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第二章
閑話・最悪の始まり
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サワケー・キンミッコという男は一言で言うと劣等感の塊のような男である。
嫉妬深く自分が1番でないと気が済まない。
それなのに努力を嫌い、1番になるために卑怯な手を使うことには躊躇いもない男だった。
ストレスを感じると親指の爪を噛む癖があり常にサワケーの親指はぼろぼろ。
ここ数年は特にひどい。
心が休まる時などなく、部下の前でも親指の爪を噛みそうになる。
領民の不満は募り、忌々しくて聞きたくもないパノンやミエバシオの名前が人々の口からとびだしてくるようになった。
話が大きくなってくれば自然とサワケーの耳にも話が入ってくる。
そのタイミングで和平を前提にしたトキュネスとカシタコウの交渉が始まることになった。
前提となっているのは和平だけでない。
和平のための取引条件としてトキュネスがカシタコウから奪った領地の返還も和平の条件となっている。
代わりにカシタコウは大きな金銭的な支援をトキュネスにする。
細かな内容だけが決まっておらず、そこは今の領主であるサワケーとかつての領主であるミエバシオが交渉を行うことになった。
国同士で大筋の内容が決まってしまっている。
難癖をつけて反故にすることもできない。
戦争による復興をうたい重税を課して私服を肥やしてきたサワケーは怯えていた。
もはや領民は限界を迎えていて爆発寸前だった。
今後の待遇は相手から引き出した金額で決まるというのに。
民の不満がカシタコウへの編入を後押しすることになったら大きな金額を引っ張ってくることは難しくなる。
不当に少ない金額を提示するとも思えないがどうしてその金額になったのかは聞かれるだろう。
自分の悪政が原因ですなんて口が裂けても言えない。
そんな時だった。
パノンの話が皆の間で出るようになったからかサワケーは思い出した。
そういえば確かにパノンには娘がいたと。
自分の誘いを断ってくれたこともある良くできたパノンの美人妻の顔が思い浮かぶ。
結婚すると聞いた時は激しく嫉妬した。
そんな人から産まれた娘。
おぼろげな記憶では小さいながら母親の顔の特徴を継いでいて、将来は美人になりそうな雰囲気があった。
自分に人気がないから他人の人気を使えばいい。
パノンはなぜなのか未だにこの辺りでも民衆に支持されている。
私服を肥やし、自らの腹も肥やしてしまった自分の妻にサワケーは長いこと興味を失っていた。
若い女かとニヤリと笑ってサワケーは親指の爪を噛むことをやめた。
パノンの娘についてはパノンがどちらの国でも変に有名だったおかげで大変ではあったけれど調べ上げることができた。
今は冒険者になるために冒険者学校にいるということがわかった。
なので自分と同じく甘い汁をすすっている中から汚い仕事をするものを2人ほど選んだ。
1人はサワケーの下で相当汚いことをやってきた者。
息子の罪ももみ消してやったこともあるのでサワケーの命とあればなんとしてでも遂行する。
領地を明け渡すことになって相手に悪事がバレればただでは済まないのはそいつも同じだった。
一族の資産は没収だろうし本人も息子も牢獄行きだろう。
万が一何かがあっても口を割らないことを念押ししておいた。
何かがあったら家族を頼みますなんて言ってたけれど小娘1人に何が起こるというのだろう。
軽く任せておけと言っておいた。
そうして吉報を待っている間に別の話が舞い込んできた。
交渉相手のミエバシオには妹がいるという話だ。
これについても知らなかったので調べさせた。
細かいことは分からなくてもいるということは判明した。
なのでさらに細かく調べさせることにした。
程なくして居場所を見つけたと報告があった。
2枚目のカードを見つけた気がしてサワケーは思わず1人でほくそ笑んでしまっていた。
慌てて調べさせたせいで相手に感づかれたようで移動を始めてしまった。
