20 / 78
20 再会
しおりを挟む
「───フィン?」
どうしてここに?魔道士?似ているだけ?
「あ、ご存知でしたか?彼はフィンレー=コペルオン様で、実力のある魔道士なんです。今回、王女殿下をお救いしたそうで───」
似ているんじゃなくて、彼はフィンだ。私が見間違える筈が無い。好きだったのだから。でも、魔道士と言う事は、私みたいに渡り人ではないと言う事だ。
『それでさ……いつとは言えないんだけど、また、マシロに会いに……迎えに来ても良い?』
“迎えに”が“召喚”だったら?
ーフィンが私を召喚した?ー
それなら、私がこの世界に来た説明がつく。説明がつくけど、どうしてあんな森に?あんな誰も居ない森に?迎えすらなかった。それから1人で森を彷徨って捕まって、地下牢に入れられて売られそうになって……その間、フィンは何をしていたの?私を探してくれた?
ー魔道士が助けたのは、私じゃなくて王女様だー
召喚したけど私が邪魔になった?それなら、私を召喚なんてしなければ、もう二度と会う事なんてなかった。違う。そもそも、フィンが私を召喚したとは限らない。でも、こんな偶然がある?
ーフィンが、私を殺そうとした?ー
どうして?──上手く呼吸ができなくなって、視界が歪む。
「お似合いのお二人で───って、大丈夫ですか!?」
「………おねが……リオナさ………」
「マシロさん!?」
リオナさんを呼んで欲しい─と言い切る前に、私の意識が途切れた。
『マシロ、大丈夫?無理をしたらダメだよ?』
『マシロはいつも頑張ってるよ。エライよね』
『……もし、俺が迎えに来て、その時にマシロの気持ちが変わってなかったら、少し考えてみてくれる?』
あの言葉は、本当は嬉しかった。
もしまた会えたなら──
「…………」
目を開けると、見慣れない天井が視界に入った。何だか目蓋が重たく感じるのは、泣いていたからなのか?
「マシロ!大丈夫!?」
「……リタさん………」
私の手を握ってくれていたのはリタさん。待合室で待機していたけど、私が倒れたと報せを受けて来てくれたそうだ。
「リオナ様は後で来るけど………少し問題が起きてしまって………」
「問題って───」
「マシロ!!」
「ちょっと!待ちなさい!!」
そこへ、ノックも無く部屋に入って来たのは、リオナさんとフィンだった。
「マシロ!?本当にマシロなのか!?」
「フィン…………」
やっぱり、フィンだった。
ー何故?ー
自分でも分かる程無表情になっているのに対し、フィンは私が茉白だと分かると、満面の笑みを浮かべた。本当に、とても嬉しそうに。
「マシロ、大丈夫?怪我はない?あぁ…会いたかった。召喚は、成功してたんだな」
「召喚……成功?」
そう呟いたのは、私ではなくリオナさんだった。リオナさんがサッと目配せすると、私に付き添ってくれていた女官の人が部屋から出て行き、部屋には私とリオナさんとリタさんとフィンだけになった。
「マシロとは向こうの世界で知り合って、いつか迎えに行くと約束してたんです。それで、ようやく召喚できたと思ったら、マシロが現れなくて……失敗したと思っていたけど、成功していたとは!良かった!」
ー成功?フィンは、本気でそう思っているの?ー
「でも、ちょっと問題もあるけど大丈夫だ。王女殿下も、俺が話せば分かってくれるだろうから。マシロ、これからは俺と一緒に───」
「私がここに来てから……どんな目に遭ったのか知ってる?」
「え?」
ギュッと手を握る。
「バイトの帰りに気が付いたら、誰も居ない森に居たの。歩いても歩いても誰も居なくて……ようやく人に会えたと思ったら、言葉が全く通じない上に拘束されて……地下牢に閉じ込められて暴力を振るわれて…売られそうになって………魔獣に殺されかけて…………」
「まさか………」
そこでようやくフィンから笑顔が消えた。
「そこで私を助けてくれたのは、リオナさんや竜人の人だった。リオナさん達がいなければ、私は売られていたし、死んでいたかもしれなかった!召喚が失敗したと思った時、本当に失敗したのか調べたの?私が来ていないかどうか…探してくれた?」
「それ…は………でも、こうして会えたなら、これからは俺がマシロを護るから!だから──」
「無理だから!そんなフィンとは一緒に居られない!居たくない!」
「マシロ…落ち着いて……俺はマシロが──」
フィンが私の手を握る。それはとても優しい力で全く痛くはないのに、あの時の事がフラッシュバックする。
「はな……して…………」
「マシロ、お願いだ、俺と一緒に居て欲しい」
私が辛い時に側に居てくれたフィン。好きだったのも本当だ。でも、今はフィンが怖い。怖くてたまらない。握られている手が震えているのが自分でも分かる。
ー怖い…誰か………ー
「いい加減にしてはどうだ?」
「なに…い───っ」
私の手からフィンの手を外してくれたのは、黒色の髪と瞳のサリアスさんだった。
どうしてここに?魔道士?似ているだけ?
