46 / 411
第46話 『転移組』との接触
しおりを挟む
「あっ、高橋様ですか? お待たせしました。ドミノピザです。ご注文の品をお届けに伺いました」
「ご苦労様です」
「はい。こちらが注文の品になります。どうぞ、よろしくお願いします」
「ああ、ありがとうございます」
配達員から注文した商品を受け取ると、フロントを抜け、エレベーターで自室へと戻っていく。
アイテムストレージからノートパソコンを取り出し、HDMI接続でケーブルをテレビに繫ぐとネットフリックスにアクセスして、最近ハマっているアニメをテレビに流した。
「……これで準備よし子さんだ」
ハマっているアニメをテレビの画面に流し、オンライン麻雀を嗜みながらワインと食事を黙々と楽しむ俺。
これが一人祝勝会。
幸せの瞬間である。
誰にも邪魔されることなく、一人きりの時間を思うままに過ごす。
これ程、贅沢な時間の使い方はない。
それに今日使ったお金……。酒代、出前代、つまみ代、その他諸々。
締めて一万円。
今日一日。たった一人の祝勝会をする為だけに一万円も使ったのだ。
超贅沢である。
しかし……。
「むむっ……。まさか、その牌をポンするとは……」
拙い。俺のせいで大三元が確定してしまった。
これでは責任払いになってしまう。
場に二牌出ている『東』の字牌を場に捨てると、そのままロンされ対局が終わってしまった。大三元字一色ドラドラ。ハコ割れだ。
『レアドロップ倍率+500%』もオンライン麻雀では効果がないらしい。
「あ~負けちゃったか。仕方がない……」
今日、オンライン麻雀するのは止めておこう。
オンライン麻雀の代わりにスマートデバイス向けの漫画・小説アプリを開くと、アニメを見ながら食事と酒を楽しみ、時折、アプリを見ながら自分一人の時間を心行くまで楽しんでいく。
ああ、素晴らしい。
明日、お金も出社の心配もなくホテルで一人贅沢三昧できるだなんて……。
それもこれも、宝くじが当たってくれたお蔭だ。
とりあえず、今日は、ゆっくりじっくり楽しもう。
今日だけは酒に溺れ、惰眠を貪ろう。
赤ワインを開け、チェイサー代わりにビールとハイボールを飲むと、日本酒で喉を潤していく。
「あーやばい。飲み過ぎたなコレ……」
ベッドに横になるとアイテムストレージから『初級回復薬』を取り出し、軽く口を付けると、俺はそのまま眠りについた。
「う、うーん……」
朝起き上がると、喉がカラカラだ。
昨日は酒を呑み過ぎた。
やはりワインと日本酒のチャンポンは拙かったか。
頭とお腹の調子がもの凄く悪い。
テーブルに置きっぱなしになっていた『初級回復薬』全てを飲み干すと、ベッドの上に寝転んだ。
『初級回復薬』を飲んだからか、段々と体調が良くなっているのを感じる。
一時間位、ベッドの上でゴロゴロした俺はゆっくり起き上がると、夜空に一番近い露天風呂『スカイスパ』へ向かった。
身体を洗いシャワーで泡を洗い流すと、俺は一人、露天風呂に浸かる。
「あー、贅沢だ……。贅沢だけど、なんだかこの生活も飽きてきたな……」
毎日、ホテルに籠るだけの生活というのも飽きてきた。
なんというか、毎日を怠惰に過ごしている様に感じる。
仕事を辞めてから酷く退屈だ。
「ここは心機一転。数日の間、DWに籠ってみようかな?」
ホテルの代金は前払いで一ヶ月分支払っているし、問題はない筈だ。
高校生側の弁護士も流石にもう絡んでこないだろうし、前の職場への残業代請求は弁護士に任せてある。
それに俺自身、現実世界で何をやったらいいか分らなくなっている部分もある。
刺激あるDWの世界は、そんな俺になにかを齎してくれるに違いない。
「……よし。それじゃあ、行ってみるか!」
サウナで汗を流し、シャワーを浴びて露天風呂を後にした俺は、部屋に戻り昨日の残骸を片付けると、「――コネクト『Different World』!」と呟きDWにログインした。
ここは『微睡の宿』の一室。
部屋を出て、ロビーに向かうと、レイネルが宿の警備をしているのが見える。
レイネルは俺に気付くと、挨拶してきた。
「おはようございます。カケル様。本日は良い朝ですな」
「ああ、おはようございます。警備、お疲れ様です」
「いやいや、この程度、どうという程ではありませぬ。それよりも、どこかお出かけですかな?」
