モブで薬師な魔法使いと、氷の騎士の物語

みん

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第一章ー婚約ー

それぞれの前夜

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*ウォーランド王国の王都から、少し離れた位置にある、とある領地にて*






「うん。ここも、まだ穢れは出ていないな。」

「本当に凄いよな。2年経っても穢れが出ないって。召喚された聖女様の3人共が凄かったんだろう?」

「らしいよ。本当に、異世界に無理矢理召喚されたのに、完璧に浄化してくれて─本当に感謝しかないよな。」


月に一度、定期的に国から派遣された魔導師達が、各地に穢れが出ていないかの確認を行っている。この3人の魔導師達も、国から派遣された魔導師だった。

「よし、じゃあ、次の場所に─」

今居る場所の確認が済み、次の場所へ移動しようとした時、その魔導師が持っていた魔石が手から滑り落ち、転がって、運悪くその場所にあった池に落ちてしまった。

「えーマジか!?」

「うーん…結構深そうだな…。どうす──」

どうしようか─と思っていると、その池の中から魔力が一気に溢れて来た。

「何だ!?」

と、魔導師達が叫んだと同時位に、池の水が水柱の様に沸き上がった。









水が沸き上がったのは一瞬だった。後は、特に問題はなく、辺り一帯が水浸しになったくらいだった。

「多分、池に落とした魔石が、魔力暴走を起こしたんだろう。この池から魔力は感じないから、もう大丈夫だろう。少し遅くなってしまったな。急いで次の場所に行こう。」

こうして、3人の魔導師達は、次の場所へと転移した。 















*ウォーランド王国、パルヴァン辺境地、パルヴァン邸にて*



『リュウ!!』

パルヴァン邸の地下牢に、閉じ込められている宮下香が、リュウの姿を目にした瞬間に大声を上げた。

『やっと会えた!お願い、ここから出してくれるように…言ってくれない?聖女とか言う女に、私を日本に還すって言われたんだけど…嘘よね?』

『嘘じゃないわよ』

『─っ!な…で、また聖女あんたが居るのよ!?出て行ってよ!』

隣国もある程度落ち着いた為、リュウがパルヴァンにやって来たのだ。勿論、宮下香を日本に還す為に。

そして、還す日の前日、最後に─と、リュウはミヤと共に地下牢に居る宮下香に会いに来たのだ。

『出て行ってよ─って…相変わらず自分の立場が、全く解ってないのね?まぁ、それも、明日で終わりだから良いけど。』

『“明日で終わり”?』

鉄格子を握り締めている手に力が入る。

『明日、俺が、あんたを日本に送り還す─必ず。』

リュウが、真っ直ぐ宮下香の目を見据えながら言う。

『そんな…私…嫌…だ──っ!!私、還ったらどうなるの?だって…の婚約者が自殺したとか…苛めがバレたとか…』

ズルズルとその場にへたりこみ、ぶつぶつと呟き続ける。そんな宮下香を一瞥した後、ミヤとリュウは、この世界の言葉で話し出した。

「本当に…自分の事しか…考えてないのね。少し位は反省してるかと思ったけど。」

「本当に、俺は、何であんなにもコイツに執着してたんだろう??あの時の俺を…殴ってやりたい!どう見たって、ハルの方が正しいし、まともだし!!何より──小動物万歳!で可愛い!!」

「……え─確かにハルは可愛いけど…、絶対にエディオルさんの前では言わないようにね?リュウが言うのは…アウトだと思うから。」

「分かってるよ─絶対アウトだよ。」

「それと、ちょっと訊きたいのだけど…。設定として、世界を跨ぐ度に負担が掛かると言う事はあるの?」

「んーどうかな?何度も往き来する─なんて設定がそもそもなかったから…。でも、“自由に往き来は出来ない”、“膨大な魔力が必要”と言う設定はあったから、有り得るかもしれない。でも…何故?」

「私とハルって、こっちに戻って来る時が3回目だったでしょう?こっちに戻って来て、魔法陣が消えた瞬間…身体が千切れそうな感覚の痛みがあったのよ。それで、もう4回目は無いな─って。」

その時の痛みを思い出したのか、ミヤの眉間に皺が寄る。

「そうなのかも…しれないな。」

と、リュウは言いながら、未だに蹲ってぶつぶつ呟いている宮下香に視線を向ける。

「加護も何も無い宮下香は…どうなるか微妙だな。」

ミヤ様は“聖女”として、ハルは“魔法使い”としての、ある意味“この世界に存在して良い”と言う加護がある。でも、宮下香には、それが無い─無くなった。

「ひょっとしたら…2回目でも、結構なダメージを喰らうかもな…」

「もしそうだったとしても…自業自得ね。チャンスは、いくらでもあったのよ。それを全部駄目にしたのは…宮下香本人だから。」

そうして、ミヤとリュウは、未だ蹲っている宮下香に背を向けて、地下牢から出て行った。









*****


「いよいよ…明日ですね。」

「ハルは…リュウが心配なんだろう?」




リュウが、宮下香を送り還す日の前日の夜。

「気になって、眠れないんだろう?」

と言って、エディオルさんが私の部屋にミルクティを持って来てくれた。

はい。もう、正式な婚約者になったので、部屋に2人きり─でも問題は無いそうです。

ーえ!?じゃあ、今迄は問題あったの!?ー

とは、思っても…誰にも訊けませんでした。





「心配はしてますけど…大丈夫ですよ。」

と、ニッコリ笑って言うと

「やっぱり…ハルな。」

と、エディオルさんは優しく笑った。







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