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第六章

血の争い、偽の女神の平穏6

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「……遅いな」

 程なくして散らばっていた捜索隊が戻ってきたのだが一部隊だけ戻ってこない。
 犯人を見つけたのか、問題でもあったのか。

「あっちから人が走ってくるぞ!」

 ずっと待ってもいられない。
 こちらから探しに行こうかと話していると残る捜索隊が向かった方向から人が走ってきた。

 何かを叫んでいるが日本語ではないので圭には分からない。

「化け物がくる? ……全員警戒しろ!」

 言葉が分かる覚醒者が叫び声を聞いて顔をしかめた。
 走ってくるのは1人。

 叫んでいる言葉は化け物だ。
 覚醒者たちが何かを察して素早く動き始める。

 捜索隊の覚醒者が前に出て、圭たちを含めた等級の低い覚醒者は後ろに下がる。

「なっ……!」

 あと少しで合流できる。
 覚醒者が笑う女神像がある木々の開けたところに出てこようとした瞬間胸から剣が飛び出してきた。

 手を伸ばし絶望した表情を浮かべて覚醒者が前のめりに倒れる。

「おい、行くな! ……くそっ!」

 やられた覚醒者は欧州連盟の覚醒者だった。
 同じ欧州連盟の覚醒者たちが飛び出して助けに行こうとする。

 不用意に近づいてはいけないと止めようとしたが仲間をやられて感情がたかぶっている上に言葉も通じていない。

「全員状況を把握するまで動くな!」

 C級程度の場所なので周りの木々も多く視界は悪い。
 しかし笑う女神像の周りは木がなくて開けているのでむやみに助けに行かずに状況を見守る。

 目の前に瀕死の人がいるのに冷酷ではあるけれど、一つの判断ミスでより多くの犠牲者が出てしまう可能性だってある。
 欧州連盟の覚醒者たちが倒れた覚醒者に駆け寄る。

 声をかけて体を揺するけれど反応はない。

「後ろだ!」

 覚醒者の胸に深々と突き刺さっていた剣が抜けて飛んでいく。
 圭の目にも森の中から赤い目をした何かが欧州連盟の覚醒者たちに近づいてくるのが見えた。

 全身を鎧で固めた騎士のようなモンスターの手に飛んでいった剣は収まる。
 ものすごいスピードで欧州連盟の覚醒者に近づいた騎士のモンスターは大きな剣を横薙ぎに振るった。

「なんてことだ……!」

 欧州連盟の覚醒者も反応を見せて剣で防ごうとした。
 けれど騎士のモンスターの剣は欧州連盟の覚醒者の剣をへし折りながら体を真っ二つに切り裂いた。

「魔法で攻撃して支援しろ! アレを倒すぞ!」

 まだ残っている欧州連盟の覚醒者に騎士のモンスターは切りかかっている。
 捜索隊のリーダーの指示で魔法を使える覚醒者たちが一斉に魔法を放つ。

「くっ……!」

 また1人切り倒した騎士のモンスターは剣を盾のように体の前に構えて魔法を受けた。
 土ぼこりが舞って騎士のモンスターが見えなくなるが倒したなどと慢心せず覚醒者たちが突撃する。

『平穏の騎士
 偽の女神が生み出した騎士。
 偽の女神のために平穏を生み出すことを何よりも優先する。
 平穏とは、死である』

「なんだかヤバそうだな……」

 平穏の騎士が剣を振ると風で土ぼこりが晴れていく。
 魔法が直撃したはずなのに平穏の騎士はダメージを受けた様子もない。

「圭……私たちはどうする?」

「どうするったって……」

 捜索隊の覚醒者たちと平穏の騎士の戦いは始まっている。
 とてもじゃないが圭たちが力になれるような戦いではなかった。

 むしろ邪魔になって死んでいくしかない。
 戦わないというのも立派な選択であるのだがただ見ているだけというのも心苦しい。

 圭たちはどうすることもできず周りを警戒しながら戦いを見守る。
 平穏の騎士は大きな剣を振り回して戦い、その圧倒的なパワーに何人かの覚醒者がやられてしまっている。

「うわっ!」

「大丈夫ですか!?」

 平穏の騎士の剣に吹き飛ばされて1人の覚醒者が笑う女神像に体を叩きつけられた。
 笑う女神像の右腕が壊れてしまうほどの衝撃だった。

 圭が駆け寄って状態を確認するとダメージは大きいものの死んではないない。

「薫君、お願い」

「分かりました」

 薫が覚醒者の治療を始める。
 あまり出し惜しみしていられる状況でもなくなった。

「ピピ……スキマ」

「隙間?」

 どうすればいいのか判断ができないでいると圭の防具に擬態していたフィーネが突如として声を出した。
 周りに人がいる時には話さないのによほど何かがあったのだろうと腕を上げて手甲になっているフィーネのことを見る。

「アッチ」

 フィーネが体の一部を矢印のように変化させて隙間の位置を指し示す。

「これは……」

「どうしたの、圭君?」

「みんな、見てみろ」

「なんだか……下にありそうだな」

 笑う女神像の台座の下に隙間が見えた。
 どうやら覚醒者が衝突した衝撃で笑う女神像がわずかにずれたようである。

 暗い闇が広がっていて地面ではない。
 何かが下にある。

「みなさん、手伝ってください!」

 忘れられた女神像、あまり人が寄り付かない笑う女神像、薫の頭の中に響く声、不自然な隙間。
 全部一つに繋がったような気がした。

 笑う女神像は大きくとても圭たちだけでは動かせない。
 圭は周りの覚醒者たちに助けを求めた。

 平穏の騎士が強くて等級が下の覚醒者たちは見ているしかないので数はいる。

「この女神像を動かすのを手伝ってください!」

「……やろう!」

 圭の要請に困惑したような覚醒者たちだったが自分にできることがあるならと1人が前に出ると他の人も動き始めた。
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