すぐに人をやって連れてくるように指示を出した。
何の報告もなくて苛立っているとどうやら両方失敗したようだと部下が怯えて告げた。
パノンの娘の方は分からないがミエバシオの妹は失敗は確実だと。
パノンの娘の方は逃げたか、死んだか、連絡ない。
どちらにせよ失敗しているだろうとのことだった。
「この、役立たずどもが!」
デスクを殴りつける。
小娘1人連れてくることもできないとは不出来な部下を持ったものだ。
相手は警戒するだろうが他に方法もなく、時間もない。
もう1度襲わせるより他にない。
そんな時に部下があげた報告にサワケーはニヤリとした。
パノンの娘とミエバシオの妹が一緒にいるのだという。
運が向いてきたとサワケーは思った。
出し渋っていた費用をポンと出し、誘拐が得意だという男たちに連れてくるように依頼する。
2人同時に連れて来られるならむしろお得なぐらいだと思った。
また失敗するのではないかと思って気づかぬ間に親指の爪を噛んでいる。
日数的にはギリギリ。
これが最後のチャンスである。
交渉の準備もせねばならない。
そんな時に連絡が来た。
飛びついて内容を確認すると何と2人とも連れてくることに成功したというではないか。
すっかり気分も良くなってその日は親指の爪を噛むこともなく、酒を楽しんだ。
そうしながらパノンの娘をどう使って領民の支持を集めるかを考えた。
ただ側に置くだけでは効果は薄い。
デカく目立つように、かつ自分に支持が集まるようにしなければいけない。
悩んでいると腹心の1人が耳元で囁いた。
第二夫人を迎えてはいかがでしょうか?と。
悪くない囁きだと思った。
いいことを言った部下にはボーナスをくれてやった。
急な話だが教会と話をつけ、1日貸し切ることにした。
部下を使って噂を大々的に流す。
当日に街を練り歩き本当であることを示せば領民も驚きと支持をするだろうという算段だ。
なのに。
「ここに異議のある者がいるぞ!」
黒い何かが神父の言葉を遮り、女神のステンドグラスをぶち割って教会に飛び込んで来た。
キンミッコにとっての最悪が始まった瞬間だった。
嫉妬深く自分が1番でないと気が済まない。
それなのに努力を嫌い、1番になるために卑怯な手を使うことには躊躇いもない男だった。
ストレスを感じると親指の爪を噛む癖があり常にサワケーの親指はぼろぼろ。
ここ数年は特にひどい。
心が休まる時などなく、部下の前でも親指の爪を噛みそうになる。
領民の不満は募り、忌々しくて聞きたくもないパノンやミエバシオの名前が人々の口からとびだしてくるようになった。
話が大きくなってくれば自然とサワケーの耳にも話が入ってくる。
そのタイミングで和平を前提にしたトキュネスとカシタコウの交渉が始まることになった。
前提となっているのは和平だけでない。
和平のための取引条件としてトキュネスがカシタコウから奪った領地の返還も和平の条件となっている。
代わりにカシタコウは大きな金銭的な支援をトキュネスにする。
細かな内容だけが決まっておらず、そこは今の領主であるサワケーとかつての領主であるミエバシオが交渉を行うことになった。
国同士で大筋の内容が決まってしまっている。
難癖をつけて反故にすることもできない。
戦争による復興をうたい重税を課して私服を肥やしてきたサワケーは怯えていた。
もはや領民は限界を迎えていて爆発寸前だった。
今後の待遇は相手から引き出した金額で決まるというのに。
民の不満がカシタコウへの編入を後押しすることになったら大きな金額を引っ張ってくることは難しくなる。
不当に少ない金額を提示するとも思えないがどうしてその金額になったのかは聞かれるだろう。
自分の悪政が原因ですなんて口が裂けても言えない。
そんな時だった。
パノンの話が皆の間で出るようになったからかサワケーは思い出した。
そういえば確かにパノンには娘がいたと。
自分の誘いを断ってくれたこともある良くできたパノンの美人妻の顔が思い浮かぶ。
結婚すると聞いた時は激しく嫉妬した。
