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第203話 フィラの場合 ②
しおりを挟むフィラの肩に手を乗せた大司祭が、呼び止めようとした途端だった。
いきなり大司祭の手が白い炎に包まれ、焼け付いた。
手を庇う大司祭、一方フィラは何が起きたのか理解できず、呆然としていた。
大司祭の側近二人の神官戦士も、慌てていて状況を理解できずにいた。
「まさか、こやつ………「聖撃」のスキル持ちか!! ええーい、厄介な!」
大司祭は誰にも聞こえない様に一人零す。
憑りついて
そして目をクワッと見開き、フィラを指差し大声で怒鳴り散らす。
「こやつは悪魔だ!! 悪魔が憑りついておる!! 儂の身体に火傷を負わせたのが何よりの証拠だ!!! 即刻この者を取り押さえよ!!!」
事態を静観していた側近も、大司祭の言葉に我を取り戻し、直ぐにフィラを取り押さえる。
「大人しくしろ!!」
「抵抗は無駄だぞ!!」
二人の神官戦士に取り押さえられ、フィラは成すすべなく床に抑えられた。
「ま、待って下さい! 私はそのような者ではありません!」
「黙れ!! 悪魔は言葉巧みに我等を騙すのだ! 牢屋へ連れて行け! その後は聖なる炎で火刑に処してやる!!」
フィラは大司祭の放った言葉に耳を疑い、自分は悪魔などではないと懇願する。
「違います! 私は悪魔ではない!!! 何かの間違いです!」
フィラの力ならば、二人ぐらいの男を簡単に振り解く事は容易いのだが、相手は神官戦士、迂闊に手出し出来なかった。
また、抵抗すれば誤解を招くだけだと判断し、その身を預けるのだった。
大司祭が吠える。
「その女を牢屋へ連れて行け!」
「はい!」
「さあ、大人しく来るんだ!」
フィラはシャイニングナイツの予備隊、その宿舎のロビーで大司祭たちに捕まり、牢屋へと連れていかれるのだった。
予備隊の宿舎から出てきたフィラや大司祭たちを見ていた者がいた。
エストールの門番を務めていたリアは、怪訝に思いながらもフィラが大司祭に何やら嫌がらせでもされたのだと思い、予備隊宿舎のロビーに向かった。
そして、そこで聞いたのは信じられない様な事だった。
「一体何が起きたの?」
リアは受付に質問し、一部始終を見ていた受付嬢はリアに説明した。
それを聞いたリアは、いまだに信じられなかった。
自分と良い勝負をしたあのアマゾネスが、まさか悪魔に憑りつかれているだなんて。
「何かの間違いでは?」
「いえ、確かに大司祭が女性の肩に手を触れた瞬間、白い炎が大司祭様の手を包みました。この目で見ましたから間違いありません。」
「そんな………。それで、フィラは何処へ連れて行かれたの?」
「確か、牢屋へと。そのあと火刑をすると大司祭様は仰っていました。」
「火刑!!? 冗談じゃないわよ!! これ以上シャイニングナイツ候補の優秀な人材を失って堪るもんですか!!!」
実は今回の様な出来事は、これが初めてではなかった。
過去にも同じ様にシャイニングナイツを夢見た若者が、エストールの門を潜り、同じように大司祭によって処罰された事が何回もあったのだ。
その為、巫女派と大司祭派は極端に仲が悪いのである。
このままではフィラは火刑に処せられる、何としても阻止しなくてはと思うリア。
リアは考えを巡らせ、どうにかしてフィラの火刑を阻止出来ないかと画策するのだった。
一方、大司祭サイドは。
「まさか、本当に聖撃のスキル持ちが居たとはな。」
「しかし、これで奴等の戦力は削げます。」
「解っておる。ええーい、忌々しいシャイニングナイツめ! これ以上力を付けさせる訳にはいかんな。」
神殿の廊下を闊歩する大司祭とその側近、小声ではあるが、きな臭い会話をしている三人はそこで立ち止まる。
「直ぐにでも火刑をしたいところだが、シャルロットあたりから嗅ぎ回られるのも面倒だ。どうにかして戦乙女隊の奴等を一斉に排除せねばな。」
「はい、しかし事は慎重に運ぶべきかと。」
「わかっておる! 負の想念も溜まりつつある。もう間も無くだ。」
「おお! では?」
「うむ、三日後だ、三日後に火刑を執り行う。これ以上シャイニングナイツを付け上がらせる訳にはいかんからな。わっはっはっは。」
笑いがこだました廊下で、大司祭は二ヤリと薄汚い笑みを湛えるのだった。
「お前達は火刑の準備をせよ、急いでな。」
「はい。」
「但し、くれぐれもシャルロットに気取られるなよ。よいな?」
「はい、お任せを。」
そして、フィラは………………。
「きっと、何かの間違いです。」
鎖に繋がれ、フィラは項垂れていた。
「私が悪魔? そんな馬鹿な………………。」
両手を鎖に吊るされ、フィラは抵抗する気も起きなかった。
「私は私です、きっと何かの間違いです。直ぐに誤解だと解る筈です。」
瞳を閉じ、ゆっくりと深呼吸をして、フィラはある人物を瞼の裏に思い浮べるのだった。
「嗚呼、ジャズ様。ご主人様。私は何も間違ってはいませんよね?」
気を落とすフィラだったが、そもそも、フィラにスキルブックの「ホーリーインパクト」を渡したのはジャズであった。
そのスキルの書を使い、フィラは「聖撃」のスキルを習得したのだったが、それを解る者はジャズぐらいだろう。
逆に言えば、「聖撃」によってダメージを負った大司祭は邪悪な存在だと言えるのだが、大司祭は巧みに素性を隠し、自身の派閥を拡大させ、巫女に牽制をするのだった。
なので、これ以上巫女側に戦力が行く事を良しとしていない大司祭側は、フィラを亡き者にしようと動いたのだった。
「私は、悪魔では、無い。悪魔では無い!!!」
フィラは自分に言い聞かせ、正気を保とうと必死だった。
「誤解は解ける、きっと、私はジャズ様との約束を果たす。」
俯きながらも、フィラは気丈に振舞い、自身の無実を訴えるのだった。
「私は悪魔ではない! 出しなさい! 誤解です! 出しなさい!」
しかし、フィラの言葉は、空しく地下牢に響き渡るだけだった。
セコンド大陸中央部 エストール大神殿前の門――――
「うわあ~~~、凄い立派な建物だなあ~~~。」
「来て良かったわ~~~。」
「一生に一度は訪れたい所っすからね、エストール大神殿は。」
田舎者丸出しで声を上げる一団があった。
「一応さ、遊びに来た訳じゃないんだからさ。」
「解ってるわよジャズ、義勇軍会議に出席する為に来たんでしょ。私達はその護衛。弁えてますって。ああ、凄い壮観な眺めね~~。」
姉御が二人に言う、中央の広場を指差して。
「二人共、あそこをよく見て、三柱の女神様の像が見えるでしょう。」
「あ! ほんとだ。すげーー。」
「流石総本山、ご利益がありそうよね。」
見ると、三柱の女神像が聳え立っていた。
「中央にあるのがアルナ様、右にあるのがジュナ様、そして左にあるのがエキナ様の像よ、中々の大きさでしょ。」
確かに、全長20メートルぐらいはありそうな、立派な像だった。
「ガーネット、ラット君、そろそろ行くよ。隊長達や皆はもう先に門を潜っているから。」
「あ、待って。今行くから。」
「置いてかないで下さいっすよ~~~。」
ジャズ達一行が、エストール大神殿に到着したのだった。
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