召喚先は、誰も居ない森でした

みん

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59 目覚め

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「竜化する時と人化する時の竜力は、微妙に違うのよ」

物心つく前に、当たり前のように竜化と人化ができるようになっているから、その竜力の違いを分からずに使い分けているようで、違う事を知らない人が殆どなんだそうだ。

『そう言えば、竜化する前、何だか竜力がいつもより温かいなぁ…って感じました』
「微妙な違いが分かるって凄いわね。それで合ってるわ。竜化する時は、普段の竜力より温かくなるのよ」

ーと言う事は、人化する時は冷たくなる感じかな?ー

そこで、体に流れる竜力に、冷たい川の流れをイメージしてみる。すると、体が白い光に包まれた。

「戻れた!!」

白い光が収まると、久し振りの人間の手の平が視界に入った。

「あら、マシロの人の姿は黒色なのね。不思議だけど、人の姿も可愛いわね。本当に、はよくこんな可愛い子供に手を出したものね」

基本、竜族は子供を大切にする種族で、人間のように虐待やネグレクトとは無縁で、ましてや攻撃するなど有り得ないそうだ。私は成人してるけど。

「その前に、服を着ましょうか」
「わぁーっ!?」

はい。素っ裸でした。ファンタジーでは、人化した時はキッチリ服を着ているのに。

「魔法のアイテムを用意しないとね。毎回裸だと大変だから」

魔法のアイテム──それには服が収納でき、身に着けている者が竜化する時は、その者の服を吸収し、人化する時はその者に服を着用させるアイテムで、竜人や獣人は殆どの人が身分関係無く持っているそうだ。そのアイテムは、ネックレスだったりブレスレットだったりと色んな物があるらしく、今度ローゼさんと一緒に選んで作る事にした。その時に、守護竜として必要な服なども作る事になった。

「先ずは、お披露目の時に着る服を準備しないといけないから、それはユマ様も一緒に選んでもらいましょう」

そのお披露目は、3ヶ月程先の予定で、そのお披露目迄に、守護竜としての勉強をする事になった。その勉強を始めるのは、側衛のキースが目覚めてからになる。

「あの、ちなみに“側衛”とは、どう言う存在なんですか?」
「簡単に言うと、絶対に裏切る事のない側近ね。どこに居ても主の守護竜の元へやって来るの。助かる時もあるけど、仕事をサボるのには一苦労するわ」

GPS機能付きのストーカーは、側衛が故の能力だと言う事か。因みに、側衛と近衛を兼ねる場合もあるけど、近衛は近衛で付けた方が良いそうだ。竜王様の側衛はジャガーの獣人で元竜騎士でもあるようで、側衛と近衛とを兼ねているそうだ。

「まぁ、守護竜に手を出すなんて……だけよ」

“あの女”───どうやら、ローゼさんは名前を呼びたくないぐらい、ベレニスさんの事が嫌いなようだ。

「お、マシロ、人の姿に戻れたんだな。ふむ。相変わらず綺麗な黒色だな」
「竜王様!?」
「あら、バージル、何しに来たの?」

そこへ急に現れたのは、竜王様だった。同じ守護竜だからか、ローゼ様は気軽く呼び捨てている。

「南と西が居るから、挨拶をしに来たんだ。まさか、マシロが西の白竜だとはな…。何となく黒竜ではないとは思っていたが…不思議なもんだな。その黒色は、ただ単に聖女ユマのものを継いだと言う事なんだろう」

竜人は、基本は竜力と色は同じになる。私のように全く違う色なのは珍しいらしい。
黒色の髪と瞳は、元の世界で言う所の“優性遺伝”で、竜力はこっち世界での力だから、ある意味私は“ハイブリッド仕様”なのかもしれない。

「改めて、西の守護竜マシロを歓迎する。俺は竜王だが、守護竜としては同じ立場だから“バージル”と呼んでもらって構わない」
「それは、私が構うので無理です」
「可愛い上に謙虚なのね。バージルなんて呼び捨てで十分よ」
「そこに可愛さは関係あるのか?それに、ローゼこそ謙虚さを学ぶべきだな」
「マシロが可愛くないと?眼科に行ってらっしゃい」

ー夫婦漫才かな?ー

「まぁ、兎に角、マシロはまだまだ幼いが、守護竜である事は確かだ。守護竜は竜王国では竜王と並ぶ貴い存在だ。誰に何を言われようとも、その事だけは忘れないように」
「はい!」
「それと、明日には北の守護竜も挨拶に来ると言っていたから、4人でティータイムをする予定だ」
「4人揃うのは久し振りね」

確か、西の守護竜は100年程不在だった筈。2人の見た目はお母さんと同じぐらいに見えるけど、一体何歳なんだろう?100歳以上なのは確かだから、そりゃあ、私はまだまだひよっ子──以下なのかもしれない。そもそも、ここまで幼い守護竜は過去にも居ないらしい。ただ、竜力で言うと、何の問題も無いんだそうだ。

「それと、ここに来る前に報告が来たんだが、カイルスが目を覚ましたそうだ」
「カイルスさんが!?あの……その………」
「俺達の事は気にせず行っていいぞ」
「ありがとうございます」

竜王様─バージルさんとローゼさんに頭を下げてから、私は急いで部屋を出た。


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