人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大

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第十章

女神だけど女神じゃない

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 中国における中心的なギルドとして活躍する青龍ギルドは様々な物を持っている。
 圭が受け取った収納袋も普通のギルドなら簡単には所有できないような物だった。

 ただ青龍ギルドでも持っていないものがある。
 それは高等級ヒーラーであった。

 覚醒者全体の数に対してヒーラーの数は少ない。
 ヒーラーは努力でなれるものではなく最初から関連したスキルがなければヒーラーとなることができないので絶対数が少ないのである。

 そんなヒーラーがさらに能力によって分けられていくと高等級のヒーラーはごく僅かの存在となってしまう。
 中国は人口も多くて覚醒者の数も多いのだがヒーラーの数は少なかった。

 しかも高等級のヒーラーがいないのだ。
 高等級の覚醒者になるとヒーラーも高等級である必要がある。

 なぜなら等級が高い相手ほど相手の体に魔力が強く残るという現象が起こるからだ。
 残った魔力を除去して相手を治療するためにはその魔力にも負けない必要があるのだ。
 
 加えて治療される側も自身の魔力がヒーラーの魔力を押し返して治療を拒もうとする自然の作用がある。
 高等級のヒーラーでなければ魔力に邪魔されてヒールができなくなってしまう。

 ウェイリンがいまだに全快にならない理由もここにあった。
 戦った相手がA級覚醒者のカイであり体にカイの魔力の影響が残っているのである。

「僕で大丈夫なんでしょうか?」

「ダメで元々ぐらいでいいんだよ」

 圭は薫、それにダンテとシャリンと一緒にとあるホテルを訪れていた。
 日本にあるホテルの中でも最高級で圭や薫でもどこかで名前ぐらいは聞いたことがあるようなホテルだ。

「村雨様、お待ちしておりました」

 圭では少し場違いな感じすら受けるホテルのロビーに入るとヤンが圭のことを待っていた。
 武装した覚醒者も数人いて、圭の真実の目ではみなC級かB級だった。

「そちらの方が?」

「そうです」

 ヤンは薫のことをチラリと見た。

「上手くいけばよいのですが……」

 今日ホテルに薫を連れて訪れた目的はウェイロンの治療のためだった。
 薫も今やB級覚醒者相当までレベルアップした。

 立派な高等級ヒーラーであり、国で保護してもおかしくないほどの人材である。
 A級ではないけれど薫は才能が二つもあるしウェイロンの怪我を治すことができる可能性があると圭は考えた。

 B級覚醒者ではあるけれど治せる可能性があるので治療を受けてみないかと圭は青龍ギルドに提案したのである。
 向こうとしても治してもらえるならとすぐに提案を受けた。

 薫の方の事情を隠して中国に行くのは難しいのでウェイロンの方から日本に来てもらった。
 さすがはA級覚醒者と大型ギルドでホテルの最上階を貸し切っていた。

「お久しぶりです。よろしくお願いします」

 部屋に入るとウェイロンとリーインがいてヤンが軽く挨拶を翻訳する。

「僕がヒーラーの薫です。よろしくお願いします」

 薫が頭を下げるとウェイロンは薫の顔をじっとみていた。

「それじゃあ早速治療したいと思うので……どこを怪我なされたのですか?」

 薫の言葉をヤンが伝える。

「左の脇腹だそうです」

「左の脇腹……見せていただけますか?」

 怪我を見なくても治せることは治せるが状態を見て治すイメージを強く持つことが素早い治療にも繋がる。
 ウェイロンが服を脱いで上半身を晒す。

 鍛え上げられた体は圭から見ても綺麗と思えるほどだった。
 腰にグルリと包帯が巻いてあってリーインが解いていく。

「これはなかなかですね……」

 シミ一つない体の中で脇腹はひどい状態だった。
 脇腹の広い範囲で赤黒くなっていて、まだ完全に治癒していなかった。

 平然とした顔をしているが相当痛そうだと薫は顔をしかめる。

「では治療しますね」

 薫が脇腹の傷に手をかざす。
 魔力を込めて治療を始めると薫と傷が淡い魔力の光に包まれる。

 ピクリとウェイロンの顔が曇って、薫も眉をひそめた。
 傷口に残ったカイの悪意ある魔力が治療を邪魔している。

 しかし薫は負けじと魔力を込める。
 ウェイロンの魔力も他者である薫の魔力に反応して治療に抵抗していた。

「くっ……」

「黒いところが……」

 ウェイロンの赤黒くなったところが少しずつ小さくなり始めた。
 薫の額から玉のような汗が流れ出して、それに比例するように傷が治っていく。

 少しずつ、ゆっくりと。
 およそ三十分ほどかけてウェイロンの脇腹の傷は薫によって治療されてしまった。

「お、終わりました……これでもう大丈夫だと……」

 治療を終えてふらついた薫のことをウェイロンがサッと支えた。

「な、なんて言ってるんですか?」

 ウェイロンは薫の目を見つめて何かを言っている。
 感謝の言葉にしては少し長いなと薫は思った。

「怪我を治してくれてありがとう。君は僕は女神だ。よかったら今夜別の用事で会うことはできないか、だそうです」

「えと……僕はその……男です……」

 少し躊躇ったけれどヤンが薫の言葉をウェイロンに伝えた。
 ウェイロンは驚いたように目を見開いて、そして項垂れた。

「ピピ……初恋だったのに……」

「フィーネ、やめてやれ」

 ウェイロンがつぶやいた言葉を圭の服の中にいるフィーネが翻訳してしまった。
 治してくれた薫に惚れて、そして男だとわかって失恋した。

 怪我は治ったけれど、心に怪我をしたかもしれない。

「と、とりあえず上手くいったんですよね?」

「うん……上手くいったと思うよ」

 落ち込んでしまったことはまた別問題して怪我は治せた。

「ありがとうございます。また恩ができてしまいましたね」

 落ち込むウェイロンに代わってリーインが挨拶の言葉を述べる。

「村雨様のことは青龍ギルドが責任を持ってお守りします。それとは別にしっかりとお礼もさせていただきます」

「俺じゃなく薫君に」

「ありがとうございました、薫様」

「あ、はい。怪我が治ってよかったです」

 ほんの少しのほろ苦さを残して青龍ギルドのギルドマスターであるウェイロンも戦線に復帰することになったのであった。
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感想 3

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みんなの感想(3件)

Papy
2024.08.14 Papy
ネタバレ含む
解除
ほうなむ
2024.07.22 ほうなむ

折れた剣の欠けた刀身をフィーネが代わりになるのかな?と思ってたけど、そんな気配もないからハズレたかな?

解除
ほうなむ
2024.05.27 ほうなむ

現代ファンタジーなのになんで銃火器が出てこないんですか?

2024.05.27 犬型大

あるけど出てこない程度に考えてください。

私自身が銃火器に詳しくないとか描写すると説明っぽくなる、覚醒者とのバランスなど出してしまうとどうしてもうまく整合性を取るのも難しいところがあります。

だから裏ではあるけどストーリー上は描写として出てこない!ぐらいに緩く考えて読んでいただけると幸いです!
武器として出したりするのもカッコいいとは思うんですけれどご容赦願います。

小説読んで疑問に思ってくださったことはありがとうございます!
一応これからも銃火器類には触れないように描写をしていくのでそうした小説だも思ってください!

解除

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