ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ

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第61話 協会長は伊達に長く生きていないようです

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「は、放してくれぇ……」
「お、俺達をどうするつもりだぁ……」

 水の上級精霊クラーケンにより捕えられたリージョン帝国の兵士達の怨嗟の声をBGMにセントラル王国の城郭まで戻った俺は、地の上級精霊ベヒモスにお願いをして大きな穴を掘ってもらうことにした。
 なんで、そんな事をするのかって?
 そんな事は決まってる。リージョン帝国の兵士達が逃げないよう、この穴の中に放り込む為だ。
 兵士達の捕縛時、彼等が持っていたアイテムや武器はすべて回収させてもらった。
 諸事情によりモンスターからドロップアイテムを回収する事はできなかったけど、中々、割のいい仕事だった。リージョン帝国にしかない武器やアイテムが目白押しだ。ゲームの設定上兵士から身包みを剥がすなんて事、これまでできなかったからね。
 まあ、そこまでレアな訳ではないから実際に使用することはないだろうけど……。これらはあくまでも偶にアイテムストレージから取り出してニマニマする為だけにあるコレクション用だ。
 セントラル王国側の冒険者として登録しちゃった為、リージョン帝国側の武器って手に入らなかったんだよね。ほんと、緊急クエスト様様である。

 残る問題は捕えたリージョン帝国の兵士達に関してだけど、『ゲーム世界が現実となった今、俺が単独で捕えた事がバレるのは拙いんじゃね?』と思い直した。
 最初は国境付近の領土に陣取って実効支配してやろうかとも思ったけど、リージョン帝国の侵攻を一人で食い止めたとはいえ、国と国との交渉ごとに首を突っ込むのは危険が伴う。だからこそ、その埋め合わせに兵士達の身包みを剥ぐだけに留めておいた。

「それじゃあ、ベヒモス。こいつ等が逃げないよう穴に閉じ込めておきたいから、ここに穴を掘ってくれないかな?」

 地の上級精霊ベヒモスが頷くと、突然、地面が陥没し、高さ四メートル、直径五十メートルの大穴が出来上がる。

流石は地の上級精霊である。

「ありがとう。ベヒモス。それじゃあ、クラーケン。この穴の中に兵士達を入れて上げて」

 水の上級精霊クラーケンにそうお願いすると、触手に身包みを剥がされ強制武装解除状態となったリージョン帝国の兵士達を次々と穴の中に入れていく。
 リージョン帝国までのフルマラソン&セントラル王国に来るまでの触手揺れにより触手酔いした兵士と冒険者達がゲッソリとした表情を浮かべているのが印象深かった。
 すべての兵士達を穴の中に入れると、風の上級精霊ジンの手を借りベヒモスからゆっくり降ろしてもらう。

「それじゃあ、皆。小さくなってくれるかな? そろそろバックレようか」

 エレメンタル達が元の小さな光の玉へと姿を変えたのを確認すると、セントラル王国の城郭へ視線を向ける。
 すると、城郭門が開き兵士達がわらわらとこちらに向かってくるのが見えた。

 隠密マントを被ったまま門に向かうと、すれ違い様、兵士達の困惑とした声が聞こえてくる。

「い、一体、どうなってるんだっ?」
「……意味がわからない」
「王宮になんと報告を上げれば……」

 意外な事に兵士達から『あのモブ・フェンリルは一体……』という声は聞こえない。
 もしかしたら、エレメンタル達が超進化を遂げ、ウルトラ怪獣大集合状態となった事で忘れ去られているのかもしれない。
 まあ、突然、巨大怪獣が現れたらビックリするよね。
 それこそ、一人門の外に出たモブ・フェンリルの存在が霞む位には……。

 隠密マントを被ったまま門を抜けると、建物の影に隠れ『モブ・フェンリルスーツ』をアイテムストレージにしまい代わりに『ブラック・モブフェンリルスーツ』を装備する。

 うん。完璧だ。これなら、外に出たモブ・フェンリルが俺とは気付くまい。
 既に十分な報酬は貰った。主に兵士達の身包みを剥ぐ事で……。
 よし。緊急クエストも終わったし、一旦、『微睡の宿』に戻ろう。
 このままここにいては、大変な事に巻き込まれそうな気がする。

『ブラック・モブフェンリルスーツ』に着替えた俺は、城郭を後にした。

 ◇◆◇

 一方、穴に落されたリージョン帝国の兵士と冒険者達は……。

「う、うっぷ……」
「も、もう駄目だ……」
「み、水……。水を……。誰か水をくれ……」

 モンスターに追いまわされた揚句の触手酔い。
 穴の周りを包囲するセントラル王国の兵士達がどうでも良く思えるほどに死屍累々となっていた。

 リージョン帝国の兵士と冒険者達が思っている事はただ一つ。
 水をくれ。ただそれだけである。

 国境近くの森。そこに棲息するモンスターをセントラル王国側へと追い立てたまでは良かった。
 あとはモンスター達の対応に追われボロボロとなったセントラル王国に侵攻するだけ、しかし、セントラル王国の城郭が見えてきた頃、それは一変する。

 なんと、巨大な化け物に追い掛けられたモンスター達がリージョン帝国側に逆走してきたのだ。空を見上げれば、モンスターをセントラル王国側へ追い立てていた筈のグリフォンがいつの間にかいなくなっていた。

 そこから始まったのは、剣と盾を持ち甲冑を身に纏ったまま行う敗走という名の過酷なマラソン。しかも、一度も交戦することなき敗走マラソンである。
 背後に迫りくるのはモンスターだけではなく、そのモンスターを追い掛ける謎の超巨大モンスター。
 城郭門を目にした時、一瞬、希望を抱いたが決死の敗走虚しく城郭門に辿り着く前に化け物に捕われ今、穴の中でグッタリしている。

「お、おい。大丈夫か?」

 今もこうして俺達を縛り上げているセントラル王国の兵士達も、まるで可哀相な人を見るかのような視線を向けてくる始末だ。

 ちなみに言わせてもらえば全然大丈夫じゃない。
 何しろ俺達は、一度も交戦をすることなく捕えられてしまったのだから。
 セントラル王国を侵攻するぞと息巻いていたのが嘘の様だ。
 しかし、こうなっては仕方がない。

「み、水を……。水をくれ……」

 今はただ水が欲しい。
 俺達の切実な要求に、セントラル王国の兵士は苦笑いを浮かべた。

 ◇◆◇

 翌日、冒険者協会に併設されている酒場でペロペロザウルスのTKG(卵かけご飯)をエレメンタル達にご馳走していると、冒険者協会の協会長、ゲッテムハルトから直々に声がかかる。

「Sランク冒険者のカケル君だな。食事中すまないが、君の話が聞きたい。この後、時間を空けてくれ」
「はい。別に構いませんが……」

 協会長直々に何の用だろうか?
 まさか昨日の件か?
 昨日、俺がリージョン帝国の兵士達の身包みを剥がした事がバレたのか?
 うーん。バレたとしたら面倒臭いな。どうやって誤魔化そう……。

「……それでは、食事が済み次第、私の部屋に来てくれ」
「わかりました……」

 嫌々ではあるが仕方がない。

「失礼します」

 エレメンタル達が食事を終えるのを待ち、協会長室に向かうと、部屋の中では協会長が頭を抱えていた。

「えっと、どうされたんですか?」
「……おお、よく来てくれた。まずはソファに座ってくれ」
「はい……」

 言われた通り、ソファに座ると疲れ切った表情を浮かべた協会長が対面に座る。

「改めて、知っているとは思うが私は冒険者協会の協会長、ゲッテムハルトだ。Sランク冒険者のカケル。君を呼んだのは他でもない。昨日、リージョン帝国との国境沿いで起こったスタンピード、そして、リージョン帝国の侵攻。これらについて、一点、確認したいことがある」

 うう、やはりか……。
 もし俺がやったとバレたらどうなるんだろ……。
 エレメンタルを上級精霊に進化させちゃったし、もしかしたら危険人物認定されてしまう恐れもあるんじゃないだろうか……。
 まあ、ゲーム世界が現実となった今、Sランク冒険者なんて皆、危険人物みたいなもんだけど……。

「確認したいことですか? 怖いですね。一体何でしょう?」
「うむ。リージョン帝国の侵攻時、君がどこにいたのか教えてほしい」

 この目付き、怪しんでる人の目だよ。八割方確信を持っている人の目だよ、これっ!
 だ、だが俺は負けない。絶対に負けてやらない。
 これまで口八丁手八丁で有耶無耶に社会を渡り歩いてきたんだっ!
 今回も有耶無耶にして欺いて見せる!

「リージョン帝国の侵攻時ですか? 当然、城郭にいましたよ。凄い騒ぎでしたね。突然、超巨大モンスターが現れて……。まあ、俺にできる事は少ないと判断し、後の事は兵士さんにお任せしましたが、それがどうかしたんですか?」

 そう弁解すると、協会長、ゲッテムハルトは眉根を寄せる。

「奇天烈な乗り物に乗ったモブ・フェンリルが城郭門を抜けていったという報告もあるが?」
「ええ、仰る通りです。しかし、城郭門を通り過ぎ上を見上げると、皆、そこに集まっているではありませんか。一度外に出てすぐに中に入るのも恥ずかしかったので、隠密マントを被って門の中に入った次第です。門もすぐに閉まりそうでしたし、実際、閉まりました。緊急事態だったので許して頂けるとありがたいのですが……」

「……なるほど。そういえば、君はエレメンタルを連れているな」

 流石は協会長だ。痛い所を突いてくる。
 しかし、まだまだ甘い。俺のエレメンタルちゃん達は優秀なのだよ。
 俺が命じない限り、絶対に元の姿に戻りはしない。

「それがどうかしましたか?」
「突如現れた超巨大モンスターの姿だが、上級精霊ではないかとの声があるのだ。もしかして、君の精霊がそうなのではないかと思ったのだが……」

 協会長の視線がギョロリと俺に向く。
 なるほど、さては上級精霊という単語を出した時の反応を伺っていたな?
 だが、まだまだだね。

「へえ、そうなんですか。協会長は博識ですね。それで、もうそろそろよろしいでしょうか? 特に用事がないようでしたら、そろそろお暇させて頂きたいのですが……」

 俺が無理矢理話を終わらせると協会長はため息を吐いた。

「ふむ。そうだな……。リージョン帝国との戦闘見事であった。君の力がこの国に向かない事を祈っている。もう行っていいぞ」
「安心して下さい。そんな事する訳が……って、うん?」

 なにか地雷を踏み抜いた様な……。

 前に視線を向けると、協会長、ゲッテムハルトが満面の笑みを浮かべていた。
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