59 / 78
59 目覚め
しおりを挟む
「竜化する時と人化する時の竜力は、微妙に違うのよ」
物心つく前に、当たり前のように竜化と人化ができるようになっているから、その竜力の違いを分からずに使い分けているようで、違う事を知らない人が殆どなんだそうだ。
『そう言えば、竜化する前、何だか竜力がいつもより温かいなぁ…って感じました』
「微妙な違いが分かるって凄いわね。それで合ってるわ。竜化する時は、普段の竜力より温かくなるのよ」
ーと言う事は、人化する時は冷たくなる感じかな?ー
そこで、体に流れる竜力に、冷たい川の流れをイメージしてみる。すると、体が白い光に包まれた。
「戻れた!!」
白い光が収まると、久し振りの人間の手の平が視界に入った。
「あら、マシロの人の姿は黒色なのね。不思議だけど、人の姿も可愛いわね。本当に、あの女はよくこんな可愛い子供に手を出したものね」
基本、竜族は子供を大切にする種族で、人間のように虐待やネグレクトとは無縁で、ましてや攻撃するなど有り得ないそうだ。私は成人してるけど。
「その前に、服を着ましょうか」
「わぁーっ!?」
はい。素っ裸でした。ファンタジーでは、人化した時はキッチリ服を着ているのに。
「魔法のアイテムを用意しないとね。毎回裸だと大変だから」
魔法のアイテム──それには服が収納でき、身に着けている者が竜化する時は、その者の服を吸収し、人化する時はその者に服を着用させるアイテムで、竜人や獣人は殆どの人が身分関係無く持っているそうだ。そのアイテムは、ネックレスだったりブレスレットだったりと色んな物があるらしく、今度ローゼさんと一緒に選んで作る事にした。その時に、守護竜として必要な服なども作る事になった。
「先ずは、お披露目の時に着る服を準備しないといけないから、それはユマ様も一緒に選んでもらいましょう」
そのお披露目は、3ヶ月程先の予定で、そのお披露目迄に、守護竜としての勉強をする事になった。その勉強を始めるのは、側衛のキースが目覚めてからになる。
「あの、ちなみに“側衛”とは、どう言う存在なんですか?」
「簡単に言うと、絶対に裏切る事のない側近ね。どこに居ても主の守護竜の元へやって来るの。助かる時もあるけど、仕事をサボるのには一苦労するわ」
GPS機能付きのストーカーは、側衛が故の能力だと言う事か。因みに、側衛と近衛を兼ねる場合もあるけど、近衛は近衛で付けた方が良いそうだ。竜王様の側衛はジャガーの獣人で元竜騎士でもあるようで、側衛と近衛とを兼ねているそうだ。
「まぁ、守護竜に手を出すなんて……あの女だけよ」
“あの女”───どうやら、ローゼさんは名前を呼びたくないぐらい、ベレニスさんの事が嫌いなようだ。
「お、マシロ、人の姿に戻れたんだな。ふむ。相変わらず綺麗な黒色だな」
「竜王様!?」
「あら、バージル、何しに来たの?」
そこへ急に現れたのは、竜王様だった。同じ守護竜だからか、ローゼ様は気軽く呼び捨てている。
「南と西が居るから、挨拶をしに来たんだ。まさか、マシロが西の白竜だとはな…。何となく黒竜ではないとは思っていたが…不思議なもんだな。その黒色は、ただ単に聖女ユマのものを継いだと言う事なんだろう」
竜人は、基本は竜力と色は同じになる。私のように全く違う色なのは珍しいらしい。
黒色の髪と瞳は、元の世界で言う所の“優性遺伝”で、竜力はこっち世界での力だから、ある意味私は“ハイブリッド仕様”なのかもしれない。
「改めて、西の守護竜マシロを歓迎する。俺は竜王だが、守護竜としては同じ立場だから“バージル”と呼んでもらって構わない」
「それは、私が構うので無理です」
「可愛い上に謙虚なのね。バージルなんて呼び捨てで十分よ」
「そこに可愛さは関係あるのか?それに、ローゼこそ謙虚さを学ぶべきだな」
「マシロが可愛くないと?眼科に行ってらっしゃい」
ー夫婦漫才かな?ー
