61 / 411
第61話 協会長は伊達に長く生きていないようです
しおりを挟む
「は、放してくれぇ……」
「お、俺達をどうするつもりだぁ……」
水の上級精霊クラーケンにより捕えられたリージョン帝国の兵士達の怨嗟の声をBGMにセントラル王国の城郭まで戻った俺は、地の上級精霊ベヒモスにお願いをして大きな穴を掘ってもらうことにした。
なんで、そんな事をするのかって?
そんな事は決まってる。リージョン帝国の兵士達が逃げないよう、この穴の中に放り込む為だ。
兵士達の捕縛時、彼等が持っていたアイテムや武器はすべて回収させてもらった。
諸事情によりモンスターからドロップアイテムを回収する事はできなかったけど、中々、割のいい仕事だった。リージョン帝国にしかない武器やアイテムが目白押しだ。ゲームの設定上兵士から身包みを剥がすなんて事、これまでできなかったからね。
まあ、そこまでレアな訳ではないから実際に使用することはないだろうけど……。これらはあくまでも偶にアイテムストレージから取り出してニマニマする為だけにあるコレクション用だ。
セントラル王国側の冒険者として登録しちゃった為、リージョン帝国側の武器って手に入らなかったんだよね。ほんと、緊急クエスト様様である。
残る問題は捕えたリージョン帝国の兵士達に関してだけど、『ゲーム世界が現実となった今、俺が単独で捕えた事がバレるのは拙いんじゃね?』と思い直した。
最初は国境付近の領土に陣取って実効支配してやろうかとも思ったけど、リージョン帝国の侵攻を一人で食い止めたとはいえ、国と国との交渉ごとに首を突っ込むのは危険が伴う。だからこそ、その埋め合わせに兵士達の身包みを剥ぐだけに留めておいた。
「それじゃあ、ベヒモス。こいつ等が逃げないよう穴に閉じ込めておきたいから、ここに穴を掘ってくれないかな?」
地の上級精霊ベヒモスが頷くと、突然、地面が陥没し、高さ四メートル、直径五十メートルの大穴が出来上がる。
流石は地の上級精霊である。
「ありがとう。ベヒモス。それじゃあ、クラーケン。この穴の中に兵士達を入れて上げて」
水の上級精霊クラーケンにそうお願いすると、触手に身包みを剥がされ強制武装解除状態となったリージョン帝国の兵士達を次々と穴の中に入れていく。
リージョン帝国までのフルマラソン&セントラル王国に来るまでの触手揺れにより触手酔いした兵士と冒険者達がゲッソリとした表情を浮かべているのが印象深かった。
すべての兵士達を穴の中に入れると、風の上級精霊ジンの手を借りベヒモスからゆっくり降ろしてもらう。
「それじゃあ、皆。小さくなってくれるかな? そろそろバックレようか」
エレメンタル達が元の小さな光の玉へと姿を変えたのを確認すると、セントラル王国の城郭へ視線を向ける。
すると、城郭門が開き兵士達がわらわらとこちらに向かってくるのが見えた。
隠密マントを被ったまま門に向かうと、すれ違い様、兵士達の困惑とした声が聞こえてくる。
「い、一体、どうなってるんだっ?」
「……意味がわからない」
「王宮になんと報告を上げれば……」
意外な事に兵士達から『あのモブ・フェンリルは一体……』という声は聞こえない。
もしかしたら、エレメンタル達が超進化を遂げ、ウルトラ怪獣大集合状態となった事で忘れ去られているのかもしれない。
まあ、突然、巨大怪獣が現れたらビックリするよね。
それこそ、一人門の外に出たモブ・フェンリルの存在が霞む位には……。
隠密マントを被ったまま門を抜けると、建物の影に隠れ『モブ・フェンリルスーツ』をアイテムストレージにしまい代わりに『ブラック・モブフェンリルスーツ』を装備する。
うん。完璧だ。これなら、外に出たモブ・フェンリルが俺とは気付くまい。
既に十分な報酬は貰った。主に兵士達の身包みを剥ぐ事で……。
よし。緊急クエストも終わったし、一旦、『微睡の宿』に戻ろう。
このままここにいては、大変な事に巻き込まれそうな気がする。
『ブラック・モブフェンリルスーツ』に着替えた俺は、城郭を後にした。