「あ、ご存知でしたか?彼はフィンレー=コペルオン様で、実力のある魔道士なんです。今回、王女殿下をお救いしたそうで───」
似ているんじゃなくて、彼はフィンだ。私が見間違える筈が無い。好きだったのだから。でも、魔道士と言う事は、私みたいに渡り人ではないと言う事だ。
『それでさ……いつとは言えないんだけど、また、マシロに会いに……迎えに来ても良い?』
“迎えに”が“召喚”だったら?
ーフィンが私を召喚した?ー
それなら、私がこの世界に来た説明がつく。説明がつくけど、どうしてあんな森に?あんな誰も居ない森に?迎えすらなかった。それから1人で森を彷徨って捕まって、地下牢に入れられて売られそうになって……その間、フィンは何をしていたの?私を探してくれた?
ー魔道士が助けたのは、私じゃなくて王女様だー
召喚したけど私が邪魔になった?それなら、私を召喚なんてしなければ、もう二度と会う事なんてなかった。違う。そもそも、フィンが私を召喚したとは限らない。でも、こんな偶然がある?
ーフィンが、私を殺そうとした?ー
どうして?──上手く呼吸ができなくなって、視界が歪む。
「お似合いのお二人で───って、大丈夫ですか!?」
「………おねが……リオナさ………」
「マシロさん!?」
リオナさんを呼んで欲しい─と言い切る前に、私の意識が途切れた。
『マシロ、大丈夫?無理をしたらダメだよ?』
『マシロはいつも頑張ってるよ。エライよね』
『……もし、俺が迎えに来て、その時にマシロの気持ちが変わってなかったら、少し考えてみてくれる?』
あの言葉は、本当は嬉しかった。
もしまた会えたなら──
「…………」
目を開けると、見慣れない天井が視界に入った。何だか目蓋が重たく感じるのは、泣いていたからなのか?
