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第六章

血の争い、偽の女神の平穏2

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「なんだ……?」

「どうした、お兄さん?」

 急に立ち止まった圭をみんなが不思議そうな顔で見る。

『血の争い の特殊条件が満たされました。
 偽なる女神が平穏を望みます』

 薄く助ける表示の向こうに見える下の階に向かうエントランス。
 青色をしているエントランスの真ん中に赤い色が混じった。

 澄んだ水に血でも垂らしたようにエントランスに赤色が広がっていくのが見えていた。

「け、圭さん!?」

「圭君!」

 圭は走り出した。

「おい、止まれ!」

「くそっ……!」

 覚醒者たちの包囲の間を抜けた圭がエントランスに手を伸ばした。

「ウソだろ……」

 圭の手はエントランスを抜けることがなく、まるで試練をクリアしていない時のようにぶち当たった。

「な、なんだ……」

「どうなっているんだ? エントランスが赤いぞ!」

 圭がエントランスに手をついて驚愕している様子を見て他の覚醒者たちも異常に気がつき始めた。
 他の覚醒者もエントランスに触れてみるけれど通り抜けることができない。

 ドンドンと叩いてみても揺らぎもせず硬い壁かのようにエントランスは立ちはだかっている。

「圭! 一体どういうことなんだ?」

 エントランス前からフラフラと離れた圭に夜滝たちが駆け寄る。

「分からない。ただまたヤバそうだ……」

 覚醒者たちは見たこともない現象に混乱を極めている。

「また変な表示が見えた。何かが起きてる」

「何かって……なんだよ?」

 何かが起きているが何が起きているのかは分からない。
 圭は苦い顔をして首を振る。

「ど、どうしましょう」

 薫が青い顔をしている。
 全く何も分からない状況に大きく動揺している。

「落ち着くんだ。きっと何か方法がある」

 対して圭は比較的冷静だった。
 焦っていないわけでも怖くないわけでもないけれど度重なる危機的状況を乗り越えて諦めなければ道はあるものだと学んだ。

 さらにはこれが神々のゲームであると考えた時に一見どうしようもない状況でもゲームとしてクリアする方法があると考えている。
 ただ閉じ込められて終わりでは絶対にない。

 状況を打破するための手立てが用意されているはずなのだ。

「まずは……お昼食べよう」

「お、お昼!?」

 圭の提案に薫は驚く。
 こんな時にお昼など食べている暇ではない。

「今だから食べておくんだ」

 本来なら塔の中でお昼も過ごしてそのまま攻略していくつもりだった。
 けれど薬草採取は早く終わり、殺人事件なんてものがあったせいで塔を出てからお昼を食べようと思っていた。

 確かに悠長にお昼を食べているような状況ではない。
 だがこんな時だからこそお昼を食べて力をつけておく必要もある。

 冷静さを取り戻すのに何かをして時間をかけるというのも一つの手段である。
 今は近くに覚醒者たちもいる。

 何かがあった時に圭たち以外の人もいるので危険性は低い。

「少しでも腹に入れておこう。何があるか分からないから」

「圭さん……」

 どの道単独で行動はできず覚醒者たちといるのが安心。
 他の覚醒者が落ち着くまでもう少し時間もかかるだろうからその間にできることも限られる。

 圭の冷静な目を見ていると薫も少し気分が落ち着いてきた。
 圭たちは持ってきていた食事から簡易的に食べられるものを選んで口にする。

 そうしている間に気づくと明るかった空に重たい黒い雲が垂れ込め始めていた。

『平穏の騎士が現れます!』

 遥か遠くの黒く厚い雲から太い雷が落ちた。

「何かが起こってるねぇ……」

 雷の轟音が響き渡り、どうにか落ち着けた不安を再び刺激する。

「どうしたらいいんだ!」

 エントランスから移動できないということを理解して覚醒者たちが今後の動きを考え始めている。
 ただ明確なリーダーもおらず、複数の国の覚醒者が集まっているためにまとまらない。

「捜索隊と合流しませんか?」

 お昼を食べながら圭も今後のことを考えていた。
 移動のリスクはある。

 けれどエントランス付近に留まっていたからといって安全であるとは言えない。
 それなら捜索隊の覚醒者と合流するのがいい。

 捜索隊は犯人が奥に逃げ込んだ時のことも考えてB級覚醒者まで揃えていた。
 エントランス付近にいる覚醒者たちよりも強い人たちなのである。

 待っているだけでは状況も打開はできない。
 行動を起こして何かをクリアする必要がある。

「確かに……」

「その方がいいかもしれませんね」

「しかしここから移動するのも……」

 賛成反対さまざまな意見がある。
 移動するのは危険。

 あるいは基本的にエントランス付近というのはモンスターが寄ってこないので状況が分からないならエントランス付近に留まるべきだと主張する人もいる。
 どの意見も理解できないものではない。

「……あなたたちは合流するつもりですか?」

「ええ」

 覚醒者たちと移動したいがここにいるという人たちも無理に連れていくことはできない。
 圭は捜索隊と合流した方がこの状況を打開できる可能性があると考えるので合流したいと思っている。

「私たちも行きましょう」

 エントランス前にいた覚醒者のうち日本人の覚醒者たちは圭たちが行くというのなら一緒に行くと決めた。
 結局は国ごとに分かれるように覚醒者の半分が捜索隊と合流しようと動くことになった。
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