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60 自覚
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「医療室って……何処?」
部屋を飛び出したは良いけど、医療室が何処にあるのか分からない。恥ずかしいけど、部屋に戻って訊くしかない。
「案内しますよ」
「はい?」
途方に暮れている私に声を掛けてくれたのは、黒色の短髪の男性だった。
「挨拶が遅くなりました。私は、黒竜バージル様の側衛のネグロです。“ネグロ”とお呼び下さい」
この人が、バージルさんの側衛で竜騎士だった人。確かに、バージルさんと同じ感じの竜力を纏っている。それでも、バージルさん程のピリピリした感じではなく、少し優しくて温かい竜力だ。
「医療室にいらっしゃるんですよね?ご案内します」
「あ、ありがとうございます!」
きっと、バージルさんが手配してくれたんだろう。有り難く案内してもらった。
医療室まで来ると、ネグロさんは来た道を戻って行った。何度か深呼吸をしてから、私は医療室の扉を開けた。
ー緊張するー
カイルスさんと会うのに、こんなに緊張した事があっただろうか?何故ここまで緊張するのか?私なんかを庇って大怪我をしてしまった事への罪悪感?
「………マシロ?」
「っ!!」
色々考えてしまっているうちに、私が声を掛けるよりも先に、カイルスさんから声を掛けられた。そのカイルスさんは、ベッドの上で食事をしているところだった。
「あの…目が覚めたと聞いて来たんですけど、大丈夫ですか?」
「もう何とも無い。傷痕も無いし、ゆっくり眠れたお陰で体がスッキリして、寧ろ元気になっている。今からでも訓練に参加できるぐらいだ」
「良かった……」
いつものカイルスさんの笑顔にホッとする。
ー本当に、失わずにすんで良かったー
「あ……“マシロ様”と呼ぶべきですか?」
「嫌です!」
敬語を使われたり、“茉白様”だなんて、距離が離れてしまうみたいで──
「ん?」
どうしてそんな事を思ってしまうのか?どうして、カイルスさんには“茉白”と呼んでもらいたいのか?いくら恋愛とは縁の無かった私にだって分かる。名前で呼んで欲しいし、あの笑顔をいつも私に向けて欲しいと願うのは───
ー私がカイルスさんの事が好きだからだー
だから、こんなにも緊張するんだ。
「マシロ、大丈夫か?」
「うっ!?」
気が付けば、カイルスさんがベッドから出て私の目の前に居て、私の頬に手を添えて私の顔を覗き込んでいる。
「顔が赤いな。熱は……なさそうだけど、大丈夫か?」
「大丈夫じゃない事も無いけど大丈夫です!」
ー近い!近い!近過ぎるから!ー
恋心を自覚してすぐの私には、キャパオーバーな距離だ。
「俺よりも、マシロがベッドに寝た方が良いのかもな?」
「それは大丈夫です!カイルスさんがゆっくりして下さい!」
ぐいぐいと押して、カイルスさんをベッドへと戻す。実際には、私が押したところで動く筈もなく、カイルスさんが歩いてくれただけだけど。
「カイルスさん、今回も助けてもらって、ありがとうございました。でも、そのせいでカイルスさんが死にかけて………」
ー怖かったー
こんなにも簡単に、目の前で人が怪我をしたり死に直面する事があるだなんて、少し前では有り得ない事だった。それが、今では当たり前?になっている。
ーこれ以上は、何も失いたくないー
まだまだひよっ子な子竜だけど、竜力は問題無い守護竜になった。今はまだ無力な守護竜だけど、これからは、私がカイルスさん達を護る番だよね!
「私、頑張ります!」
*カイルス視点*
何を頑張るのか?
なんて訊かなくても分かる。これからは、守護竜として俺達を護る為に頑張る──と言ったところだろう。
“西の守護竜、白竜のマシロ”
まさか、マシロが守護竜の白竜だとは思わなかった。竜化した姿はまだ見てはいないが、子竜で可愛いらしい。想像するのは難しくは無い。今も、目の前でグッと手を握って意気込んでいる姿が可愛い。正直、護られるよりも護ってあげたい──とは、今は言わないでおこう。
それよりも、もっとマシロを甘やかしてあげたい─と思うのは親心か?この世界に来てから、死と背中合わせだった。出会った頃のマシロは、少しでも風が吹けば飛ばされてしまいそうな容姿をしていた。マシロが竜人ではなかったら、死んでいたかもしれない程に。
やっと元気になったかと思えばベレニス様問題勃発。イーデン様も、番が絡むとどうにも………。
色々あっただろうに、目の前に居るマシロは歪む事なく前に進んでいる。ふわふわな笑顔は可愛い。
ーその笑顔が、俺だけに向いていれば良いのにー
「………ん?」
ー“俺だけに”とは……何だ?ー
「…………はぁぁぁぁぁ…………」
「カイルスさん!?どうしたんですか!?だっ大丈夫ですか!?お医者さんを呼びますか!?」
思わず、盛大にため息を吐いた俺を、慌てて心配するマシロに、正直に嬉しいと思う自分がいる。
まだ20歳を超えたばかりの子竜な女の子だ。マシロにとって、俺は“保護者”的な存在か、“命の恩人”程度にしか見られていないだろう。それでも──
「大丈夫だから落ち着いてくれ。自分の気持ちに気付いただけだ」
「そう……なんですか????」
不思議そうな顔のマシロ。色んな顔を見せてくれるマシロを、これからも近くで護っていきたいし、甘やかしたいと思うのだから───
俺はマシロの事が、好きなんだろう
部屋を飛び出したは良いけど、医療室が何処にあるのか分からない。恥ずかしいけど、部屋に戻って訊くしかない。
「案内しますよ」
「はい?」
途方に暮れている私に声を掛けてくれたのは、黒色の短髪の男性だった。
「挨拶が遅くなりました。私は、黒竜バージル様の側衛のネグロです。“ネグロ”とお呼び下さい」
この人が、バージルさんの側衛で竜騎士だった人。確かに、バージルさんと同じ感じの竜力を纏っている。それでも、バージルさん程のピリピリした感じではなく、少し優しくて温かい竜力だ。
「医療室にいらっしゃるんですよね?ご案内します」
「あ、ありがとうございます!」
きっと、バージルさんが手配してくれたんだろう。有り難く案内してもらった。
医療室まで来ると、ネグロさんは来た道を戻って行った。何度か深呼吸をしてから、私は医療室の扉を開けた。
ー緊張するー
カイルスさんと会うのに、こんなに緊張した事があっただろうか?何故ここまで緊張するのか?私なんかを庇って大怪我をしてしまった事への罪悪感?
