モブで薬師な魔法使いと、氷の騎士の物語

みん

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第一章ー婚約ー

補充と癒し

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「─────────元カレ」

そう呟いた後、王太子は暫く黙り込んだ。

「そうです。元カレが…何故か、こっちの世界に来てしまったんです。それで、ハルが元の世界に還すと言ってくれ──」

「そうか!ハル殿なら還せるのか!流石は規格外の魔法使いだな!それで、その元カレはいつ還──」

「暫く、この世界に…居る事になりました。」

「は?」

王太子は、今度は口を開けたままポカンとする。


ここは王太子の執務室。

登城してすぐ謁見の間を訪れ、国王両陛下に聖女としての報告と、元カレの報告をした。

「申し訳無いけど、時間があったら、ランバルトにその報告も兼ねて会ってあげてくれるかしら?本当に…ごめんなさいね?」

と、王妃様に謝られながら、ミヤは王太子の元へ足を向けたのだった。




「リュウ曰く、ゲームの強制力が働いたようです。」

「また…強制力とやらか。でも、それは私達の意思を無理矢理変えるものでは無い─と言う事でしたね?」

「そうですね。今のところ、元カレと再会しても…心は動かされませんでしたね。」

「そ…そうか!」

心が動かなかった─と聞いて、ホッとしたような顔をするランバルトだが…

王太子あなたにも、心は動かないけどー

何て事は口にはせず、ミヤはニッコリと微笑んだ。


そんな様子を、同じ部屋で仕事をしていたイリスが見ていた。

ーミヤ様のあの笑顔を、ランバルトは普通に喜んでそうだけど…アレ、絶対良い意味では笑っては無い…よな。おもし…可哀想にー

と思いながら、イリスは次々に書類を捌いていった。














††その頃のカルザイン邸††







3人での話し合いが終わり、私の元へやって来たエディオルさん。

「後は、2人でごゆっくりどうぞ!」

と言って部屋を後にしたルーチェ様。なので、今、この部屋にはエディオルさんと2人きりで─

「ハル、本当に久し振りだな。元気そうで良かった。」

微笑んで、私をギュッとするエディオルさん。すると、フワリと私の大好きなシトラス系の香りがして、嬉しくなる。

「はい、私は元気でした。エ─ディは久し振りの近衛に復帰で、どうでした?」

「んー…久し振りの、良い意味での緊張感があって、やっぱり近衛騎士とは良いものだな─と、改めて思ったかな?ハルに会えない事だけは…寂しかったけど。ハル、顔、よく見せて?」

エディオルさんが、両手で私の顔を上へと持ち上げる。

「えっと…ちょっと恥ずかしい…かな?」

ー近いから!近過ぎるからね?!久し振りに、この距離は本当に恥ずかしいからね!?ー

「ははっ─これ位は慣れたかと思ったけど…また振り出しか?そんなハルも、可愛いけどね。」

「な─っ!?」

と、口を開き掛けた瞬間キスをされた。

「っ!!!!」

「顔…真っ赤だな…」

「だから…誰のせ──」

「うんうん。俺のせいだな。」

ーうぅ…このやりとりも…ルーティンになってるよね!?ー

でも─恥ずかしいけど、嬉しくもある。

「あ!ディ、あの、とっても重要?大事な話があるから、聞いてくれますか?」

「勿論。それじゃあ、椅子に座ろう。」

「はい。」







で、椅子に座ったのは良いけど……

「え?何で?」

何故か、ノアに乗っている時のように、私がエディオルさんの足の間に座り、エディオルさんが私の背中から抱き付いて座っている。

「ん?何か問題でも?」

「え?問題と言うか…この座り方近過ぎるし、ディは…疲れない?」

「この1ヶ月、ハルが足りなかったから、これで補充している。疲れるどころか、癒ししかない。気にせずに話をしてくれ。」

エディオルさんはそう言うと、私の後頭部にキスをした。

ーあ…甘い!!糖度が増えてませんか!?ー

「わ…分かり…ました。」

そんな私も、嫌ではないし、“止めて下さい”とも言えないから、恥ずかしいのを我慢しつつ、悠兄さんの事を話し出した。












「ミヤ様の元カレが……」

「そうなんです。まだミヤさんに未練があったみたいで…。暫くの間、こっちに居る事になったんです。」

「まぁ…2人ともいい大人だからな…好きにしても良いと思うが…。ところで、ユウとはどう言う事だ?ハルには…兄弟はいなかたったよな?」

「あの…私が男性恐怖症だった事…覚えてますか?その切っ掛けが、私が14歳位の時に誘拐されそうになったからなんですけど─」

「誘拐…」

ーひぃぃっ─エディオルさんからも威圧感が半端無いー

「あの!未遂ですから!されてませんからね!?兎に角、されそうになった時に助けてくれた人が、その当時近所に住んでいた人で、その人の息子が悠兄さんだったんです。それから、その2人が何かと私を気遣ってくれまして…。それでもやっぱり、恐怖心が拭えなくて…高校進学──1、2年程してから、ウチが引っ越しをしたので、それからは会っていなかったんですけどね。」

眞島さん、元気にしてるかなぁ?警察官ですか?と疑いたくなる程の厳つい顔なのに、本当に優しい人だった。お陰で、パルヴァン様を初めて見た時も、全く怖くなった。それどころか、安心感さえあった。

ギュウッ

「うぇっ!?」

何故か、急にエディオルさんが抱き付いている腕に力を入れた。

「ちょっ…ディ?ちょっと…苦し─」

「その人が居て…良かった。ハルが無事で…良かった。」

顔を私の肩に埋めて、腕には力を入れたままで、私のお腹はギュウッと締まって苦しいけど…本当に私の事を心配してくれてるんだな─と分かって、嫌な苦しさじゃない。

「ふふっ。ディ、ありがとうございます。」

お礼を言いながら、エディオルさんの腕をポンポンと叩いた。













そして、少し落ち着いてから、また話し始めた。

「あの優しい悠兄さんが、二股掛けるような人だとは…思えないんですけどね…ちょっと…かなりショックです。」

ーあれ?そう言えば…貴族社会って…第二夫人とか愛妾とか…居るんだっけ?ー

「ハル、俺はハル以外は要らないからな?」

「はい!?」

「確かに、貴族社会では、第二夫人とか愛妾とか居たりするが…俺は、ハルしか要らないから。ハルが居ればそれで良いから。」

ー私の思考、バレバレ過ぎない!?ー

「えっと…あの…別に、ディを疑ってるとかではなくて、貴族社会ではそう言うのがあったな─って、思っただけですよ?」

「それなら良いが…まぁ、解ってないようだったら…解らせるまで─だけどね。」

「ふわぁ─っ!?み────耳元で…囁かないで下さい!!」

耳をおさえながらエディオルさんから離れようとする──けど!エディオルさんが、私の背中からガッシリ抱き付いているから離れられないよね!離してくれる筈無いよね!知ってた!

「はぁ───本当に…ハルは可愛いな。」

「えぇ─っ!?あの…前から思ってたんですけど…ディの“可愛い”のハードル、低過ぎない?」

「ん?ハードルと言うか…ハル限定だから。ハルは何をしても可愛いとしか見えないからな。」

「はぅ────っ」

ー駄目だ…何を言っても砂糖で返って来るー

「やっぱり、ディには勝てる気がしない…。」

そう呟くと、後ろでエディオルさんが笑う気配がして

「抵抗するハルも可愛いけどね。」

と言われて──

もう諦めて…エディオルさんの腕の中に閉じ込められたまま、その身をエディオルさんに預けた。






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