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第62話 糞爺は意外と良い爺でした。驚きです。
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「えっと、協会長……。いえ、協会長閣下?」
「なんだね?」
「今なんて……」
今、『リージョン帝国との戦闘見事であった』とか言わなかった?
「うん? 私はリージョン帝国との戦闘見事であった。君の力がこの国に向かない事を祈っていると、言っただけだが?」
「も、もしかして、これまでの質問は……」
「質問なんて大層なものではない。ただ君の人柄を知る為の問答だ。それにしても、あの力は素晴らしかった。私は現場で直接見ていたぞ? 君がエレメンタルに乗りリージョン帝国にモンスターを追いやる所や兵士達を捕え穴の中に放り込む所も……。まるで悪魔の如き所業であったな」
協会長のその言い方。なんだか犯罪の現場を見られていたような気分だ。
「で、でも俺は……」
「隠密マントを被っていたな……。しかし、ある程度の実力者が注意してよく見ればあの位、すぐに看破できる。ああ、安心してくれ。別に君の事を脅している訳ではない。実際に、よくやってくれたと思っているしな」
う、うぐっ……。
最初から知っていたのか、この糞爺……。
「で、では……」
「……ああ、そういえば、こんな所に馬鹿で愚鈍な元副協会長が冒険者協会の協会長である私に何の相談もなく交わした契約書があったな。できれば、今後は中級・上級回復薬の納品を抑えて貰えるとありがたいとは思うが……」
「ううっ……」
老獪な狸爺め……。
まさかエレメンタル達の秘密を盾に俺を揺するとは……。
「契約書を結ぶ元凶となった天下りの元副協会長は降格処分にした。君を衛兵に突き出した受付嬢もな。初級回復薬も定価で買い取ろう。なので、これからは必要以上の中級・上級回復薬を納めるのはできるだけ控えてほしいものだ。もちろん、強制はしないが……」
「……まあいいでしょう」
どの道、回復薬は買取ってくれるんだ。
副協会長も処分してくれたみたいだし、初級回復薬も定価で買い取ってくれるなら万々歳である。
「ほう。それはありがたい。まあどの道、次回の買取をワザと拒否して、初級回復薬を一千本、中級・上級回復薬を各十本ずつの購入に切り替えるつもりだったがね。あれほどの力を持つエレメンタルを配下に収めているんだ。君とは敵対したくなかった。予め、話を通すことができて良かったよ」
「えっと、それじゃあ、スタンピードとリージョン帝国の兵士達の件は……」
「……こちらの要求を呑んでくれたんだ。最大限、配慮しよう」
「……ありがとうございます」
その言葉を聞き、俺は嬉々として頭を下げた。
正直、エレメンタル達があんな超進化を遂げるとは思わなかったんだよね。
しかも、まだあと一回進化の可能性を残している。
狸爺……じゃなかった。協会長が話せる爺で本当に良かった。副協会長ならこうはいかない。
「それで、リージョン帝国の兵士達はこれからどうなるんですか?」
「……まあ国境付近での小競り合いなんてこれが初めてのことではないからな。向こう側に囚われている捕虜と交換するか、はたまた賠償金を要求するか、まだ結論は決まっておらぬよ」
「そうなんですか……」
まあ、俺としては、今回の一件が有耶無耶に終わるならどうでもいいことだ。
リージョン帝国の兵士と冒険者達よ。こちら側に攻めて来てくれてありがとう。
君達の武器や防具は俺のコレクションとしてアイテムストレージに収めておくから安心してくれ。
「……そういえば、君は彼等の身包みを剥いでいたな。冒険者協会で買い取ることもできるがどうする?」
「いえ、結構です。それよりも実は欲しいものがあるのですが……」
「欲しいもの?」
俺、突然のおねだりに協会長が怪訝な表情を浮かべる。
一体、何を要求してくるつもりだと、そう顔で語りかけてくるようだ。
「ええ、『契約書』が欲しいんですが、冒険者協会にあったりします?」
「ふむ。契約書か……。ないことはないが、あれ一枚作るのに相当な費用がかかる。一枚当たり百万コルで良ければ定期的に融通することも可能だが……」
「本当ですかっ!?」
良かった。思った通りだ。
ユグドラシル・ショップでしか購入できないと思っていた課金アイテムも金を積めば手に入れる事ができるらしい。
「……とはいえ、そう数はないぞ? 『契約書』は冒険者協会でも重宝しているからな。精々、月当たり十枚がいい所だ」
「十分です。できれば、上級回復薬あたりと物々交換ならなお嬉しいんですけど……」
「上級回復薬か……。まあいいだろう」
「ありがとうございます!!」
なんて融通が利く爺なんだ。
いや、爺なんて失礼な言い方、今日からするのは止めておこう
「そういえば最近、ミズガルズ聖国の者達が上級回復薬の作成者を探していたな……。セントラル王国の上層部もだ。念の為、情報が洩れぬ様、注意は払っているが気を付けろよ」
「セントラル王国とミズガルズ聖国が?」
「ああ、上級回復薬を調合することのできる者は中々いないからな。購入しようと思えば一本当たり一千万コルもする。それなら飼い殺しにして、作らせたらいいと考える者がいてもおかしくはない」
「ええっ……」
怖っ!?
