ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ

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第46話 『転移組』との接触

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「あっ、高橋様ですか? お待たせしました。ドミノピザです。ご注文の品をお届けに伺いました」
「ご苦労様です」
「はい。こちらが注文の品になります。どうぞ、よろしくお願いします」
「ああ、ありがとうございます」

 配達員から注文した商品を受け取ると、フロントを抜け、エレベーターで自室へと戻っていく。
 アイテムストレージからノートパソコンを取り出し、HDMI接続でケーブルをテレビに繫ぐとネットフリックスにアクセスして、最近ハマっているアニメをテレビに流した。

「……これで準備よし子さんだ」

 ハマっているアニメをテレビの画面に流し、オンライン麻雀を嗜みながらワインと食事を黙々と楽しむ俺。
 これが一人祝勝会。
 幸せの瞬間である。

 誰にも邪魔されることなく、一人きりの時間を思うままに過ごす。
 これ程、贅沢な時間の使い方はない。

 それに今日使ったお金……。酒代、出前代、つまみ代、その他諸々。
 締めて一万円。

 今日一日。たった一人の祝勝会をする為だけに一万円も使ったのだ。
 超贅沢である。

 しかし……。

「むむっ……。まさか、その牌をポンするとは……」

 拙い。俺のせいで大三元が確定してしまった。
 これでは責任払いになってしまう。

 場に二牌出ている『東』の字牌を場に捨てると、そのままロンされ対局が終わってしまった。大三元字一色ドラドラ。ハコ割れだ。
『レアドロップ倍率+500%』もオンライン麻雀では効果がないらしい。

「あ~負けちゃったか。仕方がない……」

 今日、オンライン麻雀するのは止めておこう。

 オンライン麻雀の代わりにスマートデバイス向けの漫画・小説アプリを開くと、アニメを見ながら食事と酒を楽しみ、時折、アプリを見ながら自分一人の時間を心行くまで楽しんでいく。

 ああ、素晴らしい。
 明日、お金も出社の心配もなくホテルで一人贅沢三昧できるだなんて……。
 それもこれも、宝くじが当たってくれたお蔭だ。

 とりあえず、今日は、ゆっくりじっくり楽しもう。
 今日だけは酒に溺れ、惰眠を貪ろう。

 赤ワインを開け、チェイサー代わりにビールとハイボールを飲むと、日本酒で喉を潤していく。

「あーやばい。飲み過ぎたなコレ……」

 ベッドに横になるとアイテムストレージから『初級回復薬』を取り出し、軽く口を付けると、俺はそのまま眠りについた。

「う、うーん……」

 朝起き上がると、喉がカラカラだ。
 昨日は酒を呑み過ぎた。
 やはりワインと日本酒のチャンポンは拙かったか。
 頭とお腹の調子がもの凄く悪い。

 テーブルに置きっぱなしになっていた『初級回復薬』全てを飲み干すと、ベッドの上に寝転んだ。
『初級回復薬』を飲んだからか、段々と体調が良くなっているのを感じる。
 一時間位、ベッドの上でゴロゴロした俺はゆっくり起き上がると、夜空に一番近い露天風呂『スカイスパ』へ向かった。

 身体を洗いシャワーで泡を洗い流すと、俺は一人、露天風呂に浸かる。

「あー、贅沢だ……。贅沢だけど、なんだかこの生活も飽きてきたな……」

 毎日、ホテルに籠るだけの生活というのも飽きてきた。
 なんというか、毎日を怠惰に過ごしている様に感じる。
 仕事を辞めてから酷く退屈だ。

「ここは心機一転。数日の間、DWに籠ってみようかな?」

 ホテルの代金は前払いで一ヶ月分支払っているし、問題はない筈だ。
 高校生側の弁護士も流石にもう絡んでこないだろうし、前の職場への残業代請求は弁護士に任せてある。

 それに俺自身、現実世界で何をやったらいいか分らなくなっている部分もある。
 刺激あるDWの世界は、そんな俺になにかを齎してくれるに違いない。

「……よし。それじゃあ、行ってみるか!」

 サウナで汗を流し、シャワーを浴びて露天風呂を後にした俺は、部屋に戻り昨日の残骸を片付けると、「――コネクト『Different World』!」と呟きDWにログインした。

 ここは『微睡の宿』の一室。
 部屋を出て、ロビーに向かうと、レイネルが宿の警備をしているのが見える。
 レイネルは俺に気付くと、挨拶してきた。

「おはようございます。カケル様。本日は良い朝ですな」
「ああ、おはようございます。警備、お疲れ様です」
「いやいや、この程度、どうという程ではありませぬ。それよりも、どこかお出かけですかな?」
「ええ、特に用がある訳ではないんですが、とりあえず、冒険者協会に行ってみようと思いまして」

 現実世界でやる事がないからこっちに来ましたとは言えない。
 それに、まだ高校生達の刑が決まっていない。
 それまでの間、不用意に外に出ては高校生親に突撃される可能性もある。
 まあ、一人祝勝会の際、普通に外に出てしまったけれども。

「ふむ。そうですか……。今、冒険者協会には、『転移組』と呼ばれるグループが幅を利かせているようです。なんでも、ダンジョン攻略を進め、ユグドラシルで行く事のできる世界を開放するとか、どうかお気を付け下さい」
「『転移組』ですか……。そういえば、冒険者協会でカイルがヤケ酒してる時、そんな事を言ってた様な……」

 確か、このDWの世界に転移した事を喜んでいる連中。
 おそらく、異世界に召喚された小説や漫画の主人公の様に自分自身が特別な存在だと勘違いしている自己中心的な人の集まりなのだろう。

