人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが?〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜

犬型大

文字の大きさ
116 / 550
第二章

異議のある者8

しおりを挟む
「あいつが戦争で名を馳せた化け物な訳がない。恐れるな!」

 ご先祖様は魔人族の英雄。
 単純に魔人族の英雄といえば竜人族以外の種族にもいるのだが、面白いのはそれぞれの種族の英雄にはそれぞれ特色があることだった。

 英雄の1人が竜人族ということで竜人族はよくこうした英雄の話をする。
 中でも竜人族のご先祖様のシュバルリュイードの特色は竜人族というだけでない。

「チェーンライトニング!」

 竜人族の英雄の特色は雷属性の魔法をよく使っていたことである。
 竜人族は魔法が得意なので他の属性も使えるのだが、シュバルリュイードは雷属性の魔法をよく使っていたらしいのだ。

 理由は単純明快で雷属性が空いていたからというのが竜人族にひっそりと伝わっている。
 たまたまそれぞれの種族から英雄と呼んでいいレベルの者が出た。
 
 種族によっては得意な属性や戦い方があり、英雄それぞれ別々の特色を持っていた
 火は魔王が使っているし他の属性も他の英雄となる人が使っていた。
 
 なので特徴を持たせる意味でも雷属性を使っていたのである。
 つまりシュバルリュイードは自分という存在を際立たせるために雷属性を選んだのだ。
 
 見た目と合わせて黒雷なんて呼ばれていたらしい。
 とんでもない話であるが遥か昔の魔力が多い時代の竜人族は魔法も色々使えたので雷属性でもなんの問題もなかったのである。

 空気に魔力が拡散する速度が早い雷属性は力の消耗が激しく、生まれ持って雷の性質をもつ者以外にはあまり使われない。
 魔法が衰退した今現在ではより下火になっている属性である。

 けれどもリュードは魔法の勉強が好きで、失われつつある雷属性はヴェルデガーの魔導書の中にも書いてあった。

「ぎゃああああっ!」

 リュードが放った雷は1番近くの兵士に当たり、威力を減じながら次々と近い人に連鎖していく。
 1回の魔法で十数人が感電してしまう。

 倒れたのは最初に感電した数人だったが倒れなかった人も全身に走る感じたことのない痛みに多くひるんでいる。
 ご先祖様に憧れて、ではなく狩りの時感電させられたら便利そうという理由で練習していたのでリュードは雷属性も扱えた。
 
 魔力も多く電気のイメージが出来たリュードは他の人よりも雷属性に適性があったのだ。

「あれは雷魔法!」

「ウソだろ! 今時あんな魔法扱える奴がいるのか!?」

「まさか本当に英雄……しかしもうとっくに死んでいるはずだ!」

 敵に動揺が走る。
 真人族は身体能力的に魔法耐性が低いので雷属性の魔法はよく効く。

 身につけている防具だってアンチマジックの性能もなければ鎧も着ていないも同然である。
 こう考えると雷属性は奇しくも真人族キラーな性能を持つ魔法となる。

 キンミッコは求心力がないようだ。
 命をかけてリュードに挑んでくる者もいなければ適正な指示を飛ばす指揮官もいない。

 やる気もなく統率も取れていない、槍や剣を持った烏合の衆。

「道を開けろ!」

 リュードが右手を上げる。
 バチバチと雷が弾ける音がし始める。

 わざとすぐには魔法を打たず道を開ける時間をつくってやる。
 人が避けたのを確認してそこに雷を落とす。

 カッと一瞬閃光が走り、雷が床にぶつかって轟音が鳴る。
 教会の床が焦げてしまったが、悪人に結婚式を開かせた代償だと思って許してほしい。

「行くぞ」

「リュリュリュ、リュー……」

「シィー! 名前を呼ぶな」

 エミナを抱きかかえる。いわゆるお姫様抱っこというやつである。
 体面的にエミナが大人しく付いてきたよりも誘拐っぽく見えるはずだ。
 
 あくまでもリュードが連れ去ったのである。
 急な密着にエミナの顔が一瞬で真っ赤になる。

 普通に名前を呼びそうになったのでエミナの口に尻尾を押し当てて黙らせる。
 エミナはほんのりと冷たいようなゴツゴツとした尻尾の感触に余計に顔を赤くする。

 雷を避けて人が割れて道ができている。
 リュードはあえて堂々と真ん中を歩き、教会を出る。
 
 こうなると一介の兵士では空気に飲まれてしまって動くことすらできない。
 少しでもまともな指揮官がいればすぐにでも囲まれてしまうのだろうが、そんな支持を出せるような人物はキンミッコ側にいない。
 
 強いて言うなら最初に殴り倒した重装備の兵士がそんな人物だったのだろうが今も気を失って倒れている。
 ある意味最初に倒した人物が指揮を取るような兵士だったのは運が良かった。

 教会を出るとその正面にある学校の窓から様子を見る子供たちが見える。
 今子供たちに自分はどう見えているのかとチラリと視線を向けた。

 花嫁を抱き抱えて連れ去ってきたリュードの姿を見て、子供たちは目を輝かせていた。
 まるでおとぎ話の王子様のような堂々たる姿に男の子だけでなく女の子も憧れの視線を向ける。

 身長の高いリュードの腕の中にいるエミナの顔は他に人からはよく見えないが高いところからでは見える。
 頬を赤く染め、潤んだ瞳でリュードを見上げるその様は嫌がっているようには見えなかった。

 子供たちはこの物語を見逃すまいと固唾を飲んでリュードの姿を見守る。

「開けろ」

 門は人が入らないように閉ざされていた。
 リュードは門を開けるように命じた。

 異様な光景に完全に飲まれてしまった兵士は門を開け放ち、リュードはゆっくりと教会の敷地から出てきた。
 教会の前に集まっていた人々もリュードから離れて様子を見る。
 
 リュードの周りだけぽっかりと円形に人がいなくなっていた。
 これはちょうどよい。
 
 いくなら最後まで派手にやってみよう。

「キンミッコ! 悪辣なやり方は神になった俺が見ていた。貴様には天の罰が下るだろう!」

 下ればいいなとリュードは思う。希望的観測だ。
 しかしエミナとヤノチを取り戻せば今回の交渉はキンミッコに相当不利なはずである。

 天罰といかなくても相当な不利益を被るだろうからあながち希望だけでもないだろう。
 リュードの周りに雷が落ちる。
 
 魔力は消耗してしまうけど、これぐらい派手にやってもバチは当たらない。
 眩い光と轟音に人々は目を逸らし、耳を塞いだ。

 この時に正義と愛と雷と竜人族の神シュバルリュイードがこの世に認知され、誕生したのであった。
 教室の中にいた子供たちだけが窓の外を通り過ぎる黒い影を目撃し、他の人々は円形に焼け焦げた跡だけが残って消えたリュードに言葉もなくただ立ち尽くしていたのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜

九尾の猫
ファンタジー
サバイバルゲームとアウトドアが趣味の主人公が、異世界でサバゲを楽しみます! って感じで始めたのですが、どうやら王道異世界ファンタジーになりそうです。 ある春の夜、季節外れの霧に包まれた和也は、自分の持ち家と一緒に異世界に転移した。 転移初日からゴブリンの群れが襲来する。 和也はどうやって生き残るのだろうか。

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

処理中です...