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第六章

血の争い、偽の女神の平穏1

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 なんだかんだと薬草は揃ったので圭たちはエントランスの方に戻ってきた。

「なんだか騒がしいな?」

 エントランス前に人が集まっている。
 四階に来た時下に向かう方のエントランスでは薬草を売ろうとする人たちがいたけれど上に向かうエントランスの方には人はいなかった。

 けれど今は上に向かうエントランスの方に人があつまっているのだ。

「すいません!」

「あっ、はい」

 声を掛けて何があったのか聞いてみようと近づいたら逆に相手から声をかけられて圭は驚いてしまう。

「怪しい人物を見かけませんでしたか?」

「怪しい人物ですか?」

 圭たちは顔を見合わせた。

「どんな人ですか?」

「……長髪の男性なのですが」

「……見てないですね。何かあったんですか?」

 残念ながら長髪の男性に心当たりはない。

「ああ、その説明が先でしたね。実は事件がありまして」

「事件ですか?」

 昔は警察の権力など及ばない塔の中では覚醒者同士の争いなど多かったと聞くが、今は塔の入り口がある国が共同して問題の対処に当たっているので時折ケンカがあるぐらいになっていた。
 ギルド同士が衝突しそうなら第三者国に連絡を入れて仲介してもらうということもある。

「殺人事件が発生したのです」

「さ、殺人事件!?」

 エントランス前で薬草を取り合ってケンカにでもなったのかなと考えていたのに、想像以上の重たい事件であった。

「下の階から上がってきた覚醒者が急にエントランス前の覚醒者に襲いかかったのです。逃げ出した覚醒者の通報で複数の国から犯罪者を追って覚醒者が派遣されてきています」

「そんなことが……」

「どうやらこの階の奥に逃げ込んでいるようなので捜索隊を現在編成しているのです」

「えっと下の階に降りることは?」

「下に向かうエントランスの方で身分証ご提示いただければ通行できます」

 よかったとホッとした。
 封鎖されて出られませんとなると面倒だ。

「薬草を女神像に捧げたいんですが大丈夫ですか?」

「そちらの方も構いません」

「ありがとうございます」

 犯人が長髪の男という特徴があるためか圭たちは容疑者から外された。

「今日はこれで帰ろうか」

 流石にこんなことが起きては上の階の攻略をしに行く感じではない。
 安全優先で塔を脱出しようと提案するとみんな同じく頷く。

 とりあえず集めた薬草は女神像に捧げて四階をクリアしておこうとは思った。
 説明してくれた覚醒者に軽く頭を下げてエントランス前を離れて女神像の方に向かう。

「あっ、ほんとだ。あんなところにあったんだね」

 女神像はエントランスから少し行ったところに立っていた。
 白い台座の上に天使のような翼の生えた美しい女性の像で、何かを抱きしめるように手を広げて穏やかな笑みを浮かべている。

「へぇ、なんだか綺麗な像だな」

「そうですね。見ていると心が落ち着く感じがあります」

 女神像の前には像と同じ白い石をくり抜いたような大きなボウルのようなものが置いてある。
 このボウルに薬草を入れると捧げたことになる。

『女神像に貢物を捧げろ!

 イージャス草 10/10
 ペトラの実 0/10
 コドゥンの葉 0/10

 シークレット
 忘れられた女神像を探せ!』

 試しにイージャス草を入れてみる。
 するととイージャス草が消えて、試練のカウントがなされる。
 
 圭だけでなく夜滝たちもみんなちゃんとカウントされているので安心した。
 ペトラの実とコドゥンの葉も投入する。

『女神像に貢物を捧げろ! クリア

 イージャス草 10/10
 ペトラの実 10/10
 コドゥンの葉 10/10

 シークレット
 忘れられた女神像を探せ!』

 ちゃんとそれぞれカウントされて四階の試練がクリア表示になった。

「よし、これでいいな」

 思わぬことはあったが想定していたよりも早く四階はクリアできた。

「あとは帰ろうか。雰囲気も悪いしね」

 エントランス前にはさらに人が増えている。
 犯人が入っていった場所によってはB級モンスターとも遭遇する可能性がある。

 空気がピリついてしまうのも無理はない。
 本格的に捜索隊が動き出す前に帰ろうと圭たちは下に向かうエントランスに移動し始めた。

「それにしてもなんでこんなところで暴れたのかねぇ?」

「そうだよな。人目はあるし逃げられないしな」

 塔は不特定多数の覚醒者が出入りしている。
 誰にも見られない完全犯罪を犯すことは困難だと言わざるを得ない。

 さらにはバレてしまうと塔の構造上逃げることが難しい。
 横の連携で外へのエントランスが全て封鎖されてしまえば強行突破するしかなくなる。

 逆に犯人を探そうと思えば下の階から順に上がってしらみつぶしにしていけばいい。
 単に暴れたいだけだとするとふさわしくない場所である。

「まあ異常者の考えなんて分からないですよ」

「そうだよ。考えるだけムダムダ」

「捕まれば後日ニュースででもやるだろ」

 歩いていると下に向かうエントランスが見えてきた。
 犯人が逃げないように覚醒者たちが厳重に見張っている。

「身分証を見せれば……」

『特殊条件を満たしました』

 言われた通りに身分証を見せて帰ろう。
 そう思っていた圭の前に表示が現れた。
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