人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

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第八章

食事会への招待

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「鬼ネズミのダメだねぇ。柔らかすぎる」

「そうだね。熱にも弱いし見た目にもオシャレさもない」

「これならこの間のイタチの方が使えそうだったねぇ」

 等級が上がって覚醒者として稼げるようになったけれどRSIの仕事は続けている。
 多分仕事を辞めて覚醒者の方で食っていこうと思えば普通に生きていける。

 それどころかC級ならば良い暮らしできるだろう。
 しかし覚醒者としてやっていくのも楽ではないので今のところ仕事を辞めるつもりはない。

 使える素材を研究するということも夜滝は行うけれど世の中使えるものばかりでもなければ使えると分かっているものだけでもない。
 使えるかどうか分からないから色々と実験して試していくということも必要な行為なのである。

 まだ割と研究者としての暦が短い夜滝は任される内容としても少し雑用チックなものもある。
 今夜滝はモンスターの素材が他のことに利用できそうかどうかということを調べていた。

「フィーネ、これそっち置いといて」

「ハーイ」

 ちなみにフィーネは圭の体に装備として隠れてついてきて、誰もいなければ研究室で人型になって圭たちのお手伝いをしている。

「毒物も見てみようか」

 素材の利用可能性の研究はまずは耐久性や属性などに対する抵抗などをチェックする。
 丈夫ならそれだけで防具などに利用できるかもしれないし、属性に対する抵抗が高ければ耐久性をみながら防具の一部にしたり加工したりということも考えられる。

 ただ利用できる素材ばかりではない。
 今時色々な素材が研究されていて有用だと判明されているものも多くある。

 多少の有用性が見つかったところで他の素材の方が有用性が高ければ結局使える素材とは言えなくなってしまう。
 夜滝のところに来るのは比較的低等級の魔物の素材も多いので使えそうと思えるものの方が少ないぐらいだった。

「ん? 来客だ」

 研究室のインターホンが鳴った。

「はい、なんでしょうか? ……あれ、木山さん」

 圭がインターホンのモニターを見ると五十代ほどの男性が映っていた。
 それは圭も顔を知っている人だった。

「仕事中すまないな。少し時間いいか?」

「まあひと段落ついたところだしいいんじゃないかねぇ?」

「フィーネ」

「ピピッ!」

 圭が夜滝のことを見ると頷いたのでドアのロックを解除して開ける。
 その前にフィーネはいつもの小さい姿に戻ってごちゃごちゃと物が置かれたテーブルの上に紛れて隠れる。

「悪いな」

 ややしゃがれた声をした木山は白衣ではなくコック服を着ている。

「料理長がわざわざなんのご用ですか?」

 木山はRSIの食堂を統括する料理長という立場の人であった。
 元々高級ホテルの料理長をやっていてRSIに引き抜かれたという経緯を持つ人で非覚醒者である。

 なかなか不思議な人で圭が作る家庭的な料理を気に入ってくれている人だった。
 食堂の方に来ないかなんて圭のことを誘うのも木山なのであった。

 木山が訪ねてきたということに関しては夜滝よりも圭に用事があるのではないかと二人は考えていた。

「圭に話があってな」

「俺にですか?」

 やっぱりとは思った。

「それじゃあ今日は私が紅茶でも淹れるよ」

 夜滝が立ち上がって流しの方に向かう。

「圭たちも忙しいだろうから早速話に入ろう」

 木山は人の良さそうな笑顔を浮かべている。

「今回うちの方にとある依頼が回ってきたんだ」

「とある依頼? 食堂の方にですか?」

 RSIは大企業である。
 モンスターの討伐依頼や研究依頼が来ることは普通にあることなのだが食堂の担当である木山に依頼が来るなんてなかなか不思議な話である。

「最近うちではモンスターを使った新しい料理を出しているだろう?」

 元々モンスター肉のステーキなど広く流通しているようなモンスター食をRSIの食堂では出していた。
 最近では圭の働きのお陰でサハギンとマンドラゴラダイコンの煮付けなんてものも人気メニューの一つになっている。

「そうしたものはメディアなんかでも取り上げられていてな。モンスター食のブームを後押しするものだとうちも注目されている」

「そうなんですか」

 まさか社外にまで話が広まっているなんて知らなかったと圭は驚いた。
 基本的には試作のメニューを作ってしまえば後は食堂の木山たちがさらにクオリティを上げて出してくれるのであまり圭も最後まで関わっていない。

 噂として料理の評価は聞こえてきても料理が実際話題になっているかまでは聞こえてきていなかったのである。

「そしてその噂を聞いたある人物からぜひ料理を振舞ってほしいと依頼が来たのだ」

「そう……なんですか」

 話は理解できないものではない。
 けれどどうして圭に話すのかは理解できない。

「料理のいくつかを作ったのは君だ。料理人として呼ばれるが他の料理人の絶品な料理を食べることもできる良い機会なんだ。私は君のアイデアが好きだ。礼ではないが料理人として来てみないか?」

 料理を作る立場であるけれども他に招待された料理人の料理を食べることもできる。
 滅多にいくことのできないレストランの料理を食べることができる機会なので新しいモンスター料理を開発してくれたお礼に圭を連れて行きたいということだった。

「なるほど……そういえば聞いてないんですけどどこで料理を?」

「ああ、忘れていたな。世界的な美食家であるアザード・ロドリゲス、彼が貸し切る豪華客船での食事会の話だ」

「えっ!?」

「どうした?」

 まさかこんなところでアザードの話を聞くことになるとはと圭は思わず驚いてしまった。
 驚いた圭に木山も驚く。

「あ、いえ。少し前にアザードという人の話を聞いたもので」

「そうなのか。なら少し話は早いかな? 私でも羨む腕の持ち主が一挙に会する。扱いは仕事だし……美味しいものが食べられる。料理は手伝ってもらうが君にとっても悪い話ではないだろう?」

「そうですね……」

 アザードのことを聞く前だったら受けてみようと思っていた。
 しかしアザードが関わっているとなるとなかなか判断は難しい。

「なんなら平塚さんも招待するといい」

「えっ、いいんですか?」

「アザードさんは寛容なお方でな。料理人の関係者も数名なら招待することも許されているのだ。私も家族を呼ぶつもりだ」

「うーん……」

「まあすぐに決めろとは言わない。少し考えてくれ。では私は失礼するよ」

 木山は出された紅茶を飲み干すと夜滝の研究室を後にした。

「……こりゃ、どーするかな?」
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