「ええ、特に用がある訳ではないんですが、とりあえず、冒険者協会に行ってみようと思いまして」
現実世界でやる事がないからこっちに来ましたとは言えない。
それに、まだ高校生達の刑が決まっていない。
それまでの間、不用意に外に出ては高校生親に突撃される可能性もある。
まあ、一人祝勝会の際、普通に外に出てしまったけれども。
「ふむ。そうですか……。今、冒険者協会には、『転移組』と呼ばれるグループが幅を利かせているようです。なんでも、ダンジョン攻略を進め、ユグドラシルで行く事のできる世界を開放するとか、どうかお気を付け下さい」
「『転移組』ですか……。そういえば、冒険者協会でカイルがヤケ酒してる時、そんな事を言ってた様な……」
確か、このDWの世界に転移した事を喜んでいる連中。
おそらく、異世界に召喚された小説や漫画の主人公の様に自分自身が特別な存在だと勘違いしている自己中心的な人の集まりなのだろう。
確かにそれは恐ろしいな。
そんな奴等に巻き込まれたらたまらない。
「……わかった。気を付けるよ」
「はい。何かあれば、すぐに言って下され」
「うん。それじゃあ行ってくるね」
レイネルにそう言うと、俺は冒険者協会へと向かった。
冒険者協会に入ってすぐ、受付嬢と目が合った。
俺の姿を見た受付嬢は目を見開くと立ち上がり、俺の側にやってくる。
「カケル様。お待ちしておりました。今、お時間はよろしいでしょうか?」
なんだか嫌な予感がする。
「いえ、少し立ち寄っただけですので、申し訳ございません」
「そうですか……。一分で構いません。副協会長がカケル様に直接お会いしたいと申しておりまして、お願いできないでしょうか?」
「副協会長とですか……。えっと、嫌です」
率直にそう言うと、受付嬢は表情を強張らせた。
いや、だって上級回復薬を一本当たり十万コルとかいう破格な値段で買い取ろうとする人でしょ?
そりゃあ、嫌だよ。会いたくない。
だって、会った所で面倒くさい事にしかならなさそうだもの。
「それでは、副協会長様によろしく言っておいて下さい。それじゃあ、俺はこれで……」
そう言って、その場を離れようとすると、肩を叩かれる。
振り向くと、そこには知らない顔の冒険者の姿があった。
「まあ待てよ。お前さ、その腕に着けているの課金アイテムの『ムーブ・ユグドラシル』だろ?」
「……それが何か?」
課金アイテム『ムーブ・ユグドラシル』に視線を向け、そう言うとその冒険者は嗜虐的な笑みを浮かべた。
首に下げているランク証を見るにCランク冒険者。
ぶっちゃけ、俺の敵ではない。
しかし、課金アイテム『ムーブ・ユグドラシル』の事を知っているという事は……。
「……そうか。俺は『転移組』のメンバーの一人。ユウキ。悪い事は言わない。その『ムーブ・ユグドラシル』を俺に渡せ」
やはりか……。
どうやら俺は、一回、お祓いをして貰った方がいいレベルで運が付いていないらしい。
「嫌ですけれども? そもそも、何故、見ず知らずのあなたに現実世界の金を百万円注ぎ込んで購入した『ムーブ・ユグドラシル』を渡さなければならないのですか?」
俺がそう問いかけると、『転移組』のユウキは……。
「うっせぇなぁ! つべこべ言わず、『ムーブ・ユグドラシル』を渡せやぁ! 俺達が身体を張ってダンジョン攻略を進めてやるって言っているんだ。その位、当たり前の事だろうがよ!」
い、いや、頼んでませんし、俺も中級ダンジョンまでなら攻略しましたが……。
しかし、キレた『転移組』のユウキは止まらない。
「俺達はお前達が元の世界に戻れるようダンジョン攻略をしているんだっ! それなのにお前達は協力の一つしようとしない! 同じ地球で過ごしてきた人として恥ずかしいと思わないのか!」
い、いえ、全然思いませんけど……。
なんならそれ、あなた達が勝手にやっている事ですし……。
それとも何か?
もし俺がダンジョン攻略を進めて『転移組』の人達から我が物顔でアイテムをぶん取ったら、笑って許してくれるのだろうか?
俺だったら普通にキレるけど。
「じゃあ聞くけど、お前達はどこまでダンジョン攻略を進めたんだ?」
そう問いかけると、ユウキは自信満々に呟いた。
「はっ! 聞いて驚けっ! 火山洞窟ダンジョン『ボルケーノケイブ』の二階層まで行った! お前もDWプレイヤーなら知っているだろう!」
えっ?
