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44 可愛いのは?
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竜力が体内を上手く流れるようになると、体が軽くなってスッキリした感じになった。特に意識をしなくても、他人の竜力を感じるようにもなった。そうすると、自然と、獣人や人間の区別もできるようになった。
「後は、竜化だけだね」
「ファンタジー!」
自身の“ファンタジー要素0”スタートからの、まさかの母親が聖女で、娘の私が竜人。黒色の髪と瞳だから、黒竜だったりするのかなぁ?黒竜なら凄いよね?
「でも、正直に言うと、竜化する事を口で説明するのは難しいんだ。竜化は、物心がつく前に本能的にできるようになっていて、呼吸するのと同じぐらい当たり前のようにできるから」
「そうなんですね………」
そりゃそうだ。生まれて半年で竜化するんだから、理屈ではないんだろう。運動能力の問題みたいな感じなのかもしれない。焦ったところで仕方無い。
「焦らずにゆっくり頑張ります!」
「そうだね」
こうして、私の竜化を目指す日々が始まった。
******
「竜になれない竜人って居るんですか?」
「竜になれないなら、竜人ではないんじゃないか?」
「ゔっ………」
竜化を目指して1ヶ月。未だに竜になりそうな気配すらない。アルマンさんは暫くの間、仕事で忙しいそうで、代わりにカイルスさんが様子を見に来てくれている。ちなみに、お母さんはレナルドさんの仕事のお手伝いをするようになり、今日は2人とも仕事に行っている。
「獣人の人達も、幼少期に獣化する事を覚えるんですか?」
「獣人は種族によって違って、獣の姿で生まれる者、竜人のように人の姿で生まれる者が居る。鳥は人の姿で生まれて、個人差はあるが3歳から5歳で獣化をする」
どうやら、今の私は幼児以下の竜人のようだ。
正直なところ、自分が竜になるイメージができない。竜が存在しない世界で生まれ育ったと言うのもあるんだろう。
「今の私が竜化したら、どれぐらいの大きさなのかなぁ?」
「マシロは、22歳だったか?なら、まだまだ幼い可愛い竜だろうね」
「可愛い………」
竜には厳ついイメージしかない。前に一度だけ見た竜は、とてつもなくデカかった。あんな巨体で攻撃されたら、普通の人間なら一瞬だ。それを返り討ちにできると言うお母さんは、チート以外の何者でもない。竜より強いって、何?
「可愛いって言うのは、隼のキースに似合いますよね」
「キース………」
カイルスさんは、眉間に皺を寄せてそう呟いた後、ポンッといとも簡単に鷲へと獣化した。人の姿のカイルスさんは黒色の髪と瞳だけど、鷲になると頭と尻尾は白色でとても綺麗だ。
『マシロは鳥が好きなのか?隼も鷲も“可愛い”部類には入らないと思うが……』
「キースは可愛いと思うけど、鷲のカイルスさんは可愛いと言うより、綺麗だなって思います」
何と言っても、安心感があってホッとする──とは、恥ずかしくて言えないけど。
「可愛いのはマシロの方だけどね」
「うわぁーっ!?」
またまた一瞬のうちに人型に戻ったカイルスさんが、そんな事を言いながら私の頭を撫でている。カイルスさんに頭を撫でられるのには慣れて来たけど、ドキドキするようにもなった。カイルスさんにとっては、妹か姪っ子に対する扱いなのかもしれないけど、私にとっては異性の男性だ。意識し過ぎるな!と言うのも無理がある。この世界に来てから、何度も助けられて優しくされて、気にならない訳が無い。チョロいと言われたらそれ迄だけど。
『俺の存在、忘れられて……る方が良いのか?』
と、隼の呟きは、カイルスさんにも私にも聞こえていなかった。
******
今日は、カイルスさんもアルマンさんもお仕事と言う事で、久し振りにお母さんとお菓子を作って、ティータイムはレナルドさんと3人で庭で食べる事にした。
「竜化できる気がしない」
「仕方無いわよ。20年以上人間だったんだから、数日でできる方が凄いと思うわ」
「こればっかりは、魔法でどうこうできるものでもないから、焦らずゆっくり頑張るしかないな」
「魔法……魔力と竜力って、同じような力なの?竜人も、魔法が使えるの?」
竜人のアルマンさんが魔法を使った所は見た事がないけど、“水竜”と言うのだから、水属性と同じ様な感じなのか?
「魔力と竜力は同じ様なものだ」
魔力は魔法の素となる力で、持っている属性の魔法を使う事ができる。基本1人1属性。稀に複数の属性持ちもいるそうで、王太子様は水と土の2つの属性を持っているそうだ。
体内に竜力が流れている者を竜人と言う。竜人には主に、水、火、風、土、木のいずれかを操れる力を持っている。アルマンさんは水竜だから水。ちなみに、父親のイーデンさんも水で、ベレニスさんは火なんだそうだ。
魔法は、その本人の魔力の量や強さによって、使える魔法が左右され、生活レベルの魔法しか使えないものから攻撃魔法が使えるなど、人それぞれで変わって来る。
竜人も誰でも同じように、その属性のものを扱えるが、その威力が、竜力の強さによって変わって来る。
「黒竜は最強と言われていて、今の竜王がそうだ。黒竜と言うだけで、竜王になり得る実力があり、竜王国の北の守護竜でもある」
東西南北にそれぞれ守護竜が配置されていて、竜王国を守護している。西の守護竜を除いて。
「西の守護竜と言うのが白竜だ。特に、白竜は“浄化の竜”とも言われていて、竜王国の歪みや淀みや綻びを浄化する竜で、四竜の中でも重要な竜だとも言われている」
そんは重要な白竜が100年不在となって、綻びが出て、それを浄化したのがお母さんだった。
「お母さん、本当に凄いんだね」
「うん。ユマは色んな意味で本当に凄い聖女だったよ。あ、今も衰えてないな。寧ろ、パワーアップしていたな……」
「ありがとう」
遠い目をしているレナルドさん。私はまだ目にしてはいないけど、私の知らない所でお母さんが聖女の力をまた発揮したのかもしれない。今は無理でも、いつか見てみたい。
「後は、竜化だけだね」
「ファンタジー!」
自身の“ファンタジー要素0”スタートからの、まさかの母親が聖女で、娘の私が竜人。黒色の髪と瞳だから、黒竜だったりするのかなぁ?黒竜なら凄いよね?
「でも、正直に言うと、竜化する事を口で説明するのは難しいんだ。竜化は、物心がつく前に本能的にできるようになっていて、呼吸するのと同じぐらい当たり前のようにできるから」
「そうなんですね………」
そりゃそうだ。生まれて半年で竜化するんだから、理屈ではないんだろう。運動能力の問題みたいな感じなのかもしれない。焦ったところで仕方無い。
「焦らずにゆっくり頑張ります!」
「そうだね」
こうして、私の竜化を目指す日々が始まった。
******
「竜になれない竜人って居るんですか?」
「竜になれないなら、竜人ではないんじゃないか?」
「ゔっ………」
竜化を目指して1ヶ月。未だに竜になりそうな気配すらない。アルマンさんは暫くの間、仕事で忙しいそうで、代わりにカイルスさんが様子を見に来てくれている。ちなみに、お母さんはレナルドさんの仕事のお手伝いをするようになり、今日は2人とも仕事に行っている。
「獣人の人達も、幼少期に獣化する事を覚えるんですか?」
「獣人は種族によって違って、獣の姿で生まれる者、竜人のように人の姿で生まれる者が居る。鳥は人の姿で生まれて、個人差はあるが3歳から5歳で獣化をする」
どうやら、今の私は幼児以下の竜人のようだ。
正直なところ、自分が竜になるイメージができない。竜が存在しない世界で生まれ育ったと言うのもあるんだろう。
「今の私が竜化したら、どれぐらいの大きさなのかなぁ?」
「マシロは、22歳だったか?なら、まだまだ幼い可愛い竜だろうね」
「可愛い………」
竜には厳ついイメージしかない。前に一度だけ見た竜は、とてつもなくデカかった。あんな巨体で攻撃されたら、普通の人間なら一瞬だ。それを返り討ちにできると言うお母さんは、チート以外の何者でもない。竜より強いって、何?
「可愛いって言うのは、隼のキースに似合いますよね」
「キース………」
カイルスさんは、眉間に皺を寄せてそう呟いた後、ポンッといとも簡単に鷲へと獣化した。人の姿のカイルスさんは黒色の髪と瞳だけど、鷲になると頭と尻尾は白色でとても綺麗だ。
『マシロは鳥が好きなのか?隼も鷲も“可愛い”部類には入らないと思うが……』
「キースは可愛いと思うけど、鷲のカイルスさんは可愛いと言うより、綺麗だなって思います」
何と言っても、安心感があってホッとする──とは、恥ずかしくて言えないけど。
「可愛いのはマシロの方だけどね」
「うわぁーっ!?」
またまた一瞬のうちに人型に戻ったカイルスさんが、そんな事を言いながら私の頭を撫でている。カイルスさんに頭を撫でられるのには慣れて来たけど、ドキドキするようにもなった。カイルスさんにとっては、妹か姪っ子に対する扱いなのかもしれないけど、私にとっては異性の男性だ。意識し過ぎるな!と言うのも無理がある。この世界に来てから、何度も助けられて優しくされて、気にならない訳が無い。チョロいと言われたらそれ迄だけど。
『俺の存在、忘れられて……る方が良いのか?』
と、隼の呟きは、カイルスさんにも私にも聞こえていなかった。
******
今日は、カイルスさんもアルマンさんもお仕事と言う事で、久し振りにお母さんとお菓子を作って、ティータイムはレナルドさんと3人で庭で食べる事にした。
「竜化できる気がしない」
「仕方無いわよ。20年以上人間だったんだから、数日でできる方が凄いと思うわ」
「こればっかりは、魔法でどうこうできるものでもないから、焦らずゆっくり頑張るしかないな」
「魔法……魔力と竜力って、同じような力なの?竜人も、魔法が使えるの?」
竜人のアルマンさんが魔法を使った所は見た事がないけど、“水竜”と言うのだから、水属性と同じ様な感じなのか?
「魔力と竜力は同じ様なものだ」
魔力は魔法の素となる力で、持っている属性の魔法を使う事ができる。基本1人1属性。稀に複数の属性持ちもいるそうで、王太子様は水と土の2つの属性を持っているそうだ。
体内に竜力が流れている者を竜人と言う。竜人には主に、水、火、風、土、木のいずれかを操れる力を持っている。アルマンさんは水竜だから水。ちなみに、父親のイーデンさんも水で、ベレニスさんは火なんだそうだ。
魔法は、その本人の魔力の量や強さによって、使える魔法が左右され、生活レベルの魔法しか使えないものから攻撃魔法が使えるなど、人それぞれで変わって来る。
竜人も誰でも同じように、その属性のものを扱えるが、その威力が、竜力の強さによって変わって来る。
「黒竜は最強と言われていて、今の竜王がそうだ。黒竜と言うだけで、竜王になり得る実力があり、竜王国の北の守護竜でもある」
東西南北にそれぞれ守護竜が配置されていて、竜王国を守護している。西の守護竜を除いて。
「西の守護竜と言うのが白竜だ。特に、白竜は“浄化の竜”とも言われていて、竜王国の歪みや淀みや綻びを浄化する竜で、四竜の中でも重要な竜だとも言われている」
そんは重要な白竜が100年不在となって、綻びが出て、それを浄化したのがお母さんだった。
「お母さん、本当に凄いんだね」
「うん。ユマは色んな意味で本当に凄い聖女だったよ。あ、今も衰えてないな。寧ろ、パワーアップしていたな……」
「ありがとう」
遠い目をしているレナルドさん。私はまだ目にしてはいないけど、私の知らない所でお母さんが聖女の力をまた発揮したのかもしれない。今は無理でも、いつか見てみたい。
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