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第八章

ダンテのお願い2

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「じゃあどうするんだ?」

 アザードを攻撃できないのに名前を出すはずがない。
 何かしらの作戦があるのではないかと圭は思っていた。

「さっきも言ったがアザードは美食家だ。普段は高級なレストランに行ったり自分のところに呼びつけたりしているが年に何回か他の国にまで飯を食べるんだ」

 さすがは暴食の悪魔の使徒だとダンテも思う。

「大金持ちだからな。ただの旅行でもなくアザードは豪華客船を貸し切って他の国に行くんだ」

「豪華客船で?」

「そうだ。著名人や財界の関係者を呼んで、みんなで楽しい食事会を行う」

 ただそれだけでもなさそうだとダンテは思うけれど内情まではダンテも知らない。

「そして次にアザードが来るのが日本なんだ」

 実はアザードが日本に来る頻度は比較で高い。
 日本のみならずアジア圏を回ることもあるのだが、その時も日本がルートに入っているのだ。

 今回は日本が目的でアザードがやってくるということをダンテはキャッチしていた。

「それで……」

「それで?」

「何かいい方法はないかと思ってな」

「へっ?」

「俺やユファは顔が知られている。だがどうにか船に忍び込んでアザードを倒したいのだ」

「……作戦ないのか?」

「今のところはないな」

 ダンテは堂々と足を組む。
 それでだけで絵になるような容姿をしているけれどまさか無策だったとは圭も意外である。

 アザードを見つけて日本に来る、というところまではダンテもなんとかつかまえたのであるが、その先がどうにもならなかったのである。
 悪魔教相手ではダンテやユファの顔は知られている。

 アザードの身辺警護がどうなっているのか詳細は不明であるが、そもそも招待もなく船に乗り込むことも厳しいのに顔がバレるかもしれないダンテでは戦うより前にバレてしまう。
 手助けしてほしいというのは船に忍び込むのに何かやってほしいではなく、何か知恵を貸してほしいということだったのである。

「船に忍び込む……か」

 ただ忍び込むだけでなく顔が知られていてバレる可能性があるというのは大きい。
 降って湧いたように考えがほしいと言われても難しい。

「……あれはどうだい?」

「あれ?」

「四階でもらったやつ」

「四階……あっ!」

 夜滝に言われて圭は思い出した。

「使えそうなもんがある」

「おっ、さすがケイだな」

 こんな時にちょうどいいものがあった。
 圭は使っておらず物を置いている部屋に行ってダンテが船に忍び込むのに使えそうな物を持ってきた。

「……ナニコレ?」

 圭たちの会話を遠巻きに見ていたユファも不思議そうに首を傾げる。
 圭がテーブルに置いたものはとてもダンテの問題を解決しそうなものに見えなかったのだ。

「アメと……フェイスパック?」

 置かれたものは二つあった。
 一つはビンに入ったアメのようなもの。

 もう一つは顔のパックなどに使いそうな薄いペラペラとした楕円形の紙だった。

「これは声を変えてくれるアメで、こっちは顔を変えてくれるマスクなんだ」

「なに?」

 以前大王ゴブリンを倒した時のシークレットクエストで波瑠が声変わりのアメをてにいれた。
 舐めている間に声を変えることができるという不思議なアイテムで意外と内容量もあるので遊んで使った以外は取っておいた。

 そしてフェイスパックのような紙の方は塔の四階で平穏の女神を倒した時に出てきたシークレット報酬だった。
 人皮面具という名前のアイテムで、こちらも波瑠の報酬として出てきたものだった。

 特に使い道がないからとまとめて夜滝の部屋に置いてあった。

「これを使えば見た目でバレることはないだろうと思うけど」

 ダンテが試しに人皮面具を一枚手に取って顔につける。

「うっ!?」

 顔につけた瞬間人皮面具が吸い付くようにダンテの顔に密着した。
 驚いてダンテが人皮面具を引き剥がそうとするけれど肌と同一化して剥がすこともできない。

「……ど、どうなってる?」

「ウェッ!?」

「なんでよりによって……」

 顔の表面で蠢く気持ちの悪い感覚が少しあったけれどすぐに落ち着いた。
 人皮面具を剥がそうとしていた手をどけるとダンテの顔は圭の顔になっていた。

 なんでその顔にしたのだと圭は眉をひそめる。

[すごいじゃない! 完全にケイの顔になってるわよ!]

 興奮したユファが圭の顔になったダンテの顔を近くでマジマジと見る。
 近くで見ても圭の顔で人皮面具の境目も見えない。

「これは……すごいな」

 ダンテがスマホを取り出して自分の顔を確認する。
 これならば確かに見た目でダンテだとバレることはなさそうである。

 一度貼り付けると自分で剥がさない限り丸一日保つ。

「招待客を探して、その人になりすまして入ってみればいいんじゃないかな」

 ついでに声変わりのアメを使って声まで変えればダンテだと気付ける人はまずいない。

「ケイ! ありがとう!」

「う、うん。その顔でいうのはやめてくれるかな……?」

 感謝されるのはいいけれど自分の顔なのはかなり気になる。
 ひとまず船に忍び込むための方法はなんとか見つけられたようであった。
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