そんな人から産まれた娘。
おぼろげな記憶では小さいながら母親の顔の特徴を継いでいて、将来は美人になりそうな雰囲気があった。
自分に人気がないから他人の人気を使えばいい。
パノンはなぜなのか未だにこの辺りでも民衆に支持されている。
私服を肥やし、自らの腹も肥やしてしまった自分の妻にサワケーは長いこと興味を失っていた。
若い女かとニヤリと笑ってサワケーは親指の爪を噛むことをやめた。
パノンの娘についてはパノンがどちらの国でも変に有名だったおかげで大変ではあったけれど調べ上げることができた。
今は冒険者になるために冒険者学校にいるということがわかった。
なので自分と同じく甘い汁をすすっている中から汚い仕事をするものを2人ほど選んだ。
1人はサワケーの下で相当汚いことをやってきた者。
息子の罪ももみ消してやったこともあるのでサワケーの命とあればなんとしてでも遂行する。
領地を明け渡すことになって相手に悪事がバレればただでは済まないのはそいつも同じだった。
一族の資産は没収だろうし本人も息子も牢獄行きだろう。
万が一何かがあっても口を割らないことを念押ししておいた。
何かがあったら家族を頼みますなんて言ってたけれど小娘1人に何が起こるというのだろう。
軽く任せておけと言っておいた。
そうして吉報を待っている間に別の話が舞い込んできた。
交渉相手のミエバシオには妹がいるという話だ。
これについても知らなかったので調べさせた。
細かいことは分からなくてもいるということは判明した。
なのでさらに細かく調べさせることにした。
程なくして居場所を見つけたと報告があった。
2枚目のカードを見つけた気がしてサワケーは思わず1人でほくそ笑んでしまっていた。
慌てて調べさせたせいで相手に感づかれたようで移動を始めてしまった。
すぐに人をやって連れてくるように指示を出した。
何の報告もなくて苛立っているとどうやら両方失敗したようだと部下が怯えて告げた。
パノンの娘の方は分からないがミエバシオの妹は失敗は確実だと。
パノンの娘の方は逃げたか、死んだか、連絡ない。
どちらにせよ失敗しているだろうとのことだった。
「この、役立たずどもが!」
デスクを殴りつける。
小娘1人連れてくることもできないとは不出来な部下を持ったものだ。
相手は警戒するだろうが他に方法もなく、時間もない。
もう1度襲わせるより他にない。
そんな時に部下があげた報告にサワケーはニヤリとした。
パノンの娘とミエバシオの妹が一緒にいるのだという。
運が向いてきたとサワケーは思った。
出し渋っていた費用をポンと出し、誘拐が得意だという男たちに連れてくるように依頼する。
2人同時に連れて来られるならむしろお得なぐらいだと思った。
また失敗するのではないかと思って気づかぬ間に親指の爪を噛んでいる。
日数的にはギリギリ。
これが最後のチャンスである。
交渉の準備もせねばならない。
そんな時に連絡が来た。
飛びついて内容を確認すると何と2人とも連れてくることに成功したというではないか。
すっかり気分も良くなってその日は親指の爪を噛むこともなく、酒を楽しんだ。
そうしながらパノンの娘をどう使って領民の支持を集めるかを考えた。
ただ側に置くだけでは効果は薄い。
デカく目立つように、かつ自分に支持が集まるようにしなければいけない。
悩んでいると腹心の1人が耳元で囁いた。
第二夫人を迎えてはいかがでしょうか?と。
悪くない囁きだと思った。
いいことを言った部下にはボーナスをくれてやった。
急な話だが教会と話をつけ、1日貸し切ることにした。
部下を使って噂を大々的に流す。
当日に街を練り歩き本当であることを示せば領民も驚きと支持をするだろうという算段だ。
なのに。
「ここに異議のある者がいるぞ!」
黒い何かが神父の言葉を遮り、女神のステンドグラスをぶち割って教会に飛び込んで来た。
キンミッコにとっての最悪が始まった瞬間だった。
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