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第八章
お屋敷に侵入だ2
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「はぁ……はぁ……シューナリュードはすごいな……」
二番目に登ってきたのはサンジェルだった。
リュードのアドバイスを聞いて丁寧に登ってきて、それでいながら速度も速かった。
リュードがスルスルと登っていくものだから楽だろうと思っていたが、やってみるとあんな風に登ることなんて出来ないと息を整えながら感心してしまう。
「おっ?」
「ムンっ!」
「これはコユキちゃんか」
サンジェルの体がふわりと軽くなる。
コユキが下から神聖力を飛ばしてサンジェルの体を癒してくれる。
すぐさま疲労が和らいでいってパンパンだった手足が楽になる。
「こりゃすごい! 聖者のタマゴというのも納得だな」
他の人は登るのにまだ時間がかかりそうだ。
リュードは一度アドバイスをやめて屋敷の方を確認する。
塀の中に人影はない。
見える屋敷にも人のいる様子はない。
「降りられはしそうだな」
ツタはそのまま塀の反対側にも伸びていっていた。
下までしっかり伸びているので帰りも塀を登ってくることはできそうだ。
ひとまず塀に出入りすることに対しては障害はない。
「こういう訓練も必要かもな……」
何とかみんな登ってきたが、みんな息も絶え絶えである。
コユキに治療してもらい、息を整える。
「今度は降りるのにチャレンジですよ」
「コユキちゃんがいなかったら辛いところだったな」
登る疲労だけでも凄まじい。
コユキの治療がなかったら丸一日塀の上で休まねばならないところであった。
「ただ降りる方が楽そうですよ」
リュードが手本を見せるようにツタを降りていく。
降りるのは太めのツタを伝って、滑り降りるようにして下まで向かった。
ちょっとだけ楽しいと思ったのは秘密だ。
「うわー! でっ! いてて……何とか下まで降りられたな」
リュードは上手く勢いを殺して下に到着したが、サンジェルはツタを滑り降りる勢いがつきすぎて飛び出して地面を転がった。
上手く自分でスピードをコントロール出来ていない。
他の人も上手く降りてきて何とか塀の中に侵入できた。
「俺たちじゃドアは開けられないしな」
「とりあえず二手に分かれて入れるところがないか探そう」
塀の中に入ったはいいけれど次の問題がある。
塀に入ったら次は家の中に入らねばならない。
けれどもリュードたちではドアノブにすら手が届かない。
どこかに入れそうな場所を探すしかないのだ。
二手に分かれて屋敷の周りを回って入れそうな場所がないかと探す。
都合よく玄関が開いているということもなかった。
「しかしよ、シューナリュード」
「なんですか?」
「ありゃ、どっちの子だ?」
「へっ?」
「ミミなんか見りゃルフォンちゃんだけど髪色を見るとラストちゃんだ。どっちのこともママと呼んでるし……どうであれ実の母は一人だろ? どっちの子なのかみんな気になってるんだ」
突然ぶち込まれた質問。
もう触れられない話題と思っていたのに普通に聞いてきた。
「あの子は実は俺の子でも二人の子でもないんですよ」
「はぁっ? それってどういう……」
「あの子には両親がいないんです……」
「あっ……」
少し悲しげな表情を浮かべてみるリュード。
みんなが言葉と様子から事情を押しはかるのは難しくない。
あまり深く触れちゃいけないことだった。
子連れで旅をしているのにまさか自分の子でもないなどと考えもしなかった。
それになんとなくリュードやルフォンやラストにも似ているような気もしていた。
だが深い事情があるのだとサンジェルも反省する。
「すまない……そうとは知らず」
嘘でもない。
ただサンジェルたちが想像するような事情もない。
ちょっと悪い気はするが深い事情がありそう風を装っておけば踏み込んでくる人もいない。
あながちウソでもない話だし、これぐらいは許されるだろう。
間違いでなくともぼんやりとした情報を与えて悲しげな表情を浮かべておけば、人は勝手にストーリーを想像してくれるのだ。
この世界において両親が何かの事情でということは時々あることだ。
リュードやルフォンは見た目が獣人族なので両親のいない獣人族の子と関係があってもおかしくない。
サンジェルは想像に想像を広げて、もうコユキに同情し始めていた。
魔人には厳しい目を向けられることもあるがサンジェルたちはそうした偏見が少ないようである。
「あそこはどうだ?」
「届きゃ入れそうだな」
警備隊の一人が窓が割れているのを見つけた。
何かがぶつかったのか角のところがリュードたちが通れそうなほどの大きさに割れていた。
そこまでどうやっていくか問題は発生するけれど、出入り口となりそうな場所はあるようだ。
「どうだった? こっちはダメだ」
他にないかと創作を続けて、反対側を回ってきたメンバーと合流する。
残念ながら反対側には入れそうな場所は見受けられなかったようである。
「あの穴は……」
「こないだの嵐だろうな」
手入れはされているので、もし窓の穴が見つかっていれば何かで塞ぐはず。
最後の定期的な手入れが入った後の穴だろうとサンジェルは言う。
他に入れそうな場所がない以上は窓の穴が唯一の侵入ルートになる。
二番目に登ってきたのはサンジェルだった。
リュードのアドバイスを聞いて丁寧に登ってきて、それでいながら速度も速かった。
リュードがスルスルと登っていくものだから楽だろうと思っていたが、やってみるとあんな風に登ることなんて出来ないと息を整えながら感心してしまう。
「おっ?」
「ムンっ!」
「これはコユキちゃんか」
サンジェルの体がふわりと軽くなる。
コユキが下から神聖力を飛ばしてサンジェルの体を癒してくれる。
すぐさま疲労が和らいでいってパンパンだった手足が楽になる。
「こりゃすごい! 聖者のタマゴというのも納得だな」
他の人は登るのにまだ時間がかかりそうだ。
リュードは一度アドバイスをやめて屋敷の方を確認する。
塀の中に人影はない。
見える屋敷にも人のいる様子はない。
「降りられはしそうだな」
ツタはそのまま塀の反対側にも伸びていっていた。
下までしっかり伸びているので帰りも塀を登ってくることはできそうだ。
ひとまず塀に出入りすることに対しては障害はない。
「こういう訓練も必要かもな……」
何とかみんな登ってきたが、みんな息も絶え絶えである。
コユキに治療してもらい、息を整える。
「今度は降りるのにチャレンジですよ」
「コユキちゃんがいなかったら辛いところだったな」
登る疲労だけでも凄まじい。
コユキの治療がなかったら丸一日塀の上で休まねばならないところであった。
「ただ降りる方が楽そうですよ」
リュードが手本を見せるようにツタを降りていく。
降りるのは太めのツタを伝って、滑り降りるようにして下まで向かった。
ちょっとだけ楽しいと思ったのは秘密だ。
「うわー! でっ! いてて……何とか下まで降りられたな」
リュードは上手く勢いを殺して下に到着したが、サンジェルはツタを滑り降りる勢いがつきすぎて飛び出して地面を転がった。
上手く自分でスピードをコントロール出来ていない。
他の人も上手く降りてきて何とか塀の中に侵入できた。
「俺たちじゃドアは開けられないしな」
「とりあえず二手に分かれて入れるところがないか探そう」
塀の中に入ったはいいけれど次の問題がある。
塀に入ったら次は家の中に入らねばならない。
けれどもリュードたちではドアノブにすら手が届かない。
どこかに入れそうな場所を探すしかないのだ。
二手に分かれて屋敷の周りを回って入れそうな場所がないかと探す。
都合よく玄関が開いているということもなかった。
「しかしよ、シューナリュード」
「なんですか?」
「ありゃ、どっちの子だ?」
「へっ?」
「ミミなんか見りゃルフォンちゃんだけど髪色を見るとラストちゃんだ。どっちのこともママと呼んでるし……どうであれ実の母は一人だろ? どっちの子なのかみんな気になってるんだ」
突然ぶち込まれた質問。
もう触れられない話題と思っていたのに普通に聞いてきた。
「あの子は実は俺の子でも二人の子でもないんですよ」
「はぁっ? それってどういう……」
「あの子には両親がいないんです……」
「あっ……」
少し悲しげな表情を浮かべてみるリュード。
みんなが言葉と様子から事情を押しはかるのは難しくない。
あまり深く触れちゃいけないことだった。
子連れで旅をしているのにまさか自分の子でもないなどと考えもしなかった。
それになんとなくリュードやルフォンやラストにも似ているような気もしていた。
だが深い事情があるのだとサンジェルも反省する。
「すまない……そうとは知らず」
嘘でもない。
ただサンジェルたちが想像するような事情もない。
ちょっと悪い気はするが深い事情がありそう風を装っておけば踏み込んでくる人もいない。
あながちウソでもない話だし、これぐらいは許されるだろう。
間違いでなくともぼんやりとした情報を与えて悲しげな表情を浮かべておけば、人は勝手にストーリーを想像してくれるのだ。
この世界において両親が何かの事情でということは時々あることだ。
リュードやルフォンは見た目が獣人族なので両親のいない獣人族の子と関係があってもおかしくない。
サンジェルは想像に想像を広げて、もうコユキに同情し始めていた。
魔人には厳しい目を向けられることもあるがサンジェルたちはそうした偏見が少ないようである。
「あそこはどうだ?」
「届きゃ入れそうだな」
警備隊の一人が窓が割れているのを見つけた。
何かがぶつかったのか角のところがリュードたちが通れそうなほどの大きさに割れていた。
そこまでどうやっていくか問題は発生するけれど、出入り口となりそうな場所はあるようだ。
「どうだった? こっちはダメだ」
他にないかと創作を続けて、反対側を回ってきたメンバーと合流する。
残念ながら反対側には入れそうな場所は見受けられなかったようである。
「あの穴は……」
「こないだの嵐だろうな」
手入れはされているので、もし窓の穴が見つかっていれば何かで塞ぐはず。
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