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第十章

鉄鋼竜の心臓2

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「圭さんのお願いならもちろん使ってください」

 今の自分の実力なら鉄鋼竜の神像を扱えるようになるまで何年かかるか分からないと優斗も分かっている。
 むしろ何年かかっても扱えるかすら分からない。

 使うべき時に使うべき人がいるのなら使った方がいい。
 惜しい気持ちがないわけではないけれど鉄鋼竜の心臓は使うためのもので大切に取っておくだけに留めておくものじゃないのである。

「ただ一つお願いが……」

「お願い?」

「ど、どうやって鉄鋼竜の心臓を使うのか見たいんです」

「武器を直す様子を見学したいってことか」

「はい!」

 優斗は力強く頷いた。

「…………うーん」

「ダメ……ですか?」

「俺がやるわけじゃないからな……とりあえず許可でも取ってみないと」

 どうだろうかと圭は思った。
 鉄鋼竜の心臓を使って剣を直すのはイスギスである。

 当然イスギスの工房で修理は行われるのだがイスギスの工房は一種の神の空間である。
 イスギスそのものが許可を出してくれるかどうかも分からない上に許可が得られたとして優斗がイスギスのところに行けるのかなど疑問に思うこともある。

 そもそも圭の方からイスギスに接触する手段もない。

「聞けたら聞いてみるよ」

「聞けたら……?」

「結構複雑な事情でな。俺の方から連絡入れられないんだ。多分鉄鋼竜の心臓が向こうが求めてるものだったら連絡があるとは思うんだけど……」

 鉄鋼竜の心臓がラクスの剣の修理に使える素材だったならまたイスギスのところによる呼び出されることだろう。
 もし仮に違ったらなんの反応もないはずで、そうなったら鉄鋼竜の心臓はまた優斗に返せばいい。

「それじゃあ今すぐ取り出しにいきましょう!」

「今からかい?」

「何事も早い方がいいです!」

 鉄鋼竜の心臓は惜しいけれど和輝にすら扱えない武器を鉄鋼竜の心臓を扱って直すということには大きな興味がある。
 もしそれを見学できる可能性があるなら早くした方がいい。

 優斗の熱意に押されるようにして圭は鉄鋼竜の心臓を受け取りに向かうことにしたのだった。

 ーーーーー

 鉄鋼竜の心臓は覚醒者協会の貸金庫に納められている。
 覚醒者は様々な装備やモンスターの素材を抱えたりすることあるので大きめの金庫室なんかも覚醒者協会では貸し出している。

 金庫そのものは和輝が借りているので和輝が受付に話をして金庫を開ける。

「相変わらずの迫力があるな」

 金庫室の真ん中に金属で出来た心臓が置いてある。
 以前来た時にはまだまだ低級覚醒者で鉄鋼竜の心臓に圧倒されたものだが、少し強くなって改めて鉄鋼竜の心臓を見るとただの心臓なのに強い力を秘めていることが分かった。

 フィーネが一緒に来ていたら食べようとしていたかもしれないと圭は思った。

『鉄鋼竜の心臓
 鉄鋼竜、別名アダマンタイトリアンドラゴンの心臓。
 アダマンタイトリアンドラゴンの魔力を生み出す源になっていて強い魔力を秘めている。
 アダマンタイトリアンドラゴンの体と同じくアダマンタイト質で出来ていて非常に硬度が高い。
 相当の力がないと心臓の方を変えることすらできない』

「これだ……!」

 以前できなかった真実の目での鑑定を行う。
 すると鉄鋼竜がアダマンタイトリアンドラゴンであることが判明した。

 イスギスからもらったリストによるとアダマンタイトリアンドラゴンの素材なら全身どこでも使えることになっていた。
 魔力を秘めた心臓ならばきっと文句なしだろう。

「じゃあ……いいんだね?」

「はい。見学の件お願いしますね」

「……分かったよ」

 圭は亜空間の収納袋を取り出す。
 そして袋の中に鉄鋼竜の心臓を入れた。

「ふむ……不思議なものだな」

 小さい袋の中に大きな鉄鋼竜の心臓が吸い込まれる様は和輝から見ても不思議であった。

「ついでに他のものも持っていってくれないか? この金庫も解約してしまおう」

 鉄鋼竜の心臓を預けておくために借りた金庫である。
 鉄鋼竜の心臓がないのなら借りておく必要などない。

 他にもいくつかものを置いてあったのでついでに圭に回収してもらって金庫を引き払うことにした。

「ひとまずこれで剣を直すための素材を手に入れたってことでいいのかな?」

 ラクスの剣のサイズは普通の剣と変わりない。
 直すのに大きな鉄鋼竜の心臓全てを使うことはないだろうし足りるだろう。

「……これも幸運ってやつなのかな?」

 必要になった時にたまたま近くに素材があった。
 これもまたラクスの幸運によるものなのだろうかと圭はひっそり考えていたのである。
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