい?」

「はい、私もいきなりシャイニングナイツになれるとは思っていません。」

「結構結構、わかってるじゃない。私はここで門番をしてるけど、同時に新しくやって来た候補を見極める事もしてるのよ。貴女は合格よ、さあ、中へどうぞ。」

「ありがとう、レア。」

 お互いに笑顔になり、相手を称え合ってから打ち解ける二人。フィラは早速友人が出来たみたいだと思うのであった。

「あ! でも気を付けて、エストールの中には嫌な奴も居るから注意してね。特に大司祭とか。」

「大司祭様? 何があるのですか?」

フィラが尋ねると、レアは苦虫を噛み潰した様な顔をして答える。

「神官戦士を束ねる大司祭と、私達シャイニングナイツを束ねる巫女様とはね、ハッキリ言って仲が悪いのよ。特に大司祭が巫女様に余計なちょっかいを出したり。兎に角気を付けなさいよ。」

「解りました、気を付けます。」

どうやらエストール大神殿といっても、一枚岩ではなさそうだと思うフィラだった。

 派閥争いとか、力関係とか、何かとは解らないが、仲が悪いという事を認識したフィラ。

あまり大司祭には近づかない方が良さそうだと思うのであった。

「フィラ、まずはシャイニングナイツの予備隊の宿舎へ向かいなさい。そこで色々と手続きして貰えるから。門から入ってそのまま進んで、右手の大きな建物が予備隊の宿舎だから。」

「ありがとうレア、早速向かいます。」

フィラはレアと別れ、門を潜り神殿へと足を入れる。

 途中ですれ違う神官とは会釈し、シスターとも会釈し、同じ予備隊らしき女性とも会釈し、右手に見える立派な建物の前まで来た。

「ここが予備隊の宿舎ですか。随分立派な建物ですね、どんな方々がいらっしゃるのでしょうか。」

荷物を背負い直し、フィラは建物の扉を開ける。

「失礼します。」

フィラが目にしたのは、大きな広い玄関ロビー、受付らしき人物、そして………。

「ん? 誰だ、貴様は?」

豪華なローブを身に着けた丸々と肥え太った男が一人、その側近らしき神官戦士が二人。

「誰だと聞いておるのだ、返事をせんか!!」

尊大な態度でフィラを威嚇してきた太った男が、大声を上げ、ロビーに響き渡る。

「私はフィラ、シャイニングナイツに入隊しに参りました。」

「フンッ、巫女のところの予備隊候補か。くだらん!」

 フィラはムッとしたが、話し方から察するに、こいつが大司祭に違いないと確信した。

「儂はここの大司祭の………………。」

「大司祭様でしたか、ご苦労様です。」

 フィラは大司祭が名乗るよりも前に言葉を被せ、話す事は無いと言わんばかりに一蹴するのだった。

「貴様………………。」

 大司祭は怒りにプルプルと震え出し、フィラを上から下まで舐め回す様に視線を向け、舌なめずりをした。

「フン、よく見れば中々良い身体つきをしておる様じゃないか。儂はこう見えて聖痕を見極める事が出来るのだよ。どうかね君、儂の部屋へ来て裸になり、聖痕を確かめさせてはくれんかね、デュフフフ。」

フィラはその提案に嫌悪感を抱き、直ぐに断った。

「お断りします。」

「デュフフ、良いのかな? その様な事を言って、儂の許可が無ければ君はシャイニングナイツになれないのだよ。」

 その言葉には、流石にフィラも頭に来ていた。大司祭が束ねるのは神官戦士、シャイニングナイツを束ねるのは巫女様、先程リアから聞いた情報である。

嘘を付いている、フィラが大司祭を信用しなくなるに十分な事であった。

 しかも、先程からいやらしい目つきで自分の身体を舐め回す様に見て来る大司祭に、フィラは心底嫌悪した。

「貴方に用はありません。私は受付へ行きます。」

「まあ待ちたまえ。」

大司祭がフィラの肩に手を置いた瞬間、それは起こった。

「ギャアアアアアアーーー!!? 焼ける!!? 手が! 手がああああ!!?」






















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