火山洞窟ダンジョン『ボルケーノケイブ』の二階層まで?
マジで言っているのだろうかコイツ。
「えっ? 本当に?? マジで言ってるのお前?」
一応口に出して言ってみる。
その程度の実力で俺から『ムーブ・ユグドラシル』を奪おうとしているの?
マジであり得ないんですけど……。
「はっ! ようやく、俺達の実力がわかったか!」
「え、ええっ!?」
高々、火山洞窟ダンジョン『ボルケーノケイブ』の二階層まで行っただけだよね?
中級ダンジョンだよ。それ?
それで、なんでそんな高圧的な態度が取れるの!?
多分、カイルや『ああああ』でもそれ位、攻略できるんですけどっ!?
唖然とした表情を浮かべていると、ユウキが俺の近くに寄ってくる。
「わかったらその『ムーブ・ユグドラシル』を置いていけ。それはお前には相応しくない。例え、お前がSランク冒険者といえど、たった一人でこの世界を攻略し、オーディンの元に行ける筈がない。その『ムーブ・ユグドラシル』はこの世界を攻略し、この世界に囚われた人達を解放する意志を持つ組織『転移組』にこそ相応しい」
「へえー。そうなんだ」
それはそれは……。
俺にはない立派な志をお持ちの様だ。
「ユウキ君だったかな? 確かに君の言う通りだよ。転移組の志は立派だ……」
『ムーブ・ユグドラシル』に手を添えながらそう言うと、何を勘違いしたのか、ユウキが笑みを浮かべる。
「わかってくれて嬉しいよ。Sランク冒険者といえど、組織の力には無力。さあ、その『ムーブ・ユグドラシル』を俺に……」
そう言って伸ばしてきた手を俺は払う。
「……だが、断る」
俺の言葉にユウキは醜く顔を歪めた。
「ご苦労様です」
「はい。こちらが注文の品になります。どうぞ、よろしくお願いします」
「ああ、ありがとうございます」
配達員から注文した商品を受け取ると、フロントを抜け、エレベーターで自室へと戻っていく。
アイテムストレージからノートパソコンを取り出し、HDMI接続でケーブルをテレビに繫ぐとネットフリックスにアクセスして、最近ハマっているアニメをテレビに流した。
「……これで準備よし子さんだ」
ハマっているアニメをテレビの画面に流し、オンライン麻雀を嗜みながらワインと食事を黙々と楽しむ俺。
これが一人祝勝会。
幸せの瞬間である。
誰にも邪魔されることなく、一人きりの時間を思うままに過ごす。
これ程、贅沢な時間の使い方はない。
それに今日使ったお金……。酒代、出前代、つまみ代、その他諸々。
締めて一万円。
今日一日。たった一人の祝勝会をする為だけに一万円も使ったのだ。
超贅沢である。
しかし……。
「むむっ……。まさか、その牌をポンするとは……」
拙い。俺のせいで大三元が確定してしまった。
これでは責任払いになってしまう。
場に二牌出ている『東』の字牌を場に捨てると、そのままロンされ対局が終わってしまった。大三元字一色ドラドラ。ハコ割れだ。
『レアドロップ倍率+500%』もオンライン麻雀では効果がないらしい。
「あ~負けちゃったか。仕方がない……」
今日、オンライン麻雀するのは止めておこう。
オンライン麻雀の代わりにスマートデバイス向けの漫画・小説アプリを開くと、アニメを見ながら食事と酒を楽しみ、時折、アプリを見ながら自分一人の時間を心行くまで楽しんでいく。
ああ、素晴らしい。
明日、お金も出社の心配もなくホテルで一人贅沢三昧できるだなんて……。
それもこれも、宝くじが当たってくれたお蔭だ。
とりあえず、今日は、ゆっくりじっくり楽しもう。
今日だけは酒に溺れ、惰眠を貪ろう。
赤ワインを開け、チェイサー代わりにビールとハイボールを飲むと、日本酒で喉を潤していく。
「あーやばい。飲み過ぎたなコレ……」
ベッドに横になるとアイテムストレージから『初級回復薬』を取り出し、軽く口を付けると、俺はそのまま眠りについた。
