召喚先は、誰も居ない森でした

みん

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64 父との対面②

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「本音を言えば、イーデンさんとベレニスさんが同じ竜王国に居ると言うだけでも、私にとっては恐怖でしかないんです。またいつ攻撃されるのか?と。私達からウィンストン夫婦に攻撃を仕掛ける事はありません。攻撃をする意味もありませんから。でも、そちらが攻撃をして来るなら、私は躊躇う事なく反撃します。母のように強くもないし、カイルスさんのように剣を振るう事もできないけど、白竜として、私の大切な人達を護る為に、ベレニスさんに反撃します」

竜力の扱いもまだまだだし、1mにも満たない子竜な私が反撃したところで、竜騎士副団長のイーデンさんやベレニスさんに勝てる筈がない。それでも、もう黙ってヤラれるつもりもない。

「私がイーデン=ウィンストン伯爵に求めるのは、これ以上私達に必要以上に関わらない事と、ベレニスさん……家族を第一優先に考えて欲しいと言う事だけです」

合っていた視線を先に逸したのは、イーデンさんだった。

「君は、ユマにそっくりだ。まさか、同じ事を言われるとは……」

お母さんからも同じような事を言われたのに、まだ割り切れていない事に驚きだ。

「それじゃあ、分かってもらえましたか?」
「正直、自分でもよく分からないんだ。どうして番が居るのにユマを追い掛けてしまったのか……どちらも傷付けたくないのに、どちらも傷付けてしまった」

クシャッと顔を歪ませるイーデンさん。よく見ると、少し疲れたような顔をしている。だからと言って同情はしない。

「この世界の常識は知りませんけど、母も私も、既に家庭を持っている男性と結婚どころか恋愛をしたいだなんて思いません。そんな事は嫌悪感しかありませんから。恋愛や結婚はお互い信頼し合える人で、想い合っている人としたいんです。母にとって、それは貴方ではありません」

お母さんは、日本に帰る時には、既にイーデンさんへの気持ちを切り捨てていたんだろう。だから、私には何も話さなかったのだ。そこに、好きや嫌いの感情があったかどうかは分からないけど。

「ベレニスの事は、申し訳無かった。これから、ベレニスが2人に手を出さないように……注視しておく。そして、私から個人的に君達2人に接触しないようにする」

「イーデン様、申し訳ありませんが“君達”と呼ぶのは如何かと……」

と、私達の呼び方を指摘したのはキース。別に様呼びして欲しいとは思わないけど、この貴族社会の世界では呼び方一つでも大事なんだろう。竜騎士副団長よりも、子竜でも新人でも守護竜の私の方が格上になるから。

「そう……ですね。失礼致しました。それと、カイルスとキースも、申し訳無かった。2人が無事で良かった」

座ったままで頭を下げるイーデンさん。普段のイーデンさんはマトモな人なんだろう。そこに、番や聖女由茉が関わるとマトモな判断ができなくなるだけで。私からすれば、番は厄介な元でしかない。私が知らないだけで、幸せな人も居るんだろうけど。
兎に角、話はこれで終わりかな?と、キースに視線を向けると、キースがこくりと頷いた。

「イーデン様、竜王陛下より言付けを預かっています。“この対面の後、執務室に来るように”との事です」

キースが伝えると、イーデンさんは「承知した」と言って立ち上がった。

「白竜マシロ様、時間を頂いてありがとうございました。話ができて……良かったです。では、失礼致します」

胸に手を当てて礼をすると、イーデンさんは部屋から出て行った。

「マシロ、お疲れ様。大丈夫か?」
「大丈夫です。と言うか……言いたい事が言えたから、スッキリしました。後は、ベレニスさんがおとなしく下がってくれたら良いんだけど………」

「「……………」」

2人は沈黙しているのに、『無理だろう』と言う言葉が聞こえたような気がしたのは、空耳と言う事にしておこう。





*イーデン視点*


どうして、私の竜力を纏っている娘がいるのか?

ー私のモノだー

どうして、ベレニス以外の子なのか?

ー排除すべきだー

相反する気持ちが交差して、自分でも自分が分からなくなっていた───


あれからたったの2週間。私の竜力は綺麗サッパリ無くなっていた。その娘は、私とは何の関係も無い娘になっていた。

ーどうして?ー

ユマに拒絶され、僅かに繋がっていたその娘との繋がりも無くなってしまった。

ー私のモノだった……筈だろう?ー

僅かに残る執着心。


『───貴方は、かつて愛した聖女由茉でさえ、護る事ができないんです』

そこでようやく意識がハッキリした。

ー私は、かつての聖女を護る騎士としても、もう失格なのだー

その娘は、私の目を逸らす事なく見つめている。その瞳は、聖女ユマと同じ漆黒色で、全てを飲み込んでしまいそうな闇の色でもあった。

ー私が優先すべきはベレニスだー

ユマにもマシロにも、私は必要無いのだ。頭に掛かっていた霞のようなものが、ようやく晴れた気がした。




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