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ご褒美
しおりを挟むパタン──
「……………」
ーつ…疲れた………ー
大森さんが部屋から出て行った後、私は目の前のテーブルに突っ伏した。まともな会話ができない相手との会話は、本当に疲れる。
陽真は……アレはヤバい。あそこ迄ヤバいとは思わなかった。あの思考回路はおかしいよね?“また”って何?“また”なんてないからね?ちょっと気を付けた方が良いかもしれないなぁ。
大森さんは、もう彼女次第だよね。きっと、誰が何を言っても変わらないだろう。ただ…大森さん、リュークレインさんに気があるよね?今度のお披露目会で、私とリュークレインさんの婚約も発表するって言ってたけど…心配だ…コレは、要相談案件だよね。
「お疲れ様」
テーブルに突っ伏したまま唸っていると、リュークレインさんが私の目の前に紅茶とケーキを置いて、私の横に座った。
「すっ…すみません!ありがとうございます!」
慌ててガバッと体を起こしてお礼を言う。
「しかし……あの聖女は………とんでもない性格をしているんだな……」
「………以前よりも、磨きがかかってましたね。ある意味、色々と心配になりました」
何事もなければ良いけど………。
「リュークレインさんに会いたかったみたいですよ?」
少し揶揄うように言えば、苦虫を噛み潰したような顔をするリュークレインさん。余程、大森さんが嫌なんだろう。
「別にやましい事は無いから言うけど、本当によく話し掛けられて……うんざりしているんだ。名前呼びすら許した覚えもないんだけどね……」
ーえ!?そうなの!?てっきり許してるのかと思った。恐るべし……大森彩香ー
「それで……俺の事、ちゃんと好きで結婚してくれるって?」
「ぬぁ──っ!?」
変な声を出した口を自分で押さえて、視線だけリュークレインさんに向けると、これまた蕩けるような目で私を見ていた。
「ゔゔっ……心臓が痛い………」
本当に勘弁して欲しい。本気の微笑みは……遠慮していただきたい。心臓がいくつあっても足りません!なんて呻いていると「それは大変だ……」と言いながら、抱き寄せられた。
「──っ!?」
ー何故、抱き寄せられた!?ー
脳内パニック絶賛発令中である。
「本当に、あの2人は同じ人間なのか?言葉が通じないとは、恐ろしいな。どれだけ、あの扉をブチ開けて殴り込むのを我慢したか………と言う事で、我慢した俺へのご褒美が欲しい位だ」
と言いながら、私を抱き寄せている腕に更にギュッと力を入れるリュークレインさん。
「ふふっ…。ご褒美って……自分から言いますか?」
抱き寄せられてるままで、心臓はバクバクと忙しないけど、この腕の中が温かくて安心して落ち着いたりもするから、ついつい身を任せてしまう。
「本当に……ルーナの癖が抜けなくなっちゃいましたね。ここに居ると……落ち着きます」
そのまま、コテンと頭をリュークレインさんの胸に預けると、リュークレインさんがピクッと反応した後
「それはそれで嬉しいけど、安心し過ぎられてもなぁ……キョウコ………」
「はい?」
名前を呼ばれて、リュークレインさんの方へと顔を上げると、間近で視線が合って───
初めてのキスをした。
それは本当に一瞬だった。目を閉じる間もなかった。
ー目を閉じてもリュークレインさんはイケメンだなぁー
なんてポヤーとしているところで、もう一度キスをされた。ほんの少し長目のキスだ───って!?
「なっ────っ!!!」
「ふっ──意識…戻った?顔が真っ赤で…可愛いな」
「かわっ──えっ!?」
「え?何?もう一回する?」
「───っ!?結構です!もう、いっぱいいっぱいです!」
と、顔を隠すように、リュークレインさんの胸に押し当ててギュウッとしがみつく。
「────いや……キョウコ?それ、逆効果だからな?」
地を這うような声で呟いた後、長い長い息を吐いて、私を宥めるように背中をポンポンと優しく叩いて、そのまま私を軽く抱きしめたままで──
「兎に角、今日のハルマ殿とサヤカ嬢との面会については、叔母上達には報告しておいた方が良いな。お披露目会で何かやらかさない……とは言い切れない」
ーくぅっ…この体勢のままなんですね!?頑張れ!私!ー
「そ…………そうですね。それと…リュークレインさんと私の婚約発表は必要ですか?大森さ──サヤカさんが何かやらかしそうで、ちょっと怖いんですけど……」
「俺としては発表して、色んな意味で牽制しておきたいんだけど……それも、考える必要はあるかもしれないな。今日の昼から時間をとってもらっているから、叔母上達に相談しよう。それ迄の時間は特に予定は無いから────今のうちに、もう少しご褒美を貰っておこうかな?」
と、ニッコリ微笑むリュークレインさん。その笑顔を見て、誰が断れるだろうか?それも、好きな人に言われたら──
午後になり、皆の居る所に行く頃にはグッタリしてしまい、アシーナさんは圧のある笑顔をリュークレインさんに向けていたけど、リュークレインさんは爽やかな笑顔で受け流していた。
カミリア王女と宰相に至っては、なんとも微笑ましい笑顔を浮かべていた。
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