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第十章
不幸を背負う者8
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「あなたには私の力が宿っています」
「神の力が俺に?」
「全てをお話ししましょう。驚かずに聞いてください」
「俺に……関する話ですか?」
「その通りです。あなたはこの世界の全ての不幸を背負い死ぬという運命を背負って生まれてきたのです」
「全ての不幸を背負って、死ぬ……?」
「おい、それってどういうことだよ!」
想定もしていなかった言葉がラクスから飛び出してきた。
内容が理解できずに圭は思わず呆けたように言葉を繰り返した。
「幸運と不幸は表裏一体の存在で、運がいいこともあれば運が悪いこともあります。しかし幸運と不幸は平等ではないのです」
ラクスはゆっくりと説明を始めた。
「幸運があれば不幸が、不幸があれば幸運が訪れます。しかし何がなんでも幸運と不幸が同じにはならないのです。この世界において生まれてくることだけでも幸運。その時点ですでに大きく幸運が勝っているのです」
人生において幸運なこともあれば不幸なこともある。
色々な人生の人がいて色々な形の幸運や不幸があるので一概に何が良くて悪いとは言えない。
しかし生まれたことそのものが祝福されるような幸運なことである。
生まれた時点で全ての人は幸運なのだとラクスは言った。
「幸運と不幸は均衡を保つようにようできています。けれどもこの世の中は幸運が多くなるようにできています」
運が良かったことと同じだけの不幸が襲い続けると人の発展は妨げられてしまう。
そのために世界では不幸を抑えて幸運が大きくなるようなパワーバランスになっていた。
「ただそうなると世界の幸運と不幸のバランスは崩れてしまいます。言うなれば不幸のエネルギーが溜まっていくのです」
より幸運が多い世界で人々は発展を遂げてきた。
発展の影には抑制された不幸があるのだ。
「そして時に溜まった不幸は顔を出します。大きな事故、災害、あるいは戦争など多くの人を巻き込む不幸は溜まった不幸が現れた結果なのです。
こうして大きな不幸も時々訪れるのですがやはりそれだけではすべての不幸は無くなりません。相変わらず不幸は溜まり続けて……まるで風船のように破裂寸前まで来ていました」
世界的なニュースになるような不幸ですら溜まった不幸から見ればまだ微々たるものだった。
少しのガス抜きにはなっても不幸が溜まっていることに変わりがない。
「そこで古来より溜められた不幸を減らすために行われてきた行為があります。それが生贄です」
「生贄……」
「幸運を司る私の信者から不幸を背負って死んでいく存在を選び、世界の不幸をリセットするのです」
「それが……俺だというのか?」
「そうです。そうなる……はずでした」
重たい話の雰囲気を感じて暇そうにしつつもシャリンやフィーネも黙している。
「でも圭君は生きてるよね?」
「実際こうして目の前にいるもんな」
「本来ならばあなたは……生まれてすぐに死ぬはずでした。ですがあなたの両親の献身によって運命は変わったのです」
「どういうことですか?」
ここで親の話が出てくるなんて意外で圭は驚いてしまう。
「あなたが不幸を背負う者に選ばれたということはあなたの両親は私の信者だったということなのです」
信者の中から不幸を背負う者を選ぶ。
何もなく圭が選ばれたのではなく、圭の両親がラクスの信者であったから圭が選ばれたのであった。
「父さんと母さんがラクスの信者だった?」
全くもって聞いたこともない話である。
圭は夜滝のことを見たが夜滝も知らないようであった。
「昔は幸運も不幸も強く、祈ることも多く私の信者も多くいたのですが……いつしか幸運が普通がとなって私は忘れられていっていました。細々と続く幸運の信仰者の一部が圭、あなたの両親だったのですよ」
「知らなかった……」
「それもそうでしょう。二人はあなたに信仰を継がせるつもりはありませんでしたから」
ラクスはもはや忘れられた宗教である。
信仰することに特に負担はなかったけれど人知れぬ神を信仰することの大変さはあるので圭の親は自分たちでラクスへの信仰を終わらせるつもりだった。
「ですが運命とは皮肉なもので限界を迎えた不幸を発散するために圭、あなたが選ばれました。これは私の意思ではなく大いなる世界の意思なのです」
子供が普通に育ってくれればいい。
そう思っていた圭の両親であったが圭を授かったタイミングで不幸を背負う者に選ばれてしまった。
これはラクスが恣意的に選んだのではなく運命によって定められたものであった。
「あなたの両親はそれに納得せず私に祈りを捧げました。自分たちが不幸を背負ってもいい、あなただけは助けてくれと」
「父さん、母さん……」
「あなたの両親は数少ない私の信者でした。たとえあなたが私の信者にならなくとも……私にとってはあなたは大切な子も同然です。そこで私は私の全てをかけてあなたを守ることにしました」
「…………何をしたんですか?」
「私の力をあなたに与えました。幸運を司る私の力であなたに背負わされた不幸を打ち消そうと思ったのです」
信者の減ったラクスの力は弱っていた。
だがいまだに信者として真面目にラクスを信仰してくれていた圭の両親の思いに応えるべくラクスは全てを捧げた。
