召喚先は、誰も居ない森でした

みん

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68 祝賀パーティー①

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「ふぉー………」

鏡に映る自分に変な声が出た。
私が着ているのは、ミモレ丈のワンピースに近いドレス。お母さんはスレンダーラインのドレス。形は違うけど、オフホワイトを基調として、裾に黒色で刺繍が施されている。
首元も鎖骨が見える程度で、袖も肘下まであり、全体的に露出は控え目だ。手袋も必須アイテムか?と思っていたけど、最近ではそうでもないらしく、慣れてもいないから手袋は着用しない事にした。

お母さんは長い髪をアップに纏めて、白色の花を飾っている。私はあまり髪が長くないから、ハーフアップにして、同じように白色の花が飾られている。

“祝賀パーティー”だけど、お披露目と挨拶を兼ねたパーティーだから、パーティーが始まれば延々と挨拶が続くそうで、パーティーが始まる前に軽食を済ませておく。

「ホールには立食形式での軽食とドリンクもあるので、休憩しながら食事をしても大丈夫です」

と言われたけど、それもタイミング次第なんだとか。

基本、パーティーには同伴者が必須なんだそうだけど、今日のパーティーは挨拶がメインになっているから、お母さんと私とキースの3人で行動する事になっている。私達3人が入場した後、竜王の挨拶でパーティーが始まり、爵位の高い順に挨拶をして行く。

「ウィンストンは伯爵で、伯爵の中で言うと上流になるから、比較的早い時間での対面になると思います」

どうやら、イーデンさんとベレニスさんだけではなく、息子も来ているそうだ。

“敵意は無い”と言う意思表示なのか?

「常に、マシロ様には近衛が控えているので、マシロ様は何も気にせずパーティーを楽しんで下さい」

ーそれ、無理だからね?ー

自分が主人公のパーティーで、一体誰が楽しめると言うのか。『子竜の守護竜なんて認めないわ!』とか言われたりしたらどうする?

ーちょっと面白い……かも?ー

「ま、何かあってもカイルスさん達が居るし、私も居るから大丈夫よ。茉白には指1本も触れさせないわ」

そうだった。何よりも戦闘の聖女が側に居るのだから、心強いしかない。それよりも──

近衛3人の正装姿の破壊力が凄い。

上が白色で、ズボンとブーツが黒色。ビラビラゴテゴテした飾りは一切無くシンプルで、マントも着けていない。

「マントなんて、何かあった時に邪魔にしかならない」
「制服に飾り?それも、邪魔にしかならない。引っ掛かったらどうする?」

と、ある意味夢を砕かれた。

近衛には許されているから、剣を佩帯している。その剣も、その人によって長さや太さなど様々だ。守護竜も、自分の剣を持たなければいけないそうで、私も近々自分に合う剣を作る予定だ。


「失礼します。そろそろホールの方へと移動願います」
「分かりました」

迎えに来た遣いの人に返事をして、私達はホールに向かった。






******


聖女由茉お母さんと入場すると、ホール全体が大騒ぎになったのは言うまでもない。竜王国にとっては救国の聖女だ。しかも、その娘が西の守護竜だったのだから、暫くの間は収集がつかない程の騒ぎとなった。そして、竜王様がなんとかその場を収め、予定より大幅に遅れての祝賀パーティーの開始となった。




「この度は、守護竜の覚醒おめでとう。娘─アンジェリアの事は、本当に申し訳無かった」

と、目の前で必死に謝っているのはオールステニアの国王ベネット様。ピンクゴールドの髪に碧眼。ピンクゴールドはヒロインの色かと思っていたけど、そうではないらしい。

「マシロ、相手が国王だからと言って、必ずしも謝罪を受け入れる必要はないのよ?」
「お母さん……悪いのはアンジェリアさんであって、国王様ではないし、もう終わった事だから。国王様、謝罪は受け入れますから、もう気にしないで下さい」
「バージル!本当にマシロはユマの娘なのか!?」
「ベネット、私に喧嘩を売ってるの?それなら、全力で受け入れるけど」
「父上………」

お母さんの笑顔に「ひぃっ」と声を上げたオールステニアの国王を、ため息混じりに「父上」と呼んだのは、オールステニアの王太子メレディス様。この王太子もピンクゴールドの髪に碧眼。この王太子が一番マトモな王族だと、お母さんとバージルさんが言っていた。“ピンク色=お花畑”ではないらしい。

「ユマ様、父の無礼、お許し下さい。マシロ様、本当に色々とご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。謝罪の受け入れ、感謝申し上げます。そして、改めて、覚醒おめでとうございます」
「ありがとうございます」

本当に、あのアンジェリアさんと血の繋がった兄妹なのか?と思う程の違いだ。

そして、次に挨拶に来たのが──

「マシロ様、この度はおめでとうございます」
「おめでとうございます」
「ダグラス様、プラータ王子、ありがとうございます」

魔王国の王ダグラス様と、魔王国の王子プラータ様だった。




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