◇◆◇
一方、穴に落されたリージョン帝国の兵士と冒険者達は……。
「う、うっぷ……」
「も、もう駄目だ……」
「み、水……。水を……。誰か水をくれ……」
モンスターに追いまわされた揚句の触手酔い。
穴の周りを包囲するセントラル王国の兵士達がどうでも良く思えるほどに死屍累々となっていた。
リージョン帝国の兵士と冒険者達が思っている事はただ一つ。
水をくれ。ただそれだけである。
国境近くの森。そこに棲息するモンスターをセントラル王国側へと追い立てたまでは良かった。
あとはモンスター達の対応に追われボロボロとなったセントラル王国に侵攻するだけ、しかし、セントラル王国の城郭が見えてきた頃、それは一変する。
なんと、巨大な化け物に追い掛けられたモンスター達がリージョン帝国側に逆走してきたのだ。空を見上げれば、モンスターをセントラル王国側へ追い立てていた筈のグリフォンがいつの間にかいなくなっていた。
そこから始まったのは、剣と盾を持ち甲冑を身に纏ったまま行う敗走という名の過酷なマラソン。しかも、一度も交戦することなき敗走マラソンである。
背後に迫りくるのはモンスターだけではなく、そのモンスターを追い掛ける謎の超巨大モンスター。
城郭門を目にした時、一瞬、希望を抱いたが決死の敗走虚しく城郭門に辿り着く前に化け物に捕われ今、穴の中でグッタリしている。
「お、おい。大丈夫か?」
今もこうして俺達を縛り上げているセントラル王国の兵士達も、まるで可哀相な人を見るかのような視線を向けてくる始末だ。
ちなみに言わせてもらえば全然大丈夫じゃない。
何しろ俺達は、一度も交戦をすることなく捕えられてしまったのだから。
セントラル王国を侵攻するぞと息巻いていたのが嘘の様だ。
しかし、こうなっては仕方がない。
「み、水を……。水をくれ……」
今はただ水が欲しい。
俺達の切実な要求に、セントラル王国の兵士は苦笑いを浮かべた。
◇◆◇
翌日、冒険者協会に併設されている酒場でペロペロザウルスのTKG(卵かけご飯)をエレメンタル達にご馳走していると、冒険者協会の協会長、ゲッテムハルトから直々に声がかかる。
「Sランク冒険者のカケル君だな。食事中すまないが、君の話が聞きたい。この後、時間を空けてくれ」
「はい。別に構いませんが……」
協会長直々に何の用だろうか?
まさか昨日の件か?
昨日、俺がリージョン帝国の兵士達の身包みを剥がした事がバレたのか?
うーん。バレたとしたら面倒臭いな。どうやって誤魔化そう……。
「……それでは、食事が済み次第、私の部屋に来てくれ」
「わかりました……」
嫌々ではあるが仕方がない。
「失礼します」
エレメンタル達が食事を終えるのを待ち、協会長室に向かうと、部屋の中では協会長が頭を抱えていた。
「えっと、どうされたんですか?」
「……おお、よく来てくれた。まずはソファに座ってくれ」
「はい……」
言われた通り、ソファに座ると疲れ切った表情を浮かべた協会長が対面に座る。
「改めて、知っているとは思うが私は冒険者協会の協会長、ゲッテムハルトだ。Sランク冒険者のカケル。君を呼んだのは他でもない。昨日、リージョン帝国との国境沿いで起こったスタンピード、そして、リージョン帝国の侵攻。これらについて、一点、確認したいことがある」
うう、やはりか……。
もし俺がやったとバレたらどうなるんだろ……。
エレメンタルを上級精霊に進化させちゃったし、もしかしたら危険人物認定されてしまう恐れもあるんじゃないだろうか……。
まあ、ゲーム世界が現実となった今、Sランク冒険者なんて皆、危険人物みたいなもんだけど……。
「確認したいことですか? 怖いですね。一体何でしょう?」
「うむ。リージョン帝国の侵攻時、君がどこにいたのか教えてほしい」
この目付き、怪しんでる人の目だよ。八割方確信を持っている人の目だよ、これっ!
だ、だが俺は負けない。絶対に負けてやらない。
これまで口八丁手八丁で有耶無耶に社会を渡り歩いてきたんだっ!