「う、うーん……」
朝起き上がると、喉がカラカラだ。
昨日は酒を呑み過ぎた。
やはりワインと日本酒のチャンポンは拙かったか。
頭とお腹の調子がもの凄く悪い。
テーブルに置きっぱなしになっていた『初級回復薬』全てを飲み干すと、ベッドの上に寝転んだ。
『初級回復薬』を飲んだからか、段々と体調が良くなっているのを感じる。
一時間位、ベッドの上でゴロゴロした俺はゆっくり起き上がると、夜空に一番近い露天風呂『スカイスパ』へ向かった。
身体を洗いシャワーで泡を洗い流すと、俺は一人、露天風呂に浸かる。
「あー、贅沢だ……。贅沢だけど、なんだかこの生活も飽きてきたな……」
毎日、ホテルに籠るだけの生活というのも飽きてきた。
なんというか、毎日を怠惰に過ごしている様に感じる。
仕事を辞めてから酷く退屈だ。
「ここは心機一転。数日の間、DWに籠ってみようかな?」
ホテルの代金は前払いで一ヶ月分支払っているし、問題はない筈だ。
高校生側の弁護士も流石にもう絡んでこないだろうし、前の職場への残業代請求は弁護士に任せてある。
それに俺自身、現実世界で何をやったらいいか分らなくなっている部分もある。
刺激あるDWの世界は、そんな俺になにかを齎してくれるに違いない。
「……よし。それじゃあ、行ってみるか!」
サウナで汗を流し、シャワーを浴びて露天風呂を後にした俺は、部屋に戻り昨日の残骸を片付けると、「――コネクト『Different World』!」と呟きDWにログインした。
ここは『微睡の宿』の一室。
部屋を出て、ロビーに向かうと、レイネルが宿の警備をしているのが見える。
レイネルは俺に気付くと、挨拶してきた。
「おはようございます。カケル様。本日は良い朝ですな」
「ああ、おはようございます。警備、お疲れ様です」
「いやいや、この程度、どうという程ではありませぬ。それよりも、どこかお出かけですかな?」
「ええ、特に用がある訳ではないんですが、とりあえず、冒険者協会に行ってみようと思いまして」
現実世界でやる事がないからこっちに来ましたとは言えない。
それに、まだ高校生達の刑が決まっていない。
それまでの間、不用意に外に出ては高校生親に突撃される可能性もある。
まあ、一人祝勝会の際、普通に外に出てしまったけれども。
「ふむ。そうですか……。今、冒険者協会には、『転移組』と呼ばれるグループが幅を利かせているようです。なんでも、ダンジョン攻略を進め、ユグドラシルで行く事のできる世界を開放するとか、どうかお気を付け下さい」
「『転移組』ですか……。そういえば、冒険者協会でカイルがヤケ酒してる時、そんな事を言ってた様な……」
確か、このDWの世界に転移した事を喜んでいる連中。
おそらく、異世界に召喚された小説や漫画の主人公の様に自分自身が特別な存在だと勘違いしている自己中心的な人の集まりなのだろう。
確かにそれは恐ろしいな。
そんな奴等に巻き込まれたらたまらない。
「……わかった。気を付けるよ」
「はい。何かあれば、すぐに言って下され」
「うん。それじゃあ行ってくるね」
レイネルにそう言うと、俺は冒険者協会へと向かった。
冒険者協会に入ってすぐ、受付嬢と目が合った。
俺の姿を見た受付嬢は目を見開くと立ち上がり、俺の側にやってくる。
「カケル様。お待ちしておりました。今、お時間はよろしいでしょうか?」
なんだか嫌な予感がする。
「いえ、少し立ち寄っただけですので、申し訳ございません」
「そうですか……。一分で構いません。副協会長がカケル様に直接お会いしたいと申しておりまして、お願いできないでしょうか?」
「副協会長とですか……。えっと、嫌です」
率直にそう言うと、受付嬢は表情を強張らせた。
いや、だって上級回復薬を一本当たり十万コルとかいう破格な値段で買い取ろうとする人でしょ?
