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40 父親
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「ユ………マ?」
「「…………」」
お母さんも私も反応せず、そのまま歩き続ける。
ー反応……しちゃ駄目だよね?ー
フィンの事が片付いて、オールステニアでは問題が無くなったとは言え、お母さんが聖女で私が竜人だと言う事は隠しておいた方が良い。チラッと視線をお母さんに向けると、お母さんもまた黙ったままで前を見ている。
「あの───」
と、二度目は明らかに私達に声を掛けているのが分かり、2人で立ち止まり振り返る。
「私達に何か?」
お母さんが、いつもより少し低いトーンで話すその相手は、銀髪に青色の瞳をした4、50歳ぐらいの男性。
「あ……いや……知り合いに似ていて……」
「そうなんですか?私は会った記憶が無いので、多分、人違いだと思いますけど」
「あぁ……おそらく違うのだろう……会える事はないだろうから。足を止めてしまって、申し訳無かった」
「いえ、お気になさらずに。では、失礼します」
そう言うと、お母さんが男性に背を向けてまた歩き出し、私もその男性に軽く頭を下げてからお母さんを追い掛けた。
竜力の流れの訓練をした成果なのか、私にはハッキリと分かった。
ーあの男性は、私のお父さんだー
******
「“イーデン様がオールステニアに行っている”と言う報せがあって、キースに伝えに行かせたけど、間に合わなかったみたいで…大丈夫でした?」
家に帰って来ると、カイルスさんとレナルドさんが心配そうな顔で私達を出迎えてくれた。
「会いはしたけど、魔道具と髪色のお陰で、イーデンは私にも茉白の事も気付いていなかったわ」
黒髪の髪は目立つけど、その髪色を変えるだけでガラリと印象が変わる。お母さんは23年経っていて、多少の変化もあるから、すぐには聖女ユマだと言うと事には気付き難いだろう。
あの人が私のお父さん─イーデン=ウィンストンと言う事は、あの庭園で私の腕を掴んだ人だ。
「本当に、私、お父さんにも似てないんだね」
「そうね。茉白は私の母─お祖母さんに似てるわね」
「そう……なんだ………」
初めての真実だ。“誰の子なのか分からない”私を生む為に、実の両親から縁を切られたお母さんから、祖父母の話は聞いた事がなかった。私も会った事は無い。
「私、さっきの人から、私と同じ竜力が流れてるって、分かったの」
「流石は私の子ね!」
「何も無かったなら良かった」
と、カイルスさんは私の頭を優しく無でる。いつもそうだけど、カイルスさんの手は温かくて安心する。
「「『…………』」」
「あー……兎に角、魔道具で、2人の魔力や竜力を隠せていて良かった」
「レナルドさん、本当にありがとう。あ、そうそう、お土産にケーキを買って来たの。良かったら食べない?」
「「いただきます」」
『キーキー!』
キースさんも人化して、レナルドさんとカイルスさんと一緒にケーキを食べる為に、ティータイムの準備を始めた。
「キースさんは、よく私達の居場所が分かりましたね」
お父さんに声を掛けられる前に、私達の近く迄飛んで来ていた隼は、やっぱりキースだった。それで、色々思い出してみると、キースは私がどこに居ても私の所にやって来る。
「俺も不思議なんですけど、何となく分かるって言うか……“あ、こっちだな”って思った方に行くと絶対居るから、自分でもビックリしたりするんです」
「うん。それはビックリですね」
ーGPS機能付きのストーカーか!?ー
「怖いけど、ある意味便利だけど不思議ね。茉白から竜力を感じるなら話は別だけど、魔道具で分からない筈なのに」
実の父親すら気付かなかった。
「まさかの番!?」
「うーん……違うような気がします」
「…………」
わくわく顔なお母さんとは反対に、キースさんは困った顔、カイルスさんは眉間に皺を寄せていて、レナルドさんは笑っている。
「ま、キースのその怖い感知能力の話は置いといて、私の魔道具がちゃんと機能していて、父親でもあるイーデン様が2人に気付いていないと言う事がハッキリ分かったから、2人は暫くの間はオールステニアで過ごしていても大丈夫そうだな」
色んな事を考慮して、オールステニアで暮らす事が、今は一番良い選択だろう。第一にお金はあるし、事情を全て知っている国王と頼れるレナルドさんが居るから。
「それなら、私も家を探そうかしら。いつまでも茉白と2人でレナルドさんの家に居る訳にはいかないから」
「私は独り身だし、ユマとマシロが作ってくれるご飯は美味しいし、部屋は余っているから、いつまでも居てくれても問題ないけどね」
ーお母さんとレナルドさんの間には、何も無いのかなぁ?ー
正直、実の父親よりも、レナルドさんの方が好感を持っている。お母さんを何度も助けて護ってくれた人だ。
「レナルドさん、ありがとう。取り敢えずは、茉白の竜人としての訓練が終わる迄は、お世話にならせてもらいます」
