ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ

文字の大きさ
347 / 411

第347話 人形遊びが大好きな都知事

しおりを挟む
「――停電は……もう大丈夫の様ですね。時間も限られていますので、皆様にはそろそろ結論を出して頂き、評価結果につきましては、私の方から発表させて貰いたいと思います」

 そう言うと、池谷は評価者達から評価シートを受け取り、評価結果の集計を行う。
 質疑応答もまだまだこれからだろうに強引な事だ。
 しかし、それでこそ池谷……ピンハネと長谷川の傀儡たる東京都知事といえる。
 結果ありきの結論。とはいえ、間違いは正さなければならないという東京都知事の言葉に覚悟を感じ取る事ができた。
 ならば、遠慮は不要。俺やアース・ブリッジ協会に対する配慮も不要だ。
 都知事の『間違いは正さなければならない』という言葉を聞いて、俺も全力で応援したくなった。

 俺は大精霊潜む影に視線を向けると、ピンマイクの電源を落とし、ただ一言。
『今の都知事のお言葉を実現させてやれ』とだけ呟く。
 すると、会場内が一瞬暗闇に覆われ、参加者全員が呆けた表情を浮かべる。

 ここから先どういった展開になるのか実に楽しみだ。

 俺は評価者達の顔を見てほくそ笑むと、真顔で評価結果の集計を行う池谷に視線を向ける。

「――それでは、評価結果についてお伝えしたいと思います」

 そう言うと、池谷は報道陣用に用意したパネルに評価結果を貼り付ける。

「十三名の方からご評価を頂きまして、廃止が十三票。主なコメントを纏めてお話致しますと、都民から税金を預かっている以上、判明した過ちは正さなければならないというのが主なコメントです。よって、公益財団法人アース・ブリッジ協会の公益認定は暫定的に取り消し、過去に支給した助成金の返還を求めるという結論を持ちたいと思います。以上です」

 つまり都知事の意向がそのまま反映された訳だ。
 評価者達に自分の意見はないらしい。流石である。
 実質、ここで評価を下す評価者達は、全員都知事の意向の下、動く傀儡に等しい。
 これから評価者達の事は、都知事のリカちゃん人形とでも呼ぶ事にしよう。

 池谷の言葉を受け拍手喝采が会場内を飛び交う。
 何度でも言おう流石である。まあ、実際に、公益財団法人アース・ブリッジ協会の元代表理事、長谷川のやってきた事は弁解しようのない程、最低の事だった。
 特に公金を助成金として受け取り親族企業に満額で仕事を流すなど論外もいい所だ。相場の五十倍という所も頂けない。ぐうの音も出ない判断である。

「詳細は追って伝えますが、あなたには理事長の座から降りて頂く事になるでしょうね。後任には私達が選定した人物を据える事になります」
「そうですか。ありがとうございました」

 暫定的に公益認定取消しという事は、俺を追い出し、池谷が選定した公金泥棒を後任に据えた後、公益認定復活もあり得るという事か……。
 まあ、公益認定が残った所で、俺がアース・ブリッジ協会からいなくなれば、関連する業者すべてが敵に回る。お手並み拝見といった所だな。

 隣で放心する長谷川と共に礼を言って立ち上がると、池谷が待ったをかけてくる。

「――お待ちなさい。あなたにはまだ聞きたい事があります」
「聞きたいこと?」

 聞きたい事とは一体何だろうか。
 そう尋ねると、池谷は宝くじ協議会の面々にチラリと視線を向ける。

「今回の事業仕分けは、事前に、合同で行うとお伝えしている筈です。今、あなた方に帰られては困ります」

 そういえばそうだった。
 今回の事業仕分けは、東京都側の策略により合同で行われたもの。
 別に、俺が帰った所で結末は変わらないだろうに……。
 仕方がない。茶番に付きやってやるか。
 俺が着席すると、評価者達が宝くじ協議会の面々に視線を向ける。

「それでは、これより宝くじ協議会の事業について、ご説明頂きたいと思います」

 池谷がそう言うと、宝くじ協議会の友田が説明を始める。

「宝くじ協議会の友田です。よろしくお願いします。それでは、早速、事業の説明をさせて頂きます。当宝くじ協議会は――」

 そう言って、事業の説明を始める友田。
 俺を罵倒した時や、長谷川が事業説明を行った時と違い、スムーズだ。
 まるで、台本でも読んでいるかの様な不自然さに、俺は眉をひそめる。

 これ、あれだな……。完全に台本が出来上がってるわ。

 友田は常に台本に目を向けている。
 俺がそんな事をしようものなら、下を向かず説明しろとヤジが飛んでいただろうに、下らない事をする奴等である。

「闇の大精霊、エレボス……。あいつ等が、カンニングできない様にしてやってくれ」

 大人なのにカンニングペーパー無しに喋る事ができないとは情けない。この様子はテレビ中継されている。子供に大人の不様な姿を見せるなよ。大人ならば用意された台本を読み上げるのではなく自分の言葉で語れ。
 誰かが用意してくれたカンニングペーパー片手に答弁する国会議員並みに不様だぞ。

 皆に聞こえないよう、そう呟くと、影の中に潜んでいた闇の大精霊、エレボスが友田に攻撃を仕掛ける。

 まあ、攻撃といっても大した事ではない。
 ただ、これまで読めていたカンニング用紙が読めなくなるだけだ。

 エレボスの手が、そっと、友田の目をそっと覆うと、友田は困惑した表情を浮かべ、カンニングペーパーの音読を止める。

「――また、地方自主財源の充実という意義を重視し……。うん? これは……。文字が読め……。いえ、失礼いたしました。ええと、あのですね……」

 そして、カンニングペーパーを手に取ると、目を擦り、文字を読む為、必死になって凝視する。

「――どうしたのですか? 早く続きを聞かせてください」
「は、はい。申し訳ございません。えっとですね。なんといいますか……」

 東京都知事である池谷からの問いかけに友田は狼狽しながら、ハンカチで汗を拭く。
 当然だ。なにせ、カンニングペーパーに書かれた文字が読めぬよう、エレボスにそう命じたのだから……。
 おそらく友田の目には、文字がぼやけて見えているのだろう。
 どうやっても、文字を読む事ができなかった友田は大量の冷や汗を流すと、強引に話を締めにかかる。

「――え、ええとですね。い、以上でございます」
「――はっ?」

 これには、池谷も驚きの声を上げる。
 事業説明が途中で中断されたのだから当然だ。
 しかし、それも予定調和。
 池谷はコホンと咳を吐くと、評価者達に視線を向ける。

「――た、宝くじ協議会は、これまでも、くじの存在意義や根本的な問題を含め、なぜ宝くじが刑法の特例として認められているかなど、様々な話し合いを行ってまいりました。しかしながら、存在意義が不明な割に宝くじ全体の収益金から百億近くの巨額な金が割り振られる社会貢献広報費の存在や、同団体が公益法人に対して行う助成金が極めて疑わしい事業に流れているといった問題が解決されぬまま残されており……」

 予定調和と思っていたが、そうでもなかったのだろうか。評価者の一人が宝くじ協議会の問題を指摘すると、都知事の池谷がその評価者を睨み付ける。
 実に面白い事になったものだ。

『ちょっと、あなたは何を言っているので――』

 池谷がそう声を上げると同時に、俺もマイクを手に取る。

『――都知事。まだ評価者の方が補足説明をしている最中です。話を遮らないで頂けますか? それとも話を遮らねばならないような都合の悪い話でもあるのでしょうか?』

 すまし顔でそう言うと、池谷は苦々しい表情を浮かべる。

『あのですね。部外者が口を挟まないで頂けますか?』

 予定調和を乱され怒り狂っているのだろうか。あまりに沸点が低すぎる。

『部外者とは悲しい物言いですね。まだ聞きたい事があると俺を引き留めたのは他でもない都知事ではありませんか。なら俺も関係者の一人でしょう?』

 都知事になってから反抗してくる者がいなかったのだろう。いや、いたとしても強権振り翳して潰してきた。
 しかし、強権振り翳して潰し、弱り切っているはずの羽虫が、強者である自分に意見してきたのだ。さぞかし気に食わない事だろう。
 ストレスって肌に悪いもんね。厚手の化粧がひび割れて乾燥した油絵みたいになってますよ。
 そう告げると、都知事は面白い位、顔を歪める。

『……いいですか? 私達は、あなた方の事業を評価する立場にあります。あなたとは立場が違うんです。あなたは、私の質問にだけ答えればいい。分かったら余計な口を挟まず黙りなさい』

 なるほど、これが東京都知事、池谷の恫喝か。
 私が白といえば、すべて白を地でいくとは、権力者ともなると言う事が違いますな。

『分かりました。ただ、今、都知事のリカちゃん人形が……。いえ、失礼致しました。評価者の方が補足した内容を踏まえ、皆様には、公平なジャッジをして頂きたい所ですね。アース・ブリッジ協会の公益認定は、一千万円の不正を以って暫定的に取り消され、助成金の返還を求められたのですから』

 この様子は全国に中継されている。

『盗人猛々しく聞こえるかもしれませんが、アース・ブリッジ協会があれで認定取り消しの上、助成金返還ならば、公益法人に対して行う助成金が極めて疑わしい事業に流れているといった問題が解決されぬまま残されている宝くじ協議会もまた認定を取り消されるか廃止されるべきです。宝くじの収益金もまた準公金。宝くじ協議会だかなんだか知りませんが、助成金が極めて疑わしい事業に流れているといった問題がある以上、国民から集めた準公金を疑いのある宝くじ協議会が采配するなんて論外もいい所……。話は以上です。どうぞ、事業仕分けを続けて下さい』

 都知事のリカちゃん人形達では言えない事を言い切ってやった。
 マイクを切られなくて良かったよ。ああ、そもそもワイヤレスだから切りたくても切れなかったのか。

 俺は、敢えて、ブスッとした表情を浮かべて椅子に座る。
 宝くじ協議会の席から怨嗟の籠った視線を感じるが、それはお互い様だろう。
 何せ、あちらはあちら側で俺達、宝くじ研究会の事をあらぬ冤罪で嵌めようとしているのだから。

 ---------------------------------------------------------------

 次の更新は、6月27日(木)AM7時となります。
しおりを挟む
感想 558

あなたにおすすめの小説

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

わけありな教え子達が巣立ったので、一人で冒険者やってみた

名無しの夜
ファンタジー
教え子達から突然別れを切り出されたグロウは一人で冒険者として活動してみることに。移動の最中、賊に襲われている令嬢を助けてみれば、令嬢は別れたばかりの教え子にそっくりだった。一方、グロウと別れた教え子三人はとある事情から母国に帰ることに。しかし故郷では恐るべき悪魔が三人を待ち構えていた。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

【完結】モンスターに好かれるテイマーの僕は、チュトラリーになる!

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 15歳になった男子は、冒険者になる。それが当たり前の世界。だがクテュールは、冒険者になるつもりはなかった。男だけど裁縫が好きで、道具屋とかに勤めたいと思っていた。 クテュールは、15歳になる前日に、幼馴染のエジンに稽古すると連れ出され殺されかけた!いや、偶然魔物の上に落ち助かったのだ!それが『レッドアイの森』のボス、キュイだった!

ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します

かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。 追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。 恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。 それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。 やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。 鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。 ※小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...