急に怖い話ぶっこんで来たよ!
そんな危ない奴等に目を付けられていたのか……。全然、気付かなかった。
「話は以上だ。中々、有意義な話ができた。もし困った事があったら言ってくれ。できる範囲、力になろう」
「はい。ありがとうございます」
協会長との話が終わり、部屋を出ると俺はガッツポーズを決めた。
くくくっ……。
これで定期的に『契約書』を手に入れる事ができる。
もちろん、課金アイテムと同様の効果を発揮するかどうかの検証は必要だが、上級回復薬一本で契約書が十枚手に入ると思えば上々の結果だ。
それにしても、セントラル王国とミズガルズ聖国が俺の事を探しているのか……。
どうしたものかと思案しながら階段を下りる。
そして、冒険者協会を後にしようと扉に手を掛けようとした所で、背後から肩を叩かれた。
「おい、ちょっと待てよ」
「うん?」
なんだ?
振り向くと、数人の冒険者が俺を取り囲んでいた。
その中に見知った顔が三人いる。
先日、課金アイテム『ムーブ・ユグドラシル』を強請り盗ろうとした冒険者達だ。
確か名前は……。
う~ん。思い出せない。
エレメンタルが憑いているし、確か『転移組』とかいう、この世界に転移したと喜んでいる連中だった筈。
「とりあえず、手をどけようか、邪魔だから。それで、なんの用?」
名前を思い出せなかったので、すっとぼけながらそう言うと、見知った顔の三人が顔を真っ赤に染め怒り出す。
「『なんの用?』じゃねーだろっ! お前が妙なエレメンタルを俺達に付けるからこんな事になっているんじゃねーかっ!」
エレメンタル、エレメンタル……。
うーん。俺、なにか悪い事したっけ?
確か、エレメンタルにはこの三人の監視とお仕置きしか命じていなかった筈だ。
俺に対して良からぬ事をしようとしない限り、別に実害はない筈なんだけど……。
「……それがどうかしたの?」
「ふっ、ふざけっ……。ぎゃあっ!!?」
なにを怒っているのか分からなかったので、そう尋ねると、俺に怒声を浴びせ掛けてきた冒険者に突然、『バチッ!』と雷光が発生し、そのままぶっ倒れてしまう。
『バチッ!』という音からして、雷の精霊ヴォルトがなにかをしたのだろう。
訳が分からないとすっとぼけた表情を浮かべると、知らない男が声をかけてくる。
「実は彼、先日からこの調子なんだ。君に関する事柄を聞き出そうとしたり、愚痴を言うだけで、エレメンタルが攻撃してきて困ってるんだよ」
「へえ、そうなんですか。大変ですね」
心を込めずにそう言うと、男は苦笑いを浮かべる。
「まったくだよ。これはここにいる二人も同じでね。君には申し訳ないんだけど、このエレメンタルを解除してくれないかな?」
「えっ? なんでですか?」
心底、意味がわからない。
そんな表情を浮かべ呟くように言うと、男は胡散臭い笑みを浮かべ話しかけてくる。
「オーディンの下に向かいゲームに囚われた人を解放する事が転移プレイヤーの集まり『転移組』の義務である存在意義だ。このままでは『転移組』の活動が大きく阻害されてしまう。困るんだよ……。誰とも知らないモブ・フェンリルにそれを邪魔されるのはね」
「うん? なにを言っているかわからないんですが、俺の事を探ろうとしたり、俺にとって不利になりそうなことをしようとするからエレメンタル達が攻撃を仕掛けてくるだけで、俺の害になりそうな事をしなければ何も起こりませんよ?」
至極当然の事ですが何か? 的な表情を浮かべてそう言うと、転移組の男はクスリと笑う。
「なるほど、ふーん。そうなんだ……。わかった。肝に銘じておくよ。そういえば、自己紹介がまだだったね。俺はルート。『転移組』の副リーダー、ルートだ。それにしても、君のエレメンタル強いね。もし良かったら一体分けてくれよ。こんなにいるんだ。一体位分けてくれても構わないだろ? 俺達はこの世界に転移させられてしまったプレイヤー全員のために活動しているんだからさ」
へー、凄いや。プレイヤー全員のために活動しているとは大きく出たものだね。
しかし、そんな愚かな問答に付き合ってやる義理はない。
エレメントを一体分けろだぁ?
馬鹿も休み休みに言えよ。ハゲ。
火の上級精霊フェニックスをお前の頭の上に常駐させるぞ?
その綺麗に生え揃った髪を焼け野原にして毛根死滅させてやろうか、ボケカスコラ。
肩に置かれた手を振り払い、冒険者協会の出入口の扉に手をかけると、男が待ったをかけてくる。
「まあ、待てよ。話し合おう。実は俺達、新しい世界に行く為の準備をしている最中なんだ」
――新しい世界。
その言葉を聞いた瞬間、足が止まる。
「へえ、それは興味深いな……」
「そうだろう? 君ならそう言うと思ったんだ。どうだい? これから秘密の話でも……」
「いいだろう。それで、解放される新しい世界はどこなんだ?」
「まあ、そう焦るなよ。俺達の集めた情報が正しければ解放される新しい世界は、黒い妖精の国スヴァルトアールヴァヘイムだ」
「黒い妖精の国スヴァルトアールヴァヘイム……」
確かダークエルフとドワーフが住むとされる世界だ。
そうか、新しく解放される世界はスヴァルトアールヴァヘイムか……。
「スヴァルトアールヴァヘイムを解放させる為には、いくつかの手順を踏む必要がある。ただ、詳しい話はここでは言えない。着いてきな、俺達のアジトで話をしよう」
「なんだね?」
「今なんて……」
今、『リージョン帝国との戦闘見事であった』とか言わなかった?
「うん? 私はリージョン帝国との戦闘見事であった。君の力がこの国に向かない事を祈っていると、言っただけだが?」
「も、もしかして、これまでの質問は……」
「質問なんて大層なものではない。ただ君の人柄を知る為の問答だ。それにしても、あの力は素晴らしかった。私は現場で直接見ていたぞ? 君がエレメンタルに乗りリージョン帝国にモンスターを追いやる所や兵士達を捕え穴の中に放り込む所も……。まるで悪魔の如き所業であったな」
協会長のその言い方。なんだか犯罪の現場を見られていたような気分だ。
「で、でも俺は……」
「隠密マントを被っていたな……。しかし、ある程度の実力者が注意してよく見ればあの位、すぐに看破できる。ああ、安心してくれ。別に君の事を脅している訳ではない。実際に、よくやってくれたと思っているしな」
う、うぐっ……。
最初から知っていたのか、この糞爺……。
「で、では……」
「……ああ、そういえば、こんな所に馬鹿で愚鈍な元副協会長が冒険者協会の協会長である私に何の相談もなく交わした契約書があったな。できれば、今後は中級・上級回復薬の納品を抑えて貰えるとありがたいとは思うが……」
「ううっ……」
老獪な狸爺め……。
まさかエレメンタル達の秘密を盾に俺を揺するとは……。
「契約書を結ぶ元凶となった天下りの元副協会長は降格処分にした。君を衛兵に突き出した受付嬢もな。初級回復薬も定価で買い取ろう。なので、これからは必要以上の中級・上級回復薬を納めるのはできるだけ控えてほしいものだ。もちろん、強制はしないが……」
「……まあいいでしょう」
どの道、回復薬は買取ってくれるんだ。
副協会長も処分してくれたみたいだし、初級回復薬も定価で買い取ってくれるなら万々歳である。
「ほう。それはありがたい。まあどの道、次回の買取をワザと拒否して、初級回復薬を一千本、中級・上級回復薬を各十本ずつの購入に切り替えるつもりだったがね。あれほどの力を持つエレメンタルを配下に収めているんだ。君とは敵対したくなかった。予め、話を通すことができて良かったよ」
「えっと、それじゃあ、スタンピードとリージョン帝国の兵士達の件は……」
「……こちらの要求を呑んでくれたんだ。最大限、配慮しよう」
「……ありがとうございます」
その言葉を聞き、俺は嬉々として頭を下げた。
正直、エレメンタル達があんな超進化を遂げるとは思わなかったんだよね。
しかも、まだあと一回進化の可能性を残している。
狸爺……じゃなかった。協会長が話せる爺で本当に良かった。副協会長ならこうはいかない。
「それで、リージョン帝国の兵士達はこれからどうなるんですか?」
「……まあ国境付近での小競り合いなんてこれが初めてのことではないからな。向こう側に囚われている捕虜と交換するか、はたまた賠償金を要求するか、まだ結論は決まっておらぬよ」
「そうなんですか……」
まあ、俺としては、今回の一件が有耶無耶に終わるならどうでもいいことだ。
リージョン帝国の兵士と冒険者達よ。こちら側に攻めて来てくれてありがとう。
君達の武器や防具は俺のコレクションとしてアイテムストレージに収めておくから安心してくれ。
「……そういえば、君は彼等の身包みを剥いでいたな。冒険者協会で買い取ることもできるがどうする?」
「いえ、結構です。それよりも実は欲しいものがあるのですが……」
「欲しいもの?」
俺、突然のおねだりに協会長が怪訝な表情を浮かべる。
一体、何を要求してくるつもりだと、そう顔で語りかけてくるようだ。
「ええ、『契約書』が欲しいんですが、冒険者協会にあったりします?」
「ふむ。契約書か……。ないことはないが、あれ一枚作るのに相当な費用がかかる。一枚当たり百万コルで良ければ定期的に融通することも可能だが……」
「本当ですかっ!?」
良かった。思った通りだ。
ユグドラシル・ショップでしか購入できないと思っていた課金アイテムも金を積めば手に入れる事ができるらしい。
「……とはいえ、そう数はないぞ? 『契約書』は冒険者協会でも重宝しているからな。精々、月当たり十枚がいい所だ」
「十分です。できれば、上級回復薬あたりと物々交換ならなお嬉しいんですけど……」
「上級回復薬か……。まあいいだろう」
「ありがとうございます!!」
なんて融通が利く爺なんだ。
いや、爺なんて失礼な言い方、今日からするのは止めておこう
「そういえば最近、ミズガルズ聖国の者達が上級回復薬の作成者を探していたな……。セントラル王国の上層部もだ。念の為、情報が洩れぬ様、注意は払っているが気を付けろよ」
「セントラル王国とミズガルズ聖国が?」
「ああ、上級回復薬を調合することのできる者は中々いないからな。購入しようと思えば一本当たり一千万コルもする。それなら飼い殺しにして、作らせたらいいと考える者がいてもおかしくはない」
「ええっ……」
怖っ!?
急に怖い話ぶっこんで来たよ!
そんな危ない奴等に目を付けられていたのか……。全然、気付かなかった。
「話は以上だ。中々、有意義な話ができた。もし困った事があったら言ってくれ。できる範囲、力になろう」
「はい。ありがとうございます」
協会長との話が終わり、部屋を出ると俺はガッツポーズを決めた。
くくくっ……。
これで定期的に『契約書』を手に入れる事ができる。
もちろん、課金アイテムと同様の効果を発揮するかどうかの検証は必要だが、上級回復薬一本で契約書が十枚手に入ると思えば上々の結果だ。
それにしても、セントラル王国とミズガルズ聖国が俺の事を探しているのか……。
どうしたものかと思案しながら階段を下りる。
そして、冒険者協会を後にしようと扉に手を掛けようとした所で、背後から肩を叩かれた。
「おい、ちょっと待てよ」
「うん?」
なんだ?
振り向くと、数人の冒険者が俺を取り囲んでいた。
その中に見知った顔が三人いる。
先日、課金アイテム『ムーブ・ユグドラシル』を強請り盗ろうとした冒険者達だ。
確か名前は……。
う~ん。思い出せない。
エレメンタルが憑いているし、確か『転移組』とかいう、この世界に転移したと喜んでいる連中だった筈。
「とりあえず、手をどけようか、邪魔だから。それで、なんの用?」
名前を思い出せなかったので、すっとぼけながらそう言うと、見知った顔の三人が顔を真っ赤に染め怒り出す。
「『なんの用?』じゃねーだろっ! お前が妙なエレメンタルを俺達に付けるからこんな事になっているんじゃねーかっ!」
エレメンタル、エレメンタル……。
うーん。俺、なにか悪い事したっけ?
確か、エレメンタルにはこの三人の監視とお仕置きしか命じていなかった筈だ。
俺に対して良からぬ事をしようとしない限り、別に実害はない筈なんだけど……。
「……それがどうかしたの?」
「ふっ、ふざけっ……。ぎゃあっ!!?」
なにを怒っているのか分からなかったので、そう尋ねると、俺に怒声を浴びせ掛けてきた冒険者に突然、『バチッ!』と雷光が発生し、そのままぶっ倒れてしまう。
『バチッ!』という音からして、雷の精霊ヴォルトがなにかをしたのだろう。
訳が分からないとすっとぼけた表情を浮かべると、知らない男が声をかけてくる。
「実は彼、先日からこの調子なんだ。君に関する事柄を聞き出そうとしたり、愚痴を言うだけで、エレメンタルが攻撃してきて困ってるんだよ」
「へえ、そうなんですか。大変ですね」
心を込めずにそう言うと、男は苦笑いを浮かべる。
「まったくだよ。これはここにいる二人も同じでね。君には申し訳ないんだけど、このエレメンタルを解除してくれないかな?」
「えっ? なんでですか?」
心底、意味がわからない。
そんな表情を浮かべ呟くように言うと、男は胡散臭い笑みを浮かべ話しかけてくる。
「オーディンの下に向かいゲームに囚われた人を解放する事が転移プレイヤーの集まり『転移組』の義務である存在意義だ。このままでは『転移組』の活動が大きく阻害されてしまう。困るんだよ……。誰とも知らないモブ・フェンリルにそれを邪魔されるのはね」
「うん? なにを言っているかわからないんですが、俺の事を探ろうとしたり、俺にとって不利になりそうなことをしようとするからエレメンタル達が攻撃を仕掛けてくるだけで、俺の害になりそうな事をしなければ何も起こりませんよ?」
至極当然の事ですが何か? 的な表情を浮かべてそう言うと、転移組の男はクスリと笑う。
「なるほど、ふーん。そうなんだ……。わかった。肝に銘じておくよ。そういえば、自己紹介がまだだったね。俺はルート。『転移組』の副リーダー、ルートだ。それにしても、君のエレメンタル強いね。もし良かったら一体分けてくれよ。こんなにいるんだ。一体位分けてくれても構わないだろ? 俺達はこの世界に転移させられてしまったプレイヤー全員のために活動しているんだからさ」
へー、凄いや。プレイヤー全員のために活動しているとは大きく出たものだね。
しかし、そんな愚かな問答に付き合ってやる義理はない。
エレメントを一体分けろだぁ?
馬鹿も休み休みに言えよ。ハゲ。
火の上級精霊フェニックスをお前の頭の上に常駐させるぞ?
その綺麗に生え揃った髪を焼け野原にして毛根死滅させてやろうか、ボケカスコラ。
肩に置かれた手を振り払い、冒険者協会の出入口の扉に手をかけると、男が待ったをかけてくる。
「まあ、待てよ。話し合おう。実は俺達、新しい世界に行く為の準備をしている最中なんだ」
――新しい世界。
その言葉を聞いた瞬間、足が止まる。
「へえ、それは興味深いな……」
「そうだろう? 君ならそう言うと思ったんだ。どうだい? これから秘密の話でも……」
「いいだろう。それで、解放される新しい世界はどこなんだ?」
「まあ、そう焦るなよ。俺達の集めた情報が正しければ解放される新しい世界は、黒い妖精の国スヴァルトアールヴァヘイムだ」
「黒い妖精の国スヴァルトアールヴァヘイム……」
確かダークエルフとドワーフが住むとされる世界だ。
そうか、新しく解放される世界はスヴァルトアールヴァヘイムか……。
「スヴァルトアールヴァヘイムを解放させる為には、いくつかの手順を踏む必要がある。ただ、詳しい話はここでは言えない。着いてきな、俺達のアジトで話をしよう」
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