15 / 550
第一章
初めての力比べ9
しおりを挟む
「あ……」
「危ない……うわっ」
糸が切れたように後ろに倒れるフテノをとっさに支えようとしてリュードもそのまま一緒に地面に倒れ込んでしまう。
勝利で完全に集中が途切れて全く支える手に力が入らなかった。
2人とも限界だった。
並ぶようにして地面に転がるリュードたちに惜しみなく拍手と賞賛の声がかかる。
「負けたよ……」
なんとか力を振り絞ってリュードの上から転がって空を見上げたままフテノは呟くように言った。
下馬評通り優勢はフテノだったし総合的に見てもリュードはフテノに及んでいない。
でもリュードは諦めずに戦って全てを出し切って、勝った。
「運が良かった。それだけさ」
「運も味方につけられる者が強いのさ。力に差があろうと勝負に勝った者が強い者。
これが僕たちのルールだ」
首だけを動かして俺を見たフテノには負の感情が見えず、むしろ清々しいほどの晴れやかな顔をして笑っている。
「いつから足、挫いてたんだ?」
「あぁ……やっぱり気付いてたんだね」
足さえ挫かなかったら負けていたのはリュードの方だ。
「君が地面を滑るようにした攻撃をかわして空中で攻撃されて弾かれた時さ。
僕は勝つつもりだったから出来る限りダメージは避けたくて地面に叩きつけられる前にどうにか衝撃を吸収して立とうと思ったのさ」
それが間違いだったとため息をついて再び空を見上げてフテノは続ける。
「もっと上手くやれれば良かったんだけど結果は失敗。
足は捻ってしまったし強かに地面に激突した」
なるほどと思った。
なんてことはなく1度地面に叩きつけられて跳ねたようにリュードには見えていたけどその時にはフテノの中で駆け引きが始まったいたのだ。
跳ねたのではなく足をついて立ち上がり、そのまま反撃に移ろうとしたのだが威力を殺しきれず飛び跳ねるようになったのだ。
結果吸収しきれなかった衝撃を受けて足を挫くという代償を払うことになった。
もしフテノの思惑が成功していたら無鉄砲に突撃してたリュードは無事じゃ済まない反撃をされていた。
「ほんの一瞬の判断が勝負を決める……15歳の今年がチャンピオンのチャンスだったのになぁ」
空を見上げたままポツリとつぶやくフテノ。
勝者が敗者にどう声をかけるべきなのかリュードにはそれが分からない。
最後にどう言うべきか迷っている間にフテノは治療班によって運ばれていった。
「立てるか?」
「父さん」
フテノを運んでいった医療班と入れ替わりで父であるヴェルデガーが側に来ていた。
未だ倒れたままのリュードを上から覗き込むヴェルデガーの顔はどこか誇らしげな様で、それでいて優しげに微笑んでいた。
息子の成長を喜ぶ父の姿。
フテノと会話している時には優勝した実感があまりなかった。
けれど優しく微笑むヴェルデガーの顔を見てようやくわいてくる。
じわじわと胸に優勝の喜びが広がっていきニマニマと顔が笑ってしまう。
差し出されたヴェルデガーの手を取るとヴェルデガーの魔力が体に流れ込んできて体が少しだけ軽くなる。
「本当は勝者は回復させちゃダメなんだがな。まあ、優勝者が寝転んだままというのは格好がつかないからな」
イタズラっぽく笑ってウインクをするヴェルデガーの手に体重をかけて起き上がるとみんなが周りで見てることを思い出した。
「お前は自慢の息子だ!」
起き上がった後ヴェルデガーはそのままリュードの腰を掴んで持ち上げると肩に乗せた。
全員の視線がリュードに集中する。
こんなことされると思っておらず気恥ずかしそうにしているリュードにまずはルフォンが拍手してくれるのが見えた。
やがてみんなに拍手が広がっていき、同時にリュードの中で喜びが爆発して今度は自分から両手を突き上げて喜びを表現した。
改めて優勝者を称える。
リュードは歓声に応えて両手を大きく振り返した。
前の人生も平々凡々としていて何かで1番になったことがなかったリュードの、初めて掴み取った1番の日であった。
その後は下ろしてもらい、なんとか控え場所まで1人で歩く。
もう限界だけど最後に自分の足で控え場所まで帰る、これも必要なことである。
けど疲労の限界だったリュードは控え場所に入ってすぐのところで動くことができなくなってしまい、父の背中に揺られて家まで帰った。
「危ない……うわっ」
糸が切れたように後ろに倒れるフテノをとっさに支えようとしてリュードもそのまま一緒に地面に倒れ込んでしまう。
勝利で完全に集中が途切れて全く支える手に力が入らなかった。
2人とも限界だった。
並ぶようにして地面に転がるリュードたちに惜しみなく拍手と賞賛の声がかかる。
「負けたよ……」
なんとか力を振り絞ってリュードの上から転がって空を見上げたままフテノは呟くように言った。
下馬評通り優勢はフテノだったし総合的に見てもリュードはフテノに及んでいない。
