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魔獣が現れ、ヒュッと息を呑む。
見た目は大きな黒い狼。ただ、その体から溢れ出る魔力で、普通の狼とは違うと言う事が分かる。その魔獣の額には真っ赤な石がキラキラと光っている。
その魔獣を目にした途端、体が震えだした。あの時の魔獣はもっと大きくて恐ろしい魔獣だった。今、目の前に居るのは全く違う魔獣なのに、“魔獣”だと言うだけであの時の恐怖が蘇る。
「キース、もう怪我は完治しているな?お前は、マシロを護る事だけに専念しろ」
「キース、マシロに掠り傷の一つも付けてはだめよ?」
「勿論です!」
「取り敢えず、マシロとキースには防御魔法を掛けて、更に結界を張って───」
次々と私とキースさんに魔法を掛けていくお母さんは、本当にすごい聖女のようです。この間にも、カイルスさんが次々と魔獣を仕留めて行く。
ー本当に凄い騎士なんだー
さっきまで震えていた体が落ち着いて行くのが分かる。落ち着いて来ると、キースさんの側が落ち着く──と言う感情が現れる。
何故?と思うも、今は置いておく。幸い、私の魔道具は有効なようで、私が竜人で、お母さんとイーデンさんの娘だと言う事には気付かれていない。気付かれれば、私は足手まといにしかならない。だから、私は何もせずに、素直にキースさんに護られているだけだ。今のところは、魔族の人が操っているのか、魔獣が次々と現れて、それをお母さんとカイルスさんが仕留めていくだけで、ベレニスさんも竜化する気配は無い。その間、魔族の人が辺りに視線を巡らせ、最後に私と視線がぶつかり──ニヤリと嗤った。
「面白い魔道具を着けているな」
「「「!?」」」
その魔族の人が放った魔法を、お母さんが魔法で弾き返す。
「あの子達には指一本、触れさせる気はないわよ。貴方の相手は聖女の私でしょう?」
「そこまでして、あの娘を庇うのは何故だ?あれを壊せば……お前も壊れるのか?」
「壊れるのは、貴方の方よ」
と言うと、お母さんと魔族の人の魔法のぶつかり合いが始まった。
“戦闘の聖女”を目の当たりにするとは思わなかった。魔族の人の扱う攻撃は、かなりの魔力があるのが分かるけど、お母さんはそれ以上かもしれない。お母さんの魔力は金色でキラキラしていて綺麗で、まるで踊っているみたいだ。お母さんが押しているように見えるけど、何となく感じる違和感。魔族の人は、攻撃に集中しているようで、どこか視線がフラフラしている。
ー何かを狙ってる?ー
魔族の人から、魔力がチラチラと流れているのを感じる。その流れを辿ると──
「キース!その場から離れろ!」
「遅いな」
カイルスさんと、魔族の人が言葉を発したのは同時だった。チラチラと流れていた魔力が、私とキースさんの足元に辿り着いた瞬間魔法陣が現れ、張っていた結界が壊された。
「茉白!」
そこへ、魔獣が飛び掛かって来るのをキースさんが弾き返す。
「魔力で魔族の私に勝てると思っているのか?」
その魔族の人がパチンッ──と指を鳴らすと、私が着けている魔道具の石が熱を持ち、ひびが入った。
そして、それに反応したのは───
「イーデン?」
勿論、ベレニスさんだった。
*由茉視点*
全て、迂闊だった私の行動のせいだ。何も考えずに、キースの治療をしようとして魔道具を外して魔法を使ってしまったから。
結界が張られているから大丈夫
ベレニスさんなら、返り討ちにできる
まさか、魔族とベレニスさんが繋がっているとは思わなかった。流石の私でも、相手が魔族なら少し厄介だ。しかも、この男はかなりの魔力持ちだ。あのレナルドさんの結界を壊したのだから、レナルドさんよりも上と言う事だ。
茉白の違和感に気付いて、私と戦いながら茉白に張っていた結界を壊し、魔道具まで壊し、遂にはベレニスさんに──
ー私が、茉白を危険に晒してしまったー
「どうして……その娘から、イーデンの竜力を感じるの?」
ビリビリと、怒りの竜力が溢れ出す。ここで、ベレニスさんが竜化すれば、かなり不利な状況になる。カイルスさんの腕は確かだけど、魔力持ちの魔族相手では分が悪い。竜化したベレニスさんを押し留める事はできるだろうけど、相手は“ウィンストン伯爵夫人”だ。キースもそれなりの実力はあるだろうけど、まだまだキースには無理だ。助けが来るのか──それも、期待はできない。
『それなら全く問題無いわ。今からここで起こる事は誰にも知られる事は無いから』
おそらく、この家の周辺に結界を張っているんだろう。魔力や竜力や音を一切遮断していれば、誰も異変には気付かない。
なら、何とか隙を作って、茉白とキースをこの結界の外へと逃がせば───
「なるほど……その娘は、聖女と……ベレニス、お前の旦那との子供だな」
「イーデンの……子供!?赦さない!」
そう言うと、ベレニスさんは竜化した。
見た目は大きな黒い狼。ただ、その体から溢れ出る魔力で、普通の狼とは違うと言う事が分かる。その魔獣の額には真っ赤な石がキラキラと光っている。
その魔獣を目にした途端、体が震えだした。あの時の魔獣はもっと大きくて恐ろしい魔獣だった。今、目の前に居るのは全く違う魔獣なのに、“魔獣”だと言うだけであの時の恐怖が蘇る。
「キース、もう怪我は完治しているな?お前は、マシロを護る事だけに専念しろ」
「キース、マシロに掠り傷の一つも付けてはだめよ?」
「勿論です!」
「取り敢えず、マシロとキースには防御魔法を掛けて、更に結界を張って───」
次々と私とキースさんに魔法を掛けていくお母さんは、本当にすごい聖女のようです。この間にも、カイルスさんが次々と魔獣を仕留めて行く。
ー本当に凄い騎士なんだー
さっきまで震えていた体が落ち着いて行くのが分かる。落ち着いて来ると、キースさんの側が落ち着く──と言う感情が現れる。
何故?と思うも、今は置いておく。幸い、私の魔道具は有効なようで、私が竜人で、お母さんとイーデンさんの娘だと言う事には気付かれていない。気付かれれば、私は足手まといにしかならない。だから、私は何もせずに、素直にキースさんに護られているだけだ。今のところは、魔族の人が操っているのか、魔獣が次々と現れて、それをお母さんとカイルスさんが仕留めていくだけで、ベレニスさんも竜化する気配は無い。その間、魔族の人が辺りに視線を巡らせ、最後に私と視線がぶつかり──ニヤリと嗤った。
「面白い魔道具を着けているな」
「「「!?」」」
その魔族の人が放った魔法を、お母さんが魔法で弾き返す。
「あの子達には指一本、触れさせる気はないわよ。貴方の相手は聖女の私でしょう?」
「そこまでして、あの娘を庇うのは何故だ?あれを壊せば……お前も壊れるのか?」
「壊れるのは、貴方の方よ」
と言うと、お母さんと魔族の人の魔法のぶつかり合いが始まった。
“戦闘の聖女”を目の当たりにするとは思わなかった。魔族の人の扱う攻撃は、かなりの魔力があるのが分かるけど、お母さんはそれ以上かもしれない。お母さんの魔力は金色でキラキラしていて綺麗で、まるで踊っているみたいだ。お母さんが押しているように見えるけど、何となく感じる違和感。魔族の人は、攻撃に集中しているようで、どこか視線がフラフラしている。
ー何かを狙ってる?ー
魔族の人から、魔力がチラチラと流れているのを感じる。その流れを辿ると──
「キース!その場から離れろ!」
「遅いな」
カイルスさんと、魔族の人が言葉を発したのは同時だった。チラチラと流れていた魔力が、私とキースさんの足元に辿り着いた瞬間魔法陣が現れ、張っていた結界が壊された。
「茉白!」
そこへ、魔獣が飛び掛かって来るのをキースさんが弾き返す。
「魔力で魔族の私に勝てると思っているのか?」
その魔族の人がパチンッ──と指を鳴らすと、私が着けている魔道具の石が熱を持ち、ひびが入った。
そして、それに反応したのは───
「イーデン?」
勿論、ベレニスさんだった。
*由茉視点*
全て、迂闊だった私の行動のせいだ。何も考えずに、キースの治療をしようとして魔道具を外して魔法を使ってしまったから。
結界が張られているから大丈夫
ベレニスさんなら、返り討ちにできる
まさか、魔族とベレニスさんが繋がっているとは思わなかった。流石の私でも、相手が魔族なら少し厄介だ。しかも、この男はかなりの魔力持ちだ。あのレナルドさんの結界を壊したのだから、レナルドさんよりも上と言う事だ。
茉白の違和感に気付いて、私と戦いながら茉白に張っていた結界を壊し、魔道具まで壊し、遂にはベレニスさんに──
ー私が、茉白を危険に晒してしまったー
「どうして……その娘から、イーデンの竜力を感じるの?」
ビリビリと、怒りの竜力が溢れ出す。ここで、ベレニスさんが竜化すれば、かなり不利な状況になる。カイルスさんの腕は確かだけど、魔力持ちの魔族相手では分が悪い。竜化したベレニスさんを押し留める事はできるだろうけど、相手は“ウィンストン伯爵夫人”だ。キースもそれなりの実力はあるだろうけど、まだまだキースには無理だ。助けが来るのか──それも、期待はできない。
『それなら全く問題無いわ。今からここで起こる事は誰にも知られる事は無いから』
おそらく、この家の周辺に結界を張っているんだろう。魔力や竜力や音を一切遮断していれば、誰も異変には気付かない。
なら、何とか隙を作って、茉白とキースをこの結界の外へと逃がせば───
「なるほど……その娘は、聖女と……ベレニス、お前の旦那との子供だな」
「イーデンの……子供!?赦さない!」
そう言うと、ベレニスさんは竜化した。
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