365 / 515
第七章
覚醒者チュートリアル6
しおりを挟む
ある程度近づいたところでアイスシープも圭たちに気がついた。
体を圭たちの方に向けて睨みつけ、雪を踏み鳴らして頭を低く突撃するような体勢を取った。
「来るぞ!」
雪を蹴ってアイスシープが走り出した。
「任せとけ!」
カレンが前に出て盾を構える。
挑発するまでもなくアイスシープはカレンに突撃してきて盾と正面から衝突する。
ゴインと鈍い音がしてカレンとアイスシープそれぞれが弾き飛ばされた。
アイスシープの力が思いのほか強かったことと雪という足場の悪さにカレンでも堪えきれなかったのである。
ただアイスシープに大きな隙ができた。
「あれっ!?」
素早くアイスシープの側面に回り込んだ波瑠がナイフを振り下ろした。
しかしナイフに想像していたような手応えはなかった。
まるで空を切ったように軽い。
「げっ!」
アイスシープの方もダメージなど無いように波瑠のことを睨みつけた。
「あぶねっ!」
アイスシープの氷のようなツノの周りに鋭く尖った氷が一瞬で生まれ、波瑠に向かって飛んでいく。
波瑠は上半身をねじってなんとか氷をかわした。
「おりゃ!」
波瑠に気を取られた隙をついて圭が剣を振り下ろした。
圭も手応えがなくておやっと思った。
けれどほんの少し遅れて手にアイスシープを切り裂く感覚が返ってきた。
「なるほど毛か」
アイスシープが倒れて動かなくなった。
戦いが終わって冷静になってみると手応えの違和感の原因もすぐに分かった。
雪玉と見間違うほどにモコモコとしていて丸い大きな毛が原因だった。
倒してよくみると毛の部分が分厚い。
本体部分も決して小さいわけじゃないけれど見た目から勝手に想像していたところよりも本体は奥にあった。
だから波瑠のナイフは空を切ったような感じだったし圭も一瞬手応えを感じられなかったのだ。
「もっとしっかり踏み込んで切らなきゃ体には届かないね……」
普通の剣ならともかくナイフだと毛の中に手を突っ込むぐらいでないとアイスシープを切り裂けなさそうである。
「まああんまり無理すんなよ? たまには私も活躍したるからさ!」
「確かにそうした役割分担もやってみる時が来たのかもな」
モンスターのヘイトを稼いで引きつける役割を果たすのがタンクの役目である。
しかしその方法は盾を持って立ちはだかるというものだけではない。
モンスターを引きつけていなす方法として速度による回避を重視したやり方もある。
回避し続けるというリスクや体力の消耗が大きいということからメジャーなやり方ではないが、強い力を持つモンスターを相手にする時には盾で防御するよりも有効なことがある。
これまで圭たちはカレンをタンクとして置いてきたけれど、スピードタイプの波瑠がスピードタイプのタンクの役割をやってみるという戦略の拡大もありかもしれない。
「試してみようか」
いざという時にモンスターを引きつけられれば役立つこともある。
今回物は試しと波瑠がタンク役を担ってみることにした。
「ふおおっ~!」
次のアイスシープを見つけた波瑠が手を伸ばして集中している。
カレンは魔力を飛ばしてモンスターを挑発しているけれど、これは別にカレンだけの特殊技能ではない。
魔力を持っていてコントロールできれば誰でもできる。
波瑠は自らの魔力を放ってアイスシープを挑発しようとしているのだが意外と上手く魔力を向けられなくて苦心していた。
案外魔力のコントロールが下手くそである。
「だぁ~!」
一応最初はアイスシープを引きつけられるのだけど、戦い始まってアイスシープの攻撃を避け始めると魔力を向けていられなくて圭やカレンの方にアイスシープが向かってしまうのだ。
タンクとしての役割を上手く果たせずに波瑠は少しイラついていた。
その点で圭は戦いながら相手に魔力を向けて引きつけるタンク的な行動もそつなくこなせていた。
「難しい……カレンってすごいんだね」
「ようやく私の凄さが分かったか」
体に魔力を巡らせたり武器に魔力を込めることは全く問題ないのに魔力を放出し続け、上手くそれを相手に向け続けるというのは全く異なる技能なのである。
「それでも最初よりは良くなってるんじゃないか?」
敵を引きつけるためには敵が攻撃できる隙というものも必要になる。
波瑠は最高速度ではなくスピードを落として敵の視界に入り続けるような動きを意識していた。
近づいて軽く攻撃したりと防御重視のカレンとは違った気の引き方というものを試行錯誤している。
お陰で少しずつではあるけれど波瑠もアイスシープを引きつけるのが上手くなっていた。
「ほれほれ、こっちだよ~」
倒すべき残りのアイスシープが一桁になる頃には波瑠も最後までしっかりとアイスシープを引きつけられていた。
魔力を向けながら軽く顔の近くを攻撃したりして苛立ちを募らせるようなやり方も駆使していて、アイスシープは波瑠に翻弄されてその場をぐるぐると回るように波瑠のことばかり見ている。
「いい感じじゃねえか!」
お陰でカレンもアタッカーとしての力を発揮できる。
思い切りスイングされたカレンのメイスは頭に当たり、氷のツノをへし折りながらアイスシープを吹き飛ばす。
体を圭たちの方に向けて睨みつけ、雪を踏み鳴らして頭を低く突撃するような体勢を取った。
「来るぞ!」
雪を蹴ってアイスシープが走り出した。
「任せとけ!」
カレンが前に出て盾を構える。
挑発するまでもなくアイスシープはカレンに突撃してきて盾と正面から衝突する。
ゴインと鈍い音がしてカレンとアイスシープそれぞれが弾き飛ばされた。
アイスシープの力が思いのほか強かったことと雪という足場の悪さにカレンでも堪えきれなかったのである。
ただアイスシープに大きな隙ができた。
「あれっ!?」
素早くアイスシープの側面に回り込んだ波瑠がナイフを振り下ろした。
しかしナイフに想像していたような手応えはなかった。
まるで空を切ったように軽い。
「げっ!」
アイスシープの方もダメージなど無いように波瑠のことを睨みつけた。
「あぶねっ!」
アイスシープの氷のようなツノの周りに鋭く尖った氷が一瞬で生まれ、波瑠に向かって飛んでいく。
波瑠は上半身をねじってなんとか氷をかわした。
「おりゃ!」
波瑠に気を取られた隙をついて圭が剣を振り下ろした。
圭も手応えがなくておやっと思った。
けれどほんの少し遅れて手にアイスシープを切り裂く感覚が返ってきた。
「なるほど毛か」
アイスシープが倒れて動かなくなった。
戦いが終わって冷静になってみると手応えの違和感の原因もすぐに分かった。
雪玉と見間違うほどにモコモコとしていて丸い大きな毛が原因だった。
倒してよくみると毛の部分が分厚い。
本体部分も決して小さいわけじゃないけれど見た目から勝手に想像していたところよりも本体は奥にあった。
だから波瑠のナイフは空を切ったような感じだったし圭も一瞬手応えを感じられなかったのだ。
「もっとしっかり踏み込んで切らなきゃ体には届かないね……」
普通の剣ならともかくナイフだと毛の中に手を突っ込むぐらいでないとアイスシープを切り裂けなさそうである。
「まああんまり無理すんなよ? たまには私も活躍したるからさ!」