でもリュードは諦めずに戦って全てを出し切って、勝った。
「運が良かった。それだけさ」
「運も味方につけられる者が強いのさ。力に差があろうと勝負に勝った者が強い者。
これが僕たちのルールだ」
首だけを動かして俺を見たフテノには負の感情が見えず、むしろ清々しいほどの晴れやかな顔をして笑っている。
「いつから足、挫いてたんだ?」
「あぁ……やっぱり気付いてたんだね」
足さえ挫かなかったら負けていたのはリュードの方だ。
「君が地面を滑るようにした攻撃をかわして空中で攻撃されて弾かれた時さ。
僕は勝つつもりだったから出来る限りダメージは避けたくて地面に叩きつけられる前にどうにか衝撃を吸収して立とうと思ったのさ」
それが間違いだったとため息をついて再び空を見上げてフテノは続ける。
「もっと上手くやれれば良かったんだけど結果は失敗。
足は捻ってしまったし強かに地面に激突した」
なるほどと思った。
なんてことはなく1度地面に叩きつけられて跳ねたようにリュードには見えていたけどその時にはフテノの中で駆け引きが始まったいたのだ。
跳ねたのではなく足をついて立ち上がり、そのまま反撃に移ろうとしたのだが威力を殺しきれず飛び跳ねるようになったのだ。
結果吸収しきれなかった衝撃を受けて足を挫くという代償を払うことになった。
もしフテノの思惑が成功していたら無鉄砲に突撃してたリュードは無事じゃ済まない反撃をされていた。
「ほんの一瞬の判断が勝負を決める……15歳の今年がチャンピオンのチャンスだったのになぁ」
空を見上げたままポツリとつぶやくフテノ。
勝者が敗者にどう声をかけるべきなのかリュードにはそれが分からない。
最後にどう言うべきか迷っている間にフテノは治療班によって運ばれていった。
「立てるか?」
「父さん」
フテノを運んでいった医療班と入れ替わりで父であるヴェルデガーが側に来ていた。
未だ倒れたままのリュードを上から覗き込むヴェルデガーの顔はどこか誇らしげな様で、それでいて優しげに微笑んでいた。
息子の成長を喜ぶ父の姿。
フテノと会話している時には優勝した実感があまりなかった。
けれど優しく微笑むヴェルデガーの顔を見てようやくわいてくる。
じわじわと胸に優勝の喜びが広がっていきニマニマと顔が笑ってしまう。
差し出されたヴェルデガーの手を取るとヴェルデガーの魔力が体に流れ込んできて体が少しだけ軽くなる。
「本当は勝者は回復させちゃダメなんだがな。まあ、優勝者が寝転んだままというのは格好がつかないからな」
イタズラっぽく笑ってウインクをするヴェルデガーの手に体重をかけて起き上がるとみんなが周りで見てることを思い出した。
「お前は自慢の息子だ!」
起き上がった後ヴェルデガーはそのままリュードの腰を掴んで持ち上げると肩に乗せた。
全員の視線がリュードに集中する。
こんなことされると思っておらず気恥ずかしそうにしているリュードにまずはルフォンが拍手してくれるのが見えた。
やがてみんなに拍手が広がっていき、同時にリュードの中で喜びが爆発して今度は自分から両手を突き上げて喜びを表現した。
改めて優勝者を称える。
リュードは歓声に応えて両手を大きく振り返した。
前の人生も平々凡々としていて何かで1番になったことがなかったリュードの、初めて掴み取った1番の日であった。
その後は下ろしてもらい、なんとか控え場所まで1人で歩く。
もう限界だけど最後に自分の足で控え場所まで帰る、これも必要なことである。
けど疲労の限界だったリュードは控え場所に入ってすぐのところで動くことができなくなってしまい、父の背中に揺られて家まで帰った。
35
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
《作者からのお知らせ!》
※2025/11月中旬、 辺境領主の3巻が刊行となります。
今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。
【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん!
※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。
風魔法を誤解していませんか? 〜混ぜるな危険!見向きもされない風魔法は、無限の可能性を秘めていました〜
大沢ピヨ氏
ファンタジー
地味で不遇な風魔法──でも、使い方しだいで!?
どこにでもいる男子高校生が、意識高い系お嬢様に巻き込まれ、毎日ダンジョン通いで魔法検証&お小遣い稼ぎ! 目指せ収入UP。 検証と実験で、風と火が火花を散らす!? 青春と魔法と通帳残高、ぜんぶ大事。 風魔法、実は“混ぜるな危険…
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる