傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました

みん

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噂話

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マクウェル様と会って話を─

と思っていたのに、お互いの予定がなかなか合わず、会って話す事ができないままに日が過ぎて行く。

2年生でも、第二王子もベルフォーネ様も私もAクラスになった。マクウェル様は2年生でもBクラスで、今年は教室のある場所が階が違い少し離れてしまっている為、以前よりも更に学園で顔を合わせる事も少なくなってしまった。
しかも、マクウェル様の居るBクラスと同じ階に1年生のA、Bクラスがある。

ー嫌な予感しかないわー

と言うか…既に、妙な噂を耳にはしている。ただ、それはあまりにも真実味がない噂話。

“王太子と婚約者のベルフォーネ=アルダートンが不仲になった”

今の1年生は、王太子殿下の溺愛ぶりを知らないから、信じる者も居るが、2年生と3年生に至っては誰も信じておらず、寧ろ─

『そんな嘘を広めると、自分の首を締めることになる』

と、1年生達を窘めていた。王太子殿下の怖さを知っているからだろう。

それと、もう一つ───

“王太子の婚約者の専属侍女は、かもしれない”

なんだか…」

「何がだ?」

「っ!?」

ここはあまり人が来ない。学園内にある庭園の奥にあるベンチに座っている。誰も居ないと思っていたところに声を掛けられて驚いた。その声をした方へと視線を向けると

「王弟殿下!?」

「アルダートン嬢はどうした?」

「今日は、朝から王妃陛下とパーティの準備がある為、登城されています。王城ですので、付き添いはいいからと、私は学園に来させていただいたのです。」

「なるほどな。で?何がなんだ?」

王弟殿下は、私に質問しているようで…していない。意味を分かって訊いている。

「…ご存知では…ないのですか?」

「ふっ─そうだな。なんと言うか…くだらない噂だな。」

“傷物”には、二通りの意味がある。

一つはそのままの意味で、身体に怪我の痕─傷痕があると言う事。

もう一つは─処女ではない─と言う事だ。

今のご時世、処女でなければと言う概念は殆どない。それでもそれが、となると、話は全く違って来るのだ。

「そもそも、傷痕など…知っている者も限られていただろう?王弟である俺でさえ知らなかったからな。」

「……」

そうなのよね。私に傷痕がある事は…極秘だった筈なのに。


『ねぇ、シルフィーには…傷があるって本当なの?』


幼い頃、エレーナが訊いて来た事を思い出す。

ーおそらく、エレーナだよねー

そこまでして、私を陥れて王弟殿下を手に入れたい─と言う事だろうか?エレーナは、王弟殿下の事が…好き─と言う事なんだよね?
ある意味…羨ましいと思う。他人ひとを、そこまで好きになれると言う事が。私は、いまいち自分の感情が分からないから。

「ひょっとして…何か思い当たる節でもあるのか?」

思考に囚われそうになったところで声を掛けられて、ハッとする。

「ひょっとしたら─ですけど。でも、放っておきます。」

「“”とは?何か理由があるのか?」

何故直ぐに動かないのか?とでも言いたげに、王弟殿下は眉間に皺を寄せている。

「色々あるのですが…結局のところそう言う噂は、こちらが否定すればする程、“本当の事だから必死になって否定している”と言われますから。まぁ…本当に傷痕はありますし。それに─」

ー結婚どころか、誰かと恋をする─なんて事もないだろうしー

淡い…淡い恋心もあったけど。
目を伏せて軽く息を吐いてから、王弟殿下へと体を向ける。

「王弟殿下、このような所で私の様な者と2人きりで居るところを誰かに見られるとご迷惑をお掛けするかと思いますので、私はこれで失礼致します。」

持っていた本を胸に抱き、王弟殿下に軽く頭を下げてから歩き出す。

王弟殿下にしていただいている治療も、誰かに知られると厄介な事になりそうだよね。やっぱり、他の魔力の相性が良い人を探した方が良いかもしれない。アヤメさんに相談して─

「─えっ!?」

色々考え事をしていて少し油断していたところ、グイッと右腕を引っ張られてしまい、そのままの体が引っ張られた方へと傾いていく。そして、倒れそうになる前に私の背中に、トンと温かい何かにぶつかった。

「前にも言ったが、治療は続けるからな。約束通りに、明日は俺の執務室に来いよ?分かったな?」

右腕を掴まれたまま、背後から耳元で囁くように言われる。

「……」

どうやら、私の背中とぶつかった温かい何か─とは、王弟殿下の体のようだ──────って!?

理解した瞬間、身体が固まる。

「お前が噂を気にしないと言うなら、俺も気にしないだけだ。」

「……」

「それに、お前が来なかったとしても…俺がお前を迎えに行くだけだからな?」

「なっ!?迎え─って!?それは困ります!はい!必ず行きますから!」

迎えに来られたりしたら、それこそ何を言われるか!私はともかく、それこそ王弟殿下に変なキズが付いてしまう!

何とか王弟殿下との距離を空けて後ろに振り返ると、至近距離に顔があった。

「っ!?」

あまりにもビックリして、体が仰け反ってしまいそうになるけど、右腕をしっかりと掴まれている為にそれ以上離れる事ができない。

「それじゃあ、明日…必ず来いよ?」

と、王弟殿下は広角を上げて目を細くして笑っているのに笑ってない?ような笑顔で私を見下ろしていた。
















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