今回も有耶無耶にして欺いて見せる!
「リージョン帝国の侵攻時ですか? 当然、城郭にいましたよ。凄い騒ぎでしたね。突然、超巨大モンスターが現れて……。まあ、俺にできる事は少ないと判断し、後の事は兵士さんにお任せしましたが、それがどうかしたんですか?」
そう弁解すると、協会長、ゲッテムハルトは眉根を寄せる。
「奇天烈な乗り物に乗ったモブ・フェンリルが城郭門を抜けていったという報告もあるが?」
「ええ、仰る通りです。しかし、城郭門を通り過ぎ上を見上げると、皆、そこに集まっているではありませんか。一度外に出てすぐに中に入るのも恥ずかしかったので、隠密マントを被って門の中に入った次第です。門もすぐに閉まりそうでしたし、実際、閉まりました。緊急事態だったので許して頂けるとありがたいのですが……」
「……なるほど。そういえば、君はエレメンタルを連れているな」
流石は協会長だ。痛い所を突いてくる。
しかし、まだまだ甘い。俺のエレメンタルちゃん達は優秀なのだよ。
俺が命じない限り、絶対に元の姿に戻りはしない。
「それがどうかしましたか?」
「突如現れた超巨大モンスターの姿だが、上級精霊ではないかとの声があるのだ。もしかして、君の精霊がそうなのではないかと思ったのだが……」
協会長の視線がギョロリと俺に向く。
なるほど、さては上級精霊という単語を出した時の反応を伺っていたな?
だが、まだまだだね。
「へえ、そうなんですか。協会長は博識ですね。それで、もうそろそろよろしいでしょうか? 特に用事がないようでしたら、そろそろお暇させて頂きたいのですが……」
俺が無理矢理話を終わらせると協会長はため息を吐いた。
「ふむ。そうだな……。リージョン帝国との戦闘見事であった。君の力がこの国に向かない事を祈っている。もう行っていいぞ」
「安心して下さい。そんな事する訳が……って、うん?」
なにか地雷を踏み抜いた様な……。
前に視線を向けると、協会長、ゲッテムハルトが満面の笑みを浮かべていた。
「お、俺達をどうするつもりだぁ……」
水の上級精霊クラーケンにより捕えられたリージョン帝国の兵士達の怨嗟の声をBGMにセントラル王国の城郭まで戻った俺は、地の上級精霊ベヒモスにお願いをして大きな穴を掘ってもらうことにした。
なんで、そんな事をするのかって?
そんな事は決まってる。リージョン帝国の兵士達が逃げないよう、この穴の中に放り込む為だ。
兵士達の捕縛時、彼等が持っていたアイテムや武器はすべて回収させてもらった。
諸事情によりモンスターからドロップアイテムを回収する事はできなかったけど、中々、割のいい仕事だった。リージョン帝国にしかない武器やアイテムが目白押しだ。ゲームの設定上兵士から身包みを剥がすなんて事、これまでできなかったからね。
まあ、そこまでレアな訳ではないから実際に使用することはないだろうけど……。これらはあくまでも偶にアイテムストレージから取り出してニマニマする為だけにあるコレクション用だ。
セントラル王国側の冒険者として登録しちゃった為、リージョン帝国側の武器って手に入らなかったんだよね。ほんと、緊急クエスト様様である。
残る問題は捕えたリージョン帝国の兵士達に関してだけど、『ゲーム世界が現実となった今、俺が単独で捕えた事がバレるのは拙いんじゃね?』と思い直した。
最初は国境付近の領土に陣取って実効支配してやろうかとも思ったけど、リージョン帝国の侵攻を一人で食い止めたとはいえ、国と国との交渉ごとに首を突っ込むのは危険が伴う。だからこそ、その埋め合わせに兵士達の身包みを剥ぐだけに留めておいた。
「それじゃあ、ベヒモス。こいつ等が逃げないよう穴に閉じ込めておきたいから、ここに穴を掘ってくれないかな?」
地の上級精霊ベヒモスが頷くと、突然、地面が陥没し、高さ四メートル、直径五十メートルの大穴が出来上がる。
流石は地の上級精霊である。
「ありがとう。ベヒモス。それじゃあ、クラーケン。この穴の中に兵士達を入れて上げて」
水の上級精霊クラーケンにそうお願いすると、触手に身包みを剥がされ強制武装解除状態となったリージョン帝国の兵士達を次々と穴の中に入れていく。
リージョン帝国までのフルマラソン&セントラル王国に来るまでの触手揺れにより触手酔いした兵士と冒険者達がゲッソリとした表情を浮かべているのが印象深かった。
すべての兵士達を穴の中に入れると、風の上級精霊ジンの手を借りベヒモスからゆっくり降ろしてもらう。
「それじゃあ、皆。小さくなってくれるかな? そろそろバックレようか」
エレメンタル達が元の小さな光の玉へと姿を変えたのを確認すると、セントラル王国の城郭へ視線を向ける。
すると、城郭門が開き兵士達がわらわらとこちらに向かってくるのが見えた。
隠密マントを被ったまま門に向かうと、すれ違い様、兵士達の困惑とした声が聞こえてくる。
「い、一体、どうなってるんだっ?」
「……意味がわからない」
「王宮になんと報告を上げれば……」
意外な事に兵士達から『あのモブ・フェンリルは一体……』という声は聞こえない。
もしかしたら、エレメンタル達が超進化を遂げ、ウルトラ怪獣大集合状態となった事で忘れ去られているのかもしれない。
まあ、突然、巨大怪獣が現れたらビックリするよね。
それこそ、一人門の外に出たモブ・フェンリルの存在が霞む位には……。
隠密マントを被ったまま門を抜けると、建物の影に隠れ『モブ・フェンリルスーツ』をアイテムストレージにしまい代わりに『ブラック・モブフェンリルスーツ』を装備する。
うん。完璧だ。これなら、外に出たモブ・フェンリルが俺とは気付くまい。
既に十分な報酬は貰った。主に兵士達の身包みを剥ぐ事で……。
よし。緊急クエストも終わったし、一旦、『微睡の宿』に戻ろう。
このままここにいては、大変な事に巻き込まれそうな気がする。
『ブラック・モブフェンリルスーツ』に着替えた俺は、城郭を後にした。
◇◆◇
一方、穴に落されたリージョン帝国の兵士と冒険者達は……。
「う、うっぷ……」
「も、もう駄目だ……」
「み、水……。水を……。誰か水をくれ……」
モンスターに追いまわされた揚句の触手酔い。
穴の周りを包囲するセントラル王国の兵士達がどうでも良く思えるほどに死屍累々となっていた。
リージョン帝国の兵士と冒険者達が思っている事はただ一つ。
水をくれ。ただそれだけである。
国境近くの森。そこに棲息するモンスターをセントラル王国側へと追い立てたまでは良かった。
あとはモンスター達の対応に追われボロボロとなったセントラル王国に侵攻するだけ、しかし、セントラル王国の城郭が見えてきた頃、それは一変する。
なんと、巨大な化け物に追い掛けられたモンスター達がリージョン帝国側に逆走してきたのだ。空を見上げれば、モンスターをセントラル王国側へ追い立てていた筈のグリフォンがいつの間にかいなくなっていた。
そこから始まったのは、剣と盾を持ち甲冑を身に纏ったまま行う敗走という名の過酷なマラソン。しかも、一度も交戦することなき敗走マラソンである。
背後に迫りくるのはモンスターだけではなく、そのモンスターを追い掛ける謎の超巨大モンスター。
城郭門を目にした時、一瞬、希望を抱いたが決死の敗走虚しく城郭門に辿り着く前に化け物に捕われ今、穴の中でグッタリしている。
「お、おい。大丈夫か?」
今もこうして俺達を縛り上げているセントラル王国の兵士達も、まるで可哀相な人を見るかのような視線を向けてくる始末だ。
ちなみに言わせてもらえば全然大丈夫じゃない。
何しろ俺達は、一度も交戦をすることなく捕えられてしまったのだから。
セントラル王国を侵攻するぞと息巻いていたのが嘘の様だ。
しかし、こうなっては仕方がない。
「み、水を……。水をくれ……」
今はただ水が欲しい。
俺達の切実な要求に、セントラル王国の兵士は苦笑いを浮かべた。
◇◆◇
翌日、冒険者協会に併設されている酒場でペロペロザウルスのTKG(卵かけご飯)をエレメンタル達にご馳走していると、冒険者協会の協会長、ゲッテムハルトから直々に声がかかる。
「Sランク冒険者のカケル君だな。食事中すまないが、君の話が聞きたい。この後、時間を空けてくれ」
「はい。別に構いませんが……」
協会長直々に何の用だろうか?
まさか昨日の件か?
昨日、俺がリージョン帝国の兵士達の身包みを剥がした事がバレたのか?
うーん。バレたとしたら面倒臭いな。どうやって誤魔化そう……。
「……それでは、食事が済み次第、私の部屋に来てくれ」
「わかりました……」
嫌々ではあるが仕方がない。
「失礼します」
エレメンタル達が食事を終えるのを待ち、協会長室に向かうと、部屋の中では協会長が頭を抱えていた。
「えっと、どうされたんですか?」
「……おお、よく来てくれた。まずはソファに座ってくれ」
「はい……」
言われた通り、ソファに座ると疲れ切った表情を浮かべた協会長が対面に座る。
「改めて、知っているとは思うが私は冒険者協会の協会長、ゲッテムハルトだ。Sランク冒険者のカケル。君を呼んだのは他でもない。昨日、リージョン帝国との国境沿いで起こったスタンピード、そして、リージョン帝国の侵攻。これらについて、一点、確認したいことがある」
うう、やはりか……。
もし俺がやったとバレたらどうなるんだろ……。
エレメンタルを上級精霊に進化させちゃったし、もしかしたら危険人物認定されてしまう恐れもあるんじゃないだろうか……。
まあ、ゲーム世界が現実となった今、Sランク冒険者なんて皆、危険人物みたいなもんだけど……。
「確認したいことですか? 怖いですね。一体何でしょう?」
「うむ。リージョン帝国の侵攻時、君がどこにいたのか教えてほしい」
この目付き、怪しんでる人の目だよ。八割方確信を持っている人の目だよ、これっ!
だ、だが俺は負けない。絶対に負けてやらない。
これまで口八丁手八丁で有耶無耶に社会を渡り歩いてきたんだっ!
今回も有耶無耶にして欺いて見せる!
「リージョン帝国の侵攻時ですか? 当然、城郭にいましたよ。凄い騒ぎでしたね。突然、超巨大モンスターが現れて……。まあ、俺にできる事は少ないと判断し、後の事は兵士さんにお任せしましたが、それがどうかしたんですか?」
そう弁解すると、協会長、ゲッテムハルトは眉根を寄せる。
「奇天烈な乗り物に乗ったモブ・フェンリルが城郭門を抜けていったという報告もあるが?」
「ええ、仰る通りです。しかし、城郭門を通り過ぎ上を見上げると、皆、そこに集まっているではありませんか。一度外に出てすぐに中に入るのも恥ずかしかったので、隠密マントを被って門の中に入った次第です。門もすぐに閉まりそうでしたし、実際、閉まりました。緊急事態だったので許して頂けるとありがたいのですが……」
「……なるほど。そういえば、君はエレメンタルを連れているな」
流石は協会長だ。痛い所を突いてくる。
しかし、まだまだ甘い。俺のエレメンタルちゃん達は優秀なのだよ。
俺が命じない限り、絶対に元の姿に戻りはしない。
「それがどうかしましたか?」
「突如現れた超巨大モンスターの姿だが、上級精霊ではないかとの声があるのだ。もしかして、君の精霊がそうなのではないかと思ったのだが……」
協会長の視線がギョロリと俺に向く。
なるほど、さては上級精霊という単語を出した時の反応を伺っていたな?
だが、まだまだだね。
「へえ、そうなんですか。協会長は博識ですね。それで、もうそろそろよろしいでしょうか? 特に用事がないようでしたら、そろそろお暇させて頂きたいのですが……」
俺が無理矢理話を終わらせると協会長はため息を吐いた。
「ふむ。そうだな……。リージョン帝国との戦闘見事であった。君の力がこの国に向かない事を祈っている。もう行っていいぞ」
「安心して下さい。そんな事する訳が……って、うん?」
なにか地雷を踏み抜いた様な……。
前に視線を向けると、協会長、ゲッテムハルトが満面の笑みを浮かべていた。
108
あなたにおすすめの小説
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。
そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。
カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。
やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。
魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。
これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。
エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。
第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。
旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。
ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる