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エレーナ
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「どうして!?シルフィーばっかり!狡いわ!」
カルディアが部屋で刺繍をしていると、家庭教師による勉強の時間を終えたエレーナがやって来て、母親であるカルディアに怒りをぶつけた。
「シルフィーばっかり─とは?」
「今日も、マクウェル様が来ていたのでしょう!?何故、いつも私のお勉強の時間に来るの?私だってマクウェル様とお茶したりしたいのに!どうしていつも、シルフィーだけなの!?」
カルディアは、ふぅーと軽くため息を吐き、手にしていた物をテーブルの上に置いた。
「シルフィーばかりもなにも、マクウェル様がいらっしやる時間は、マクウェル様本人が決めて来ているだけよ。それが、たまたまエレーナ達の勉強の時間とかぶっているだけ。こちら側がお願いしている訳じゃないわ。」
「っ!それでも──!」
「エレーナ、勘違いしてはいけないわ。」
「勘違い?」
「私達は、私の義理の兄─キリクス伯爵のご好意でここで過ごさせてもらっているだけであって、私達は貴族でもなんでもない─平民なのよ。本来なら、エレーナがマクウェル様となんて──」
「それは、お母様が、お祖父様にお願いすれば、また貴族に戻れるじゃない。断ったお母様が悪いのよ!」
「……エレーナ。どうして…その事を知っているの?」
カルディアの射抜くような視線を向けられ、エレーナはビクッと肩を震わせた。
「たっ…たまたま…耳にして……」
「「……」」
「エレーナ、リタさんがランチの用意ができたって…どうかしたの?」
気不味い空気が漂う中、エレーナを呼びに来たアーロンが部屋にやって来た。
「なっ、何でもないわ。アーロン、食堂に行きましょう。」
そう言って、エレーナはアーロンの手を引っ張るようにして部屋から出て行った。
2人が出て行った扉を見詰めるカルディア。
ーこれで…ハッキリしたわねー
きっと私と同じで、エレーナは…エレーナであって、エレーナではない。
どんなに悪態をつこうがカルディアが身を痛めて生んだ子であり、大切に育てていた記憶がある。その為、悪い方へ増長しないようにすれば良いと。最悪にならない為に動いて来た。さっきは否定したが、マクウェルが訪問する日が分かると、わざと家庭教師を呼び会わせないようにしていた。
最推しであるシルフィーは勿論の事、エレーナも守らなければと思っているが故だった。
でも、エレーナの中身が、カルディアと同じように、違う者が入っているなら──
「これって少し…いや、かなり…ヤバくない?」
ある意味…テンプレ展開だなぁ─と思いながら、これからの事を考え直そうと思うアヤメだった。
******
「本当に…今日もいらっしゃったんですね。」
翌日、マクウェル様は、昨日街で買ったお土産を持ってキリクス邸へとやって来た。
「約束したでしょう?それと、はい。今日は、今王都でも人気があるお店の姉妹店で買って来たものなんだ。どうしても…シルフィーに食べてもらいたくて。」
フワリと微笑むマクウェル様。
そんな笑顔を向けられると、どうしたって胸が騒いでしまう。
「ありがとう…ございます。あのっ…良かったら、今から一緒に食べませんか?」
ー思わず誘ってしまった!どうしよう??ー
焦りと緊張でギュッと手に力が入る。
「シルフィ………」
「マクウェル様が来ているのね!?」
マクウェル様が何か言おうとしたのと同時に、この部屋にエレーナがやって来た。
「エレーナ…。」
ーノックもせず入って来るなんて…以前のエレーナなら、きちんとノックをして、申し訳無さそうに入って来ていたのにー
「マクウェル様、お久し振りです!私もご一緒して良いですか?」
「エレーナ…本当に、久し振りだね。丁度、今からお茶をしようと話していたところだから、一緒にどうぞ。」
マクウェル様がエレーナに笑顔を向けると、エレーナも顔を赤らめて微笑む。
チクリ─
と、胸が痛む。
ーそうよ。勘違いをしては…駄目よー
マクウェル様が優しいのは、シルフィーだからじゃない。誰にでも優しいのだ。
そうして、胸の痛みには気付かないフリをして、後からやって来たアーロンも入れて、その日は久し振りに4人で過ごした。
その日以後は、マクウェル様が遊びに来ると、必ずと言っていい程エレーナ達もやって来た。そうすると、自然とマクウェル様とエレーナとアーロンが会話をし、私はそんな3人の会話を聞くだけ─と言う流れになっていた。
ー私、ここに居る意味は…あるのかしら?ー
そう思ってしまうと、余計に気持ちが沈んでしまう。そんな自分が嫌で、お手洗いに行くフリをしてその部屋から出た。
「はぁ──…」
出て来た部屋からは見えない所迄来た事を確認してから、廊下にある窓を開けて空を見上げる。
きっと、マクウェル様とお似合いなのは、エレーナみたいに表情豊かで可愛らしい子なんだろう。
「そろそろ、本気であの事を考えなくちゃね。」
空を見上げながら呟いた私を、退室した私を追いかけて来たマクウェル様が見ていた事には気付かなかった。
カルディアが部屋で刺繍をしていると、家庭教師による勉強の時間を終えたエレーナがやって来て、母親であるカルディアに怒りをぶつけた。
「シルフィーばっかり─とは?」
「今日も、マクウェル様が来ていたのでしょう!?何故、いつも私のお勉強の時間に来るの?私だってマクウェル様とお茶したりしたいのに!どうしていつも、シルフィーだけなの!?」
カルディアは、ふぅーと軽くため息を吐き、手にしていた物をテーブルの上に置いた。
「シルフィーばかりもなにも、マクウェル様がいらっしやる時間は、マクウェル様本人が決めて来ているだけよ。それが、たまたまエレーナ達の勉強の時間とかぶっているだけ。こちら側がお願いしている訳じゃないわ。」
「っ!それでも──!」
「エレーナ、勘違いしてはいけないわ。」
「勘違い?」
「私達は、私の義理の兄─キリクス伯爵のご好意でここで過ごさせてもらっているだけであって、私達は貴族でもなんでもない─平民なのよ。本来なら、エレーナがマクウェル様となんて──」
「それは、お母様が、お祖父様にお願いすれば、また貴族に戻れるじゃない。断ったお母様が悪いのよ!」
「……エレーナ。どうして…その事を知っているの?」
カルディアの射抜くような視線を向けられ、エレーナはビクッと肩を震わせた。
「たっ…たまたま…耳にして……」
「「……」」
「エレーナ、リタさんがランチの用意ができたって…どうかしたの?」
気不味い空気が漂う中、エレーナを呼びに来たアーロンが部屋にやって来た。
「なっ、何でもないわ。アーロン、食堂に行きましょう。」
そう言って、エレーナはアーロンの手を引っ張るようにして部屋から出て行った。
2人が出て行った扉を見詰めるカルディア。
ーこれで…ハッキリしたわねー
きっと私と同じで、エレーナは…エレーナであって、エレーナではない。
どんなに悪態をつこうがカルディアが身を痛めて生んだ子であり、大切に育てていた記憶がある。その為、悪い方へ増長しないようにすれば良いと。最悪にならない為に動いて来た。さっきは否定したが、マクウェルが訪問する日が分かると、わざと家庭教師を呼び会わせないようにしていた。
最推しであるシルフィーは勿論の事、エレーナも守らなければと思っているが故だった。
でも、エレーナの中身が、カルディアと同じように、違う者が入っているなら──
「これって少し…いや、かなり…ヤバくない?」
ある意味…テンプレ展開だなぁ─と思いながら、これからの事を考え直そうと思うアヤメだった。
******
「本当に…今日もいらっしゃったんですね。」
翌日、マクウェル様は、昨日街で買ったお土産を持ってキリクス邸へとやって来た。
「約束したでしょう?それと、はい。今日は、今王都でも人気があるお店の姉妹店で買って来たものなんだ。どうしても…シルフィーに食べてもらいたくて。」
フワリと微笑むマクウェル様。
そんな笑顔を向けられると、どうしたって胸が騒いでしまう。
「ありがとう…ございます。あのっ…良かったら、今から一緒に食べませんか?」
ー思わず誘ってしまった!どうしよう??ー
焦りと緊張でギュッと手に力が入る。
「シルフィ………」
「マクウェル様が来ているのね!?」
マクウェル様が何か言おうとしたのと同時に、この部屋にエレーナがやって来た。
「エレーナ…。」
ーノックもせず入って来るなんて…以前のエレーナなら、きちんとノックをして、申し訳無さそうに入って来ていたのにー
「マクウェル様、お久し振りです!私もご一緒して良いですか?」
「エレーナ…本当に、久し振りだね。丁度、今からお茶をしようと話していたところだから、一緒にどうぞ。」
マクウェル様がエレーナに笑顔を向けると、エレーナも顔を赤らめて微笑む。
チクリ─
と、胸が痛む。
ーそうよ。勘違いをしては…駄目よー
マクウェル様が優しいのは、シルフィーだからじゃない。誰にでも優しいのだ。
そうして、胸の痛みには気付かないフリをして、後からやって来たアーロンも入れて、その日は久し振りに4人で過ごした。
その日以後は、マクウェル様が遊びに来ると、必ずと言っていい程エレーナ達もやって来た。そうすると、自然とマクウェル様とエレーナとアーロンが会話をし、私はそんな3人の会話を聞くだけ─と言う流れになっていた。
ー私、ここに居る意味は…あるのかしら?ー
そう思ってしまうと、余計に気持ちが沈んでしまう。そんな自分が嫌で、お手洗いに行くフリをしてその部屋から出た。
「はぁ──…」
出て来た部屋からは見えない所迄来た事を確認してから、廊下にある窓を開けて空を見上げる。
きっと、マクウェル様とお似合いなのは、エレーナみたいに表情豊かで可愛らしい子なんだろう。
「そろそろ、本気であの事を考えなくちゃね。」
空を見上げながら呟いた私を、退室した私を追いかけて来たマクウェル様が見ていた事には気付かなかった。
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