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第八章
お屋敷に侵入だ1
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「門が閉じているな……」
一晩経って、リュードたちはカイーダの調査のために元領主の館を訪れた。
警備隊の人がカイーダを見かけた時には門は開いていたけれど、今は閉ざされている。
隙間の大きな門なら小さいリュードは入ることが出来るが、元領主の館の門は格子状のものでもなくコユキところがリュードたちも入れない。
リュードもカバンから顔を出して周りの様子を伺う。
「どこか入れそうなところはないかな……」
元領主の館は高めの塀に囲まれている。
多少古くなって劣化はしているが、まだまだ頑丈さはあって壊れそうにはない。
グルリと周りを一周してみるけれど入れそうな穴すらない。
お金をかけてしっかり作ったのだろうなとリュードは思った。
「昨日は女性が来るから開けていたのかな?」
「かもしんないな。意外と警戒心が高いな」
「ホルドの方もまだ連絡はないし、いるにしてもいないにしてもこの館は調査したいところだが……」
いない、あるいは見間違いなどならそれはそれでもいい。
いるにしてもいないにしても調査は必要だ。
そのためには中に入らねばならない。
「うーん……とりあえず俺たちだけなら中に入れるかもしれませんよ」
「ほんとうか? 方法があるならぜひ聞かせてほしい」
塀を見ながらなんとか侵入する方法をリュードは考えていた。
ある程度可能性がありそうなものには目をつけていた。
「アレです」
「アレ?」
リュードは塀を指差した。
ただ塀は塀であり、リュードが何を指差しているのかわからなくてサンジェルは首を傾げた。
ただの塀ではないかと思う。
コユキでは到底登ることは不可能だ。
もちろんサンジェルたちにも厳しそうだ。
「よく見てください。壁にツタが走っています。しばらく手入れされていないからでしょうね」
元領主が館を手放してからだいぶ時間が経っている。
手入れしているとはいっても、塀まで細かく掃除することなんてしない。
時間が経ってそれなりに太めのツタが塀に伸びていた。
「それがどうした?」
全部片付けるには厄介なくらい伸びているツタだが、それがどうしたのか。
掃除するのが面倒なくらい太いというだけで、引っ張ればそれほど力を入れなくても取れてしまうとサンジェルは思った。
「俺たちは今結構小さくありません? 実際重さもだいぶ軽くなってるはずです」
引っ張れば取れてしまうというのは、体が大きい普通サイズの時の話だ。
今リュードたちの体は小さい。
コユキもカバンにリュードたちを入れて移動している。
この人数を持って移動できるということは、重さは大きかった時と同じではなく軽くなっているということだ。
大きさ相当の重さになっているのだろうと予想できる。
「……まさか」
ようやくサンジェルも気がついた。
「あのツタを登るんです。コユキはちょっと無理ですが、俺たちならなんとか……とりあえず塀の内側にはいけると思います」
その先に問題は山積しているけど、塀の中に入れる可能性はある。
とりあえず試すだけ試してみたってバチは当たらない。
コユキ中心に動くことは必要だけど、いざという時には自分たちだけでもなんとかせねばならない。
今こそ自分たちでなんとかする時だ。
小さくなったリュードたちにとってこのツタは立派な道になりうるのだ。
「たしかにチャレンジしてみても良さそうだな」
リュードに言われて改めてツタを見る。
今のサイズ感でツタを見ると十分に伝って登れそうなぐらいの太さがある。
他のみんなとも話し合って、ツタ登りに挑戦することにした。
「ルフォン、ラスト、コユキを頼むぞ」
「うん」
「まっかせなさい!」
ツタはコユキでは登れなさそうなので、そうなるとコユキは連れていけない。
万が一のためにルフォンとラストにコユキをお願いする。
何かがあったら町を出て他に助けを求めてもらうつもりだ。
どこか教会にでも辿り着ければ、聖職者たちの協力は得られるはずである。
「パパ、頑張って!」
「おうよ!」
「頑張ってね、パパ」
「無事に帰ってきてね、おとーさん」
「二人まで……まあ、サクッと行ってくるよ」
コユキの手に乗ってある程度の高さからツタに飛び乗ってスタートする。
「ほっと」
先陣を切るのはリュード。
ぱっと見は太いツタに目が行きがちだけど、よくよくみると太いツタからも伸びるように細かいツタが広がっている。
ツタそのものの表面もザラザラとしていて、掴みやすくクライミングするのにはとてもやりやすいぐらいだ。
ツタが塀から剥がれないか心配だったけれど、リュードが乗ったぐらいではびくともしない。
「よいしょ……」
ひょいひょいと登っていく。
村育ちのリュードは村の周りは木ばかりだったので木登りなんてこともよくやっていた。
木に登ることに比べればこれぐらい簡単である。
「かなり高いな……」
あっという間に上まで登り切ったリュード。
不謹慎ながら良い運動だったと思ってしまった。
チラリと下を確認すると他の人たちも登り始めている。
けれど普通に生きてきてこんな風に登る機会なんてないはずで、みんなツタ登りに苦戦している。
手足のかけ方や体重の移動など不慣れで遅い。
「サンジェルさん、足はもうちょい右……そう! 腕だけじゃなくてもっと足を使って体を上げて……あっ、危ない!」
上からアドバイスする。
サンジェルなんかはまだ良いが、無理に登ろうとしてツタを掴み損ねて落ちる人までいた。