「うん。こちらこそ、よろしく」
ー何となく、良い雰囲気で嬉しい私ですー
「「…………」」
お母さんも私も反応せず、そのまま歩き続ける。
ー反応……しちゃ駄目だよね?ー
フィンの事が片付いて、オールステニアでは問題が無くなったとは言え、お母さんが聖女で私が竜人だと言う事は隠しておいた方が良い。チラッと視線をお母さんに向けると、お母さんもまた黙ったままで前を見ている。
「あの───」
と、二度目は明らかに私達に声を掛けているのが分かり、2人で立ち止まり振り返る。
「私達に何か?」
お母さんが、いつもより少し低いトーンで話すその相手は、銀髪に青色の瞳をした4、50歳ぐらいの男性。
「あ……いや……知り合いに似ていて……」
「そうなんですか?私は会った記憶が無いので、多分、人違いだと思いますけど」
「あぁ……おそらく違うのだろう……会える事はないだろうから。足を止めてしまって、申し訳無かった」
「いえ、お気になさらずに。では、失礼します」
そう言うと、お母さんが男性に背を向けてまた歩き出し、私もその男性に軽く頭を下げてからお母さんを追い掛けた。
竜力の流れの訓練をした成果なのか、私にはハッキリと分かった。
ーあの男性は、私のお父さんだー
******
「“イーデン様がオールステニアに行っている”と言う報せがあって、キースに伝えに行かせたけど、間に合わなかったみたいで…大丈夫でした?」
家に帰って来ると、カイルスさんとレナルドさんが心配そうな顔で私達を出迎えてくれた。
「会いはしたけど、魔道具と髪色のお陰で、イーデンは私にも茉白の事も気付いていなかったわ」
黒髪の髪は目立つけど、その髪色を変えるだけでガラリと印象が変わる。お母さんは23年経っていて、多少の変化もあるから、すぐには聖女ユマだと言うと事には気付き難いだろう。
あの人が私のお父さん─イーデン=ウィンストンと言う事は、あの庭園で私の腕を掴んだ人だ。
「本当に、私、お父さんにも似てないんだね」
「そうね。茉白は私の母─お祖母さんに似てるわね」
「そう……なんだ………」
初めての真実だ。“誰の子なのか分からない”私を生む為に、実の両親から縁を切られたお母さんから、祖父母の話は聞いた事がなかった。私も会った事は無い。
「私、さっきの人から、私と同じ竜力が流れてるって、分かったの」
「流石は私の子ね!」
「何も無かったなら良かった」
と、カイルスさんは私の頭を優しく無でる。いつもそうだけど、カイルスさんの手は温かくて安心する。
「「『…………』」」
「あー……兎に角、魔道具で、2人の魔力や竜力を隠せていて良かった」
「レナルドさん、本当にありがとう。あ、そうそう、お土産にケーキを買って来たの。良かったら食べない?」
「「いただきます」」
『キーキー!』
キースさんも人化して、レナルドさんとカイルスさんと一緒にケーキを食べる為に、ティータイムの準備を始めた。
「キースさんは、よく私達の居場所が分かりましたね」
お父さんに声を掛けられる前に、私達の近く迄飛んで来ていた隼は、やっぱりキースだった。それで、色々思い出してみると、キースは私がどこに居ても私の所にやって来る。
「俺も不思議なんですけど、何となく分かるって言うか……“あ、こっちだな”って思った方に行くと絶対居るから、自分でもビックリしたりするんです」
「うん。それはビックリですね」
ーGPS機能付きのストーカーか!?ー
「怖いけど、ある意味便利だけど不思議ね。茉白から竜力を感じるなら話は別だけど、魔道具で分からない筈なのに」
実の父親すら気付かなかった。
「まさかの番!?」
「うーん……違うような気がします」
「…………」
わくわく顔なお母さんとは反対に、キースさんは困った顔、カイルスさんは眉間に皺を寄せていて、レナルドさんは笑っている。
「ま、キースのその怖い感知能力の話は置いといて、私の魔道具がちゃんと機能していて、父親でもあるイーデン様が2人に気付いていないと言う事がハッキリ分かったから、2人は暫くの間はオールステニアで過ごしていても大丈夫そうだな」
色んな事を考慮して、オールステニアで暮らす事が、今は一番良い選択だろう。第一にお金はあるし、事情を全て知っている国王と頼れるレナルドさんが居るから。
「それなら、私も家を探そうかしら。いつまでも茉白と2人でレナルドさんの家に居る訳にはいかないから」
「私は独り身だし、ユマとマシロが作ってくれるご飯は美味しいし、部屋は余っているから、いつまでも居てくれても問題ないけどね」
ーお母さんとレナルドさんの間には、何も無いのかなぁ?ー
正直、実の父親よりも、レナルドさんの方が好感を持っている。お母さんを何度も助けて護ってくれた人だ。
「レナルドさん、ありがとう。取り敢えずは、茉白の竜人としての訓練が終わる迄は、お世話にならせてもらいます」
「うん。こちらこそ、よろしく」
ー何となく、良い雰囲気で嬉しい私ですー
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