召喚先は、誰も居ない森でした

みん

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39 訓練開始

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「久し振りだね」
「サンチェスさん、お久し振りです。今回の事、ありがとうございます」

私に竜人としてのアレコレを指導してくれる事になったのは、あの摘発に参加していた竜騎士の1人のアルマン=サンチェスさんだった。青色の髪と黄色の瞳はファンタジーそのもので、純粋な竜人で“水竜”なんだそうだ。

「俺も堅苦しいのは苦手だから、アルマンと呼んでくれ」
「分かりました。これから、宜しくお願いします。アルマンさん」





そして始まった竜人としてのアレコレ───なんだけど、22年の間竜力を隠して人としてだけ生きて来たからなのか、竜力が上手く体内に流れていないと言う事が判明した。それプラス、レナルドさんの魔法具のお陰で竜力が隠れていて、私がこの世界に来ても父やベレニスさんが私の存在に気付かなかったそうだ。

「先ずは、竜力を上手く流れるようにしないと、竜化はできないし、体にも良くないと思う」

魔力や竜力は、体内で詰まりがあったり流れが悪いと、体に悪影響をもたらすんだそうだ。

「あ、ひょっとして、竜王国に居る時、体が軽いなと思ってたんですけど、それは、私が竜人だったから?」
「それもあるかも知れないね。竜王国には、“竜の気”が流れているから」

“竜の気”とは、竜力の素となるモノで、竜人にとっては“元気の源”みたいなモノなんだそうだ。魔力の素となる“魔素”とも同じらしい。

「だから、本当は竜王国で過ごした方が、マシロにとっては良いんだろうけどね」

問題は父のイーデンさんとベレニスさんだ。可能な限りは関わりたく無い。

「取り敢えずは、竜力が安定して流れるようにしよう」

と言う事で、竜力の流れを意識する訓練から始める事になった。勿論、私の竜力が外に漏れないように、レナルドさんがしっかりと結界を張ってくれているから、安心して訓練に集中する事ができた。





「難しい………」
「誰だって最初から上手くいかないよ。今まで竜力とは全く関係無かった世界に居たんだからね。それでも、もう竜力の流れを感じられるようになったんだから、寧ろ凄いと思うよ?」

訓練を始めてから3日目にして、ようやく自分の中に流れる竜力を感じられるようになった。確かに、上手く流れていないようで、所々で途切れる感覚がある。これからは、その途切れている所をどうやって流れるようにするか─だ。

「結局はイメージしか無いんだよね。体中にキレイに流れる意識をする感じかな?」

これは、3歳迄竜化して成長する過程で自然と身に付くものらしく、説明云々訓練云々ではなく、感覚の問題なんだとか。だから、逆に難しい。

「うーん……」と唸っていると、「少し休憩しましょうか」と言って、お母さんがお茶を持って来てくれた。私の好きなショートケーキと一緒に。




******


その翌日は訓練は休みで、お母さんと一緒に買い物に出掛ける事になった。魔道具を着けた上に、2人とも魔法で髪の色を茶色にしている。
街での買い物は、私は初めてだったけど、お母さんは慣れているようで、お勧めの店を色々と教えてくれた。

「聖女として来た時は、色んなおまけをしてくれるから、おまけだけでお腹がいっぱいになってたわ」

正直、聖女には良いイメージが無い。逆ハーレムやらアンジェリア王女みたいなイメージしか無かったけど、お母さんはまともな聖女だったんだろう。それに、日本に居る時よりも、この世界でのお母さんの方が楽しそうで笑顔が多くなった気がする。

「あれ?そう言えば、お金って……」
「お金なら大丈夫よ。マシロにはベネット─オールステニアから援助金が出てるし、そもそも私も一生遊んで暮らせるぐらいのお金があるから」

聖女としての月々のお手当と、世界を救った者への報奨金など、手付かずのまま日本に戻ったと言う事で、お母さんはかなりの大金持ちなんだそうだ。

「だからね、日本での生活よりもここでの生活の方が、茉白と一緒に居られる時間が多いって事よ」
「それは、嬉しい!」
「そろそろお腹が空いてきたわね。ランチでもしましょうか?」

お母さんとのランチはいつぶりか?と思いながら、お母さんお勧めのお店に案内してもらった。



日本では、私は学業、お母さんは仕事で忙しくて、ゆっくりランチをする時間も余裕も殆どなかった。ベレニスさん関係の問題はあるけど、この世界に来て良かったのかもしれない。

「ここのお店はケーキも美味しいのよ。帰りにレナルドさん達の分もテイクアウトするわ」

と、帰りにレナルドのとアルマンさんとカイルスさんとキースさんと私達のケーキを買って、家に帰る事にした。

帰りもまた、来た時のように2人でゆっくり家までを歩く。他愛もない話をしながら穏やかな時間が過ぎて行く。

ー平和だなぁー

バサバサ──と、見慣れた隼が飛んで来たのが目に映る。

「「キース?」」

と、お母さんとハモる。その時──

「ユ…………マ?」

と、誰かがお母さんの名前を呼んだ。


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