 確かにそれは恐ろしいな。
 そんな奴等に巻き込まれたらたまらない。

「……わかった。気を付けるよ」
「はい。何かあれば、すぐに言って下され」
「うん。それじゃあ行ってくるね」

 レイネルにそう言うと、俺は冒険者協会へと向かった。
 冒険者協会に入ってすぐ、受付嬢と目が合った。
 俺の姿を見た受付嬢は目を見開くと立ち上がり、俺の側にやってくる。

「カケル様。お待ちしておりました。今、お時間はよろしいでしょうか?」

 なんだか嫌な予感がする。

「いえ、少し立ち寄っただけですので、申し訳ございません」
「そうですか……。一分で構いません。副協会長がカケル様に直接お会いしたいと申しておりまして、お願いできないでしょうか?」
「副協会長とですか……。えっと、嫌です」

 率直にそう言うと、受付嬢は表情を強張らせた。

 いや、だって上級回復薬を一本当たり十万コルとかいう破格な値段で買い取ろうとする人でしょ?
 そりゃあ、嫌だよ。会いたくない。
 だって、会った所で面倒くさい事にしかならなさそうだもの。

「それでは、副協会長様によろしく言っておいて下さい。それじゃあ、俺はこれで……」

 そう言って、その場を離れようとすると、肩を叩かれる。
 振り向くと、そこには知らない顔の冒険者の姿があった。

「まあ待てよ。お前さ、その腕に着けているの課金アイテムの『ムーブ・ユグドラシル』だろ?」
「……それが何か?」

 課金アイテム『ムーブ・ユグドラシル』に視線を向け、そう言うとその冒険者は嗜虐的な笑みを浮かべた。

 首に下げているランク証を見るにCランク冒険者。
 ぶっちゃけ、俺の敵ではない。
 しかし、課金アイテム『ムーブ・ユグドラシル』の事を知っているという事は……。

「……そうか。俺は『転移組』のメンバーの一人。ユウキ。悪い事は言わない。その『ムーブ・ユグドラシル』を俺に渡せ」

 やはりか……。
 どうやら俺は、一回、お祓いをして貰った方がいいレベルで運が付いていないらしい。

「嫌ですけれども? そもそも、何故、見ず知らずのあなたに現実世界の金を百万円注ぎ込んで購入した『ムーブ・ユグドラシル』を渡さなければならないのですか?」

 俺がそう問いかけると、『転移組』のユウキは……。

「うっせぇなぁ! つべこべ言わず、『ムーブ・ユグドラシル』を渡せやぁ! 俺達が身体を張ってダンジョン攻略を進めてやるって言っているんだ。その位、当たり前の事だろうがよ!」

 い、いや、頼んでませんし、俺も中級ダンジョンまでなら攻略しましたが……。

 しかし、キレた『転移組』のユウキは止まらない。

「俺達はお前達が元の世界に戻れるようダンジョン攻略をしているんだっ! それなのにお前達は協力の一つしようとしない! 同じ地球で過ごしてきた人として恥ずかしいと思わないのか!」

 い、いえ、全然思いませんけど……。
 なんならそれ、あなた達が勝手にやっている事ですし……。

 それとも何か?
 もし俺がダンジョン攻略を進めて『転移組』の人達から我が物顔でアイテムをぶん取ったら、笑って許してくれるのだろうか?

 俺だったら普通にキレるけど。

「じゃあ聞くけど、お前達はどこまでダンジョン攻略を進めたんだ?」

 そう問いかけると、ユウキは自信満々に呟いた。

「はっ! 聞いて驚けっ! 火山洞窟ダンジョン『ボルケーノケイブ』の二階層まで行った! お前もDWプレイヤーなら知っているだろう!」

 えっ?
 火山洞窟ダンジョン『ボルケーノケイブ』の二階層まで?
 マジで言っているのだろうかコイツ。

「えっ? 本当に?? マジで言ってるのお前?」

 一応口に出して言ってみる。

 その程度の実力で俺から『ムーブ・ユグドラシル』を奪おうとしているの?
 マジであり得ないんですけど……。

「はっ! ようやく、俺達の実力がわかったか!」
「え、ええっ!?」

 高々、火山洞窟ダンジョン『ボルケーノケイブ』の二階層まで行っただけだよね?
 中級ダンジョンだよ。それ?
 それで、なんでそんな高圧的な態度が取れるの!?
 多分、カイルや『ああああ』でもそれ位、攻略できるんですけどっ!?

 唖然とした表情を浮かべていると、ユウキが俺の近くに寄ってくる。

「わかったらその『ムーブ・ユグドラシル』を置いていけ。それはお前には相応しくない。例え、お前がSランク冒険者といえど、たった一人でこの世界を攻略し、オーディンの元に行ける筈がない。その『ムーブ・ユグドラシル』はこの世界を攻略し、この世界に囚われた人達を解放する意志を持つ組織『転移組』にこそ相応しい」
「へえー。そうなんだ」

 それはそれは……。
 俺にはない立派な志をお持ちの様だ。

「ユウキ君だったかな? 確かに君の言う通りだよ。転移組の志は立派だ……」

『ムーブ・ユグドラシル』に手を添えながらそう言うと、何を勘違いしたのか、ユウキが笑みを浮かべる。

「わかってくれて嬉しいよ。Sランク冒険者といえど、組織の力には無力。さあ、その『ムーブ・ユグドラシル』を俺に……」

 そう言って伸ばしてきた手を俺は払う。

「……だが、断る」

 俺の言葉にユウキは醜く顔を歪めた。
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