「マシロ!大丈夫!?」
「……リタさん………」
私の手を握ってくれていたのはリタさん。待合室で待機していたけど、私が倒れたと報せを受けて来てくれたそうだ。
「リオナ様は後で来るけど………少し問題が起きてしまって………」
「問題って───」
「マシロ!!」
「ちょっと!待ちなさい!!」
そこへ、ノックも無く部屋に入って来たのは、リオナさんとフィンだった。
「マシロ!?本当にマシロなのか!?」
「フィン…………」
やっぱり、フィンだった。
ー何故?ー
自分でも分かる程無表情になっているのに対し、フィンは私が茉白だと分かると、満面の笑みを浮かべた。本当に、とても嬉しそうに。
「マシロ、大丈夫?怪我はない?あぁ…会いたかった。召喚は、成功してたんだな」
「召喚……成功?」
そう呟いたのは、私ではなくリオナさんだった。リオナさんがサッと目配せすると、私に付き添ってくれていた女官の人が部屋から出て行き、部屋には私とリオナさんとリタさんとフィンだけになった。
「マシロとは向こうの世界で知り合って、いつか迎えに行くと約束してたんです。それで、ようやく召喚できたと思ったら、マシロが現れなくて……失敗したと思っていたけど、成功していたとは!良かった!」
ー成功?フィンは、本気でそう思っているの?ー
「でも、ちょっと問題もあるけど大丈夫だ。王女殿下も、俺が話せば分かってくれるだろうから。マシロ、これからは俺と一緒に───」
「私がここに来てから……どんな目に遭ったのか知ってる?」
「え?」
ギュッと手を握る。
「バイトの帰りに気が付いたら、誰も居ない森に居たの。歩いても歩いても誰も居なくて……ようやく人に会えたと思ったら、言葉が全く通じない上に拘束されて……地下牢に閉じ込められて暴力を振るわれて…売られそうになって………魔獣に殺されかけて…………」
「まさか………」
そこでようやくフィンから笑顔が消えた。
「そこで私を助けてくれたのは、リオナさんや竜人の人だった。リオナさん達がいなければ、私は売られていたし、死んでいたかもしれなかった!召喚が失敗したと思った時、本当に失敗したのか調べたの?私が来ていないかどうか…探してくれた?」
「それ…は………でも、こうして会えたなら、これからは俺がマシロを護るから!だから──」
「無理だから!そんなフィンとは一緒に居られない!居たくない!」
「マシロ…落ち着いて……俺はマシロが──」
フィンが私の手を握る。それはとても優しい力で全く痛くはないのに、あの時の事がフラッシュバックする。
「はな……して…………」
「マシロ、お願いだ、俺と一緒に居て欲しい」
私が辛い時に側に居てくれたフィン。好きだったのも本当だ。でも、今はフィンが怖い。怖くてたまらない。握られている手が震えているのが自分でも分かる。
ー怖い…誰か………ー
「いい加減にしてはどうだ?」
「なに…い───っ」
私の手からフィンの手を外してくれたのは、黒色の髪と瞳のサリアスさんだった。
365
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢は嫁き遅れていらっしゃる
夏菜しの
恋愛
十七歳の時、生涯初めての恋をした。
燃え上がるような想いに胸を焦がされ、彼だけを見つめて、彼だけを追った。
しかし意中の相手は、別の女を選びわたしに振り向く事は無かった。
あれから六回目の夜会シーズンが始まろうとしている。
気になる男性も居ないまま、気づけば、崖っぷち。
コンコン。
今日もお父様がお見合い写真を手にやってくる。
さてと、どうしようかしら?
※姉妹作品の『攻略対象ですがルートに入ってきませんでした』の別の話になります。
公爵夫人の気ままな家出冒険記〜「自由」を真に受けた妻を、夫は今日も追いかける〜
平山和人
恋愛
王国宰相の地位を持つ公爵ルカと結婚して五年。元子爵令嬢のフィリアは、多忙な夫の言葉「君は自由に生きていい」を真に受け、家事に専々と引きこもる生活を卒業し、突如として身一つで冒険者になることを決意する。
レベル1の治癒士として街のギルドに登録し、初めての冒険に胸を躍らせるフィリアだったが、その背後では、妻の「自由」が離婚と誤解したルカが激怒。「私から逃げられると思うな!」と誤解と執着にまみれた激情を露わにし、国政を放り出し、精鋭を率いて妻を連れ戻すための追跡を開始する。
冒険者として順調に(時に波乱万丈に)依頼をこなすフィリアと、彼女が起こした騒動の後始末をしつつ、鬼のような形相で迫るルカ。これは、「自由」を巡る夫婦のすれ違いを描いた、異世界溺愛追跡ファンタジーである。
わたしの方が好きでした
帆々
恋愛
リゼは王都で工房を経営する若き経営者だ。日々忙しく過ごしている。
売り上げ以上に気にかかるのは、夫キッドの健康だった。病弱な彼には主夫業を頼むが、無理はさせられない。その分リゼが頑張って生活をカバーしてきた。二人の暮らしでそれが彼女の幸せだった。
「ご主人を甘やかせ過ぎでは?」
周囲の声もある。でも何がいけないのか? キッドのことはもちろん自分が一番わかっている。彼の家蔵の問題もあるが、大丈夫。それが結婚というものだから。リゼは信じている。
彼が体調を崩したことがきっかけで、キッドの世話を頼む看護人を雇い入れことにした。フランという女性で、キッドとは話も合い和気藹々とした様子だ。気の利く彼女にリゼも負担が減りほっと安堵していた。
しかし、自宅の上の階に住む老婦人が忠告する。キッドとフランの仲が普通ではないようだ、と。更に疑いのない真実を突きつけられてしまう。衝撃を受けてうろたえるリゼに老婦人が親切に諭す。
「お別れなさい。あなたのお父様も結婚に反対だった。あなたに相応しくない人よ」
そこへ偶然、老婦人の甥という紳士が現れた。
「エル、リゼを助けてあげて頂戴」
リゼはエルと共にキッドとフランに対峙することになる。そこでは夫の信じられない企みが発覚して———————。
『夫が不良債権のようです〜愛して尽して失った。わたしの末路〜』から改題しました。
※小説家になろう様にも投稿させていただいております。
異世界転移した私と極光竜(オーロラドラゴン)の秘宝
饕餮
恋愛
その日、体調を崩して会社を早退した私は、病院から帰ってくると自宅マンションで父と兄に遭遇した。
話があるというので中へと通し、彼らの話を聞いていた時だった。建物が揺れ、室内が突然光ったのだ。
混乱しているうちに身体が浮かびあがり、気づいたときには森の中にいて……。
そこで出会った人たちに保護されたけれど、彼が大事にしていた髪飾りが飛んできて私の髪にくっつくとなぜかそれが溶けて髪の色が変わっちゃったからさあ大変!
どうなっちゃうの?!
異世界トリップしたヒロインと彼女を拾ったヒーローの恋愛と、彼女の父と兄との家族再生のお話。
★掲載しているファンアートは黒杉くろん様からいただいたもので、くろんさんの許可を得て掲載しています。
★サブタイトルの後ろに★がついているものは、いただいたファンアートをページの最後に載せています。
★カクヨム、ツギクルにも掲載しています。
病めるときも健やかなるときも、お前だけは絶対許さないからなマジで
あだち
恋愛
ペルラ伯爵家の跡取り娘・フェリータの婚約者が、王女様に横取りされた。どうやら、伯爵家の天敵たるカヴァリエリ家の当主にして王女の側近・ロレンツィオが、裏で糸を引いたという。
怒り狂うフェリータは、大事な婚約者を取り返したい一心で、祝祭の日に捨て身の行動に出た。
……それが結果的に、にっくきロレンツィオ本人と結婚することに結びつくとも知らず。
***
『……いやホントに許せん。今更言えるか、実は前から好きだったなんて』
悪夢から逃れたら前世の夫がおかしい
はなまる
恋愛
ミモザは結婚している。だが夫のライオスには愛人がいてミモザは見向きもされない。それなのに義理母は跡取りを待ち望んでいる。だが息子のライオスはミモザと初夜の一度っきり相手をして後は一切接触して来ない。
義理母はどうにかして跡取りをと考えとんでもないことを思いつく。
それは自分の夫クリスト。ミモザに取ったら義理父を受け入れさせることだった。
こんなの悪夢としか思えない。そんな状況で階段から落ちそうになって前世を思い出す。その時助けてくれた男が前世の夫セルカークだったなんて…
セルカークもとんでもない夫だった。ミモザはとうとうこんな悪夢に立ち向かうことにする。
短編スタートでしたが、思ったより文字数が増えそうです。もうしばらくお付き合い痛手蹴るとすごくうれしいです。最後目でよろしくお願いします。
竜帝と番ではない妃
ひとみん
恋愛
水野江里は異世界の二柱の神様に魂を創られた、神の愛し子だった。
別の世界に産まれ、死ぬはずだった江里は本来生まれる世界へ転移される。
そこで出会う獣人や竜人達との縁を結びながらも、スローライフを満喫する予定が・・・
ほのぼの日常系なお話です。設定ゆるゆるですので、許せる方のみどうぞ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる