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41 異変
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*レナルド視点*
「流石はユマ様の子だからなのか、マシロは飲み込みが早い。22年も普通の人間として育って来て、竜力が喪われたり溢れ出さなかった事も、運が良かったのか、それともマシロだからなのかは分からないけど」
マシロに竜人としての基礎を教える事になった、竜人のアルマン=サンチェス。竜騎士だ。
竜人としての本能を自然と身に付ける時期を、そう過ごせなかったマシロは、自分が竜人だと言う事を知ったばかりだ。そのマシロと母親のユマは、今日はリオナ様達に会いに、ヴァルトール家に行っている。キースも隼の姿で付き添っている。
その、ユマとマシロが不在の間に、私とカイルス様とアルマン様と3人で話し合いをする事にした。
「レナルド殿の魔道具と結界のお陰で、イーデン様もベレニス様も2人の存在には気付いていない。ただ、マシロ達と会った日以降、イーデン様の様子が少しおかしいところもある」
そう言うのはカイルス=サリアス様だ。
「おかしい?」
「あくまで、俺が見た事感じた事だが──」
普段隙のないイーデン様だが、訓練中でも上の空と言った時がある。勤務時間が終わると、いつもなら直ぐに帰宅するが、最近では王城内の庭園のベンチに暫くの間座っている事が多くなった。休日の日は家族で過ごすと言っていたが、最近はよく1人で出掛けている。
「他人のカイルス様が見てそうなら、ベレニスもイーデン様の異変には気付いているだろうね」
何と言っても番だ。人間の私達には分からないが番が絶対的な存在なら、ベレニスは動くだろう。
「マシロが竜人として覚醒できれば、ベレニスもそうやすやすと手を出し難くなるんだろうか?それと……マシロは黒色だけど、マシロが黒竜と言う可能性がある?」
竜人にとっての黒は特別だ。今の竜王も黒竜であり、最強の竜人だ。白竜もまた、黒竜に次ぐ竜だと言われている。
「竜人は、竜の色が現れる事が殆どだから、マシロが黒竜の可能性はあるけど……竜王陛下が『マシロは自分とは何かが違う』と言っていた。喩えマシロが黒竜ではなくても、マシロが竜人として覚醒すれば、ベレニスも簡単には手を出せなくなるとは思う」
竜人同士がぶつかると、周りへの被害が大きくなる事。マシロは竜人としては“子竜”になる。竜人にとって、子供は大切に護らなければならない対象だから、攻撃するのは以ての外で、攻撃すれば処罰対象になる。
「番の認識が分からないから訊きますが、ベレニスとイーデン様は、本当に番同士なんですね?」
「それは確かだと思う。お互いが同時に“竜心”ができたと言っていたから」
竜心──
番と出会うと、お互いが、心臓に近い所にある鱗の1枚が、番の色に変化すると言われている。ただ、番でなくても、その相手と一生を添い遂げたいと思える相手が現れた場合、そう思った竜にも竜心ができる。その竜心を相手に飲ませると、番ではなくても子供ができやすくなったり、喩え後から番が現れたとしても、お互い番だと認識されなくなるそうだ。竜同士の衝突を避ける術なんだろう。
「なら、マシロに頑張って覚醒してもらう事が再優先事項だな」
ーまぁ……何があってもユマが居る限り大丈夫なんだろうけどー
*イーデン=ウィンストン視点*
『そうなんですか?私は会った記憶が無いので、多分、人違いだと思いますけど』
『いえ、お気になさらずに。では、失礼します』
全てを否定される言葉だった。ごくごく普通の会話だった。近付いても何も感じ取る事ができなかったのだから、人違いだったのだ。私が、ユマに気付かない筈がない。聖女らしい心地良いのに、ピリピリとした緊張感もある魔力だった。
『イーデンさん』
ユマに名前を呼ばれる度に胸が高鳴った。
『イーデン、幸せにね』
番と出会えた事を喜んで、祝福してくれたユマ。私も、ベレニスと出会えて幸せだった。
『ユマ様は、元の世界に帰ったのかもしれない』
それなのに、そう知らされた時は胸にチクリと痛みがあった。一時ではあったが、ユマが好きだったからだろうと思った。事実、その痛みは直ぐに消えたから、その痛みも忘れてしまっていた。
愛しいベレニスが居て、リシャールが生まれて幸せだった。
なのに、3年程前からだったか、ふとした瞬間にあの時の胸の痛みを思い出すようになった。
ユマに似た者が居ると、無意識に追ってしまっている。それで、あの渡り人の女の子にも怖い思いをさせてしまった。そして、数日前にも──ユマとは全く違う髪色だったのに。それに、それがユマだったとして、どうする?私には番が居るのだから。
ー自分でも自分がよく分からないー
この時は自分の事だけで精一杯で、周りが見えていなかった。いつものように落ち着いて居れば、ベレニスの変化にも気付けていただろう。
「流石はユマ様の子だからなのか、マシロは飲み込みが早い。22年も普通の人間として育って来て、竜力が喪われたり溢れ出さなかった事も、運が良かったのか、それともマシロだからなのかは分からないけど」
マシロに竜人としての基礎を教える事になった、竜人のアルマン=サンチェス。竜騎士だ。
竜人としての本能を自然と身に付ける時期を、そう過ごせなかったマシロは、自分が竜人だと言う事を知ったばかりだ。そのマシロと母親のユマは、今日はリオナ様達に会いに、ヴァルトール家に行っている。キースも隼の姿で付き添っている。
その、ユマとマシロが不在の間に、私とカイルス様とアルマン様と3人で話し合いをする事にした。
「レナルド殿の魔道具と結界のお陰で、イーデン様もベレニス様も2人の存在には気付いていない。ただ、マシロ達と会った日以降、イーデン様の様子が少しおかしいところもある」
そう言うのはカイルス=サリアス様だ。
「おかしい?」
「あくまで、俺が見た事感じた事だが──」
普段隙のないイーデン様だが、訓練中でも上の空と言った時がある。勤務時間が終わると、いつもなら直ぐに帰宅するが、最近では王城内の庭園のベンチに暫くの間座っている事が多くなった。休日の日は家族で過ごすと言っていたが、最近はよく1人で出掛けている。
「他人のカイルス様が見てそうなら、ベレニスもイーデン様の異変には気付いているだろうね」
何と言っても番だ。人間の私達には分からないが番が絶対的な存在なら、ベレニスは動くだろう。
「マシロが竜人として覚醒できれば、ベレニスもそうやすやすと手を出し難くなるんだろうか?それと……マシロは黒色だけど、マシロが黒竜と言う可能性がある?」
竜人にとっての黒は特別だ。今の竜王も黒竜であり、最強の竜人だ。白竜もまた、黒竜に次ぐ竜だと言われている。
「竜人は、竜の色が現れる事が殆どだから、マシロが黒竜の可能性はあるけど……竜王陛下が『マシロは自分とは何かが違う』と言っていた。喩えマシロが黒竜ではなくても、マシロが竜人として覚醒すれば、ベレニスも簡単には手を出せなくなるとは思う」
竜人同士がぶつかると、周りへの被害が大きくなる事。マシロは竜人としては“子竜”になる。竜人にとって、子供は大切に護らなければならない対象だから、攻撃するのは以ての外で、攻撃すれば処罰対象になる。
「番の認識が分からないから訊きますが、ベレニスとイーデン様は、本当に番同士なんですね?」
「それは確かだと思う。お互いが同時に“竜心”ができたと言っていたから」
竜心──
番と出会うと、お互いが、心臓に近い所にある鱗の1枚が、番の色に変化すると言われている。ただ、番でなくても、その相手と一生を添い遂げたいと思える相手が現れた場合、そう思った竜にも竜心ができる。その竜心を相手に飲ませると、番ではなくても子供ができやすくなったり、喩え後から番が現れたとしても、お互い番だと認識されなくなるそうだ。竜同士の衝突を避ける術なんだろう。
「なら、マシロに頑張って覚醒してもらう事が再優先事項だな」
ーまぁ……何があってもユマが居る限り大丈夫なんだろうけどー
*イーデン=ウィンストン視点*
『そうなんですか?私は会った記憶が無いので、多分、人違いだと思いますけど』
『いえ、お気になさらずに。では、失礼します』
全てを否定される言葉だった。ごくごく普通の会話だった。近付いても何も感じ取る事ができなかったのだから、人違いだったのだ。私が、ユマに気付かない筈がない。聖女らしい心地良いのに、ピリピリとした緊張感もある魔力だった。
『イーデンさん』
ユマに名前を呼ばれる度に胸が高鳴った。
『イーデン、幸せにね』
番と出会えた事を喜んで、祝福してくれたユマ。私も、ベレニスと出会えて幸せだった。
『ユマ様は、元の世界に帰ったのかもしれない』
それなのに、そう知らされた時は胸にチクリと痛みがあった。一時ではあったが、ユマが好きだったからだろうと思った。事実、その痛みは直ぐに消えたから、その痛みも忘れてしまっていた。
愛しいベレニスが居て、リシャールが生まれて幸せだった。
なのに、3年程前からだったか、ふとした瞬間にあの時の胸の痛みを思い出すようになった。
ユマに似た者が居ると、無意識に追ってしまっている。それで、あの渡り人の女の子にも怖い思いをさせてしまった。そして、数日前にも──ユマとは全く違う髪色だったのに。それに、それがユマだったとして、どうする?私には番が居るのだから。
ー自分でも自分がよく分からないー
この時は自分の事だけで精一杯で、周りが見えていなかった。いつものように落ち着いて居れば、ベレニスの変化にも気付けていただろう。
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