28 / 45
27
しおりを挟む
(まずいです…ヴィル兄さん、めちゃめちゃ怒ってます……)
さて、ヴィルヘルムが自身の感情に葛藤している中、レイナードはレイナードで葛藤していた。言いつけを守らず、勝手に出歩き、とじ込められ、謎の大人と埃と雪まみれになって、挙げ句お風呂まで入る羽目になった。そして自分はまだ何も知らない純粋無垢な子どものように振る舞ってしまっているが、内心冷や汗をかいていた。
(だって僕がスパイしようとしてたってばれたら、ヴィル兄さんの立場も、危うくなります)
そう思ったレイナードは必死に演技をした。その甲斐あってか、ヴィルヘルムはレイナードのことを疑っていないようだった。だがその代償として、過保護に拍車がかかったようだった。
「僕はレイが無事だったならそれでいいよ」
いつもキラキラした太陽のような兄の淋しげな顔を見ていると、レイナードは罪悪感を覚えずにはいられなかった。なのでつい勢いでキスをしてしまった。
「なっ…!」
レイナードの行為にヴィルヘルムは顔を真っ赤にして言葉を失っていた。
(うぅ…こんなつもりじゃ……)
レイナードは気まずさを感じながらも、ヴィルヘルムの腕の中で大人しくしていた。ヴィルヘルムの温もりを感じて胸が高鳴る。
(なんだか変な気持ちです……)
レイナードはヴィルヘルムの背に回していた手を放した。ヴィルヘルムの顔が少し寂しそうに見えたような気がしたが、きっと気のせいだろう。ヴィルヘルムはすぐにレイナードから手を離し、少し距離を取った。
「……これからは勝手に出歩いちゃダメだよ?」
「はい。分かりました」
その返事にヴィルヘルムは目を細めて優しく笑う。
(うー…でも折角学園のことを調べるチャンスなのにー…)
そう考えると勿体ない気もしてきた。義兄を困らせたくない気持ちもあるけれど、レイナード本人の好奇心も抑えられない。久々に館以外の場所に出てきて、知的好奇心が疼き始めていたのだ。
(あのおじさんも帰っちゃったし、きっとバレないよね)
レイナードは心の中で小さく呟いた。するとヴィルヘルムが口を開いた。
「ところでレイ。さっきの男に何か言われたのか?妙に様子が変だったけど」
「え?」
「その……お前のことを……」
ヴィルヘルムはそこで言い淀んでしまった。どうやらレイナードに何を言いたいか分からなかったようだ。しかしレイナードはすぐに察した。おそらく自分の身を心配してくれているのだろうと思った。だから安心させるために微笑む。
「…悪いことしちゃダメって、言われました」
「はあ?レイが悪いことなんてするわけないだろう?アイツ本当適当なこと言うな……やっぱり通報するべきか……」
ぶつぶつと呟くヴィルヘルムにレイナードは苦笑いを浮かべた。
「…兄さん、悪い子の僕にお仕置きしないんですか?」
「えっ!?」
ヴィルヘルムは驚いてレイナードを見た。
「だって、クリス様がそう言ってました。悪いことをしたら、お仕置きだって」
レイナードの言葉を聞いてヴィルヘルムの顔がどんどん赤くなっていく。レイナードは首を傾げた。
「兄さん?」
「そっか……そうだよね……うん。僕がちゃんとレイナードを叱らないといけないね…」
「??」
レイナードはヴィルヘルムの態度がよく分からなくて頭上にハテナマークを浮かべる。
「でも…僕がレイに…そんなこと……できない……」
ヴィルヘルムは俯いて呟いた。
「???」
なぜかヴィルヘルムはもじもじとしている。
「ごめんね……レイ。僕にはまだ、無理だ……」
「??」
ヴィルヘルムは顔を赤くして口元を手で押さえていた。その様子を見てレイナードはますます訳が分からなくなる。
(なんでこんなに兄さん真っ赤なの……?)
「お仕置きはまた今度。大人になったらね」
ヴィルヘルムはレイナードの頭をポンポンと撫でた。レイナードはきょとんとした表情でヴィルヘルムを見上げる。
(どういうこと……?)
「後で僕が学園を案内してあげるよ。もう勝手に出歩かないくらい、いやってほど回ってあげる。それでいいよね?」
「え?」
レイナードは目を瞬かせた。ヴィルヘルムが優しく微笑む。
「それとも……他に気になることでもあるの?」
「……」
(兄さんと学園を回れるのは嬉しいですけど……でも……)
レイナードは目を伏せた。だがすぐに顔を上げてヴィルヘルムを見つめる。
(きっと僕が1人で回っても怪しまれるだけです……)
そう思ったレイナードは素直に頷く。
「分かりました。ありがとございます、兄さん」
レイナードは笑顔を作った。その笑顔を見てヴィルヘルムの頬が緩む。レイナードはその反応を見て心が締め付けられるような感覚になった。レイナードが微笑む度にヴィルヘルムは嬉しそうな顔をする。その度にレイナードは罪悪感を覚えるのだ。
(どうしよう……すごく悪いことをしている気分です……)
ヴィルヘルムの視線が刺さる。その瞳の奥に潜む感情に気付かないふりをしてレイナードはヴィルヘルムから目を逸らす。
(でも…これは僕が決めた道なんです。僕は父さんの期待を裏切れない)
レイナードはぎゅっと拳を握り締める。
(ごめんなさい……)
レイナードはヴィルヘルムに頭を下げた。
「レイ?」
ヴィルヘルムが不思議そうに声をかける。レイナードは顔を上げて笑顔を浮かべる。
「なんでもありません。兄さん、夕食の時間ですよね?その後で一緒に学園を見せてください!」
「うん、勿論だよ、レイ」
ヴィルヘルムはレイナードの頭を優しく撫でた。
「ねぇヴィル兄さん。僕が本当に『悪い子』になったら、兄さんが僕をちゃんと、叱ってくださいね?」
「レイ……?うん。勿論だよ。『悪い子』のレイナードを僕がしっかり躾てあげる」
レイナードはヴィルヘルムに抱きつくと頬を擦り寄せる。
「約束ですよ?」
レイナードはそう言って微笑んだ。ヴィルヘルムはレイナードの背中に腕を回し抱きしめ返す。
「うん。約束するよ」
そんなことは来ないと思っているのだろう。その義兄の思いが分かり、レイナードはまだ少し胸が痛んだ気がした。
***
さて、ヴィルヘルムが自身の感情に葛藤している中、レイナードはレイナードで葛藤していた。言いつけを守らず、勝手に出歩き、とじ込められ、謎の大人と埃と雪まみれになって、挙げ句お風呂まで入る羽目になった。そして自分はまだ何も知らない純粋無垢な子どものように振る舞ってしまっているが、内心冷や汗をかいていた。
(だって僕がスパイしようとしてたってばれたら、ヴィル兄さんの立場も、危うくなります)
そう思ったレイナードは必死に演技をした。その甲斐あってか、ヴィルヘルムはレイナードのことを疑っていないようだった。だがその代償として、過保護に拍車がかかったようだった。
「僕はレイが無事だったならそれでいいよ」
いつもキラキラした太陽のような兄の淋しげな顔を見ていると、レイナードは罪悪感を覚えずにはいられなかった。なのでつい勢いでキスをしてしまった。
「なっ…!」
レイナードの行為にヴィルヘルムは顔を真っ赤にして言葉を失っていた。
(うぅ…こんなつもりじゃ……)
レイナードは気まずさを感じながらも、ヴィルヘルムの腕の中で大人しくしていた。ヴィルヘルムの温もりを感じて胸が高鳴る。
(なんだか変な気持ちです……)
レイナードはヴィルヘルムの背に回していた手を放した。ヴィルヘルムの顔が少し寂しそうに見えたような気がしたが、きっと気のせいだろう。ヴィルヘルムはすぐにレイナードから手を離し、少し距離を取った。
「……これからは勝手に出歩いちゃダメだよ?」
「はい。分かりました」
その返事にヴィルヘルムは目を細めて優しく笑う。
(うー…でも折角学園のことを調べるチャンスなのにー…)
そう考えると勿体ない気もしてきた。義兄を困らせたくない気持ちもあるけれど、レイナード本人の好奇心も抑えられない。久々に館以外の場所に出てきて、知的好奇心が疼き始めていたのだ。
(あのおじさんも帰っちゃったし、きっとバレないよね)
レイナードは心の中で小さく呟いた。するとヴィルヘルムが口を開いた。
「ところでレイ。さっきの男に何か言われたのか?妙に様子が変だったけど」
「え?」
「その……お前のことを……」
ヴィルヘルムはそこで言い淀んでしまった。どうやらレイナードに何を言いたいか分からなかったようだ。しかしレイナードはすぐに察した。おそらく自分の身を心配してくれているのだろうと思った。だから安心させるために微笑む。
「…悪いことしちゃダメって、言われました」
「はあ?レイが悪いことなんてするわけないだろう?アイツ本当適当なこと言うな……やっぱり通報するべきか……」
ぶつぶつと呟くヴィルヘルムにレイナードは苦笑いを浮かべた。
「…兄さん、悪い子の僕にお仕置きしないんですか?」
「えっ!?」
ヴィルヘルムは驚いてレイナードを見た。
「だって、クリス様がそう言ってました。悪いことをしたら、お仕置きだって」
レイナードの言葉を聞いてヴィルヘルムの顔がどんどん赤くなっていく。レイナードは首を傾げた。
「兄さん?」
「そっか……そうだよね……うん。僕がちゃんとレイナードを叱らないといけないね…」
「??」
レイナードはヴィルヘルムの態度がよく分からなくて頭上にハテナマークを浮かべる。
「でも…僕がレイに…そんなこと……できない……」
ヴィルヘルムは俯いて呟いた。
「???」
なぜかヴィルヘルムはもじもじとしている。
「ごめんね……レイ。僕にはまだ、無理だ……」
「??」
ヴィルヘルムは顔を赤くして口元を手で押さえていた。その様子を見てレイナードはますます訳が分からなくなる。
(なんでこんなに兄さん真っ赤なの……?)
「お仕置きはまた今度。大人になったらね」
ヴィルヘルムはレイナードの頭をポンポンと撫でた。レイナードはきょとんとした表情でヴィルヘルムを見上げる。
(どういうこと……?)
「後で僕が学園を案内してあげるよ。もう勝手に出歩かないくらい、いやってほど回ってあげる。それでいいよね?」
「え?」
レイナードは目を瞬かせた。ヴィルヘルムが優しく微笑む。
「それとも……他に気になることでもあるの?」
「……」
(兄さんと学園を回れるのは嬉しいですけど……でも……)
レイナードは目を伏せた。だがすぐに顔を上げてヴィルヘルムを見つめる。
(きっと僕が1人で回っても怪しまれるだけです……)
そう思ったレイナードは素直に頷く。
「分かりました。ありがとございます、兄さん」
レイナードは笑顔を作った。その笑顔を見てヴィルヘルムの頬が緩む。レイナードはその反応を見て心が締め付けられるような感覚になった。レイナードが微笑む度にヴィルヘルムは嬉しそうな顔をする。その度にレイナードは罪悪感を覚えるのだ。
(どうしよう……すごく悪いことをしている気分です……)
ヴィルヘルムの視線が刺さる。その瞳の奥に潜む感情に気付かないふりをしてレイナードはヴィルヘルムから目を逸らす。
(でも…これは僕が決めた道なんです。僕は父さんの期待を裏切れない)
レイナードはぎゅっと拳を握り締める。
(ごめんなさい……)
レイナードはヴィルヘルムに頭を下げた。
「レイ?」
ヴィルヘルムが不思議そうに声をかける。レイナードは顔を上げて笑顔を浮かべる。
「なんでもありません。兄さん、夕食の時間ですよね?その後で一緒に学園を見せてください!」
「うん、勿論だよ、レイ」
ヴィルヘルムはレイナードの頭を優しく撫でた。
「ねぇヴィル兄さん。僕が本当に『悪い子』になったら、兄さんが僕をちゃんと、叱ってくださいね?」
「レイ……?うん。勿論だよ。『悪い子』のレイナードを僕がしっかり躾てあげる」
レイナードはヴィルヘルムに抱きつくと頬を擦り寄せる。
「約束ですよ?」
レイナードはそう言って微笑んだ。ヴィルヘルムはレイナードの背中に腕を回し抱きしめ返す。
「うん。約束するよ」
そんなことは来ないと思っているのだろう。その義兄の思いが分かり、レイナードはまだ少し胸が痛んだ気がした。
***
181
あなたにおすすめの小説
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
BLゲームの悪役に転生したら攻略対象者が全員ヒロインに洗脳されてた
さ
BL
主人公のレオンは、幼少期に前世の記憶を思い出し、この世界がBLゲームで、自身は断罪される悪役だと気づく。
断罪を回避するため、極力攻略対象者たちと関わらないように生きてきた。
ーーそれなのに。
婚約者に婚約は破棄され、
気づけば断罪寸前の立場に。
しかも理由もわからないまま、
何もしていないはずの攻略対象者達に嫌悪を向けられてーー。
※最終的にハッピーエンド
※愛され悪役令息
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?
【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる
路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか?
いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ?
2025年10月に全面改稿を行ないました。
2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。
2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。
2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。
2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。
第13回BL大賞で奨励賞をいただきました。これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
異世界で孵化したので全力で推しを守ります
のぶしげ
BL
ある日、聞いていたシチュエーションCDの世界に転生してしまった主人公。推しの幼少期に出会い、魔王化へのルートを回避して健やかな成長をサポートしよう!と奮闘していく異世界転生BL 執着最強×人外美人BL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる