神に祝福された善良なるおっさん、破壊と創造の魔法で人生やり直します!

厳座励主(ごんざれす)

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第17話 再挑戦、そして……

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「今日はちゃんと息合わせようね!」

 胸を張って喚起したのは、リュミナ。
 夜霧が薄れ、陽の光がその短いブロンドを照らす。
 俺たちは野営地で簡単な朝食を済ませ、荷をまとめていた。
 火を消した跡に小さな白い煙が立ちのぼる。

「言われなくても、わぁーってるよ」

 エルドが斧を肩に担ぎながら返す。

「大丈夫。普通にやれば、負けない相手だから」

 セラは自身に言い聞かせるように、小さく呟いた。

「……よし。皆、行こう」

 俺はそう言って、背負い袋を締める。
 静かだが、昨日のように重苦しいわけではない。
 落ち着いた、物語の序章のような空気感。
 俺たちは肩を並べ、坑道へと向かう。前よりもずっと軽い足取りで。

 再び訪れた坑道の入口。冷たい風が吹き抜ける。
 先頭はエルド。中衛に俺とリュミナ。後方にはセラ。
 昨日と同じ配置、けれど歩調は違う。
 全員が、自分だけじゃなくてを意識して動いている。

「……ここだ」

 やがて中層の広間に出た。前回、俺が力尽きた場所だ。
 焦げ跡が残る岩壁を見て、エルドがぽつりと呟く。

「もう二度と、あんなヘマはしねえ」
「――しっ。……多分、来るよ」

 セラが会話をとめ、全員聞き耳を立てる。

 ……ギギ、ギ……。

 聞こえた。岩を爪で引っかく、乾いたきしみ。
 鱗同士が噛み合う金属めいた摩擦音。
 岩の陰から、影がぬっと這い出た。

「……シィィイイ」

 リザードナイト。けれど、あの時の奴とは違う。
 体つきが一回り大きく、肩のあたりの骨が盛り上がっている。
 あたりには鼻をつく錆びの臭いが漂い、吐き出す息は熱を帯びていた。
 重たい呼吸のたびに、胸板が大きく上下する。
 前の個体より、明らかに強い。
 あの戦いのあと、空いた縄張りに入り込んだ別のリザードナイト――そう考えるのが自然だった。

「へっ、敵討ちってか? 上等じゃねえか」
「油断しないでよ、きっと強いわ」
「うん。全力で叩こう」

 怒気を孕んだ蛇の瞳が、まっすぐこちらを射抜いた。
 俺は息を整え、短く告げる。

「行くぞ。今度こそ……全員でだ!」

 俺の声に、三人がうなずいた。
 そして呼応するように、リザードナイトが雄たけびをあげる。

「キシャアアアッ!」

 ドタドタと土煙をあげながらの突進。俺たちは武器を構えた。
 最初に動いたのは、やはりエルド。

「任せろっ!」

 巨大な斧でもって、リザードナイトの突進を正面から受け止める。
 火花が散り、足場の石が砕けた。

「おらぁッ!」

 力比べのようなぶつかり合い。だが、今回は孤立していない。

「セラ、援護いけるか!」
「もちろん! 準備できてるよ!」

 俺とセラは目を合わせて頷く。
 
「エルド! 合図で飛び退くんだ!」
「よしきたぁっ!」
「3、2、1――今だ!」
「うおおおっ!」
 
 リザードナイトの剣をいなし、エルドが真横へジャンプする。
 その咆哮と、セラの詠唱が重なった。

氷射アイスピアス!」
「ガッ、グッ、キシャアッ!?」

 鋭い氷の矢が数発。リザードナイトの膝を貫く。
 その一瞬を、俺たちは逃さない。

「リュミナ、合わせろ!」
「もっちろん!」

 俺とリュミナが左右から回り込み、剣で脇腹を斬り裂いた。

「ギャアアアアッ!」

 のけぞるリザードナイト。
 その眼前に、斧をめいっぱい振りかぶった狂戦士。

「とどめは貰うぜ! オラァアアアアアッ!」

 轟音が、洞窟を揺らした。
 やがて、リザードナイトの体がぐらりと傾き、岩のように崩れ落ちる。
 金属音が尾を引き、完全に動かなくなった。
 そして静寂を破ったのは、リュミナの小さな声。

「……勝ったの?」
「おう、間違いねぇ。完ッ全勝利だ!」
 
 エルドが豪快に笑い、斧を担ぎ上げた。

「ふふ、余裕だったね。……ま、当然か。珍しく息も合ったし」
 
 セラが小さく笑みを浮かべる。

「いや、じゃない。……これが、俺たちのだ」

 俺が言うと、三人が顔を見合わせて笑った。
 昨日手こずった敵を、圧倒した事実。
 誰も傷つかずに掴んだ勝利。
 その事実が、胸に染みた。

「……ねぇ、今の私たち、ちょっとかっこよかったわよね?」
 
 リュミナの声に、エルドが即座に返す。

「ちょっとどころじゃねえ! 最強だ!」
「もう、調子に乗らないでよ。……でも、悪くなかった……よね」
「お前の魔法、良かったぜ」
「……そっちが時間稼いでくれたから」
 
 あんなにギクシャクしてた二人が、互いをたたえ合っている。
 その光景が、俺にはものすごく輝いて見えた。

「……やっと、パーティらしくなってきたな」

 坑道の奥まで響く笑い声。
 焚き火などではなく、戦いの熱が俺たちを温めていた。
 
 その時だった。
 ゴゴゴ……と、低い地鳴りが響く。
 壁が震え、粉塵が舞い上がった。

「……おい、今の音は?」

 エルドが眉をひそめる。

「魔力の流れが異常だ。どうやら、お出ましみたいだね」

 セラの声が硬い。

「……ネームド」

 リュミナが呟いて、拳を握った。俺は前方を見据えた。
 通路の暗闇が、ゆっくりと赤く光った。
 鉱石の裂け目に、熱が走っている。
 そして、現れた。

 通路を塞ぐほどの巨体。
 全身を黒鉄の鱗と鉱石で覆い、口からは金属粉を混じえた熱気を漏らす。
 呼吸ひとつで地面が鳴り、視線を向けるだけで全身が粟立った。

「でけぇ……これが『鉱獄のグラトン』……」

 あの豪胆なエルドでさえ、その迫力にごくりと喉を鳴らす。
 俺は深く息を吸い、剣を構えた。

「皆、やるぞ! ここからが本番だ!」
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