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22 アンジェリア=オールステニア王女
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フィンと再会して一悶着あった後、すぐにリオナさんとサリアスさんが動いてくれたお陰で、私が竜王国で過ごす手続きがスムーズに進んだ。
王太子様が良い人で、『我が国の魔道士が勝手をして申し訳無い』と謝ってくれた上、フィンがこれ以上私に近付かないよう注意しておくとも言ってくれた。
フィン─本当の名前は“フィンレー=コペルオン”
この国の魔道士で侯爵家の嫡男。かなりの実力者らしく、異世界からの召喚も、彼だからこそできた魔法だったそうだ。そのフィンの師匠だった先代の魔道士騎士団の団長もまた、異世界から聖女を召喚した事がある人だったそうで、その魔法陣を引き継いで私を召喚したとの事だった。
そして、問題はやっぱり王女様だった。
「フィンレーは私の婚約者よ!あの渡り人をなんとかしなさい!」
なんて叫んでいるそうだ。
ー私は被害者だけど?ー
なんて理不尽なんだろと思ったけど、これもまた王太子様が王女様を窘めてくれたそうだ。それでも、聖女として人気のある王女様だから、王女様ではなく周りの人間が動く可能性もあるとの事で、王太子様が早急に手続きを進めてくれたお陰で、数日内には竜王国に行く事ができるようになった。
竜王様も、二つ返事で私を受け入れてくれたそうだ。
そして、私のお世話をしてくれているリタさんが、私に付いて竜王国に来てくれる事になった。リタさんは伯爵家の三女で、もともとリオナさん付きの侍女で、家族とも離れてしまうし、私はただの渡り人だけど大丈夫?と訊けば、『親の都合で結婚したくないし、竜王国には憧れがあったし、何よりもマシロが心配でしょうがないから』と言われたから、素直に『ありがとうと』とお礼を言って、一緒に来てもらう事にした。私も、リタさんが一緒だと心強いから。
『俺も居るから大丈夫だ』と、言ってくれたサリアスさんも、心強い存在だ。
この世界に来てからは大変だったけど、今は運が良かったなと思う。
兎に角、私はパーティーには参加しないから、竜王国へ行く準備をして、サリアスさん達が帰国する時に一緒に竜王国に行く事になった。
*パーティー当日の王女視点*
「アンジェリア様、フィンレー様そろそろお時間です」
「分かったわ」
「分かりました」
パーティーの主役である私とフィンレー。
初めて会った時から心が惹かれていた。綺麗な青空の様な瞳には、私だけを映して欲しいとさえ思う程に。だから、浄化の付き添いにフィンレーが付くと聞いた時はチャンスだと思った。何かしらの理由さえあれば、婚約を取り付ける事ができるから。そして、それは上手くいき、フィンレーと婚約できたと思ったのに。
渡り人──マシロ
『マシロとは約束していた仲なんです。彼女を召喚したのは私なんです。だから──』
『婚約が解消される事はないわ。これは王命でもあるのよ。それに、彼女の方はフィンレーを拒否したと聞いたわ』
『それ…は……マシロは少し混乱してるだけで……』
『婚約は解消しないわ!』
『…………分かりました』
あの女のせいで、あの日以降、フィンレーが私に微笑む事がなくなった。体裁を保つ為に、誰かが居る所では以前のように優しくしてくれるけど。それでも、私はフィンレーを手放すつもりは無い。王太子には窘められたけど、私は悪くない。あの女さえ居なくなれば、フィンレーはまた私に微笑んでくれるようになる。幸い、私は聖女で、今迄国民の為に力を注いで来たお陰で、私を慕ってくれる者達が多く居る。だから、私はそんな者達に少し……あの女の事を話しただけ。
『フィンレーを追い掛けて来たみたい。何も起こらなければ良いけど……』
たったそれだけ。それだけであの者達が動いてしまっても私のせいではない。
「フィンレー、行きましょう」
「はい………」
フィンレーの腕に手を添えると、フィンレーが笑顔を浮かべる。ただ、視線が交わる事は無い。
婚約発表は問題無く行われた。誰1人異を唱える者は居らず祝福され、和やかに時間が進んで行くなか、ホールの端でバタバタと動き出した者が居た。
ライオン獣人のリオナ=ヴァルトールと婿のルパート。それに竜王国のカイルス=サリアスだ。
ー私の信奉者は仕事が早いのねー
笑いを堪えて眺めていると、去り際のカイルス=サリアスと視線が合った。
「──っ」
視線が合ったのは一瞬。彼は竜騎士とは言ってもただの鷲獣人な筈なのに、あの射るような視線は恐ろしいものがある。ただ、睨んだところで私は何もしていないのだから、手を出す事はできない。
ーあの渡り人は、どうなったのかしら?ー
所詮、渡り人は異物でしかないのだから、私達王族や騎士が護らなければならない存在でもない。寧ろ、排除すべき存在よね?
ー今夜は、良い報せが聞けるかもしれないわー
王太子様が良い人で、『我が国の魔道士が勝手をして申し訳無い』と謝ってくれた上、フィンがこれ以上私に近付かないよう注意しておくとも言ってくれた。
フィン─本当の名前は“フィンレー=コペルオン”
この国の魔道士で侯爵家の嫡男。かなりの実力者らしく、異世界からの召喚も、彼だからこそできた魔法だったそうだ。そのフィンの師匠だった先代の魔道士騎士団の団長もまた、異世界から聖女を召喚した事がある人だったそうで、その魔法陣を引き継いで私を召喚したとの事だった。
そして、問題はやっぱり王女様だった。
「フィンレーは私の婚約者よ!あの渡り人をなんとかしなさい!」
なんて叫んでいるそうだ。
ー私は被害者だけど?ー
なんて理不尽なんだろと思ったけど、これもまた王太子様が王女様を窘めてくれたそうだ。それでも、聖女として人気のある王女様だから、王女様ではなく周りの人間が動く可能性もあるとの事で、王太子様が早急に手続きを進めてくれたお陰で、数日内には竜王国に行く事ができるようになった。
竜王様も、二つ返事で私を受け入れてくれたそうだ。
そして、私のお世話をしてくれているリタさんが、私に付いて竜王国に来てくれる事になった。リタさんは伯爵家の三女で、もともとリオナさん付きの侍女で、家族とも離れてしまうし、私はただの渡り人だけど大丈夫?と訊けば、『親の都合で結婚したくないし、竜王国には憧れがあったし、何よりもマシロが心配でしょうがないから』と言われたから、素直に『ありがとうと』とお礼を言って、一緒に来てもらう事にした。私も、リタさんが一緒だと心強いから。
『俺も居るから大丈夫だ』と、言ってくれたサリアスさんも、心強い存在だ。
この世界に来てからは大変だったけど、今は運が良かったなと思う。
兎に角、私はパーティーには参加しないから、竜王国へ行く準備をして、サリアスさん達が帰国する時に一緒に竜王国に行く事になった。
*パーティー当日の王女視点*
「アンジェリア様、フィンレー様そろそろお時間です」
「分かったわ」
「分かりました」
パーティーの主役である私とフィンレー。
初めて会った時から心が惹かれていた。綺麗な青空の様な瞳には、私だけを映して欲しいとさえ思う程に。だから、浄化の付き添いにフィンレーが付くと聞いた時はチャンスだと思った。何かしらの理由さえあれば、婚約を取り付ける事ができるから。そして、それは上手くいき、フィンレーと婚約できたと思ったのに。
渡り人──マシロ
『マシロとは約束していた仲なんです。彼女を召喚したのは私なんです。だから──』
『婚約が解消される事はないわ。これは王命でもあるのよ。それに、彼女の方はフィンレーを拒否したと聞いたわ』
『それ…は……マシロは少し混乱してるだけで……』
『婚約は解消しないわ!』
『…………分かりました』
あの女のせいで、あの日以降、フィンレーが私に微笑む事がなくなった。体裁を保つ為に、誰かが居る所では以前のように優しくしてくれるけど。それでも、私はフィンレーを手放すつもりは無い。王太子には窘められたけど、私は悪くない。あの女さえ居なくなれば、フィンレーはまた私に微笑んでくれるようになる。幸い、私は聖女で、今迄国民の為に力を注いで来たお陰で、私を慕ってくれる者達が多く居る。だから、私はそんな者達に少し……あの女の事を話しただけ。
『フィンレーを追い掛けて来たみたい。何も起こらなければ良いけど……』
たったそれだけ。それだけであの者達が動いてしまっても私のせいではない。
「フィンレー、行きましょう」
「はい………」
フィンレーの腕に手を添えると、フィンレーが笑顔を浮かべる。ただ、視線が交わる事は無い。
婚約発表は問題無く行われた。誰1人異を唱える者は居らず祝福され、和やかに時間が進んで行くなか、ホールの端でバタバタと動き出した者が居た。
ライオン獣人のリオナ=ヴァルトールと婿のルパート。それに竜王国のカイルス=サリアスだ。
ー私の信奉者は仕事が早いのねー
笑いを堪えて眺めていると、去り際のカイルス=サリアスと視線が合った。
「──っ」
視線が合ったのは一瞬。彼は竜騎士とは言ってもただの鷲獣人な筈なのに、あの射るような視線は恐ろしいものがある。ただ、睨んだところで私は何もしていないのだから、手を出す事はできない。
ーあの渡り人は、どうなったのかしら?ー
所詮、渡り人は異物でしかないのだから、私達王族や騎士が護らなければならない存在でもない。寧ろ、排除すべき存在よね?
ー今夜は、良い報せが聞けるかもしれないわー
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