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69 祝賀パーティー②
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「プラータ王子には、あの時助けていただいて、本当に感謝しています」
「いや、こちらこそ、愚弟が申し訳無かった」
プラータ王子にお礼を言うと、魔王様から謝罪を受けた。
「聖女ユマにも、迷惑を掛けて申し訳無かった」
「謝罪を受け入れます。そして、茉白達を助けていただいた事、プラータ王子に改めてお礼申し上げます」
と、お母さんと一緒に頭を下げてお礼をして感謝の気持ちを表した。あの件に関しては、竜王が箝口令を敷いた事と、王弟ダミアンが結界を張っていた事もあり公にはなっていないから小声での会話だし、魔王様が声を遮断する魔法を掛けていて、周りの人達には聞こえていない。
「プラータ王子──」
「“プラータ”と呼んでもらえないのですか?」
と、プラータ王子がキュルンとした目で私を見上げている。
「プラータ!うんうん!私の事も“マシロ”と呼んでね!」
「うん。ありがとう、マシロ」
「「「…………」」」
ープラータって可愛いよね。弟が居たらこんな感じかなぁ?本当に可愛い!ー
「プラータ王子って、あんな可愛らしい子でしたか?」
「アレはかなりの曲者だ。どうやら、マシロの事を気に入っているようだ」
「それなりの年齢ですよね?婚約者とかは……」
「未だに作らぬから困っているところだ」
「マシロ様は渡しませんから」
と、お母さんと魔王様とキースかが話している事は、私には聞こえていなかった。
「マシロに聞かせる訳ないよね」と、プラータの呟きも、聞こえていなかった。
それから、他国の貴賓との挨拶が続き、竜王国の貴族との挨拶へと入っていった。現在、竜王国には“大公”は居ないから、“公爵”から始まった。
「トリオールです。西の守護竜様、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「聖女ユマ様、お久し振りです。またお会いできるとは、光栄です」
「トリオール公爵様、ありがとうございます」
“トリオール公爵”と言う事は、ベレニスさんの父親だ。お母さんは、以前居た時に一度だけ会った事があると言っていた。
「私が知らなかったとは言え、娘が失礼をして、申し訳なかった」
「本当に知らなかった──のなら、トリオール公爵には何の咎もありません。兎に角、もう二度と起こらないように願います」
「勿論です。では、失礼致します」
お母さんもトリオール公爵も笑顔でありながら、目が少しも笑っていない。それもそうか。父親なら、“全く知らなかった”なんて事はないだろうから。それに、今のところお咎めがなく、この祝賀パーティーに参加していると言う事は、トリオール公爵家が絡んでいる証拠が無いと言う事。
ー本当に、色々大変だなぁー
それ以降は友好的な挨拶が続いた。
「マシロ様、ユマ様、お気を付けて──」
「「………」」
後ろに控えていたマイラさんが呟いた。
「この度は、おめでとうございます」
「……おめでとうございます」
イーデンさんとベレニスさんだ。
「初めまして。私はリシャール=ウィンストンです。西の守護竜様の覚醒、お慶び申し上げます。聖女ユマ様、お会いできて光栄です」
イーデンさんと同じ竜力を纏うリシャールさん。態度や雰囲気からすると、私達の事は知らされていないようだ。
「リシャール様、ありがとうございます」
「私も、お会いできて光栄です」
私もお母さんも当たり障りなく挨拶をする。ベレニスさんは、今のところ何かをするような感じは無い。ある意味、その沈黙が怖いところでもあるけど、流石に人の多いこの場では何もしないだろう。
3人はそのまま下がって行った。
それからも、伯爵─子爵─男爵と挨拶が続いて行った。
******
「疲れたー」
「マシロ様、取り敢えずお疲れ様です」
一通りの挨拶が終わったところで、私とキースは一度休憩室に下がって少し休憩する事になった。ちなみに、お母さんはホールに残ってオールステニアの知人と話に花を咲かせている。
「キース、イーデンさんとベレニスさんとリシャールさんは、どう感じた?」
「そうですね……リシャール様は無害で、イーデンさんは落ち着いている感じですが、ベレニスはやっぱり微妙ですね。離れた所に居た、他の側衛達も警戒している感じがありましたから」
他人の機微に敏い側衛がそう感じるなら、警戒するに越した事はない。
「リシャールさんは……一応、弟になるんだよね?」
「そうですね。異母姉弟になりますね。全く似てない上、竜力も全く違いますから、殆ど赤の他人ですけど」
リシャールさんは、金髪に青い瞳で、ベレニス似の綺麗な男性だった。何も知らないから友好的な態度だったんだろうけど、事実を知ったらどうなるのか?このまま何も起こらない事を、ただただ祈るのみだ。
「いや、こちらこそ、愚弟が申し訳無かった」
プラータ王子にお礼を言うと、魔王様から謝罪を受けた。
「聖女ユマにも、迷惑を掛けて申し訳無かった」
「謝罪を受け入れます。そして、茉白達を助けていただいた事、プラータ王子に改めてお礼申し上げます」
と、お母さんと一緒に頭を下げてお礼をして感謝の気持ちを表した。あの件に関しては、竜王が箝口令を敷いた事と、王弟ダミアンが結界を張っていた事もあり公にはなっていないから小声での会話だし、魔王様が声を遮断する魔法を掛けていて、周りの人達には聞こえていない。
「プラータ王子──」
「“プラータ”と呼んでもらえないのですか?」
と、プラータ王子がキュルンとした目で私を見上げている。
「プラータ!うんうん!私の事も“マシロ”と呼んでね!」
「うん。ありがとう、マシロ」
「「「…………」」」
ープラータって可愛いよね。弟が居たらこんな感じかなぁ?本当に可愛い!ー
「プラータ王子って、あんな可愛らしい子でしたか?」
「アレはかなりの曲者だ。どうやら、マシロの事を気に入っているようだ」
「それなりの年齢ですよね?婚約者とかは……」
「未だに作らぬから困っているところだ」
「マシロ様は渡しませんから」
と、お母さんと魔王様とキースかが話している事は、私には聞こえていなかった。
「マシロに聞かせる訳ないよね」と、プラータの呟きも、聞こえていなかった。
それから、他国の貴賓との挨拶が続き、竜王国の貴族との挨拶へと入っていった。現在、竜王国には“大公”は居ないから、“公爵”から始まった。
「トリオールです。西の守護竜様、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「聖女ユマ様、お久し振りです。またお会いできるとは、光栄です」
「トリオール公爵様、ありがとうございます」
“トリオール公爵”と言う事は、ベレニスさんの父親だ。お母さんは、以前居た時に一度だけ会った事があると言っていた。
「私が知らなかったとは言え、娘が失礼をして、申し訳なかった」
「本当に知らなかった──のなら、トリオール公爵には何の咎もありません。兎に角、もう二度と起こらないように願います」
「勿論です。では、失礼致します」
お母さんもトリオール公爵も笑顔でありながら、目が少しも笑っていない。それもそうか。父親なら、“全く知らなかった”なんて事はないだろうから。それに、今のところお咎めがなく、この祝賀パーティーに参加していると言う事は、トリオール公爵家が絡んでいる証拠が無いと言う事。
ー本当に、色々大変だなぁー
それ以降は友好的な挨拶が続いた。
「マシロ様、ユマ様、お気を付けて──」
「「………」」
後ろに控えていたマイラさんが呟いた。
「この度は、おめでとうございます」
「……おめでとうございます」
イーデンさんとベレニスさんだ。
「初めまして。私はリシャール=ウィンストンです。西の守護竜様の覚醒、お慶び申し上げます。聖女ユマ様、お会いできて光栄です」
イーデンさんと同じ竜力を纏うリシャールさん。態度や雰囲気からすると、私達の事は知らされていないようだ。
「リシャール様、ありがとうございます」
「私も、お会いできて光栄です」
私もお母さんも当たり障りなく挨拶をする。ベレニスさんは、今のところ何かをするような感じは無い。ある意味、その沈黙が怖いところでもあるけど、流石に人の多いこの場では何もしないだろう。
3人はそのまま下がって行った。
それからも、伯爵─子爵─男爵と挨拶が続いて行った。
******
「疲れたー」
「マシロ様、取り敢えずお疲れ様です」
一通りの挨拶が終わったところで、私とキースは一度休憩室に下がって少し休憩する事になった。ちなみに、お母さんはホールに残ってオールステニアの知人と話に花を咲かせている。
「キース、イーデンさんとベレニスさんとリシャールさんは、どう感じた?」
「そうですね……リシャール様は無害で、イーデンさんは落ち着いている感じですが、ベレニスはやっぱり微妙ですね。離れた所に居た、他の側衛達も警戒している感じがありましたから」
他人の機微に敏い側衛がそう感じるなら、警戒するに越した事はない。
「リシャールさんは……一応、弟になるんだよね?」
「そうですね。異母姉弟になりますね。全く似てない上、竜力も全く違いますから、殆ど赤の他人ですけど」
リシャールさんは、金髪に青い瞳で、ベレニス似の綺麗な男性だった。何も知らないから友好的な態度だったんだろうけど、事実を知ったらどうなるのか?このまま何も起こらない事を、ただただ祈るのみだ。
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