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第六章

血の争い、偽の女神の平穏7

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「せーの!」

 複数人の人の力を借りて笑う女神像を押す。
 少しずつ笑う女神像が動いていき、台座の下に階段が現れた。

「な、なんなんだこれは……」

 本当に階段が現れて覚醒者たちが動揺している。
 誰か中に入るのではないかと思っていたがみな顔を見合わせるだけで入っていく様子はなかった。

 中に何があるか分からず恐れているのだ。

「俺たちが行きます」

 誰も行かないのなら都合がいい。
 きっとここが忘れられた女神像のある場所だと圭たちは確信を持っていた。

「き、気をつけるんだぞ」

 止めるような人もいなくて助かった。
 圭たちは笑う女神像の台座の下にあった階段を降りていく。

 地下のためか地上よりもひんやりとした空気。
 明かりもなく真っ暗なので懐中電灯を使い、さらには夜滝が魔法で火の玉を飛ばして二重で暗さに対策する。

 下まで降りると大きな扉がある部屋にたどり着いた。

「この向こうなのかな?」

 大きな扉の他には何もない。

「けどこんなもん開けられないぜ?」

 不思議な紋様が刻まれた石の扉は見てるだけでも軽くないことが分かる。
 仮に地上にいた覚醒者全員連れてきても押し開けられる気がしない。

「薫君?」

 これまで黙っていた薫がふらりと扉の前に立った。

「たぶん、開けられます」

 ずっと薫の頭の中では声が響いている。
 なんとなく扉を開けられるような気が薫にはしていた。

 薫がそっと扉に手を当てる。
 魔力を込めると手を当てたところから広がるように扉の紋様が淡く輝き出す。

 光るところが広がっていって端まで到達するとゆっくりと扉が開き始める。
 何が飛び出してきてもいいように圭たちは武器を構えて警戒を強める。

「な、なんだ……?」

 扉の向こうも部屋になっていた。
 部屋の真ん中に光が差している。

 どこから光が来ているのか知らないけれど、まるで光の柱のように明るい光が真ん中に一筋差しているのだ。
 そしてその光の中には二つの石像がある。

 天使の翼のようなものが生えた騎士の石像と石像の翼に守られるようにして光の真ん中に立っている小さな女神像があった。

「薫君!」

 何かに導かれるように薫が女神像の前に歩いていく。
 不思議な光景なのだが危険や敵意のようなものは感じなくて圭も薫を止めなかった。

『忘れられた女神像を探せ! クリア
 忘れられた女神の力を借りて平穏の騎士を倒せ!』

「やっぱりあれが忘れられた女神像なんだな」

『シークレットクエスト!
 忘れられた女神の力を借りて平穏の騎士を倒せ!』

「あっ!」

 “忘れられた女神像を探せ!”がクリアになったと思ったら夜滝たちみんなの前にシークレットクエストの表示が現れた。
 大王ゴブリンの時もゲートを見つけたらシークレットクエストがみんなに現れた。

 段階のあるシークレットクエストが進んでいくと周りにも共有されるのかもしれない。
 ともかくシークレットクエストが前に進んだ。

「力を借りてっていうけどどうやって……」

「圭さん……」

「薫君、大丈夫?」

 薫は女神像の前で青い顔をしていた。

「声が……大きくて……」

 息を切らせて苦しそうな表情を浮かべている。

「どうしたらいい? 声から何かわかるか?」

「女神像を……僕に……」

 女神像は手を伸ばせば届きそうな距離にあるのに薫は胸が苦しくて動けない。

「女神像を取ればいいんだな」

 圭は女神像の方を見た。
 表にある偽の女神像と違って人の頭ほどの大きさしかない。

 ただしっかりと細部まで作り込まれていて神々しさを感じる優しい笑みを浮かべている。

「もっと優しく触りなさいよ!」

「えっ!?」

 圭が女神像に触れた瞬間声が聞こえた。
 驚いて女神像から手を離す。

「どうした?」

 思わず振り返ると不思議そうな顔をしているカレンと目があった。
 カレンたちには声が聞こえていないようだ。

「ピピ、ヤサシク」

「ん、フィーネには聞こえていたのか?」

「ピピ? キコエタ。モットヤサシクサワリナサイヨ」

「僕も聞こえています……」

「……まあいいか」

 圭に触れていたフィーネだから聞こえていたのだろうかと考えたりしたが今は細かく検証している暇もない。
 今度は両手を使って優しく女神像に触れる。

「それでいいのよ」

 女神像に触れるとまた声が聞こえた。

「忘れられた女神……なのか?」

「そうよ。あのはた迷惑な偽物のクソ女神をぶっ殺すために私を探していたんでしょ?」

 思ってたよりもなんというか、乱雑な言葉遣い。

「私が力を貸してあげるわ。その子に私を渡して」

「……何をするつもりだ?」

 声が聞こえていることも含めて薫に対して何かをしようとしている。
 女神だから怪しいことはないと思うのだけどいきなり現れた女神を無条件に信じることもできない。

「いいから」

「よくない。薫君は俺の仲間だ」

「ふーん、いいわね、信じてくれる仲間って。別に怪しいことしないわよ。力を貸してあげるの」

「……力を貸してもらえれば平穏の騎士を倒せるのか?」

 傍目から見れば圭は石像に話しかけているヤバいやつなのだが何かしらの会話が成立しているのだろうと夜滝たちは見守っている。
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