そりゃあ、嫌だよ。会いたくない。
だって、会った所で面倒くさい事にしかならなさそうだもの。
「それでは、副協会長様によろしく言っておいて下さい。それじゃあ、俺はこれで……」
そう言って、その場を離れようとすると、肩を叩かれる。
振り向くと、そこには知らない顔の冒険者の姿があった。
「まあ待てよ。お前さ、その腕に着けているの課金アイテムの『ムーブ・ユグドラシル』だろ?」
「……それが何か?」
課金アイテム『ムーブ・ユグドラシル』に視線を向け、そう言うとその冒険者は嗜虐的な笑みを浮かべた。
首に下げているランク証を見るにCランク冒険者。
ぶっちゃけ、俺の敵ではない。
しかし、課金アイテム『ムーブ・ユグドラシル』の事を知っているという事は……。
「……そうか。俺は『転移組』のメンバーの一人。ユウキ。悪い事は言わない。その『ムーブ・ユグドラシル』を俺に渡せ」
やはりか……。
どうやら俺は、一回、お祓いをして貰った方がいいレベルで運が付いていないらしい。
「嫌ですけれども? そもそも、何故、見ず知らずのあなたに現実世界の金を百万円注ぎ込んで購入した『ムーブ・ユグドラシル』を渡さなければならないのですか?」
俺がそう問いかけると、『転移組』のユウキは……。
「うっせぇなぁ! つべこべ言わず、『ムーブ・ユグドラシル』を渡せやぁ! 俺達が身体を張ってダンジョン攻略を進めてやるって言っているんだ。その位、当たり前の事だろうがよ!」
い、いや、頼んでませんし、俺も中級ダンジョンまでなら攻略しましたが……。
しかし、キレた『転移組』のユウキは止まらない。
「俺達はお前達が元の世界に戻れるようダンジョン攻略をしているんだっ! それなのにお前達は協力の一つしようとしない! 同じ地球で過ごしてきた人として恥ずかしいと思わないのか!」
い、いえ、全然思いませんけど……。
なんならそれ、あなた達が勝手にやっている事ですし……。
それとも何か?
もし俺がダンジョン攻略を進めて『転移組』の人達から我が物顔でアイテムをぶん取ったら、笑って許してくれるのだろうか?
俺だったら普通にキレるけど。
「じゃあ聞くけど、お前達はどこまでダンジョン攻略を進めたんだ?」
そう問いかけると、ユウキは自信満々に呟いた。
「はっ! 聞いて驚けっ! 火山洞窟ダンジョン『ボルケーノケイブ』の二階層まで行った! お前もDWプレイヤーなら知っているだろう!」
えっ?
火山洞窟ダンジョン『ボルケーノケイブ』の二階層まで?
マジで言っているのだろうかコイツ。
「えっ? 本当に?? マジで言ってるのお前?」
一応口に出して言ってみる。
その程度の実力で俺から『ムーブ・ユグドラシル』を奪おうとしているの?
マジであり得ないんですけど……。
「はっ! ようやく、俺達の実力がわかったか!」
「え、ええっ!?」
高々、火山洞窟ダンジョン『ボルケーノケイブ』の二階層まで行っただけだよね?
中級ダンジョンだよ。それ?
それで、なんでそんな高圧的な態度が取れるの!?
多分、カイルや『ああああ』でもそれ位、攻略できるんですけどっ!?
唖然とした表情を浮かべていると、ユウキが俺の近くに寄ってくる。
「わかったらその『ムーブ・ユグドラシル』を置いていけ。それはお前には相応しくない。例え、お前がSランク冒険者といえど、たった一人でこの世界を攻略し、オーディンの元に行ける筈がない。その『ムーブ・ユグドラシル』はこの世界を攻略し、この世界に囚われた人達を解放する意志を持つ組織『転移組』にこそ相応しい」
「へえー。そうなんだ」
それはそれは……。
俺にはない立派な志をお持ちの様だ。
「ユウキ君だったかな? 確かに君の言う通りだよ。転移組の志は立派だ……」
『ムーブ・ユグドラシル』に手を添えながらそう言うと、何を勘違いしたのか、ユウキが笑みを浮かべる。
「わかってくれて嬉しいよ。Sランク冒険者といえど、組織の力には無力。さあ、その『ムーブ・ユグドラシル』を俺に……」
そう言って伸ばしてきた手を俺は払う。
「……だが、断る」
俺の言葉にユウキは醜く顔を歪めた。
105
あなたにおすすめの小説
無能と呼ばれてパーティーを追放!最強に成り上がり人生最高!
本条蒼依
ファンタジー
主人公クロスは、マスターで聞いた事のない職業だが、Eランクという最低ランクの職業を得た。
そして、差別を受けた田舎を飛び出し、冒険者ギルドに所属しポーターとして生活をしていたが、
同じパーティーメンバーからも疎まれている状況で話は始まる。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
わけありな教え子達が巣立ったので、一人で冒険者やってみた
名無しの夜
ファンタジー
教え子達から突然別れを切り出されたグロウは一人で冒険者として活動してみることに。移動の最中、賊に襲われている令嬢を助けてみれば、令嬢は別れたばかりの教え子にそっくりだった。一方、グロウと別れた教え子三人はとある事情から母国に帰ることに。しかし故郷では恐るべき悪魔が三人を待ち構えていた。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです
竹桜
ファンタジー
無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。
だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。
その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる