傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました

みん

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「お兄様、今日は宜しくお願いします。」

「シルフィーの初めての夜会のエスコートができて、私も嬉しいよ。」




今日は、王妃陛下の誕生日パーティの日。ベルフォーネ様から招待状を渡され、デビュー前ではあるが、私もキリクス伯爵家の令嬢として参加する事になった。

と言う事は…おそらく、マクウェル様もルーラント公爵家の令息として参加するだろう。きっと、今の状況を、父は勿論の事兄も……ベルフォーネ様や王太子殿下も把握していると思うけど…。

王城へ向かう馬車に、父と兄と私の3人が乗り込み、ゆっくりと馬車が動き出したところで、私は口を開いた。


「お父様とお兄様は、既に把握してると思うけど…ひょっとしたら、マクウェル様や学園に通っている人達から…何か言われたりするかもしれません。2人には、迷惑を掛けてしまうかもしれません。」

すみません─と、軽く頭を下げる。

「シルフィー、顔を上げて?お前が謝る必要なんてないからね?」

「お父様…。」

顔を上げて父に視線を向ける。

は…少し頭が弱いから、全て影の者が見ていると…知らないんだ。自分が見て聞いた事しか信じていない。あぁ、馬鹿なのはだけではなく、その側に居る者も…だったな。まぁ…一番の悪はだけどね。」

ニッコリ笑うお父様。
この笑顔は、本当に怒っている時の笑顔だ。

「でも、シルフィーが何もしていないと言う事は、何か考えがあるのだろう?だから、私もユリウスも今はまだ黙ってはいるが…相手の出方次第では、私かユリウスが動くからね?」

「あの、その事なんだけど…今日の夜会の後、お祖父様を含めてお話したい事があるの。時間を…つくってもらえる?」

今日は王妃陛下の誕生日パーティなので、領地に居るお祖父様とお祖母様も参加すると聞いていた。ならば丁度良いと思い、話を聞いてもらおうと思っていた。

「分かった。お祖父様にもお願いしよう。」

「ありがとうございます。」



そうして気が付けば、既に王城の門を潜り抜けていた。



















「叔父上が夜会に参加するとは、珍しいですね。」

「───何をしれっと言っているんだ。」

今日は王妃陛下姉上の誕生日パーティ。もともと参加するつもりはなかったのだが──

何故か、兄上から参加しろと言われてしまったのだ。例え兄弟と言えど国王陛下から言われてしまえば、断る事はできない。その事は、王太子でもあるレオナールも、ニヤニヤしながら見ていて知っていただろうに…何とも腹黒い甥っ子である。

「叔父上も、そろそろ婚約者を探されては?」

「その為に参加させられたのか?」

「さぁ?私には…分かりかねますね。」

分からない─と言う割にはニヤニヤと愉しそうにしているレオナールを見ていると、ホールの方から少しだけザワザワとした雰囲気が漂って来た。
今俺達が居るのは、王族専用のホールに繋がる控室。夜会などでは、王族は最後にホールに入る為、それ迄はこの控室で待機する事になっている。

ホールで何があったのか、ここからでは分からない。少し気になりながらもそのまま控室で時間が来るまで過ごしていた。

















ホールに入場して、直ぐに気が付いた。
いや、直ぐに視界に捕えた。

シルフィー=キリクス伯爵令嬢。

学園では後ろに一つに纏められている髪が、今日はサイドを編み込みハーフアップにしている。
彼女の瞳と同じ青色のエンパイアタイプのドレス。16歳とは思えない様な大人びたシルフィーがそこに居た。

おそらく、あの時ざわついたのは…シルフィー=キリクスが社交場に現れたからだろう。彼女は、色んな意味で注目を浴びていたから。

100年ぶりに生まれキリクスの令嬢。

社交場に現れない深窓の令嬢。

そして、今の学園での噂の傷物令嬢。

好奇心旺盛な視線を向けられていても、シルフィーは、そこに凛として立っている。その姿から視線を外せずにいると、シルフィーと目が合った。

シルフィーは驚いたのか、少し目を見開いた後、スッと目を細めて軽く微笑んで来た。

「──っ!?」

こんな俺でも、幼い頃には厳しくマナーを躾けられた。それは体に自然と染み込んでいるようで、今も何とか表情を崩す事も声を出す事も耐えれた。

どうやら、本当に俺はヤバいらしい。

一度を認識してしまうと、もうどうなっても可愛くしか見えないようだ。少しの表情の変化でさえ、可愛く見える。

「───マジか……」

「あぁ、叔父上…もう自覚はしていたんですね?」

「────レオナール…お前……」

「魔力の相性が良いそうですね?」

今日の夜会に、シルフィーが参加するのを知っていたから、俺を参加させた─と言う事か。

「今日のシルフィーは、本当に綺麗ですね。この夜会で、釣書が殺到するかもしれませんね?」

「………」

俺の甥っ子は、相変わらずニヤニヤと嗤っている。

「シルフィーが叔母上に…私は、大歓迎ですよ?」

そう言って、腹黒な甥っ子はベルフォーネ嬢の元へと向かって行った。













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