下で待機するコユキがうまくキャッチしてくれたから良かったものの、命綱もないので一歩間違えれば大事故である。
一晩経って、リュードたちはカイーダの調査のために元領主の館を訪れた。
警備隊の人がカイーダを見かけた時には門は開いていたけれど、今は閉ざされている。
隙間の大きな門なら小さいリュードは入ることが出来るが、元領主の館の門は格子状のものでもなくコユキところがリュードたちも入れない。
リュードもカバンから顔を出して周りの様子を伺う。
「どこか入れそうなところはないかな……」
元領主の館は高めの塀に囲まれている。
多少古くなって劣化はしているが、まだまだ頑丈さはあって壊れそうにはない。
グルリと周りを一周してみるけれど入れそうな穴すらない。
お金をかけてしっかり作ったのだろうなとリュードは思った。
「昨日は女性が来るから開けていたのかな?」
「かもしんないな。意外と警戒心が高いな」
「ホルドの方もまだ連絡はないし、いるにしてもいないにしてもこの館は調査したいところだが……」
いない、あるいは見間違いなどならそれはそれでもいい。
いるにしてもいないにしても調査は必要だ。
そのためには中に入らねばならない。
「うーん……とりあえず俺たちだけなら中に入れるかもしれませんよ」
「ほんとうか? 方法があるならぜひ聞かせてほしい」
塀を見ながらなんとか侵入する方法をリュードは考えていた。
ある程度可能性がありそうなものには目をつけていた。
「アレです」
「アレ?」
リュードは塀を指差した。
ただ塀は塀であり、リュードが何を指差しているのかわからなくてサンジェルは首を傾げた。
ただの塀ではないかと思う。
コユキでは到底登ることは不可能だ。
もちろんサンジェルたちにも厳しそうだ。
「よく見てください。壁にツタが走っています。しばらく手入れされていないからでしょうね」
元領主が館を手放してからだいぶ時間が経っている。
手入れしているとはいっても、塀まで細かく掃除することなんてしない。
時間が経ってそれなりに太めのツタが塀に伸びていた。
「それがどうした?」
全部片付けるには厄介なくらい伸びているツタだが、それがどうしたのか。
掃除するのが面倒なくらい太いというだけで、引っ張ればそれほど力を入れなくても取れてしまうとサンジェルは思った。
「俺たちは今結構小さくありません? 実際重さもだいぶ軽くなってるはずです」
引っ張れば取れてしまうというのは、体が大きい普通サイズの時の話だ。
今リュードたちの体は小さい。
コユキもカバンにリュードたちを入れて移動している。
この人数を持って移動できるということは、重さは大きかった時と同じではなく軽くなっているということだ。
大きさ相当の重さになっているのだろうと予想できる。
「……まさか」
ようやくサンジェルも気がついた。
「あのツタを登るんです。コユキはちょっと無理ですが、俺たちならなんとか……とりあえず塀の内側にはいけると思います」
その先に問題は山積しているけど、塀の中に入れる可能性はある。
とりあえず試すだけ試してみたってバチは当たらない。
コユキ中心に動くことは必要だけど、いざという時には自分たちだけでもなんとかせねばならない。
今こそ自分たちでなんとかする時だ。
小さくなったリュードたちにとってこのツタは立派な道になりうるのだ。
「たしかにチャレンジしてみても良さそうだな」
リュードに言われて改めてツタを見る。
今のサイズ感でツタを見ると十分に伝って登れそうなぐらいの太さがある。
他のみんなとも話し合って、ツタ登りに挑戦することにした。
「ルフォン、ラスト、コユキを頼むぞ」
「うん」
「まっかせなさい!」
ツタはコユキでは登れなさそうなので、そうなるとコユキは連れていけない。
万が一のためにルフォンとラストにコユキをお願いする。
何かがあったら町を出て他に助けを求めてもらうつもりだ。
どこか教会にでも辿り着ければ、聖職者たちの協力は得られるはずである。
「パパ、頑張って!」
「おうよ!」
「頑張ってね、パパ」
「無事に帰ってきてね、おとーさん」
「二人まで……まあ、サクッと行ってくるよ」
コユキの手に乗ってある程度の高さからツタに飛び乗ってスタートする。
「ほっと」
先陣を切るのはリュード。
ぱっと見は太いツタに目が行きがちだけど、よくよくみると太いツタからも伸びるように細かいツタが広がっている。
ツタそのものの表面もザラザラとしていて、掴みやすくクライミングするのにはとてもやりやすいぐらいだ。
ツタが塀から剥がれないか心配だったけれど、リュードが乗ったぐらいではびくともしない。
「よいしょ……」
ひょいひょいと登っていく。
村育ちのリュードは村の周りは木ばかりだったので木登りなんてこともよくやっていた。
木に登ることに比べればこれぐらい簡単である。
「かなり高いな……」
あっという間に上まで登り切ったリュード。
不謹慎ながら良い運動だったと思ってしまった。
チラリと下を確認すると他の人たちも登り始めている。
けれど普通に生きてきてこんな風に登る機会なんてないはずで、みんなツタ登りに苦戦している。
手足のかけ方や体重の移動など不慣れで遅い。
「サンジェルさん、足はもうちょい右……そう! 腕だけじゃなくてもっと足を使って体を上げて……あっ、危ない!」
上からアドバイスする。
サンジェルなんかはまだ良いが、無理に登ろうとしてツタを掴み損ねて落ちる人までいた。
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