ラクスが持つ幸運の力を圭に与えたのだ。
「神の力が俺に?」
「全てをお話ししましょう。驚かずに聞いてください」
「俺に……関する話ですか?」
「その通りです。あなたはこの世界の全ての不幸を背負い死ぬという運命を背負って生まれてきたのです」
「全ての不幸を背負って、死ぬ……?」
「おい、それってどういうことだよ!」
想定もしていなかった言葉がラクスから飛び出してきた。
内容が理解できずに圭は思わず呆けたように言葉を繰り返した。
「幸運と不幸は表裏一体の存在で、運がいいこともあれば運が悪いこともあります。しかし幸運と不幸は平等ではないのです」
ラクスはゆっくりと説明を始めた。
「幸運があれば不幸が、不幸があれば幸運が訪れます。しかし何がなんでも幸運と不幸が同じにはならないのです。この世界において生まれてくることだけでも幸運。その時点ですでに大きく幸運が勝っているのです」
人生において幸運なこともあれば不幸なこともある。
色々な人生の人がいて色々な形の幸運や不幸があるので一概に何が良くて悪いとは言えない。
しかし生まれたことそのものが祝福されるような幸運なことである。
生まれた時点で全ての人は幸運なのだとラクスは言った。
「幸運と不幸は均衡を保つようにようできています。けれどもこの世の中は幸運が多くなるようにできています」
運が良かったことと同じだけの不幸が襲い続けると人の発展は妨げられてしまう。
そのために世界では不幸を抑えて幸運が大きくなるようなパワーバランスになっていた。
「ただそうなると世界の幸運と不幸のバランスは崩れてしまいます。言うなれば不幸のエネルギーが溜まっていくのです」
より幸運が多い世界で人々は発展を遂げてきた。
発展の影には抑制された不幸があるのだ。
「そして時に溜まった不幸は顔を出します。大きな事故、災害、あるいは戦争など多くの人を巻き込む不幸は溜まった不幸が現れた結果なのです。
こうして大きな不幸も時々訪れるのですがやはりそれだけではすべての不幸は無くなりません。相変わらず不幸は溜まり続けて……まるで風船のように破裂寸前まで来ていました」
世界的なニュースになるような不幸ですら溜まった不幸から見ればまだ微々たるものだった。
少しのガス抜きにはなっても不幸が溜まっていることに変わりがない。
「そこで古来より溜められた不幸を減らすために行われてきた行為があります。それが生贄です」
「生贄……」
「幸運を司る私の信者から不幸を背負って死んでいく存在を選び、世界の不幸をリセットするのです」
「それが……俺だというのか?」
「そうです。そうなる……はずでした」
重たい話の雰囲気を感じて暇そうにしつつもシャリンやフィーネも黙している。
「でも圭君は生きてるよね?」
「実際こうして目の前にいるもんな」
「本来ならばあなたは……生まれてすぐに死ぬはずでした。ですがあなたの両親の献身によって運命は変わったのです」
「どういうことですか?」
ここで親の話が出てくるなんて意外で圭は驚いてしまう。
「あなたが不幸を背負う者に選ばれたということはあなたの両親は私の信者だったということなのです」
信者の中から不幸を背負う者を選ぶ。
何もなく圭が選ばれたのではなく、圭の両親がラクスの信者であったから圭が選ばれたのであった。
「父さんと母さんがラクスの信者だった?」
全くもって聞いたこともない話である。
圭は夜滝のことを見たが夜滝も知らないようであった。
「昔は幸運も不幸も強く、祈ることも多く私の信者も多くいたのですが……いつしか幸運が普通がとなって私は忘れられていっていました。細々と続く幸運の信仰者の一部が圭、あなたの両親だったのですよ」
「知らなかった……」
「それもそうでしょう。二人はあなたに信仰を継がせるつもりはありませんでしたから」
ラクスはもはや忘れられた宗教である。
信仰することに特に負担はなかったけれど人知れぬ神を信仰することの大変さはあるので圭の親は自分たちでラクスへの信仰を終わらせるつもりだった。
「ですが運命とは皮肉なもので限界を迎えた不幸を発散するために圭、あなたが選ばれました。これは私の意思ではなく大いなる世界の意思なのです」
子供が普通に育ってくれればいい。
そう思っていた圭の両親であったが圭を授かったタイミングで不幸を背負う者に選ばれてしまった。
これはラクスが恣意的に選んだのではなく運命によって定められたものであった。
「あなたの両親はそれに納得せず私に祈りを捧げました。自分たちが不幸を背負ってもいい、あなただけは助けてくれと」
「父さん、母さん……」
「あなたの両親は数少ない私の信者でした。たとえあなたが私の信者にならなくとも……私にとってはあなたは大切な子も同然です。そこで私は私の全てをかけてあなたを守ることにしました」
「…………何をしたんですか?」
「私の力をあなたに与えました。幸運を司る私の力であなたに背負わされた不幸を打ち消そうと思ったのです」
信者の減ったラクスの力は弱っていた。
だがいまだに信者として真面目にラクスを信仰してくれていた圭の両親の思いに応えるべくラクスは全てを捧げた。
ラクスが持つ幸運の力を圭に与えたのだ。
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