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第八章

一緒になれない青紅剣3

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「ワタシガアイツヲコロス……」

 仮にフィーネが翻訳してくれなくとも言葉が理解できたかもしれないと思うほどリーインの目には怒りが浮かんでいた。
 強い相手と戦うほど怪我の治療も簡単ではなくなる。

 モンスターだろうと人間だろうと戦って怪我を負うと傷口に相手の魔力が残る。
 これが怪我の回復を阻害するらしく、強い相手ほど魔力も強く残るので弱いヒーラーだと治療ができないこともある。

 ウェイロンもカイもA級覚醒者である。
 その戦いにおけるダメージも大きなものであり、並のヒーラーでは治せない。

 A級覚醒者でヒーラーの力を持つものは世界でも数人しかいない。
 中国にはA級ヒーラーはおらずアメリカやインドなどにいるけれども、他国所属のヒーラーに依頼するのも簡単なことではないのだ。

 今もウェイロンは意識不明の寝たきり状態となっていた。
 うっすらと薫ならどうだろうという考えがないこともないが確証もないことを口にはできない。

「青剣は塔で出た優れた神兵利器です。対抗するためには同じく塔から出る紅剣が必要でしょう」

 ただ二振一対の青剣と紅剣を揃えたいというだけでなくカイに対抗するためにも青剣に負けない紅剣が欲しい。
 圭たちの知らない間に大きな事件があったのである。

 もしもっと早く紅剣を引き渡していたらカイはウェイロンによって倒されていたかもしれない。
 仮定の話なので論ずるだけ無駄ではあるけれど圭はそんなふうに考えてしまった

『リウ・リーイン
 レベル230
 総合ランクB
 筋力C(一般)
 体力C(一般)
 速度A(英雄)
 魔力A(英雄)
 幸運B(英雄)
 スキル:竜人化
 才能:強靭な魔力経路』

 チラリとリーインの能力を盗み見てみた。
 確かにA級覚醒者で筋力の低さはあるものの武器で攻撃力を補えばかなり強そうだと思った。

「カンテイガオワッタ」

 スキルを発動させて紅剣をじっと見ていたヤオが剣を鞘に収めてテーブルに置いた。
 ヤオはリーインとヤンに声をかける。

「ホンモノデス」

 フィーネの翻訳によるとヤオの鑑定でも青剣と対を成す紅剣であることが分かったようだ。
 カレンの盾のように鑑定不可でなくてよかったと圭はホッと胸をなで下ろす。

 鑑定不可だったら紅剣だと証明するのも一苦労で話がこじれてしまうところだった。

「……今回我々に連絡をくださったということは我々と取引するつもりがある、ということでよろしいでしょうか?」

「ええそのつもりです」

 そもそも表立って紅剣を売るつもりはない。
 塔のシークレットクエストで入手しましたなんて経緯は説明できないし、青剣と合わせて使うのが正しいなら他の人に渡すよりも青龍ギルドがいいだろうと思っていた。

 今はカイが青剣を持っているらしいがカイになんて引き渡すつもりはない。
 けれどもカイが青剣を手に入れたなら紅剣を狙ってくる可能性もあるので早めに手放したいという考えもあった。

「何をご所望でしょうか? お金、アーティファクト、青龍ギルドにしてほしいことでもなんでもご用意いたします」

「……そうですね」

 圭はアゴに手を当てて悩む。
 こうした時にわかりやすいのはお金である。

 しかし塔のシークレットクエストをクリアして手に入れた希少な剣という価値をお金に換算するのも容易ではない。
 きっと安くない額をもらうことができる。

 今の仕事を辞めて覚醒者として活動しなくても遊んでいけるぐらいの金額にはなるだろう。
 ただ今は遊んで暮らしている暇はない。

 お金持ちになることは魅力であるけれどこのままいくとお金なんて関係ない滅びの時が訪れるかもしれないのだ。

「アーティファクトを考えています」

 やはりここは優秀な装備が欲しいと圭は思った。
 青龍ギルドは中国でもトップクラスのギルドである。

 きっと保有しているアーティファクトも色々とあるはずだ。

「分かりました。ではこちらが保有するアーティファクトのリストをお送りします。欲しいものをおっしゃっていただければそこから交渉していきましょう」

 今この場で紅剣を引き渡しはしない。
 紅剣の鑑定とその前段階の交渉が目的だった。

「紅剣は覚醒者協会に預けます。今日はありがとうございました」

「こちらこそ連絡をくださってありがとうございます」

 圭は上がってヤンやリーインと握手を交わす。
 リーインがウェイロンとカイの話でピリついた空気を出したものの話し合いとしては穏やかに進めることができたのだった。
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