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思い出した?記憶
しおりを挟む『え?なんで?**?どうして…どこから??』
目の前に、ピンク色の髪の女の子─好きだった女の子が血塗れで倒れている。
『逃げて!』
『嫌だ!**を置いて逃げるなんて!嫌だ!お願い!誰か**を助けて!!』
どうして忘れてしまっていたんだ?あんなにも大切で…大好きだった女の子を。私の事を助けてくれた女の子の事を。
「あ、マクウェル様!気が付きましたか?」
「──エレーナ…。」
目が覚めると、そこは学園の医務室のベッドの上だった。
「マクウェル様、急に頭を抑えて倒れてしまって…。倒れてから直ぐに、公爵家の方に知らせたので迎えの馬車はもう来ていますから。マクウェル様が目覚めた事を知らせに──」
そう言って、椅子から立ち上がろうとするエレーナの手を掴む。
「待ってくれ、エレーナ。少しだけ…話を…」
「話…ですか?何でしょうか?」
「…その…無理なら言わなくて良いが…この腕の傷は、どうしたの?」
「あっ──!」
エレーナがサッと顔色を悪くしながら、反対の手でその傷痕を隠す。
「お見苦しいモノを…すみません。」
「違う!見苦しくはないから!ただ、どうしたのかと思って…。」
「───幼い頃に…怪我をしてしまったみたいなんですけど…その辺の記憶が曖昧で、私にも…よくは分からなくて…」
エレーナも記憶を失っていたのか?だから、私と会っても何も反応しなかった?きっと、私を庇って怪我をして…。
私を助けてくれたピンク色の髪の女の子は、エレーナだったのか。
「エレーナ、こんな傷痕位で、君の価値は変わらないよ。」
「マクウェル様…。ありがとうございます。」
ふにゃりと笑うエレーナの目から、ポロリと涙が流れる。
これからは、私がエレーナを守っていこう。相手が例え…淡い恋心を抱いていたシルフィーだったとしても。
私が恋心を抱いていたシルフィーは…もう居ないのだから。
「シルフィー!」
「アーロン?学園で会うのは久し振りね?」
「シルフィー、今日はこれから予定はある?なかったら、少し…話がしたくて。」
今日は特に予定もなかった為、それじゃあ─と言う事で、何故かアーロンと一緒にアヤメさんの所へと行く事になった。
「“シルフィーが傷物で男漁りをしている”ですって!?」
「そうです。勿論、僕は信じていないし、そうやって口に出している奴を見掛けたら、それは根も葉もない話だって言ってるけど…所詮僕は平民だから…例え、シルフィーの従弟だとしても信じてもらえなくて…役に立てなくてごめんね。」
「アーロン…ありがとう。私には、その気持ちだけで十分よ。」
てっきり、アーロンもエレーナを信じていると思っていたけど…違うのかしら?
「シルフィーが傷物って、どこから出て来たの?」
「それは分からないけど…僕は…エレーナかな?って思ってる。」
「え?」
アーロンの言葉に、アヤメさんの顔色が悪くなる。
「前に言っていたんだ。“シルフィーって、傷痕があるのよ。だからシルフィーは、マクウェル様とでもなくても結婚なんてできないのよ。”って。」
「──何て事を………」
「シルフィー、僕は、シルフィーに傷痕があってもなくても、何も気にしないし、シルフィーは僕にとっては、初めて会った時から優しくて可愛い従姉のお姉さんに変わりはないからね?」
「アーロン…ありがとう。でも、“可愛い”のはアーロンの方だけどね?」
「なっ!シルフィー!!」
と、アーロンは顔を真っ赤にしてプイッとそっぽを向いてしまい、その可愛らしい仕草に、私とアヤメさんは更に笑ってしまったのだった。
「それで、今日はベルフォーネ様が不在でシルフィーが1人だったから、エレーナの行動が気になって後をつけたら…」
「ひょっとして、庭園であった事を見ていたの?」
「覗き見してごめんなさい。でも、アレは…エレーナはわざとだったよね?」
驚いた。おそらく、マクウェル様とアーロンは同じように遠目から私達を見ていた筈。それなのに、アーロンにはわざとだったように見えたと言う事が。
「マクウェル様には、私が押し倒したように見えたみたいよ?いえ、確信していたわね。」
「はぁ?マクウェル様が!?あんの裏切り者が───はっ!」
「母上?」
素を出したアヤメさんに、アーロンがキョトンとした顔をしている。
「ふふふっ。アーロン…気にしなくて良いわよ。」
ーいや、アヤメさん、それは無理がありますからね?ー
「──母上も変わったなぁと。良い方に変わったなぁと思っていたけど…ふっ─」
「アーロン!笑ったわね!?」
“ムキー”と口で言いながら顔を赤くしているアヤメさん。そんな母親を嬉しそうに笑って見ているアーロン。
この2人が私の味方である事が嬉しい。そして、この2人の為にも、エレーナがこれ以上問題を起こさないようにして欲しいなと思う。
本当は、マクウェル様とは一度、ゆっくりと話をしたかったけど…おそらく、その機会はもう得られないだろう。
何度も手紙を書いたが、返事が来る事はなかった。拒否をしたのは向こう側だ。なら、私からはもう…歩み寄る事は…無い。
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