33 / 57
思い出した?記憶
『え?なんで?**?どうして…どこから??』
目の前に、ピンク色の髪の女の子─好きだった女の子が血塗れで倒れている。
『逃げて!』
『嫌だ!**を置いて逃げるなんて!嫌だ!お願い!誰か**を助けて!!』
どうして忘れてしまっていたんだ?あんなにも大切で…大好きだった女の子を。私の事を助けてくれた女の子の事を。
「あ、マクウェル様!気が付きましたか?」
「──エレーナ…。」
目が覚めると、そこは学園の医務室のベッドの上だった。
「マクウェル様、急に頭を抑えて倒れてしまって…。倒れてから直ぐに、公爵家の方に知らせたので迎えの馬車はもう来ていますから。マクウェル様が目覚めた事を知らせに──」
そう言って、椅子から立ち上がろうとするエレーナの手を掴む。
「待ってくれ、エレーナ。少しだけ…話を…」
「話…ですか?何でしょうか?」
「…その…無理なら言わなくて良いが…この腕の傷は、どうしたの?」
「あっ──!」
エレーナがサッと顔色を悪くしながら、反対の手でその傷痕を隠す。
「お見苦しいモノを…すみません。」
「違う!見苦しくはないから!ただ、どうしたのかと思って…。」
「───幼い頃に…怪我をしてしまったみたいなんですけど…その辺の記憶が曖昧で、私にも…よくは分からなくて…」
エレーナも記憶を失っていたのか?だから、私と会っても何も反応しなかった?きっと、私を庇って怪我をして…。
私を助けてくれたピンク色の髪の女の子は、エレーナだったのか。
「エレーナ、こんな傷痕位で、君の価値は変わらないよ。」
「マクウェル様…。ありがとうございます。」
ふにゃりと笑うエレーナの目から、ポロリと涙が流れる。
これからは、私がエレーナを守っていこう。相手が例え…淡い恋心を抱いていたシルフィーだったとしても。
私が恋心を抱いていたシルフィーは…もう居ないのだから。
「シルフィー!」
「アーロン?学園で会うのは久し振りね?」
「シルフィー、今日はこれから予定はある?なかったら、少し…話がしたくて。」
今日は特に予定もなかった為、それじゃあ─と言う事で、何故かアーロンと一緒にアヤメさんの所へと行く事になった。
「“シルフィーが傷物で男漁りをしている”ですって!?」
「そうです。勿論、僕は信じていないし、そうやって口に出している奴を見掛けたら、それは根も葉もない話だって言ってるけど…所詮僕は平民だから…例え、シルフィーの従弟だとしても信じてもらえなくて…役に立てなくてごめんね。」
「アーロン…ありがとう。私には、その気持ちだけで十分よ。」
てっきり、アーロンもエレーナを信じていると思っていたけど…違うのかしら?
「シルフィーが傷物って、どこから出て来たの?」
「それは分からないけど…僕は…エレーナかな?って思ってる。」
「え?」
アーロンの言葉に、アヤメさんの顔色が悪くなる。
「前に言っていたんだ。“シルフィーって、傷痕があるのよ。だからシルフィーは、マクウェル様とでもなくても結婚なんてできないのよ。”って。」
「──何て事を………」
「シルフィー、僕は、シルフィーに傷痕があってもなくても、何も気にしないし、シルフィーは僕にとっては、初めて会った時から優しくて可愛い従姉のお姉さんに変わりはないからね?」
「アーロン…ありがとう。でも、“可愛い”のはアーロンの方だけどね?」
「なっ!シルフィー!!」
と、アーロンは顔を真っ赤にしてプイッとそっぽを向いてしまい、その可愛らしい仕草に、私とアヤメさんは更に笑ってしまったのだった。
「それで、今日はベルフォーネ様が不在でシルフィーが1人だったから、エレーナの行動が気になって後をつけたら…」
「ひょっとして、庭園であった事を見ていたの?」
「覗き見してごめんなさい。でも、アレは…エレーナはわざとだったよね?」
驚いた。おそらく、マクウェル様とアーロンは同じように遠目から私達を見ていた筈。それなのに、アーロンにはわざとだったように見えたと言う事が。
「マクウェル様には、私が押し倒したように見えたみたいよ?いえ、確信していたわね。」
「はぁ?マクウェル様が!?あんの裏切り者が───はっ!」
「母上?」
素を出したアヤメさんに、アーロンがキョトンとした顔をしている。
「ふふふっ。アーロン…気にしなくて良いわよ。」
ーいや、アヤメさん、それは無理がありますからね?ー
「──母上も変わったなぁと。良い方に変わったなぁと思っていたけど…ふっ─」
「アーロン!笑ったわね!?」
“ムキー”と口で言いながら顔を赤くしているアヤメさん。そんな母親を嬉しそうに笑って見ているアーロン。
この2人が私の味方である事が嬉しい。そして、この2人の為にも、エレーナがこれ以上問題を起こさないようにして欲しいなと思う。
本当は、マクウェル様とは一度、ゆっくりと話をしたかったけど…おそらく、その機会はもう得られないだろう。
何度も手紙を書いたが、返事が来る事はなかった。拒否をしたのは向こう側だ。なら、私からはもう…歩み寄る事は…無い。
あなたにおすすめの小説
初恋の還る路
みん
恋愛
女神によって異世界から2人の男女が召喚された。それによって、魔導師ミューの置き忘れた時間が動き出した。
初めて投稿します。メンタルが木綿豆腐以下なので、暖かい気持ちで読んでもらえるとうれしいです。
毎日更新できるように頑張ります。
【完結】白い結婚成立まであと1カ月……なのに、急に家に帰ってきた旦那様の溺愛が止まりません!?
氷雨そら
恋愛
3年間放置された妻、カティリアは白い結婚を宣言し、この結婚を無効にしようと決意していた。
しかし白い結婚が認められる3年を目前にして戦地から帰ってきた夫は彼女を溺愛しはじめて……。
夫は妻が大好き。勘違いすれ違いからの溺愛物語。
小説家なろうにも投稿中
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた
夏菜しの
恋愛
幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。
彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。
そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。
彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。
いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。
のらりくらりと躱すがもう限界。
いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。
彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。
これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?
エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
誰にも口外できない方法で父の借金を返済した令嬢にも諦めた幸せは訪れる
しゃーりん
恋愛
伯爵令嬢ジュゼットは、兄から父が背負った借金の金額を聞いて絶望した。
しかも返済期日が迫っており、家族全員が危険な仕事や売られることを覚悟しなければならない。
そんな時、借金を払う代わりに仕事を依頼したいと声をかけられた。
ジュゼットは自分と家族の将来のためにその依頼を受けたが、当然口外できないようなことだった。
その仕事を終えて実家に帰るジュゼットは、もう幸せな結婚は望めないために一人で生きていく決心をしていたけれど求婚してくれる人がいたというお話です。
一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む
浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。
「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」
一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。
傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語