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第八章

汚れた魔力の天女を止めて6

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「これぐらいなら戦うのにも問題はないですね」

 エスギスとクワインデカルトまとめて相手にするにはまだ足りないけれど、クワインデカルトを引きつけて戦うには十分な広さがある。

「それじゃあいきましょう!」

 また光が走り、イスギスまでの道が開いた。
 風馬と右近を先頭にして圭たちは走り出す。

 圭たちに気づいたクワインデカルトが襲いかかってくる。
 風馬と右近の力はできるだけ温存して他の覚醒者でクワインデカルトを倒す。

 クワインデカルトの間を走り抜けてくる圭たちにエスギスが気がついた。
 人ともモンスターともつかないような叫び声をエスギスが上げる。

「右近、行くぞ!」

「はい!」

 風馬と右近が飛び出していく。

「ここでモンスターを引きつけましょう!」

 圭たちは足を止めて左右のクワインデカルトと対峙する。

「こっちこい!」

 カレンが魔力を放ってクワインデカルトを引き付けようとする。

「……なんだか動き鈍いねぇ」

 魔法が面白いように当たると夜滝は思った。
 そんなにコントロールしなくてもクワインデカルトが魔法をかわせないのである。

 圭たちも同じような感想を抱いていた。
 動きも鈍ければ力強さもかなり弱くなっている。

 元々そんなに苦戦するものではなかったが今はかなり余裕ができる感じとなっていた。

「盾の効果だな」

「なるほど、そうですね」
 
 円を描くようにして布陣する真ん中にはサポートタイプの覚醒者である薫と剣心がいた。
 盾は汚れた魔力に効果がある。

 当然クワインデカルトも汚れた魔力を持っている存在である。
 カレンの盾は汚れた魔力に対して大きな効果を持っている。

 今圭たちの周りはカレンの盾の効果によって汚れた魔力の霧を払う膜に覆われている。
 その膜の中に入ってくれば汚れた魔力を持ったクワインデカルトが影響を受けていてもおかしくないのである。

「……思っていたより強いですね!」

「無理をしないで攻めるんだ!」

 一方で風馬と右近もエスギスのところに到達して戦い始めていた。
 圭たちが引きつけきれずに襲いかかってくるクワインデカルトもいたが、風馬と右近だけでなくエスギスにも攻撃してエスギスに倒されていた。

 盾を活かして戦うエスギスは安定していてなかなか攻めきれない。
 能力的にはB級ぐらいの強さしかないけれど盾を上手く使うので致命傷を与えられない。

 時々襲いかかってくるクワインデカルトも意外と厄介である。
 攻撃を受けると汚れた魔力によって汚染されてしまうので完全に無視するわけにもいかないのである。

「邪魔だ!」

「はあっ!」

 右近が飛びかかってきたクワインデカルトを切り裂き、風馬がその間にエスギスに近づいて刀を振る。
 腕が浅く切り裂かれてエスギスが悲鳴のような声を上げる。

「このまま押し切って……」

『ヒドゥンピース:汚れた魔力の魔王の幹部チュビダス 出現』

「なに?」

 風馬の前にいきなり表示が現れた。
 見ると右近の前にも現れている。

「圭!」

「ああ、みんなにも見えているようだな」

 風馬と右近の前だけでなく圭たちみんなの前にも同じ表示が現れている。

「あ、あれ!」

 波瑠が崩れた城の上を指差した。
 ほとんど崩壊した城の一番高いところに何かが立っていた。

 目を凝らしてそれを見てみる。
 一見するとヤタクロウにも似ているがヤタクロウがカラスだったのに対してそれは濁った色をした鷹のような頭をしている。

『チュビダス
 汚れた魔力の魔王の右腕たる存在。
 魔王の汚れた魔力を見に持っても汚染されることはなく受け入れることができた稀有なモンスターである。
 敬愛する魔王のためにはなんでもし、命すら投げ打つ覚悟がある。

 ーー以下閲覧制限ーー』

 チュビダスはゆっくりと戦場を見下ろすと翼を広げた。
 倒れるようにして城から飛び降りると地面に落ちる直前で一度翼を羽ばたかせ、地面と並行に飛び始めた。

 すごい速度で飛んだチュビダスはそのまま真っ直ぐにエスギスの方に向かうと蹴りを繰り出した。

「カレン!」

「へっ? うわっ!?」

 エスギスは盾で蹴りを防いだけれどそのままぶっ飛んでいった。
 エスギスは圭たちの方の飛んできた。

 ちょうどカレンにぶつかりそうになって圭は声を上げる。

「ぐっ!」

 ギリギリのところで盾を出して直撃は防いだがカレンとエスギスがもみくちゃになって地面を転がる。

「ヤバイ!」

 飛んできたのがエスギスだとしたらかなり危険なことになる。
 圭はイスギスから受け取った剣を片手にエスギスに駆け寄る。

「チッ……!」

 振り下ろされた短剣をエスギスは盾で防いだ。

「……あなたは……」

「えっ?」

 盾の向こうのエスギスの目に理性が戻っていた。
 どこも見ていないような濁った暗い目をしていたのに今は真っ直ぐに圭の目を見ている。

「ここは……私は一体……」

「いてて……なんだ?」

 エスギスは不思議そうに周りのことを見回している。

「私は……うっ!」

 何が起きたのか分からず困惑しているのは圭たちだけでなくエスギスもであった。
 急にエスギスは盾を落として頭を抱えた。

 エスギスの体の傷から灰色の煙が上がる。
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