「………マシロ?」
「っ!!」
色々考えてしまっているうちに、私が声を掛けるよりも先に、カイルスさんから声を掛けられた。そのカイルスさんは、ベッドの上で食事をしているところだった。
「あの…目が覚めたと聞いて来たんですけど、大丈夫ですか?」
「もう何とも無い。傷痕も無いし、ゆっくり眠れたお陰で体がスッキリして、寧ろ元気になっている。今からでも訓練に参加できるぐらいだ」
「良かった……」
いつものカイルスさんの笑顔にホッとする。
ー本当に、失わずにすんで良かったー
「あ……“マシロ様”と呼ぶべきですか?」
「嫌です!」
敬語を使われたり、“茉白様”だなんて、距離が離れてしまうみたいで──
「ん?」
どうしてそんな事を思ってしまうのか?どうして、カイルスさんには“茉白”と呼んでもらいたいのか?いくら恋愛とは縁の無かった私にだって分かる。名前で呼んで欲しいし、あの笑顔をいつも私に向けて欲しいと願うのは───
ー私がカイルスさんの事が好きだからだー
だから、こんなにも緊張するんだ。
「マシロ、大丈夫か?」
「うっ!?」
気が付けば、カイルスさんがベッドから出て私の目の前に居て、私の頬に手を添えて私の顔を覗き込んでいる。
「顔が赤いな。熱は……なさそうだけど、大丈夫か?」
「大丈夫じゃない事も無いけど大丈夫です!」
ー近い!近い!近過ぎるから!ー
恋心を自覚してすぐの私には、キャパオーバーな距離だ。
「俺よりも、マシロがベッドに寝た方が良いのかもな?」
「それは大丈夫です!カイルスさんがゆっくりして下さい!」
ぐいぐいと押して、カイルスさんをベッドへと戻す。実際には、私が押したところで動く筈もなく、カイルスさんが歩いてくれただけだけど。
「カイルスさん、今回も助けてもらって、ありがとうございました。でも、そのせいでカイルスさんが死にかけて………」
ー怖かったー
こんなにも簡単に、目の前で人が怪我をしたり死に直面する事があるだなんて、少し前では有り得ない事だった。それが、今では当たり前?になっている。
ーこれ以上は、何も失いたくないー
まだまだひよっ子な子竜だけど、竜力は問題無い守護竜になった。今はまだ無力な守護竜だけど、これからは、私がカイルスさん達を護る番だよね!
「私、頑張ります!」
*カイルス視点*
何を頑張るのか?
なんて訊かなくても分かる。これからは、守護竜として俺達を護る為に頑張る──と言ったところだろう。
“西の守護竜、白竜のマシロ”
まさか、マシロが守護竜の白竜だとは思わなかった。竜化した姿はまだ見てはいないが、子竜で可愛いらしい。想像するのは難しくは無い。今も、目の前でグッと手を握って意気込んでいる姿が可愛い。正直、護られるよりも護ってあげたい──とは、今は言わないでおこう。
それよりも、もっとマシロを甘やかしてあげたい─と思うのは親心か?この世界に来てから、死と背中合わせだった。出会った頃のマシロは、少しでも風が吹けば飛ばされてしまいそうな容姿をしていた。マシロが竜人ではなかったら、死んでいたかもしれない程に。
やっと元気になったかと思えばベレニス様問題勃発。イーデン様も、番が絡むとどうにも………。
色々あっただろうに、目の前に居るマシロは歪む事なく前に進んでいる。ふわふわな笑顔は可愛い。
ーその笑顔が、俺だけに向いていれば良いのにー
「………ん?」
ー“俺だけに”とは……何だ?ー
「…………はぁぁぁぁぁ…………」
「カイルスさん!?どうしたんですか!?だっ大丈夫ですか!?お医者さんを呼びますか!?」
思わず、盛大にため息を吐いた俺を、慌てて心配するマシロに、正直に嬉しいと思う自分がいる。
まだ20歳を超えたばかりの子竜な女の子だ。マシロにとって、俺は“保護者”的な存在か、“命の恩人”程度にしか見られていないだろう。それでも──
「大丈夫だから落ち着いてくれ。自分の気持ちに気付いただけだ」
「そう……なんですか????」
不思議そうな顔のマシロ。色んな顔を見せてくれるマシロを、これからも近くで護っていきたいし、甘やかしたいと思うのだから───
俺はマシロの事が、好きなんだろう
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