「まぁ、兎に角、マシロはまだまだ幼いが、守護竜である事は確かだ。守護竜は竜王国では竜王と並ぶ貴い存在だ。誰に何を言われようとも、その事だけは忘れないように」
「はい!」
「それと、明日には北の守護竜も挨拶に来ると言っていたから、4人でティータイムをする予定だ」
「4人揃うのは久し振りね」
確か、西の守護竜は100年程不在だった筈。2人の見た目はお母さんと同じぐらいに見えるけど、一体何歳なんだろう?100歳以上なのは確かだから、そりゃあ、私はまだまだひよっ子──以下なのかもしれない。そもそも、ここまで幼い守護竜は過去にも居ないらしい。ただ、竜力で言うと、何の問題も無いんだそうだ。
「それと、ここに来る前に報告が来たんだが、カイルスが目を覚ましたそうだ」
「カイルスさんが!?あの……その………」
「俺達の事は気にせず行っていいぞ」
「ありがとうございます」
竜王様─バージルさんとローゼさんに頭を下げてから、私は急いで部屋を出た。
物心つく前に、当たり前のように竜化と人化ができるようになっているから、その竜力の違いを分からずに使い分けているようで、違う事を知らない人が殆どなんだそうだ。
『そう言えば、竜化する前、何だか竜力がいつもより温かいなぁ…って感じました』
「微妙な違いが分かるって凄いわね。それで合ってるわ。竜化する時は、普段の竜力より温かくなるのよ」
ーと言う事は、人化する時は冷たくなる感じかな?ー
そこで、体に流れる竜力に、冷たい川の流れをイメージしてみる。すると、体が白い光に包まれた。
「戻れた!!」
白い光が収まると、久し振りの人間の手の平が視界に入った。
「あら、マシロの人の姿は黒色なのね。不思議だけど、人の姿も可愛いわね。本当に、あの女はよくこんな可愛い子供に手を出したものね」
基本、竜族は子供を大切にする種族で、人間のように虐待やネグレクトとは無縁で、ましてや攻撃するなど有り得ないそうだ。私は成人してるけど。
「その前に、服を着ましょうか」
「わぁーっ!?」
はい。素っ裸でした。ファンタジーでは、人化した時はキッチリ服を着ているのに。
「魔法のアイテムを用意しないとね。毎回裸だと大変だから」
魔法のアイテム──それには服が収納でき、身に着けている者が竜化する時は、その者の服を吸収し、人化する時はその者に服を着用させるアイテムで、竜人や獣人は殆どの人が身分関係無く持っているそうだ。そのアイテムは、ネックレスだったりブレスレットだったりと色んな物があるらしく、今度ローゼさんと一緒に選んで作る事にした。その時に、守護竜として必要な服なども作る事になった。
「先ずは、お披露目の時に着る服を準備しないといけないから、それはユマ様も一緒に選んでもらいましょう」
そのお披露目は、3ヶ月程先の予定で、そのお披露目迄に、守護竜としての勉強をする事になった。その勉強を始めるのは、側衛のキースが目覚めてからになる。
「あの、ちなみに“側衛”とは、どう言う存在なんですか?」
「簡単に言うと、絶対に裏切る事のない側近ね。どこに居ても主の守護竜の元へやって来るの。助かる時もあるけど、仕事をサボるのには一苦労するわ」
GPS機能付きのストーカーは、側衛が故の能力だと言う事か。因みに、側衛と近衛を兼ねる場合もあるけど、近衛は近衛で付けた方が良いそうだ。竜王様の側衛はジャガーの獣人で元竜騎士でもあるようで、側衛と近衛とを兼ねているそうだ。
「まぁ、守護竜に手を出すなんて……あの女だけよ」
“あの女”───どうやら、ローゼさんは名前を呼びたくないぐらい、ベレニスさんの事が嫌いなようだ。
「お、マシロ、人の姿に戻れたんだな。ふむ。相変わらず綺麗な黒色だな」
「竜王様!?」
「あら、バージル、何しに来たの?」
そこへ急に現れたのは、竜王様だった。同じ守護竜だからか、ローゼ様は気軽く呼び捨てている。
「南と西が居るから、挨拶をしに来たんだ。まさか、マシロが西の白竜だとはな…。何となく黒竜ではないとは思っていたが…不思議なもんだな。その黒色は、ただ単に聖女ユマのものを継いだと言う事なんだろう」
竜人は、基本は竜力と色は同じになる。私のように全く違う色なのは珍しいらしい。
黒色の髪と瞳は、元の世界で言う所の“優性遺伝”で、竜力はこっち世界での力だから、ある意味私は“ハイブリッド仕様”なのかもしれない。
「改めて、西の守護竜マシロを歓迎する。俺は竜王だが、守護竜としては同じ立場だから“バージル”と呼んでもらって構わない」
「それは、私が構うので無理です」
「可愛い上に謙虚なのね。バージルなんて呼び捨てで十分よ」
「そこに可愛さは関係あるのか?それに、ローゼこそ謙虚さを学ぶべきだな」
「マシロが可愛くないと?眼科に行ってらっしゃい」
ー夫婦漫才かな?ー
「まぁ、兎に角、マシロはまだまだ幼いが、守護竜である事は確かだ。守護竜は竜王国では竜王と並ぶ貴い存在だ。誰に何を言われようとも、その事だけは忘れないように」
「はい!」
「それと、明日には北の守護竜も挨拶に来ると言っていたから、4人でティータイムをする予定だ」
「4人揃うのは久し振りね」
確か、西の守護竜は100年程不在だった筈。2人の見た目はお母さんと同じぐらいに見えるけど、一体何歳なんだろう?100歳以上なのは確かだから、そりゃあ、私はまだまだひよっ子──以下なのかもしれない。そもそも、ここまで幼い守護竜は過去にも居ないらしい。ただ、竜力で言うと、何の問題も無いんだそうだ。
「それと、ここに来る前に報告が来たんだが、カイルスが目を覚ましたそうだ」
「カイルスさんが!?あの……その………」
「俺達の事は気にせず行っていいぞ」
「ありがとうございます」
竜王様─バージルさんとローゼさんに頭を下げてから、私は急いで部屋を出た。
400
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢は嫁き遅れていらっしゃる
夏菜しの
恋愛
十七歳の時、生涯初めての恋をした。
燃え上がるような想いに胸を焦がされ、彼だけを見つめて、彼だけを追った。
しかし意中の相手は、別の女を選びわたしに振り向く事は無かった。
あれから六回目の夜会シーズンが始まろうとしている。
気になる男性も居ないまま、気づけば、崖っぷち。
コンコン。
今日もお父様がお見合い写真を手にやってくる。
さてと、どうしようかしら?
※姉妹作品の『攻略対象ですがルートに入ってきませんでした』の別の話になります。
公爵夫人の気ままな家出冒険記〜「自由」を真に受けた妻を、夫は今日も追いかける〜
平山和人
恋愛
王国宰相の地位を持つ公爵ルカと結婚して五年。元子爵令嬢のフィリアは、多忙な夫の言葉「君は自由に生きていい」を真に受け、家事に専々と引きこもる生活を卒業し、突如として身一つで冒険者になることを決意する。
レベル1の治癒士として街のギルドに登録し、初めての冒険に胸を躍らせるフィリアだったが、その背後では、妻の「自由」が離婚と誤解したルカが激怒。「私から逃げられると思うな!」と誤解と執着にまみれた激情を露わにし、国政を放り出し、精鋭を率いて妻を連れ戻すための追跡を開始する。
冒険者として順調に(時に波乱万丈に)依頼をこなすフィリアと、彼女が起こした騒動の後始末をしつつ、鬼のような形相で迫るルカ。これは、「自由」を巡る夫婦のすれ違いを描いた、異世界溺愛追跡ファンタジーである。
わたしの方が好きでした
帆々
恋愛
リゼは王都で工房を経営する若き経営者だ。日々忙しく過ごしている。
売り上げ以上に気にかかるのは、夫キッドの健康だった。病弱な彼には主夫業を頼むが、無理はさせられない。その分リゼが頑張って生活をカバーしてきた。二人の暮らしでそれが彼女の幸せだった。
「ご主人を甘やかせ過ぎでは?」
周囲の声もある。でも何がいけないのか? キッドのことはもちろん自分が一番わかっている。彼の家蔵の問題もあるが、大丈夫。それが結婚というものだから。リゼは信じている。
彼が体調を崩したことがきっかけで、キッドの世話を頼む看護人を雇い入れことにした。フランという女性で、キッドとは話も合い和気藹々とした様子だ。気の利く彼女にリゼも負担が減りほっと安堵していた。
しかし、自宅の上の階に住む老婦人が忠告する。キッドとフランの仲が普通ではないようだ、と。更に疑いのない真実を突きつけられてしまう。衝撃を受けてうろたえるリゼに老婦人が親切に諭す。
「お別れなさい。あなたのお父様も結婚に反対だった。あなたに相応しくない人よ」
そこへ偶然、老婦人の甥という紳士が現れた。
「エル、リゼを助けてあげて頂戴」
リゼはエルと共にキッドとフランに対峙することになる。そこでは夫の信じられない企みが発覚して———————。
『夫が不良債権のようです〜愛して尽して失った。わたしの末路〜』から改題しました。
※小説家になろう様にも投稿させていただいております。
異世界転移した私と極光竜(オーロラドラゴン)の秘宝
饕餮
恋愛
その日、体調を崩して会社を早退した私は、病院から帰ってくると自宅マンションで父と兄に遭遇した。
話があるというので中へと通し、彼らの話を聞いていた時だった。建物が揺れ、室内が突然光ったのだ。
混乱しているうちに身体が浮かびあがり、気づいたときには森の中にいて……。
そこで出会った人たちに保護されたけれど、彼が大事にしていた髪飾りが飛んできて私の髪にくっつくとなぜかそれが溶けて髪の色が変わっちゃったからさあ大変!
どうなっちゃうの?!
異世界トリップしたヒロインと彼女を拾ったヒーローの恋愛と、彼女の父と兄との家族再生のお話。
★掲載しているファンアートは黒杉くろん様からいただいたもので、くろんさんの許可を得て掲載しています。
★サブタイトルの後ろに★がついているものは、いただいたファンアートをページの最後に載せています。
★カクヨム、ツギクルにも掲載しています。
病めるときも健やかなるときも、お前だけは絶対許さないからなマジで
あだち
恋愛
ペルラ伯爵家の跡取り娘・フェリータの婚約者が、王女様に横取りされた。どうやら、伯爵家の天敵たるカヴァリエリ家の当主にして王女の側近・ロレンツィオが、裏で糸を引いたという。
怒り狂うフェリータは、大事な婚約者を取り返したい一心で、祝祭の日に捨て身の行動に出た。
……それが結果的に、にっくきロレンツィオ本人と結婚することに結びつくとも知らず。
***
『……いやホントに許せん。今更言えるか、実は前から好きだったなんて』
悪夢から逃れたら前世の夫がおかしい
はなまる
恋愛
ミモザは結婚している。だが夫のライオスには愛人がいてミモザは見向きもされない。それなのに義理母は跡取りを待ち望んでいる。だが息子のライオスはミモザと初夜の一度っきり相手をして後は一切接触して来ない。
義理母はどうにかして跡取りをと考えとんでもないことを思いつく。
それは自分の夫クリスト。ミモザに取ったら義理父を受け入れさせることだった。
こんなの悪夢としか思えない。そんな状況で階段から落ちそうになって前世を思い出す。その時助けてくれた男が前世の夫セルカークだったなんて…
セルカークもとんでもない夫だった。ミモザはとうとうこんな悪夢に立ち向かうことにする。
短編スタートでしたが、思ったより文字数が増えそうです。もうしばらくお付き合い痛手蹴るとすごくうれしいです。最後目でよろしくお願いします。
竜帝と番ではない妃
ひとみん
恋愛
水野江里は異世界の二柱の神様に魂を創られた、神の愛し子だった。
別の世界に産まれ、死ぬはずだった江里は本来生まれる世界へ転移される。
そこで出会う獣人や竜人達との縁を結びながらも、スローライフを満喫する予定が・・・
ほのぼの日常系なお話です。設定ゆるゆるですので、許せる方のみどうぞ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる