寂しいを分け与えた

こじらせた処女

文字の大きさ
9 / 11

9

しおりを挟む
 眠い。何をしていても眠い。ご飯を食べていても、風呂に入っても。今は夜で、布団は前に敷いてあって、寝れば良い。でも、寝たくない。
 今日もいっぱい怒られた。怒られた内容もあまり覚えていない。ダメって分かっている。多分師匠は俺がおねしょしても怒らない。でも、嫌だって思ってしまう。今までは師匠に怒られたら怖い、って思うだけだったのに、最近は鬱陶しいって思うようになった。口答えしそうになって、でも何て言ったら良いか分かんなくてイライラする。

『夜眠れないのなら、眠れる努力をしなさい』
昼に言われたことを思い出して、また息が詰まる。寝なきゃって分かってる。布団に入ったらやっぱり眠くて目が閉じる。それが悲しくて悲しくて、涙はぼろぼろと閉じた目から溢れて。
 俺は何をしているのだろう。何の涙で、何が嫌なんだろう。言葉にできないから、かけていた布団をぐちゃぐちゃにした。



「よか、た、でてない、」
心臓がバクバクしてる。布団の中で手を滑らせる。あ、乾いてる。よかった。頭は相変わらずぼーっとしていて、喉はカラカラなのに、腹の中はムズムズと気持ち悪い。厠に走って小便を出すけど、ほんの少ししか出ない。むしろ、流れる水が美味しそうで、思わず喉がなる。眠いのに眠れない。泣きじゃくったまま眠った目には目やにがこびりついて、汚すぎて顔を洗った。
 ちゃんと眠らないと。考える度に心臓がバクバクして、緊張する。別に布団を汚すくらい、何度もそう思おうとした。でも結局目は覚めるし、寝る前よりも疲れている。腹の中がかき混ぜられたみたいで気持ち悪い。
 もう一回布団に入る。眠いはずなのに心臓がおかしい。っていうか、苦しい。息を吸っても吸っても吸いきれなくて、頭がぼやぼやして、あれ?俺死ぬんじゃない?ってなって。足が痺れて、意識も遠くなって。口元を手で押さえても、どうにもならなくて、気がついた時には目の前が真っ暗になっていた。



 
 
 妙に頭が冴えている。襖からは光が漏れていて、ああ朝なんだって分かった。癖づいた布団の中の確認。もちろんぐっしょりと濡れている。大丈夫。師匠は怒らない。むしろ、きちんと寝られたから良いことって言ってくれる。何度も何度も言い聞かせる。でも、やっぱり恥ずかしくて、どうしようもなく涙がこぼれる。起きなきゃって思うのに起きられない。頭はスッキリしているのに、胃が重くて口の中も気持ち悪い。昨日の苦しいまま体調が悪くなればよかった。そしたら仕方がなかった。変に頭が冴えているから、今の現状がわかって苦しい。
 味噌汁の匂いがする。とっくに起きなきゃならない時間は過ぎている。何とか体を起こすけど、息は引き攣ったまま。
「灯?起きてるか?」
 いつもは早く起きろと遠くから叫ぶはず。なのに今日は部屋の前まできて、小さく声をかけられる。慌てて目元を拭う。
「ぁの、おれ、」
「…着替えるか?」
何も言っていないのに。まるで察したと言わんばかりに頭を撫でられる。
「まだ残っていそうか?」
 顔が一気に熱くなる感触がした。手を引かれ、厠に連れて行かれて。ぐしょぐしょに濡れた背中を撫でられて、気にするなと慰められた。
 便器を見た瞬間、一気に欲が湧いて慌てて浴衣の紐を外そうとするが、上手にできない。幼い子供みたいに足を組み替えて我慢する姿も、耐えきれずに前を握りしめる姿も全て後ろから見られている。
「落ち着きなさい」
後ろから大人の手が伸びるのも、紐が解かれ、おしっこの準備を全部してもらうのも。全てが恥ずかしくて死にたくなる。
「ぁ、でっ、でちゃう、」
びちゃびちゃと我慢していたものが溢れる。前までこんな失敗なかったのに。考えたこともなかったのに。何回も厠に行って、喉の渇きも我慢したのに。馬鹿にされている心地すらして、今の現状に耐えられない。
「すっきりしたか?」
声も出したくない。ごめんなさいも言いたくない。
「じぶんで、するから、」
そのまま服を脱がせて体を拭こうとする師匠を止めて、布をひったくる。
「向こうにいるからな」
目も合わせたくない。見ないでほしい。そのくせ師匠が出ていって1人になったら、やっぱり居てほしかったって思ってしまう。
「もう…いやだ…」
縋りたい。いっぱいいっぱいに泣き喚いて、全てを委ねてしまいたい。




 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

【BL】無償の愛と愛を知らない僕。

ありま氷炎
BL
何かしないと、人は僕を愛してくれない。 それが嫌で、僕は家を飛び出した。 僕を拾ってくれた人は、何も言わず家に置いてくれた。 両親が迎えにきて、仕方なく家に帰った。 それから十数年後、僕は彼と再会した。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

偽物勇者は愛を乞う

きっせつ
BL
ある日。異世界から本物の勇者が召喚された。 六年間、左目を失いながらも勇者として戦い続けたニルは偽物の烙印を押され、勇者パーティから追い出されてしまう。 偽物勇者として逃げるように人里離れた森の奥の小屋で隠遁生活をし始めたニル。悲嘆に暮れる…事はなく、勇者の重圧から解放された彼は没落人生を楽しもうとして居た矢先、何故か勇者パーティとして今も戦っている筈の騎士が彼の前に現れて……。

罰ゲームって楽しいね♪

あああ
BL
「好きだ…付き合ってくれ。」 おれ七海 直也(ななみ なおや)は 告白された。 クールでかっこいいと言われている 鈴木 海(すずき かい)に、告白、 さ、れ、た。さ、れ、た!のだ。 なのにブスッと不機嫌な顔をしておれの 告白の答えを待つ…。 おれは、わかっていた────これは 罰ゲームだ。 きっと罰ゲームで『男に告白しろ』 とでも言われたのだろう…。 いいよ、なら──楽しんでやろう!! てめぇの嫌そうなゴミを見ている顔が こっちは好みなんだよ!どーだ、キモイだろ! ひょんなことで海とつき合ったおれ…。 だが、それが…とんでもないことになる。 ────あぁ、罰ゲームって楽しいね♪ この作品はpixivにも記載されています。

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

Memory

yoyo
BL
昔の嫌な記憶が蘇って、恋人の隣でおねしょしてしまう話です

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

処理中です...