「確かにそうした役割分担もやってみる時が来たのかもな」
モンスターのヘイトを稼いで引きつける役割を果たすのがタンクの役目である。
しかしその方法は盾を持って立ちはだかるというものだけではない。
モンスターを引きつけていなす方法として速度による回避を重視したやり方もある。
回避し続けるというリスクや体力の消耗が大きいということからメジャーなやり方ではないが、強い力を持つモンスターを相手にする時には盾で防御するよりも有効なことがある。
これまで圭たちはカレンをタンクとして置いてきたけれど、スピードタイプの波瑠がスピードタイプのタンクの役割をやってみるという戦略の拡大もありかもしれない。
「試してみようか」
いざという時にモンスターを引きつけられれば役立つこともある。
今回物は試しと波瑠がタンク役を担ってみることにした。
「ふおおっ~!」
次のアイスシープを見つけた波瑠が手を伸ばして集中している。
カレンは魔力を飛ばしてモンスターを挑発しているけれど、これは別にカレンだけの特殊技能ではない。
魔力を持っていてコントロールできれば誰でもできる。
波瑠は自らの魔力を放ってアイスシープを挑発しようとしているのだが意外と上手く魔力を向けられなくて苦心していた。
案外魔力のコントロールが下手くそである。
「だぁ~!」
一応最初はアイスシープを引きつけられるのだけど、戦い始まってアイスシープの攻撃を避け始めると魔力を向けていられなくて圭やカレンの方にアイスシープが向かってしまうのだ。
タンクとしての役割を上手く果たせずに波瑠は少しイラついていた。
その点で圭は戦いながら相手に魔力を向けて引きつけるタンク的な行動もそつなくこなせていた。
「難しい……カレンってすごいんだね」
「ようやく私の凄さが分かったか」
体に魔力を巡らせたり武器に魔力を込めることは全く問題ないのに魔力を放出し続け、上手くそれを相手に向け続けるというのは全く異なる技能なのである。
「それでも最初よりは良くなってるんじゃないか?」
敵を引きつけるためには敵が攻撃できる隙というものも必要になる。
波瑠は最高速度ではなくスピードを落として敵の視界に入り続けるような動きを意識していた。
近づいて軽く攻撃したりと防御重視のカレンとは違った気の引き方というものを試行錯誤している。
お陰で少しずつではあるけれど波瑠もアイスシープを引きつけるのが上手くなっていた。
「ほれほれ、こっちだよ~」
倒すべき残りのアイスシープが一桁になる頃には波瑠も最後までしっかりとアイスシープを引きつけられていた。
魔力を向けながら軽く顔の近くを攻撃したりして苛立ちを募らせるようなやり方も駆使していて、アイスシープは波瑠に翻弄されてその場をぐるぐると回るように波瑠のことばかり見ている。
「いい感じじゃねえか!」
お陰でカレンもアタッカーとしての力を発揮できる。
思い切りスイングされたカレンのメイスは頭に当たり、氷のツノをへし折りながらアイスシープを吹き飛ばす。
15
あなたにおすすめの小説
シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~
尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。
だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。
全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。
勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。
そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。
エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。
これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。
…その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。
妹とは血の繋がりであろうか?
妹とは魂の繋がりである。
兄とは何か?
妹を護る存在である。
かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~
仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。
現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!
おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。
ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。
過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。
ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。
世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。
やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。
至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!
「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜
大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。
広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。
ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。
彼の名はレッド=カーマイン。
最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。
※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。
氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!
本条蒼依
ファンタジー
氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。
死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。
大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる