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第378話 人を呪わば穴二つ
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「ふっ、計画通り……」
物事は俺の想定通りに進んだ様だ。
俺こと高橋翔は、箱に詰められハイエースで連れ去られそうになっている男のなれの果てを見て薄笑いを浮かべる。
「人を呪わば穴二つとはよく言ったものだな……」
人を呪わば穴二つ。人を陥れようとすれば自分にも悪いことが起こるといった意味を持つ諺だ。
「いや、因果応報の方が正しいか……」
俺を箱詰めにして脅迫しようとした男が、逆に箱詰めにされ攫われてしまった。
闇バイトも同様だ。人に危害を加えて金を稼ごうというクソ野郎共とあってそこに一切の同情はない。
何せ闇バイトごと男達を攫ったのは任侠会の若頭、新田柴率いる暴力団。
おそらく、これから俺の詳細を聞き出そうとするのだろう。
もしかしたら、俺だけではなく仁海の奴にも脅しかけるかもしれない。
そう考えるだけでワクワクしてくる。
どの道、新田柴にあの男が持つ以上の情報を引き出すことは叶わない。
何故なら、そうなるように新田柴自体、エレメンタルの力を借りて洗脳している為だ。
さて、東京都知事選が終わるまでの期間。存分に踊り狂ってくれよ。
「……ああ、すいません。もう用事は済みました。新橋大学付属病院まで車を走らせてください」
男のスマホを片手にどこかに電話をかける新田柴を見て、俺は笑みを浮かべた。
◆◆◆
「――仁海先生。千秋真理教団より成功したと報告が入りました」
「……そうか。ご苦労」
高橋翔から情報を抜き出す事に成功した旨の報告を受け、仁海はポンと膝を叩く。
「……それで高橋翔の引き渡しはいつ頃になりそうだ?」
レアメタルや氷樹も大事だが、高橋翔はあちら側の世界とこちら側の世界を行き来できる稀有な存在だ。
下手に手を出してしっぺ返しを受けては敵わない。
「いつも通り教育を終えてから引き渡すとの事です」
「そうか……」
つまりは数週間後……。
仁海は日本酒の入った盃を口に付けると、それを一気に呑み干す。
「教育は大事だな、教育は……。まあ、彼の下で数週間過ごせば少しはマトモな人間になるだろう。ワシの為に働く事に至上の喜びを感じる様なマトモな人間にな……」
仁海にとって洗脳はお手のものだ。
人間という生き物は厳しい環境に置かれて初めて自分の立場を理解できる生き物。
つまりは畜生と同じだ。
「ワシはこれまで多くの人畜生に教育を施してきた……」
対立する議員の家をその家族ごと焼かせることで身の程を味合わせたり、活動家や宗教法人の皮を被った反社に金を渡し襲わせる事で、この世には決して逆らってはならない人間がいることを思い知らせ、それでも更生しない様であればと罪をでっち上げ社会的に抹殺した人畜生もいる。
ああ、遊びで反社に債権を買い取らせ破産に追い込みその子供を秘書として雇った事もあったな。
今としてはいい思い出だ。武勇伝と言ってもいい。
「だが、ワシも歳だ……」
死が近付き初めて思うこともある。
ワシは少しばかり働き過ぎた。
そろそろ、第一線を退き後任に仕事を任せてもいい頃合いだ。
その集大成として高橋翔の持つレアメタルと氷樹を手中に収めるのはそう悪い事ではない。
その上で、東京都ごとセイヤ・ミズガルズを手中に収め異世界との礎となる。強大な力を持つ二人を従えれば、諸外国に負け日本が不利な立ち位置に立たされることはあるまい。
異世界との和平。それがワシの最後の仕事だ。
そこから生まれる莫大な金を原始に、恵まれない子供達を支援する施設を立ち上げ、余生は子供達に感謝されながらその施設の代表として生涯を終える。
「この仕事を最後にワシは一線を退く。ワシの地盤は君に引き継ごう」
第一秘書は、このワシ自ら教育を施した男だ。
影響力を残したまま議員を辞することができるのだから地盤を引き継がせるのに申し分ない。
そう伝えると、第一秘書は少し悲しそうな表情を浮かべる。
「……先生」
しみじみとした空気は苦手だ。
なんというか虫唾が走る。
確かに議員として第一線は退くが、第一秘書を通して権力の行使をする気満々だからだ。
「……議員を辞した後も変わらぬ支援を約束しよう」
主に、ワシの権力を維持する為にな。
くだらんスキャンダルが原因で足下を掬われては敵わん。
「君はご家族の敵を討つ為に議員を目指し、権力を得ようとしているのだろう? その目的の為、ワシを利用する。それでいいじゃないか。だから、そんな悲しそうな顔をするんじゃない」
まあ、その仇は君の目の前にいる訳なのだが……。
些か、滑稽ではあるが、悪い気分はしない。
「……まあ、すべてはこの一件を無事納めてからの話だ」
そう。すべてはこの一件を納めてから。
それが、ワシの輝かしい老後の第一歩だ。
東京都を手に入れ、異世界を手に入れ、この世界を手に入れる。
テレビに視線を移すと、そこには仮称、ヨルムンガルドを倒す為、北極評議会より派遣された特殊部隊が戦っている姿が写る。
そこには、奇怪な防具を身に纏い戦う人間の姿があった。
「この男……。確か、ああああとか言ったな」
流石は異世界。中々、奇怪な名前だ。
他にも『いいいい』という名前の者や『うううう』という名前の者もいるらしい。
聞いた所によると、ヨルムンガルドと共に北極に現れた異世界人で日本語を解する事ができるらしい。
つまり、北極評議会はどこよりも早く異世界人と接触した事になる。
戦力としてヨルムンガルドと戦わせているのだからそれは明らか。
諸外国に比べ、日本は些か異世界人との接触が遅れていた様だ。
しかし、まだ巻き返しが効く。
何せ、こちらには高橋翔とセイヤの駒があるのだから……。
帝国の皇子を逃してしまったのは惜しいが仕方がない。それにいざとなれば、ピンハネという駒もある。
法務大臣に少し無理を言う事になるが、異世界人の有用性は測りきれない。
「ワシはコレクター気質でね。彼等を手に入れる事はできないかな?」
仁海の無茶振りに第一秘書は表情を変えず言う。
「……難しいかと」
「そうか。難しいか……」
ならば今はセイヤと高橋翔だけで我慢するとしよう。
「さあ、都知事選の始まりだ。例年の投票率は六十パーセント程度……。組織票もありセイヤの当選は確実だ。今からセイヤを駒にする為の準備をしておけ。都知事就任と共に契約書の力で奴隷化するのだ……」
「はい。わかりました」
東京都知事選挙も仁海が仕組んだとあって準備は上々。
この為に、パワハラやおねだり疑惑をでっち上げ、連日テレビで報道させ、ダメ押しに、子飼いの都議会議員に命じて百条委員会を立ち上げさせ、まだ結論が出ていないにも関わらず、全会一致で不信任決議案を可決させた。
この所、非協力的だったテレビ局の人間もワシが高橋翔を管理下に置くことを懇切丁寧に説明してやれば、すぐにワシの意のままに東京都知事であった池谷を下げる報道をする様になった。
最早、こうなれば勝ち確。
今頃、池谷君も身の程というものを理解した頃合いだろう。
「都知事選が楽しみだな……」
ワシの思惑通りセイヤが東京都知事となり、都知事任命と共に奴隷化され嘆く姿が目に浮かぶようだ。
そう呟くと、ワシは盃に日本酒を注ぐ。
そして、それを飲み干すと悪い笑みを浮かべた。
◆◆◆
その頃、全会一致で不信任決議が可決された事を受け、責任を取る形で職を辞した池谷はどん底にいた。
「何で、何でこんな事に……」
確かにパワハラめいた事をした事があったかもしれない、断り切れず社交辞令で物を受け取ったこともある。
しかし、それは全会一致で不信任決議を可決されたり、百条委員会を立ち上げられる程の事ではない筈だ。
当然、連日に渡りテレビで批判される程の事でもない。
まさか、ここまでするとは……。
仁海先生は本気で私を都知事の座から追い落とそうとしている。
しかも、仁海先生にとって都合の悪い事は全て無視した上での批判。
公益法人や宗教法人との癒着は完全にスルー。
このままではマズい。本気でマズい。
このままでは、社会的に抹殺されてしまう。
「どうしたらいいの……? 私はどうしたらいいのよ……!」
仁海はセイヤとかいう男を東京都知事に祭り上げようとしている。
仁海には組織票があるのだ。
東京都知事の座は、仁海の組織票あってのもの……。
しかし、東京都知事選に出馬しなければ、弁解の機会すら与えられず社会的に抹殺されてしまう。
つまり、選択肢は実質的に一択。
どんなに勝ち目のない選挙戦だとしても社会的に抹殺されたくなければ出馬しなければならない。
東京都知事の座を追われた今ならまだマスコミも注目してくれる。
それに、都知事選は知事だった者に対して有利に働く傾向がある。
選挙期間中に都民の誤解を解く事ができれば僅かながら選挙に勝つ見込みが出てくる筈だ。
「……このままでは終わらない。私はこのままでは終わらないわ!」
誤った情報に踊らされ、私の事を誹謗中傷する都民。そして、私の事を利用するだけ利用して手を切った公益法人に宗教法人め……。
私はまだ終わらない。
一度裏切った人間は、裏切りのハードルが著しく低くなる。
もしこの私が再選されたら覚悟しておきなさい。私は手のひら返ししてくる様な薄情者が一番嫌いなの……!
「……東京都を徹底的に綺麗にしてやるわ。それこそ、仁海みたいな輩が住みづらくなるほどにね」
そう呟くと、池谷は黒い笑みを浮かべた。
物事は俺の想定通りに進んだ様だ。
俺こと高橋翔は、箱に詰められハイエースで連れ去られそうになっている男のなれの果てを見て薄笑いを浮かべる。
「人を呪わば穴二つとはよく言ったものだな……」
人を呪わば穴二つ。人を陥れようとすれば自分にも悪いことが起こるといった意味を持つ諺だ。
「いや、因果応報の方が正しいか……」
俺を箱詰めにして脅迫しようとした男が、逆に箱詰めにされ攫われてしまった。
闇バイトも同様だ。人に危害を加えて金を稼ごうというクソ野郎共とあってそこに一切の同情はない。
何せ闇バイトごと男達を攫ったのは任侠会の若頭、新田柴率いる暴力団。
おそらく、これから俺の詳細を聞き出そうとするのだろう。
もしかしたら、俺だけではなく仁海の奴にも脅しかけるかもしれない。
そう考えるだけでワクワクしてくる。
どの道、新田柴にあの男が持つ以上の情報を引き出すことは叶わない。
何故なら、そうなるように新田柴自体、エレメンタルの力を借りて洗脳している為だ。
さて、東京都知事選が終わるまでの期間。存分に踊り狂ってくれよ。
「……ああ、すいません。もう用事は済みました。新橋大学付属病院まで車を走らせてください」
男のスマホを片手にどこかに電話をかける新田柴を見て、俺は笑みを浮かべた。
◆◆◆
「――仁海先生。千秋真理教団より成功したと報告が入りました」
「……そうか。ご苦労」
高橋翔から情報を抜き出す事に成功した旨の報告を受け、仁海はポンと膝を叩く。
「……それで高橋翔の引き渡しはいつ頃になりそうだ?」
レアメタルや氷樹も大事だが、高橋翔はあちら側の世界とこちら側の世界を行き来できる稀有な存在だ。
下手に手を出してしっぺ返しを受けては敵わない。
「いつも通り教育を終えてから引き渡すとの事です」
「そうか……」
つまりは数週間後……。
仁海は日本酒の入った盃を口に付けると、それを一気に呑み干す。
「教育は大事だな、教育は……。まあ、彼の下で数週間過ごせば少しはマトモな人間になるだろう。ワシの為に働く事に至上の喜びを感じる様なマトモな人間にな……」
仁海にとって洗脳はお手のものだ。
人間という生き物は厳しい環境に置かれて初めて自分の立場を理解できる生き物。
つまりは畜生と同じだ。
「ワシはこれまで多くの人畜生に教育を施してきた……」
対立する議員の家をその家族ごと焼かせることで身の程を味合わせたり、活動家や宗教法人の皮を被った反社に金を渡し襲わせる事で、この世には決して逆らってはならない人間がいることを思い知らせ、それでも更生しない様であればと罪をでっち上げ社会的に抹殺した人畜生もいる。
ああ、遊びで反社に債権を買い取らせ破産に追い込みその子供を秘書として雇った事もあったな。
今としてはいい思い出だ。武勇伝と言ってもいい。
「だが、ワシも歳だ……」
死が近付き初めて思うこともある。
ワシは少しばかり働き過ぎた。
そろそろ、第一線を退き後任に仕事を任せてもいい頃合いだ。
その集大成として高橋翔の持つレアメタルと氷樹を手中に収めるのはそう悪い事ではない。
その上で、東京都ごとセイヤ・ミズガルズを手中に収め異世界との礎となる。強大な力を持つ二人を従えれば、諸外国に負け日本が不利な立ち位置に立たされることはあるまい。
異世界との和平。それがワシの最後の仕事だ。
そこから生まれる莫大な金を原始に、恵まれない子供達を支援する施設を立ち上げ、余生は子供達に感謝されながらその施設の代表として生涯を終える。
「この仕事を最後にワシは一線を退く。ワシの地盤は君に引き継ごう」
第一秘書は、このワシ自ら教育を施した男だ。
影響力を残したまま議員を辞することができるのだから地盤を引き継がせるのに申し分ない。
そう伝えると、第一秘書は少し悲しそうな表情を浮かべる。
「……先生」
しみじみとした空気は苦手だ。
なんというか虫唾が走る。
確かに議員として第一線は退くが、第一秘書を通して権力の行使をする気満々だからだ。
「……議員を辞した後も変わらぬ支援を約束しよう」
主に、ワシの権力を維持する為にな。
くだらんスキャンダルが原因で足下を掬われては敵わん。
「君はご家族の敵を討つ為に議員を目指し、権力を得ようとしているのだろう? その目的の為、ワシを利用する。それでいいじゃないか。だから、そんな悲しそうな顔をするんじゃない」
まあ、その仇は君の目の前にいる訳なのだが……。
些か、滑稽ではあるが、悪い気分はしない。
「……まあ、すべてはこの一件を無事納めてからの話だ」
そう。すべてはこの一件を納めてから。
それが、ワシの輝かしい老後の第一歩だ。
東京都を手に入れ、異世界を手に入れ、この世界を手に入れる。
テレビに視線を移すと、そこには仮称、ヨルムンガルドを倒す為、北極評議会より派遣された特殊部隊が戦っている姿が写る。
そこには、奇怪な防具を身に纏い戦う人間の姿があった。
「この男……。確か、ああああとか言ったな」
流石は異世界。中々、奇怪な名前だ。
他にも『いいいい』という名前の者や『うううう』という名前の者もいるらしい。
聞いた所によると、ヨルムンガルドと共に北極に現れた異世界人で日本語を解する事ができるらしい。
つまり、北極評議会はどこよりも早く異世界人と接触した事になる。
戦力としてヨルムンガルドと戦わせているのだからそれは明らか。
諸外国に比べ、日本は些か異世界人との接触が遅れていた様だ。
しかし、まだ巻き返しが効く。
何せ、こちらには高橋翔とセイヤの駒があるのだから……。
帝国の皇子を逃してしまったのは惜しいが仕方がない。それにいざとなれば、ピンハネという駒もある。
法務大臣に少し無理を言う事になるが、異世界人の有用性は測りきれない。
「ワシはコレクター気質でね。彼等を手に入れる事はできないかな?」
仁海の無茶振りに第一秘書は表情を変えず言う。
「……難しいかと」
「そうか。難しいか……」
ならば今はセイヤと高橋翔だけで我慢するとしよう。
「さあ、都知事選の始まりだ。例年の投票率は六十パーセント程度……。組織票もありセイヤの当選は確実だ。今からセイヤを駒にする為の準備をしておけ。都知事就任と共に契約書の力で奴隷化するのだ……」
「はい。わかりました」
東京都知事選挙も仁海が仕組んだとあって準備は上々。
この為に、パワハラやおねだり疑惑をでっち上げ、連日テレビで報道させ、ダメ押しに、子飼いの都議会議員に命じて百条委員会を立ち上げさせ、まだ結論が出ていないにも関わらず、全会一致で不信任決議案を可決させた。
この所、非協力的だったテレビ局の人間もワシが高橋翔を管理下に置くことを懇切丁寧に説明してやれば、すぐにワシの意のままに東京都知事であった池谷を下げる報道をする様になった。
最早、こうなれば勝ち確。
今頃、池谷君も身の程というものを理解した頃合いだろう。
「都知事選が楽しみだな……」
ワシの思惑通りセイヤが東京都知事となり、都知事任命と共に奴隷化され嘆く姿が目に浮かぶようだ。
そう呟くと、ワシは盃に日本酒を注ぐ。
そして、それを飲み干すと悪い笑みを浮かべた。
◆◆◆
その頃、全会一致で不信任決議が可決された事を受け、責任を取る形で職を辞した池谷はどん底にいた。
「何で、何でこんな事に……」
確かにパワハラめいた事をした事があったかもしれない、断り切れず社交辞令で物を受け取ったこともある。
しかし、それは全会一致で不信任決議を可決されたり、百条委員会を立ち上げられる程の事ではない筈だ。
当然、連日に渡りテレビで批判される程の事でもない。
まさか、ここまでするとは……。
仁海先生は本気で私を都知事の座から追い落とそうとしている。
しかも、仁海先生にとって都合の悪い事は全て無視した上での批判。
公益法人や宗教法人との癒着は完全にスルー。
このままではマズい。本気でマズい。
このままでは、社会的に抹殺されてしまう。
「どうしたらいいの……? 私はどうしたらいいのよ……!」
仁海はセイヤとかいう男を東京都知事に祭り上げようとしている。
仁海には組織票があるのだ。
東京都知事の座は、仁海の組織票あってのもの……。
しかし、東京都知事選に出馬しなければ、弁解の機会すら与えられず社会的に抹殺されてしまう。
つまり、選択肢は実質的に一択。
どんなに勝ち目のない選挙戦だとしても社会的に抹殺されたくなければ出馬しなければならない。
東京都知事の座を追われた今ならまだマスコミも注目してくれる。
それに、都知事選は知事だった者に対して有利に働く傾向がある。
選挙期間中に都民の誤解を解く事ができれば僅かながら選挙に勝つ見込みが出てくる筈だ。
「……このままでは終わらない。私はこのままでは終わらないわ!」
誤った情報に踊らされ、私の事を誹謗中傷する都民。そして、私の事を利用するだけ利用して手を切った公益法人に宗教法人め……。
私はまだ終わらない。
一度裏切った人間は、裏切りのハードルが著しく低くなる。
もしこの私が再選されたら覚悟しておきなさい。私は手のひら返ししてくる様な薄情者が一番嫌いなの……!
「……東京都を徹底的に綺麗にしてやるわ。それこそ、仁海みたいな輩が住みづらくなるほどにね」
そう呟くと、池谷は黒い笑みを浮かべた。
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